SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年4月14日

#530 仲村 慎祐 『何が何でもスクラム!』

チーム内で“ジャンボ”の愛称で親しまれている仲村慎祐選手。ここのところ体つきや顔つきが変わってきた気がします。その理由は何でしょうか?久しぶりのスピリッツ・オブ・サンゴリアス登場です。(取材日:2017年3月27日)

◆チームでのベスト数字

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—— 体つきや顔つきが変わってきた気がします

体つきは変わったと思います。春シーズンにベースとなる体作りを行うんですが、ウエイトルームに1人1人の結果が貼り出されていて、パーソナルベストを出せば、その都度更新されていくんです。あるウエイトトレーニングでチームでのベストの数字を出したんですが、トレーニングを重ねることで、周りの選手もその数字に近づいてきていたので、「これだけはずっと1位でいよう」と思い取り組み、シーズン中1位をキープしました。

僕の場合は、そのトレーニングで1位というターゲットを決めていましたが、ラグビーをする上では、それだけが大事なわけではなくて、バランスよく全体的に上がっていく方が良いですし、その成果がラグビーで発揮できることが一番だと思います。

—— 1位をキープした努力はスクラムなどで活かせましたか?

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僕はずっとスクラムが課題で、体重が重くて、パワーもあるのに、スクラムでは押されてしまったりしていました。スクラムにはスキルが必要ですし、それが一朝一夕でできるものではないと思っていたので、春からスクラムのことをしっかりと考えて取り組みましたが、やはりなかなか結果に繋げることができませんでした。スクラムを成長させる何か取っ掛かりのようなものが欲しくて、先ほど言ったトレーニングで1位を取ることにこだわって取り組んだんです。

スクラムで悩んで、ヤマさん(山岡FWコーチ)や他のプロップの選手などに話を聞いて、頭で理解していても、それを体現することが難しいんです。そこで悩んだんですが、ウエイトトレーニングで記録を出すことができたので、いい意味で開き直れたというか、それがあってフィジカルの問題ではなく、スキルという部分にターゲットを絞ることができたと思います。

—— これまでとは違いを感じていますか?

スクラムは何年も悩み続けてきましたが、昨シーズンに関しては、青木さんや他のプロップの選手、ロックの選手たちにも、「今更そんなことを聞くか?」ということまで細かく聞きました。まだ満足できるスクラムは組めていませんが、失敗するにしてもポジティブな失敗になってきたと思います。

以前までは、スクラムを落としてしまったり、組んだとしても物凄く押されてしまったりと、スクラムを組むことさえできていなかった状態が、昨シーズンの終盤の練習では押せないけれど押されないとか、押されたとしてもペナルティーは取られないとか、そういう状態でスクラムができたと思います。

◆今年が最後という思い

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—— 今年で8年目を迎えましたが、悩みながらもしっかりと継続してきたんですね

サントリーに入った時は1番で、そこからスクラムで悩んできましたが、途中2年間くらいロックに転向して、1列目からは少し離れた時期がありました。ロックからまたプロップに戻った時に、1番ではなく3番になり、1番と3番は別物なので、そこでまた悩みましたね。7年も悩み続けていますね(笑)。

—— 悩みながらも継続してこられた要因は?

2016年度で同期の辻本が引退しましたし、2014年度には宮本賢二も引退し、そして同期以外にも多くの選手が引退するところを見てきました。僕も何年も前から「今年が最後だぞ」とプレッシャーを掛けてもらっていましたし、自分としてもそのつもりで1年1年をやってきました。

引退した選手たちは、僕よりも公式戦の出場数が多いのに引退しなければいけなくなった選手たちばかりで、そういう選手たちを見ていたら、僕はラグビーをやらせれもらえている立場で、「有難い」という思いを強く持つようになりましたし、「やらなければいけない」と思い取り組んでいます。

—— そういう思いを持つことで、これまでとは見え方が違いますか?

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ラグビーをしていると楽しいんですが、練習では自分自身を追い込むので辛いこともあります。若い頃は心の底では「ラグビーをやりたい」と思いながらも、練習で「嫌だなぁ、しんどいなぁ」と思い、やらされていた時があったと思います。

やりたくてもできない選手をたくさん見てきたので、練習は大変でもラグビーができるチャンスをもらっていると思っていますし、ラグビーができることに感謝しているので、言葉では表しにくいんですが、弱音は出なくなったと思います。

◆スクラム、ナレッジ、フィジカルプレー

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—— 今シーズンの春からは、何をターゲットにしていきますか?

昨シーズンも試合に出られませんでしたし、ノンメンバーで練習することが多かったんですが、他の選手も含め、試合に出られなくても誰も投げやりになっていなかったんです。これまでは悔しさをネガティブな方向に吐き出してしまう選手もいたんですが、昨シーズンはメンバーに入れないことが分かった時から、全員が「チームが勝つためには何ができるか」を考えるようになっていましたし、みんなが悔しさをポジティブな方向に働かせていたと思います。

みんながポジティブな方向を向いているので、普段の練習から前向きに取り組んでいましたし、誰も手を抜かなくて、良い練習ができる時が多くなっていったと思います。今シーズンもメンバーを目指し取り組んで、例えメンバーに入れなかったとしても、その姿勢で取り組むことで成長できると思うので、昨シーズンをベースにして、そこから更に肉付けをして取り組んでいきたいと思います。

春シーズンは体を作らなければいけませんが、それに加えて、常にスクラムを第一に考えて取り組んでいこうと思っています。スクラムと並行してラグビー・ナレッジを更に上げていかなければいけないと思っていますし、自分の強みであるフィジカルプレーの強化をしていこうと思っています。その3つが、僕が試合に出るためには必要な大きな部分だと思っています。

—— いま考えるラグビーの面白さは?

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歳を重ねるごとに、そこも変わってきましたね。若い頃は体を活かしたコンタクトプレーが大好きで、そこで相手にも勝てていたので、楽しさを見出していました。今でもその楽しさは忘れていませんが、今はチームが勝つことが一番楽しいです。そして、勝つために色々なことに取り組むことが楽しいと思えるようになりました。

その中で僕が試合に出て、チームに貢献するために必要なことは、スクラムを安定させることなんです。それができなければ、僕の持ち味であるフィジカルプレーを発揮することもできないんです。勝つためには何が必要か、試合に出るためには何が必要かと、必要なことを肉付けしていく楽しさの中に、もちろんスクラムもあるんです。

—— 目指す選手像と比べて、現時点ではどの辺りまで来ていると思いますか?

5割くらいだと思います。今の僕に足りないものは、何が何でもスクラムだと思います。いくらコンタクトプレーに自信があっても、スクラムを安定させられるようにならなければ試合には出られないんです。

—— 最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします

こんな僕ですが、遠方から応援に来てくれたり、「頑張って」と言ってくれたり、周りにスター選手がたくさんいる中で、なぜか(笑)僕に注目してくれるファンの方もいらっしゃるので、本当に嬉しく思っています。今シーズンは何とかして試合に出ますので、これからも応援をよろしくお願いします。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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