SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年5月26日

#536 北出 卓也 『勝負の年、先はない』

社会人1年目の活躍から一転して、2年目の昨シーズンは試合出場もままならなかった北出卓也選手。今シーズンにかける思いを訊きました。(取材日:2017年5月4日)

◆"個"を強くする

スピリッツ画像

—— 2016-2017シーズンは、個人としてはどんなシーズンでしたか?

チームとしては目標としていた2冠を達成できたんですが、それに対して貢献できたのかという部分に関しては満足できませんでした。優勝した瞬間は、やはり喜びはありましたが、昨シーズンはほとんど試合に出られなかったので、悔しさしか残っていないシーズンでした。

—— 1年目の2015-2016シーズンではほとんどの試合に出場しましたが、昨シーズンとの違いは?

1年目の時はただがむしゃらにやって、2年目のシーズンでは怪我が続いたり、怪我をするタイミングが悪かったりして、自分では慢心があったとは思っていませんでしたが、監督やスタッフからは「気づかないうちに、慢心があったんじゃないか」と言われたこともありました。そこは反省すべき点だと思っています。

今は試合でスタートから出るということだけを考えて、全てをラグビーにかけるつもりでがむしゃらにやっていて、昨シーズンはそういう気持ちが少し足りなかったのかなと、今は感じています。

スピリッツ画像

—— 取り組んだことでは、何か違いはありましたか?

1年目の時は言われたことを、ただがむしゃらにやっていましたが、2年目では求められる水準も高くなり、それに対してのパフォーマンスが、チームから求められているレベルにたどり着けていなかったので、試合に出られなかったんだと思います。

プレー面では、「試合に出るためには、スクラムを強くすることが一番の近道だ」とずっと言われていて、そこにチャレンジはしていたんですが、まだまだ足りませんでした。今シーズンは、春から個人としても、そこに対してしっかりとフォーカスして取り組んでいます。

—— スクラムでの課題は?

"個"が強くないと8人でも強くならないので、まずは"個"を強くすることと、フッカーはスクラムの中心なので、8人をまとめるコミュニケーション力が必要です。そういう部分は経験を積まなければ身につかない部分で、すぐに上達する部分ではないと思います。チームには、お手本となるアオさん(青木佑輔)がいるので、良い部分をどんどん吸収していかなければいけないと思っています。

—— 青木選手からは何かアドバイスをもらったりしているんですか?

常にアオさんを超えて試合に出るという思いを持ち、貪欲に色々なことを聞いていますが、それに対してアオさんも色々と教えてくれるので、本当にありがたいと思っています。

—— 青木選手からはどんなことを吸収したいと思っていますか?

やっぱりスクラムワークのところです。フッカーは1番と3番の間に入っているので、それぞれに対して要求を出したり、メンバーによっても特徴が変わってくるので、その全てを把握して、その特徴に合わせて組み方を変えたりするところです。僕はまだそのレベルには達していないと思います。

◆ラグビー・ナレッジが上がった

スピリッツ画像

—— ラグビー・ナレッジの部分はどうですか?

試合ではメンバーとメンバー外と分かれますが、試合の準備をする上では、チーム全員でビジョンを共有して、チームミーティングでもそれに沿った話を繰り返していました。

昨シーズンはスタンドから試合を見ることが多かったんですが、上から試合を見ていると、プラン通りにいっている時は良い戦いをしていましたし、上手くいかなかった時でも順応して、戦い方を変えたりしていました。特に日本選手権決勝のパナソニック戦ではそういう戦い方をしていたので、ビジョンをメンバーとメンバー外でも共有できていたことによって、チーム力が上がったと思います。

ラグビーの練習に100%で取り組むということは当たり前だと思うんですが、他のチームや海外のチームの試合を見たり、ラグビーを勉強するという部分でも、みんなが100%で取り組んでいたと思います。それによりラグビー・ナレッジが上がったんだと思います。

—— ラグビー・ナレッジが上がったことで、より面白さを感じましたか?

面白いですね。みんなで共有できるというか、上手くいった時には、上手くいった理由がちゃんとあって、それが明確になるんです。そういう部分で面白さを感じましたね。

ただ、まだまだ満足はしていませんし、敬介さん(沢木監督)も「これで満足ではなくて、サントリーはもっともっと進化していかなければいけない」と言っていますし、春からナレッジを上げるための取り組みを行っているので、さらにレベルが上がると思っています。

—— それによって、普段の生活にも変化はありましたか?

コミュニケーションは増えましたし、例えば、練習が終わって、その日の練習の映像をみんなで見返して、「ここはこうした方が良かったんじゃないか」などと話し合う場面が増えました。選手が自主的にそういう話し合いをしていますが、その環境をスタッフが整えてくれた。そういう環境も良い影響を与えていると思います。

◆信頼される選手に

スピリッツ画像

—— 冒頭で、昨シーズンは悔しさしか残っていないシーズンと言っていましたが、具体的にはどういう思いですか?

自分としては、同じポジションの選手に負けていないという思いを持って練習に取り組んでいましたし、チームから求められていることにチャレンジしていたつもりだったんですが、求められるレベルまで行くことができず反省していますし、悔しいの一言ですね。

そういったシーズンを過ごしたことで、自分の人生のほとんどがラグビーなんですが、そのラグビーに対して、今まで以上に真剣に向き合おうと思っています。その部分が、昨シーズンは足りなかったんじゃないかと思っています。

例えば、仕事で上手くいっていない状況の時にクラブハウスに来ると、どうしても仕事が気になってしまいますが、そういう状況でも上手くスイッチを切り替えなければいけないと思いますし、常にラグビーを最優先において、そのために必要な行動を取っていくことが重要だと思っています。

—— 1日24時間、ラグビーのことを考えている感じですか?

そうですね。今の時期は土日がオフになっていますが、金曜日の練習が終わったら、次の月曜日の練習で良いパフォーマンスを出すために、土日をどう過ごすべきかを考え行動しています。特に休み明けの練習に良い状態で入らなければ、信頼される選手にはなれないと思っています。

—— 自分の性格として、継続力はあると思いますか?

比較的ある方だと思います。特に今シーズンは勝負の年だと思っているので、ここで結果を残さなければいけないと思います。

正直、これまでのラグビー人生では、昨シーズンほど試合に出られなかった年がなく、下から追い上げていく立場ということを、あまり経験したことがありませんでした。先ほども言いましたが、がむしゃらにやっていくしかないと思っています。

—— あまり喜怒哀楽がない性格なんですか?

ありますが、あまり表には出さず、自分の中で解決してしまうタイプだと思います。

—— 社会人3年目となり、新たに気づいた性格などはありますか?

色々な情報が入ってくる中で、良いなと思ったことはとりあえず試してみますね。そして、その中で必要だと思ったことは続けています。

◆下半身は安定、上半身はリラックス

スピリッツ画像

—— がむしゃらにやることで感じるラグビーの面白さは?

今は個人にフォーカスした練習が多いんですが、例えば、ラインアウトのスローの練習は、チーム練習の後や休みの日に個人練習として取り組んだり、山岡さん(FWコーチ)にお願いしてスローの練習に付き合ってもらったりしています。その成果がチーム練習の時に出たりすると、そういう時間は無駄じゃないと感じます。

—— スローは、何を意識して投げているんですか?

ジャンパーの位置をイメージして、そこに投げるだけなんですが、スローする上で、いま一番大事だと思っていることは下半身です。そこが安定しなければボールが曲がってしまいます。下半身はどっしりと安定させつつ、上半身はリラックスさせることを意識しています。

これまでと投げ方自体は変わっていませんが、以前はそこに意識を向けられていなくて、ミスをした時に「なぜミスをしたのか」を振り返ることができていなかったんです。今は自分の中で、こういう状態になれば良いボールが投げられるという感覚があるので、ミスをした時もなぜミスをしたのかが分かるようになりました。

—— 今シーズンの目標は?

2番のジャージを着て試合に出ることだけを考えています。それが果たせなければ、その先はないと思います。やはり優勝した時にグラウンドにいられなかったということが一番悔しかったことなので、2番をつけて2連覇したいと思います。

—— 注目してほしいプレーなどはありますか?

僕の強みはボールキャリーだと思っているので、ボールを持った時の動きを見てもらいたいです。ただ、スクラムワークのところは足りない部分なので、そこを安定させ、そこから自分の強みであるフィールドプレーに繋げて動き回りたいと思います。あとは、スローも自信があるので、見てもらいたいですね。

スピリッツ画像 スピリッツ画像
スピリッツ画像 スピリッツ画像

一覧へ