2017年4月28日
#532 芦田 一顕 『100%でやる』
キャプテン、元日本代表、新人と、チーム内の同じポジションに多くのライバルがいるスクラムハーフの芦田一顕選手。サンゴリアスの中では中堅に位置するようになる6年目シーズンに向けて、どう取り組んでいるのか?今シーズンの展望を訊きました。(取材日:2017年4月10日)
◆本当に悔しかった
—— 昨シーズンはどういうシーズンでしたか?
1年前の春シーズンに怪我をして、その後の夏合宿前にも怪我をしてしまって、合宿に参加できませんでした。そこからリハビリをして、10月の練習試合で試合復帰をしましたが、怪我をしてしまったので、昨シーズンはチームに迷惑をかけてしまったシーズンでした。
そういう状況だったので、本当に悔しかったです。その経験から、自分のコンディションをしっかりと理解することを学びました。トップリーグの試合には出ることができないと分かっていたので、相手の分析などをして、どうすればチームに貢献できるかを考えたシーズンでした。そこは学んだ部分だと思います。
—— 昨シーズン中には、怪我をする前の状態まで戻せたんですか?
昨シーズン中には100%まで戻せませんでしたが、今はもう怪我をする前の状態には戻っています。
—— リハビリは大変でしたか?
リハビリをやること自体は辛くはないんですが、継続してやることが、簡単なようで難しかったですね。「チームに迷惑をかけた」という思いが大きかったので、リハビリは必死でやりました。
—— 継続は得意ですか?
得意と言っておきます(笑)。実際に、別に苦手ではないと思いますよ。
◆時間が足りない
—— 前の状態まで戻ったそうですが、自分の理想と比べるとどうですか?
体の部分では良い準備ができていると思いますが、スキルやゲームの理解度の部分は更に伸ばしていかなければいけないと思っています。あと、試合ができる状態ではなかったので、試合勘はなくなってしまっていると思います。その勘は試合でしか取り戻せないと思うので、早く試合をしたいと思っています。
—— 試合に出られる状態と比較して、今は何%くらいまで来ていますか?
80%くらいだと思います。フィットネスやフィジカルの部分は問題ないと思うので、あとは試合勘の部分だと思います。スクラムハーフというポジションは試合勘が大事なので、そこを戻さなければいけないと思います。今年の練習試合のスケジュールはまだ分かりませんが、出られる試合は全て100%でやりたいと思います。
—— 100%の状態になった時に、これまでの武器とこれからの武器は何だと思いますか?
フィットネスとパスの精度は自信を持っていて、それに加えキックにも力を入れて取り組んでいます。プレッシャーが無い状態ではある程度できると思いますが、まだ得意と言えるまでにはなっていないですね。
—— キックのポイントは?
いつも同じようにボールを落とすことです。同じ場所であったり、同じ向きで蹴ることを意識しています。キックにも色々と種類があり、バリエーションを増やしたいので、時間が足りないくらいです。
◆課題はキックと理解度
—— 同じスクラムハーフには、キャプテンの流選手もいますね
スクラムハーフとしても、人間としても尊敬できる選手なので、一緒に練習をしながら良い刺激をもらっています。
—— 芦田選手はクールに見えますが、自分ではどう思いますか?
感情を表に出しているつもりなんですが、そういうキャラクターなのかもしれません。ただ、クールに見えて、心の中では焦っている時もあります(笑)。焦ってしまうということは、そのことを予測できていないということだと思うので、色々なシチュエーションを頭に入れて、この時にはどうするかを自分の中に落とし込まなければいけないと思います。海外のチームの試合や他のチームの試合を見ることによって、「こういう状況でこう判断するのか」と気づかされることもあるので、それを自分の中に落とし込んでいきたいと思います。
—— 他に課題はありますか?
昨シーズンはあまり試合をしていませんが、試合中に焦ったという印象はないので、ラグビーの理解度は上がっていると思います。なので、課題としてはキックとサントリーのラグビーの理解度を更に上げることだと思います。
いまチームにはスクラムハーフが4人いるので、この春シーズンでしっかりとアピールをして、最初の練習試合でメンバーに入ることをターゲットにしています。
—— 課題がクリアになっている今の気持ちは?
楽しみですし、早く試合がしたいですね。試合ではベーシックな部分を高い精度でプレーしたいですし、色々なキックも試したいと思います。
—— アピールポイントは?
パスの精度とフィジカルプレーは自信があります。ただ、パスの精度が良くても、それをどこで使うかによって良い攻撃になるかどうかに繋がるので、しっかりとコミュニケーションを取って、周りを使っていきたいと思います。
元々は自分でボールを持って行くことが好きで、チャンスがあればいつでも狙っていきたいと思います。あとディフェンスで体を張ってアピールしたいと思います。
◆コミュニケーションの量が多くなった
—— 昨シーズンのチームを見ていて、サンゴリアスが一番変わったところはどこですか?
一昨年のシーズンではチームのまとまりが弱いと感じていましたが、昨シーズンは全員が同じベクトルで、2冠を取ることだけを見ていたと思います。これまでと比較して選手1人1人の意識が違いましたし、試合に出る出ないに関わらず、みんなが相手チームの分析をして、それに対してしっかりと準備をしていたので、良い練習ができていたと思います。
相手を分析することによって、自分たちのやるべきことが明確になりましたし、これまではどこかで誰かに任せてしまっていた部分が、自ら考えて行動したという部分が大きかったですし、それを積み重ねられたことが良かったと思います。
たぶんそこには敬介さん(沢木監督)やコーチ陣のコントロールもあったと思いますし、ベテランの人たちからも色々なアドバイスがあったので、昨シーズンはこれまでに比べて、コミュニケーションの量がすごく多くなっていたと思います。
—— 今年6年目となり中堅となりますが、チームの中でどんな役割を担おうと考えていますか?
練習から100%でやることが役割かなと思います。それは今までもやって来たことですし、それをやることでチームに良い影響を与えられると思っています。そこは「他のみんながやっているから」とかではなく、しっかりと自分で考えて取り組んでいきたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]