SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年3月31日

#528 小澤 直輝 『勝ちたいという思いと試合に出たいという思いがリンクした』

終盤に巡ってきたスタメンのチャンスに活躍した小澤直輝選手。チャンスを掴むことができた秘訣は何でしょうか?2016-2017シーズンを振り返ってもらいました。(取材日:2017年3月2日)

◆選手としての責任

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—— 2016-2017シーズンでは中盤から終盤にかけてメンバーに選ばれるようになり、その役目をしっかりと果たすことができていたように感じました

シーズン序盤から終盤に向けて徐々に調子を上げることができたので、最後にチャンスが巡ってきて、それを結果に繋げられて良かったです。2015-2016シーズンでは、春から夏にかけて調子が良かったんですが、そこで怪我をしてしまったということもあって、復帰してからは調子を上げることができませんでした。ですので、2016-2017シーズンでは、どこにピークを持って行くのかということをより意識して取り組みました。だからと言って、春シーズンに手を抜いていたわけではありませんけれど(笑)。

—— 日本選手権準決勝帝京大学戦では、1試合2トライし、3トライ目は惜しかったですね

トライを取ることが自分の仕事ではありませんが、今まで1試合2トライが最高なので、次にチャンスがあったらハットトリックにチャレンジしたいですね。

—— 終盤にピークを、と言っても、開幕戦からメンバー入りを狙っていたわけですよね

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もちろんです。開幕戦に向けて、ひとつ目のピークを合わせなければいけないと思います。開幕前も調子自体は悪くなかったんです。ただ、開幕戦でのチャンスを得られなかったからと言って、そこでスイッチを切ってしまうと、それ以降もチャンスが来なくなってしまいますし、例えチャンスが来たとしても準備不足になると思っていました。

だから、メンバーに選ばれていない状況だとしても、チャンスが来ることを信じて、選手としての責任を果たし続けることが大事だと思い取り組んでいました。サンゴリアスの環境はスポーツに取り組む上で素晴らしい環境だと思っています。そこにはその環境を作ってくれている人たちがいて、そういう人たちに対して、選手としては感謝をしつつ、その環境を最大限に活かす働きをしなければいけないと思っています。それが選手としての責任だと思います。そして、その責任を果たすためには準備が大切だと思います。

—— 準備がポイントですね

僕だけじゃなくどの選手に聞いても、「1人1人のラグビー・ナレッジが上がった」という言葉が出ると思います。そこには、いつでもどこででも練習や試合、次の相手チームの試合映像が見られる環境を作ってくれているスタッフの働きがあって、選手が準備できる環境を作ってくれていました。

2016-2017シーズンの取り組みとして、「スーパーラグビーのチームに勝つためには何をすればいいか」と、敬介さん(沢木監督)が選手たちに課題を出したんです。以前から、そういう見方をしていた選手もいたと思いますが、僕の場合は、スーパーラグビーの試合を見ていても、そのように深く考えて見ていませんでした。そういう習慣を身につけさせてくれて、そこからは選手たちが自主的にやれるようになっていったと思います。

◆選手の判断の基準が同じ

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—— リーグ戦の対戦相手の試合は、以前からそういう見方ができていたと思いますが、その相手がスーパーラグビーのチームになったことで、どう変わったんですか?

例えば、ハイランダーズを相手にすることを想定して試合を見ると、なかなか隙を見つけられないんです。その中で、どう相手を崩すのかというところまで考えられるようになったと思います。

日本選手権決勝も、実際に試合をしながらも、お互いに隙を見つけられない状況が続きましたが、春からそういう状況になった場合にはどうすれば良いかと考えてきた経験が活かされていたと思います。決勝では我慢の部分であったり、規律の部分が非常に重要になるんですが、そういう取り組みのおかげで、選手たちはそういう試合での戦い方を理解していたんだと思います。

—— ラグビー・ナレッジが上がったことにより、プレーをしていても違いを感じますか?

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短い時間の中で、少しのコミュニケーションでも情報を共有することによって、その後の試合の運び方が理解できて、それに応じたプレーができるようになったと思います。例えば、フェーズを重ねていっても外が余らない時などには、「近場を攻めてディフェンスを寄らせてから外に展開しよう」などの話が少しの時間でも共有できて、プレーに繋げられるようになりました。選手の中での判断の基準が同じになっていたと思います。

—— ナレッジの部分はこれからも伸ばしていけそうですか?

ここ数年でラグビーも変わってきていて、その変化に対応していけるようになっていかなければいけないと思います。チームとしてインターナショナル・スタンダードを掲げているので、自分たちで自分たちの基準を決めずに、常にスタンダードを上げていく意識を持つことができれば、成長していけると思います。

—— 現時点でスーパーラグビーのチームと試合をすると、どのくらい戦えると思いますか?

映像などを見て分析し、しっかりと準備すれば、戦えるチームに仕上げられると思います。

◆自分だったらどうするか

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—— リーグ戦ではリザーブからの出場で、日本選手権の2試合では先発となりました。シーズン終盤の大事な試合でもしっかりとパフォーマンスを出せた要因は何ですか?

試合のメンバーに選ばれるために努力をして、例えメンバーに選ばれなくても、メンバーに対してチャレンジするということはベースの部分だと思います。それに加え、自分が出場しなかった試合でも、自分だったらどうするかということを考えながら試合を見ていました。

そして、実際にチャンスが来た時には、普段からそういう見方をしていたので、気負いはありませんでしたし、以前までは決勝などのビッグゲームの前日はなかなか寝られなかったんですが、今回はぐっすり眠ることもできました。

メンバーアナウンス後の練習ではワクワクしていましたし、試合を意識して練習ができていました。そして、試合の前日や当日には、やるべき準備が全て終わり、試合でやるべきことが明確になっていたので、落ち着いた状態になっていました。試合の前にスッとそういう状態になって、「じゃあ、準備してきたことをやろうかな」という気持ちで試合に入っていました。

—— 実際に試合中はどうでしたか?

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試合中は熱いプレーをしていますが、気持ち自体は落ち着いていたと思います。気持ちが落ち着いていないと、自分の判断も鈍りますし、周りの判断も聞こえなくなってしまうんです。コミュニケーションは自分が話すだけじゃなく、周りの人の話を聞くことも大事なので、興奮して周りの話が聞けなくなってしまったら、コミュニケーションが取れないことと一緒なんです。

—— 今までよりも気持ちの部分が成長したんですか?

落ち着いたということは結果であって、そこまでにしっかりとした準備ができて、やるべきことが明確になっていたから落ち着けていたんだと思います。練習で常に100%を出すことを心がけているんですが、その100%を限界と決めず、自分のスタンダードを常に高く持つことが大事だと思っています。練習に向けての姿勢や準備の部分が成長したと思います。

—— なぜそういう思いになったんですか?

これまでも練習を100%で取り組んできましたが、そこから更に一皮むけ試合に出るためには何かをプラスαしなければいけないと考え、ラグビーに対してより真剣に取り組まなければいけないと考えるようになりました。

サンゴリアスはみんなが真剣に取り組み、頑張っているから良いチームだと思うんですよ。ただ、勝たなければ、「それが良いことなのか?」ということになると思うんです。だから、このチームが勝つことが選手としての責任だと思いますし、勝ちたいという思いと試合に出たいという思いが、上手くリンクしてパフォーマンスに繋がったと思います。

◆自分も同じ舞台に立てるように

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—— 2016-2017の経験を、これからどう活かしていこうと考えていますか?

今回の結果は個人としてもチームとしても、自信に繋がるものだったと思います。その中で、やはり年々、上位チームと下位チームとの差は縮まっていて、次のシーズンがどうなるかは分からない状況だと思います。

僕が1年目、2年目の時は、試合への出場はほぼできませんでしたが、チームに優勝を経験させてもらったんです。4年目以下の選手たちは、今回優勝を経験することができたので、優勝するためのプロセスが分かったと思うんです。ただ、どのチームも差があまりなく、同じことをやっていたのでは勝てないと思うので、今回の経験を無駄にすることなく、新たに入ってくる選手たちに波及させていきたいと思います。そのために試合に出ることが大事になると思いますし、グラウンド以外でもその姿勢を見せられたと思っています

—— 個人としての目標は?

サンゴリアスにはトップレベルの選手が多いですし、そういう選手たちが代表で活躍している姿をテレビで見ていたんですが、今度は自分も同じ舞台に立てるように頑張りたいと思っています。

そのためには自分の強みを出しつつ、チームから求められていることを発揮することだと思います。もし代表などに呼ばれた場合、求められることはサンゴリアスとは違うことかもしれないので、そういう色々な要求に対応できるようにしたいと思います。

—— 次のシーズンに向けての自信は?

自信を持ってプレーをする必要性があると思います。今までの経験を信じて、自分の中のスタンダードを更に高めていきたいと思います。そして、次のシーズンでは開幕戦からスタメンで出場できるように頑張りたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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