2016年12月23日
#515 ナイジェル アーウォン 『みんなが次の試合だけに集中して取り組むことが大事』
今シーズンからサンゴリアスの一員となったナイジェル・アーウォン選手。普段のリラックスしている姿とグラウンドに出てプレーをしている姿は大きく印象が違います。インタビューを受けている時は、そのちょうど中間にいるような印象でした。(取材日:2016年12月8日)
◆チームスポーツ・戦略・フィジカル・知識
—— もうすっかりサンゴリアスの選手の顔つきになりましたが、最初に会った時にはバスケットボール選手のように感じました
高校の時にバスケットボールをやっていたんです。今でもバスケットボールは好きで、初めて日本に来た時はとても暑くて、普段からバスケットボールのユニフォームを着ていたので、そう感じたのかもしれないですね(笑)。
—— バスケットボールは小さい頃からやっていたんですか?
高校に入る前からバスケットボールとラグビーをやっていて、その他にもラグビーリーグやタッチラグビー、バレーボール、フィールドホッケー、あと水泳や陸上もやっていました。
—— それだけ多くのスポーツをやることは、ニュージーランドでは珍しくはないんですか?
結構、普通のことだと思います。ニュージーランドとオーストラリアは小さい頃に色々なスポーツをやるんです。教室の中にいることがあまり好きじゃない子どもばかりなのかもしれません(笑)。
—— その多くのスポーツの中で選んだのがラグビーとバスケットボールだったんですね
そうですね。ラグビーは5歳からやっているので、ラグビーが第一で、常に情熱をもって取り組んでいました。小さい頃から多くのスポーツをやったことで、色々なスキルを学ぶことが出来て、それをラグビーでも活かせていると思っています。
—— 当時はラグビーのどこに魅力を感じていたんですか?
ひとつはチームスポーツということです。その中に戦略が必要になりますし、フィジカルなスポーツですし、更に知識も必要なスポーツというところです。
—— どのタイミングでラグビーを選択したんですか?
成長していく過程で、ラグビーが一番だということを感じていて、家族がラグビーをやっていたり、近くに代表選手もいて、そういった選手をお手本にして、自然と「彼らのようになりたい」と思うようになっていきました。
—— 色々なスポーツをしている中で、自分自身の特徴を感じていたと思いますが、ラグビーではどういう部分を活かそうとしているんですか?
スピードとパワーが自分の強みだと思っているので、その特徴を試合の中で発揮することを心がけています。
◆ブランビーズで成長できた
—— 2013-2014シーズンではコカ・コーラでプレーしていましたね
その時に初めて国を離れて海外でプレーをしたので、とても多くのことを学び、良い経験をしたと思っています。その時は、試合に出たいという思いがありましたし、違う見方でラグビーが見られるようになるために、キャンベラから離れようと考えている時期でもありました。
—— 初めて日本のラグビーを経験して、どう感じましたか?
とても速いと感じました。それにタックルをするために足元にダイブしてくるので、凄く低いと思いましたね。当時はフランカーでプレーしていて、日本からオーストラリアに戻った後にバックスでプレーするようになったんです。
小さい頃はバックスでプレーしていて、プロになってからフォワードでプレーするようになったんですが、日本に来る前はスーパーラグビーのレッズでプレーしていて、その時はウイングとフランカーをやっていました。
日本からオーストラリアに戻ってからは、キャンベラでプレーした後、ブランビーズでプレーしましたが、その時にはもうバックスだけでした。
—— スーパーラグビーでのパフォーマンスはどうでしたか?
ブランビーズにおいて、自分が決めたターゲットは達成できたと思っています。スティーブン・ラーカムがヘッドコーチで、自分の成長を手助けしてくれて、選手として大きく成長できたと思っています。
残念ながら昨シーズンはベスト8で負けてしまいましたが、今はもうトップリーグにフォーカスしていますし、トップリーグが終わってからはまたブランビーズに戻る予定です。
—— 自分自身のどういうところが引き出されたと思っていますか?
ラーカムには、アウトサイドセンターとして必要なスキルである、ハイボールキャッチやラインブレイク、タックルなど全てを伸ばしてもらったと思っています。
◆グラウンドでは違う人格に
—— また日本に来ようと思ったのはなぜですか?
クリスチャン(リアリーファノ)がサントリーに来る予定で、僕もサントリーから話をもらいました。日本でもクリスチャンと一緒にプレーが出来ると思いましたし、ブランビーズの伝説的な選手であるジョージ・スミスもサントリーに入ることが決まっていて、あのジョージ・スミスと一緒にプレーが出来るチャンスだと思いました。
それにサントリーは歴史があって、強いカルチャーがあるチームだと分かっていたので、そういうチームで経験を積みたいという思いもありました。
—— 実際にサントリーに入ってみてどうですか?
サントリーのラグビープログラムは本当に素晴らしいと思います。それに良い選手がたくさんいますし、僕の役目は昨シーズンよりもチームを強くすることだと思っていて、今のところ全勝で来ていて、順調に進めていると思います。
自分のパフォーマンスとしては、正直に言うと、自分が出せる力を全て出し切れていないと思っています。まだまだ成長出来ると思っていますし、周りとのコンビネーションを更に高めていくために、他の選手たちのことをより深く理解しなければいけないと思っています。
サントリーは若い選手も良いパフォーマンスを発揮していると思いますし、特に元樹(須藤)を見ていると、練習でも試合でも良いパフォーマンスを発揮していて、そういう選手と一緒にプレーしていて良い刺激になっています。
—— 落ち着いた印象を受けますが、自分ではどんな性格だと思っていますか?
テンションを上げなければいけない時は上げますが、普段はこんな感じですね(笑)。ただ、グラウンドでは全然違うと思いますよ。グラウンド外ではいつもリラックスしていますが、グラウンドでは違う人格になると思います。
—— オフの時にはどういうことをしているんですか?
映画を見ることが好きですね。あとは、ゴルフを少しやったりしますし、家族や友人と過ごすことが好きです。
—— 家族は?
妹が3人と弟が1人いますが、結婚はまだしていません。妹弟が多いので、家では両親をサポートしつつ、全てが上手くいくように全体を見ている感じです。もしかしたら、そういう部分で落ち着いた印象を与えたのかもしれません。
僕も将来、家族を持った時には、両親が築いたような家庭にしたいと思いますね。もしかしたら、そんなに遠くない将来では、そうなっているかもしれません(笑)。
◆物事をシンプルに
—— 今後についてはどういうイメージを持っていますか?
今のゴールとしては、トップリーグでチャンピオンになることです。あまり先までは考えないようにしていますが、毎週次の試合に向けて集中して取り組んでいて、他の選手も同じ考えで取り組んでいると思います。
—— 1試合1試合でしっかりとパフォーマンスを発揮するために、一番大事なことは何だと思いますか?
やはりそのために、先ほど言った先を見過ぎず、次の試合に集中して取り組むことだと思います。勝ち続けていると先のことを考えがちになってしまいますが、自分を含めた他の選手たちみんなが、次の試合だけに集中して取り組むことが大事だと思います。
例えば、次の試合はコカ・コーラになりますが、その試合ではリザーブからの出場になるので、試合に出たらパフォーマンスを上げるようなエナジーをチームに与えなければいけないと思っています。
—— リラックスした状態から、どのタイミングで試合へのスイッチを切り替えるんですか?
グラウンドのラインを超えたら自然とスイッチが入りますね。
—— 話を聞いていると、考え方がとてもシンプルですよね
考えすぎてしまうと、物事を複雑にしていますと思います。人によってやり方は違うと思いますが、僕の場合は物事をシンプルに考え、それをしっかりと遂行していくことを意識しています。どうしても少しナーバスになる時はあると思いますが、パニックになるようなことはほとんどありません。
—— パニックにならないための秘訣は何だと思いますか?
1週間を通してしっかりとした準備をすることだと思います。しっかりとした準備が出来ていない時に不安を感じたり、パニックになったりするんだと思います。
—— では、日本で一番驚いたことは何ですか?
日本人みんなが礼儀正しいことには驚きましたね。
—— これまでの人生の中で一番嬉しかったことは?
家族といる時に幸せな気持ちになりますし、家族が幸せなら僕も幸せです。
(通訳:吉水奈翁/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]