SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年7月28日

#545 宮本 啓希 『みんなめっちゃラグビーが好き』

ベテラン選手として、そして選手会長として、サンゴリアスを支える宮本啓希選手。出場機会が減った昨シーズンをどう考え、新たなシーズンに立ち向かっているのでしょうか。じっくりお話を訊きました。(取材日:2017年7月6日)

◆勝ったら良くなる

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---- 選手9年目で選手会長としては3年目ということで、1/3やっていることになりますね

そうですね。選手会長という役職はありますが、今は意識していないです。1年目は意識しましたが、2年目からは特に意識していません。

---- 選手会長を2年やって、チームの成績が悪い時とすごく良い時と両方を経験しましたが、それについてはどうですか?

グラウンドで勝ったら良くなるということを1番感じましたよ(笑)。勝ったら何でもみんな良くなる。「それって人間だな」というのを改めて勉強したというような感じですね。勝ててない時は「そういうところが出来ていないからだ」と逃げたくなるんですよ。でも、敬介さん(沢木監督)もミーティングで言いますが、「勝ったら良くなる。だから、勝たなければいけない」と。勝つことで色んなことが上向きになると思うんですよ。

僕が選手会長1年目の時に、そういう役職に就くのが初めてでしたし、ミーティングの最後の話を上手くまとめて終わらせなければいけないと考えていたんです。そういう考えでやっていたら、あの時は剛さん(有賀アシスタントコーチ)もプレーヤーでやられていて、そういう年上の方に「それは別に必要ないんじゃないか」ということを言われたんです。その時にガラっと変わったというのを覚えています。

「みんなでやっていきましょうよ」ではなく「いつも言っていることをもう1回ちゃんとやりましょうよ」と言うようになりました。それをずっと言っていたのが、最初の年かなと思います。2年目からは他に何か加えて言ったとかはないですし、2年目は勝ちが続いてきて、みんなもどんどん自分で「これもやらなあかん」「あれもやらなあかん」と思うようになっていったと思います。

◆いちばん上じゃない

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---- グラウンド以外の場所でのコミュニケーションは増えていますか?

自分の中で「クラブハウスに来たら全員と喋ろう」と取り組んで、昨日の練習のことや、練習に入る前のこと、最近の仕事のこと、プライベートで週末何していたのかとか。全員と喋ることで、考えていることが掴めたりするので、1年目で自分の中にモヤモヤがあった時に何かやることを決めようと思って、それをやるようにしました。毎日完璧にできていたかをチェックしていたわけではありませんが、そういうマインドで毎日取り組んでいて、昨シーズンもその取り組みは続けていました。

---- ある種キャプテンみたいですね

僕はキャプテンじゃないと思うんですよ。僕は今まで学生の時からずっと副キャプテンなんです。キャプテンや副キャプテンは自分で決めることではないんですが、歩んできた道を見ていると、やっぱり僕はキャプテンじゃないんだなと思うんですよ。

監督やコーチが決めたり、先輩が投票で決めたりと、チームによってキャプテンの選び方は色々あると思うんですが、結果的に僕がこれまでやってきたのは副キャプテンで、「あ、それってそういうことなんやな」と思うようになりました。そこから「副キャプテンになるってどういうことなんやろ」って思いましたし、「自分はどういう人間なのか」と考える1つの材料になっていると思います。

---- どういう人間なんですか?

いちばん上じゃないんですよ。

---- いちばん上ではないけれど、相当周りに目を配っていますよね

それは僕の性格なんでしょうね。昔からそういうところがあって、気になるんですよ。周りからすれば、「そこは別にお前が気にしなくて良いよ」というところも、僕が勝手に気になってしまうということがあります。

---- 世話好きですか?

そんな良いもんじゃないですよ。周りからすれば「啓希、それやらんでええ」みたいなことが絶対あって、「すみません、僕が気になってしまうが故にです」という感じです。

---- 改めて、選手会長としての役割は?

新しく何かをやるということは考えていないですね。僕は色々なメンバーとちゃんと話をして、相手のことを分かっておくことが大事だと思うんですよ。そうすると、調子が良い選手に気づいて一言かけられますし、逆に苦しそうにしている選手がいた時にも、それに気づいて一言かけられると思うんです。

その2つの時にかける言葉は違いますし、そういう言葉をかける時は大体グラウンドの外になるので、そういうことをやっていくのが僕かなと思っています。そういうところで、たぶん僕の世話好きであったり、勝手に気になっちゃうという部分が、良い意味で出ていると思います。だから、選手会長というより、それが僕なんじゃないかなと思ったりしています。

◆自分でぶつかっていかなければ

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---- ラグビー面での昨シーズンはどうでしたか?

いつもインタビューされる時は試合に出ていたんですけど、昨シーズンはサンゴリアスに入っていちばん出場数が少なかったんです。8年目の30歳でベテランとなる歳で、チームにいる意味を考えなければいけない立場だと思うんですが、そこを履き違えたと思うところがありました。

選手であれば、グラウンドでのパフォーマンスが一番でなければいけないと思うんですが、結局は、グラウンド外での役割の部分で何かしらの理由をつけて、自分が楽な方に逃げていたんだと思います。

---- 今シーズン、試合に出るために取り組んでいることは?

試合に出ることを考えた時に、まず今までチームでの1/15の仕事をちゃんとできていた時は試合に出られていたと思うんですよ。絶対にやらなきゃいけないことをちゃんとやることであったり、見えないところでどれだけコミュニケーションを取れるかという部分しか僕にはないので、今から大きくつけ加えるとかではなく、そこをちゃんとやることだと思っています。

---- 改めて自分の良さを出してアピールしていくということですね

そうですね。いま言ったことに自分でぶつかっていかなければできないと思うんです。自分の中で、まだムラがあると感じていて、そんなに大きく見えるムラではないんですが、終わった時に自分の中で反省することがあるので、今シーズンはそこを直していきたいと思います。

◆コンスタントをテーマに

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---- ムラを無くすためには、常に集中して毎回の練習に臨まなければいけませんね

やっぱりグラウンドでのパフォーマンスが大事で、試合に出ていた時は毎回の練習で「コンスタントにパフォーマンスが出せるか」というのをテーマにやっていて、練習終わりに「今日はコンスタントにできたな」と思えた時は調子が良かったので、今シーズンもそのイメージでやっていこうと思っています。

---- チームとしてもコンスタントのレベルが上がっていますよね?

めっちゃ上がっていると思います。「上がっています」って言ったら監督から「まだまだだ」って言われると思います(笑)。みんなめっちゃラグビーが好きなので、まだまだ上がっていくと思いますよ。

---- 沢木監督の良いところはどこですか?

決めたところからは絶対に逃げないところだと思います。「まぁいいか」がないんですよ。その姿を昨シーズンの最初から見ていて、選手としてもどんどんそういう考えが強くなっていると思います。監督は大変なことや限界がないところから逃げないですからね。

---- 選手としてもとことんラグビーをやっているという感じですか?

もちろんみんなはラグビーが好きでやっていますが、その好きの幅が広がったと思います。以前までは、ラグビーが好きで見るのもプレーするのも好きだったのが、ラグビーを考えるのもめっちゃ好きになって、そういう幅が広がっている感じです。考えてイメージを持ってやっている人って、絶対に試合に出ていると思うんですよ。そういうのがまた面白いなと思います。

◆いつも通り

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---- 今シーズンの目標は?

選手としてプレーしている以上は、毎年目標は変わらないですね。やっぱり試合に出なければいけないと思いますし、そこに向かって行く中で、先ほど言ったコンスタントにやることをターゲットにしています。先発やポジションへのこだわりは特になく、とにかく試合でプレーすることを考えています。

---- 現在のコンディションは?

良いですよ。コンスタントに上がってきています。

---- 将来の新たな目標はできましたか?

そこはまだ分からないですね。でも、ラグビーは絶対に近くにないと寂しいでしょうね。こんなにずっとやってきていて、ラグビーがなくなった人生は考えたことがないです。

---- 宮本選手に調子を聞いて、なんて答えら調子が良いって思えばいいですか?

「いつも通りですね」っていう感じですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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