2017年5月19日
#535 森川 由起乙 『ワラタス戦が最初の勝負』
主に1年目は先発、2年目はリザーブながら、入部2年間、試合に出続けている森川由起乙選手。3年目で背番号1番を獲得するために、どんなことを考え、目指しているのでしょうか?ワラタス戦が大事なポイントになってくるようです。(取材日:2017年4月28日)
◆ワラタス戦で勝負
—— 2年目となった昨シーズンはどういうシーズンでしたか?
選手全員の個人としての課題が明確となってスタートしたんですが、特にスクラムのところで石原慎太郎さんに負けて、1番の背番号を勝ち取れないままシーズンが終わってしまいました。その中で、リザーブに選んでもらえたので、外から慎太郎さんのプレーを見たり、映像で自分のプレーを見て比較ができたので、勉強になりました。
今年3年目になりますし、昨シーズン結果を残した慎太郎さんが日本代表でも活躍している姿を見ることで、昨シーズン経験したことを活かし、慎太郎さんを追い越さなければいけないという気持ちになっています。
僕が1年目の時には、1番をつけてトップリーグのレベルなどを経験させてもらい、2年目ではリザーブを経験し、チーム内で1番を取る難しさとチームの代表としてのプライドの部分で、慎太郎さんに上回られたという自分の弱さが見えました。
今はスクラムでも手応えを感じつつ、1番としての役割を、ヤマさん(山岡俊フォワードコーチ)やアオさん(青木佑輔)、フロントローの先輩たちに学ばせてもらっているので、今シーズンはまず6月11日のワラタス戦で1番をつけて勝負できるようにしたいと思います。
—— 1年目の時に1番をつけて試合に出られた要因は何だったと思いますか?
正直、スクラムは良くなかったと思いますが、思い切りの良さを評価してもらったことと、若手に経験させるということでチャンスをもらっていたと思います。細かな部分で、健雄さん(金井/現 神戸製鋼)や慎太郎さんに経験やスクラムで劣っていたところはありましたが、1番をつけさせてもらっている以上は思い切りやらなければという思いを出せたと思います。
ただ、順位決定トーナメントでの3試合では全てリザーブだったのですが、自覚していた課題を克服できなかったところで、1番をつけられなかったと思っています。
◆半べそをかきながら
—— 具体的にスクラムでの課題は、どういうところでしたか?
昨シーズンでは、ダルマゾさん(マルク/元日本代表スクラムコーチ)がスポットコーチとして来てくれてスクラムを学ぶことができたんですが、それでも組み方の癖を直すことができず、波が激しいスクラムでした。しかも、組んでいる時に「なぜ良かったのか、なぜ悪かったのか」が分からなくて、ビデオを見返さなければ分からない状態でした。
その感覚の部分で、ハタケさん(畠山健介)や慎太郎さんなどは、なぜ悪かったのかがその場で分かって修正できるんですが、僕の場合はその感覚が身についていなくて、そこは沢木さん(監督)からも指摘をされていた部分で、その差が、シーズン後半でスクラムが押せなくなった部分に繋がってしまったと思っています。
中でもリザーブで使ってもらっていたので、「後半になってスクラムが弱くなった」と言われないよう必死に取り組みました。第11節のコカ・コーラ戦では1番で出場しましたが、その週の練習では、スクラムの感覚の部分にターゲットを絞って練習して、アオさんから厳しいことを言われ、半べそをかきながら(笑)、チームの良い流れを止めてはいけないという思いで取り組みました。
コカ・コーラ戦をきっかけに手応えを感じるようになって、一気に強くなったわけではありませんが、1番としての役割をしっかりと理解し、悪いスクラムを組む回数が減って、少しずつスクラムへの自信を持つことができました。
昨シーズンでは、1番が慎太郎さん、リザーブが僕という形がしっくりハマっていたと思い、それをシーズン中に変えることは難しいと感じたので、シーズン終盤では「次のシーズンでは負けない」という思いを持ち、スクラムにターゲットを絞って磨いていました。
◆8人で押すという感覚
—— シーズン終盤では感覚の部分も身についてきたんですか?
練習中にヤマさんやアオさん、ハタケさんに言われることが、段々とその場で理解できるようになっていきました。最初は、言われたことのイメージはできていたんですが、それを実際にプレーする時には、イメージと自分の体の動きがマッチしなくて、言われたことが全くできていない状態でした。
コカ・コーラ戦の週の練習でアオさんから色々とスクラムについて教わり、その時にもまだはっきりと理解するまでにはいけていなかったと思うんですが、アオさんが大きく構えてくれて、「ここに来い」と、そこだけを言ってくれて、そのポジションで組むことで自分自身でも居心地の良さを感じました。実際に試合でもスクラムを押すことができましたし、これまで組んできたスクラムの中でも一番プレッシャーをかけられたスクラムが組めたと思います。そこで初めて8人で押すという感覚が理解できたと思います。
シーズンを通して、8人で相手にプレッシャーをかけられるスクラムを作り上げてきて、誰か1人でも違うポジションで組んでしまうとプレッシャーをかけられてなくなってしまう中、僕がいなければいけないポジションを、アオさんが「ここに来い」ということで示してくれました。8人で壁を作っているようなもので、誰か1人でもポジションが違うと、そこがヒビとなり、その影響で少しずつ全体が歪んできて、最後には崩壊してしまうんです。
—— 青木選手以外のフッカーとスクラムを組む時は、組み方が変わったりするんですか?
僕は試合では駿太(中村)と組むことが多かったんですが、やはりそれぞれに特徴があり、最初は戸惑うこともありました。誰が入っても同じようなスクラムが組めるようにするために、それぞれの特徴を覚えましたし、ずっと駿太と一緒にアオさんのところで勉強させてもらって、シーズンの終盤にはアオさん以外のフッカーと組んでも、良いスクラムが組めるようになったと思います。
アオさんがいない中でも試合で相手にプレッシャーをかけられたり、相手からプレッシャーを受けてもそれに反撃することができたので、スクラムを組んでいて面白かったですね。前の3人が全員リザーブのメンバーになってもしっかりとプレッシャーをかけられることもあったので、それは自信にもなりました。
—— いまの段階で、1番で試合に出るイメージはありますか?
月のワラタス戦が最初の勝負だと思っています。1番になろうが、リザーブになろうが、僕はそこでしっかりとスクラムをアピールしなければいけないと思っていて、スクラムで上回らなければ、今シーズンもリザーブであったり、メンバー外になると思いますし、スクラムで成長した姿を見せられなければ、チームから認められないと思っています。
◆準備をしないと落ち着かない
—— コンディションについてはどうですか?
コンディションによってパフォーマンスも変わりますし、対戦相手によっても変わります。昨シーズンでは、ベンチから見ていて、試合が始まってスクラムの1本目、2本目くらいまでには相手の組み方や特徴、自分たちのコンディションを理解して、3本目にはしっかりと修正して組めていたと思います。
リザーブとしては、まずは外から見ていて感じた状況を整理して、その考えを持った上でハーフタイムに出ているメンバーから情報を聞いて、自分が出た時にはどうすれば良いかを整理して出場していました。
—— 準備が大事ですね
シーズンを通してラグビー・ナレッジを上げることをターゲットにしていたので、最初はやらなきゃという感じでしたが、シーズンが深まるにつれて習慣化されてきて、当たり前になっていましたし、逆にコミュニケーションが不足していたり、準備をしないということは落ち着かないですね。
そんな中でも、やはり試合中に修正できなかったこともあるので、そういう時には翌日の練習までには1人1人がクリアにして、次の試合の準備に入るようにしていました。
最初の頃は多くの選手のナレッジが低すぎて、どうすれば良いのかも分からなかったと思うんですが、与えられたものをクリアしていく積み重ねによって、自分自身で気づけるようになっていき、そして多くの選手からひらめきが生まれるようになり、選手が主体性を持って行動できるようになったと思います。
◆1番を勝ち取りたい
—— 1年目と2年目では、チームの成績が全く違うわけですが、その違いのポイントは何だと思いますか?
僕が1年目の時には、練習のための練習をしてしまっていたというか、試合で想定していない状況になった時にアタフタしてしまって、それを修正できずに終わってしまうことが多かったと思います。それは準備不足だったと思いますし、対応力もなかったと思います。
昨シーズンでは、練習で不安をなくして試合に臨めていましたし、それによって自信を持って試合に入って、ピンチの状況でも全員が落ち着いてプレーできていたと思います。昨シーズンも楽な試合は1試合もなかったんですが、試合の中のポイントポイントで、ユタカ(流大)が先頭に立って周りをリードしてくれていましたし、練習でも日本一になるための練習ができていたので、試合でのプレッシャーも少なかったんだと思います。
—— 今シーズンの目標は?
チームの目標としては、2連覇、2冠ですし、世界基準のプレーをすることは変わりませんが、僕としてはサントリーで1番をつけることによって、2019年のワールドカップに向けたアピールになると思っているので、まずはサントリーの1番を勝ち取りたいと思います。
—— どういうところに注目してもらいたいですか?
試合のターニングポイントとなるようなスクラムですね。「試合をコントロールし始めたのは、あのスクラムからだな」と思ってもらえるようなスクラムを組みたいですね。試合の1本目からそういうスクラムを組み、それを80分間通して出せるようになりたいと思います。