2016年11月16日
#510 青木 佑輔 『セットプレーを武器として確立できればチャンピオンに近づく』
スクラムリーダーとしてフォワード人を中心にチームを引っ張っている11年目の青木佑輔選手。その青木選手が目指しているセットプレー、そして今シーズンの目標は何でしょうか。好調を維持している青木選手に聞きました。(取材日:2016年10月25日)
◆1人1人のマインドが変わった
—— 今年の春のインタビューで、「サントリーのスクラムはこれだと思えるものを作りたい」と話していましたが、スクラムについての現状は?
春からしっかりと積み重ねて体に染みついてきているので、結果としてしっかりと出ていると思います。マイボールスクラムで押し込んでペナルティーを取れていますし、試合を通して相手のスクラムをコントロールできるようになってきているので、相手にとってはサントリーのスクラムが少しは脅威に感じてきているんじゃないかと思っています。
—— 一番良くなったポイントはどこになりますか?
スクラムに対しての選手1人1人のマインドが変わったと思います。昨シーズンの試合のスクラムを見ると、「押してやろう」という感じではなく、「何とかボールをキープしよう」という感じが伝わってきます。今はそういう感じではなく、マイボールスクラムになったら「ペナルティーを取って、チームに勢いをつけよう」という感じになっています。
あと、スキルの部分でも、今はサントリーのスタイルがあって、誰が入っても同じスタイルでスクラムが組めていますし、みんなが同じ絵を見ていて、それに向けた意見を出し合えているので、それによって成長のスピードも加速していると思います。
例えば、今はテラ(寺田大樹)もスクラムの押しが強くなっていて、1年目と比べて全然違うんです。スクラムを押すにしても、気持ちは必死でも押し方が分からなければ、「なぜ押せないのか」とフラストレーションが溜まると思います。今は押し方も分かっていて必死さもあるので、それが上手い具合に重なって、押しに繋がっていると思います。
—— スクラムの押し方について、マニュアルのような形で言語化されているんでしょうか?
サントリーのスタイルを言語化することは難しくて、それが出来れば更に強くなるかもしれませんね。今は感覚の中で組んでいるんですが、社会人のレベルになれば「組み方がおかしい」という選手は、そもそもいないので、その感覚のパターンというのはそんなに多くないんですよ。
勝つためにはどう組めばいいのかというところから逆算していくと、良いセットアップが必要ということになって、それをやるためにはどうすればいいのかという感じで、ポイントポイントの感覚を合わせていくんです。だから、勝つためにというところから外れた意見を言ったり、行動を取るような選手はいないんですよ。
◆チームとしての粘り強さが上がった
—— その感覚を合わせるためにはコミュニケーションが大切ですよね
これまでよりもスクラムを組んだ回数が明らかに違うので、必然的にコミュニケーションが増えていると思います。あと、先ほどのスクラムの話もそうで、強く組むためのトレーニングとして何が必要かを考え、それを春から積み重ねてきたので、スクラムにスッと入っていけるんです。段階を踏んでスクラムを組んでいったので、効率的な練習が出来ていると思います。
—— 更に強くなる予感はありますか?
今の状態でもまだ70%くらいだと思いますよ。試合の中でもコミュニケーションを取って、組み方を変えたりもしていて、一番良い所を探りながらやっているので、本当に自分たちが「これだ」というものを見つけられたら更に成長が加速すると思いますし、更にパワーを発揮できると思います。
みんなの理解度が高まっているので、僕の感覚としては、試合をすることによって凄く成長できていると思います。練習ではチームメイト同士でしか組めないので、相手がどう組んでくるかが分かっている状態で組むんですよ。それが試合では知らない相手と何回も組めるので、「こういう組み方があるのか」とか「こういうフッカーやプロップの選手がいるのか」と勉強することが出来るんです。
—— ラインアウトやモールはどうですか?
モールはまだ隠しています(笑)。ラインアウトは自分のスローの精度やジャンパーやリフターの精度などにまだ波があるんですが、少しずつ良くなってきていると思います。
—— その他の部分についてはどうですか?
全体的にチームとしての粘り強さが上がったと思います。よりコミュニケーションを取れるようになってチームメイト同士の信頼が大きくなっていて、例えばディフェンスでも厚みが出てきていると思います。言われたことをただやっているだけじゃなく、選手同士で考えて、何が良くて何が悪かったのか、何をポイントとするのかなど、細かな部分まで突っ込んだ話し合いが出来ているので、それが活きているんだと思います。
◆安定感があるベテラン選手
—— 青木選手自身の調子はどうですか?
これだけ多くの試合に出られるシーズンが久しぶりで、暑い中での試合では疲れてしまっていたんですが(笑)、涼しくなってきて上がってきました。僕は11年目になりますが、まだ波があってベテランと言われるほどの選手ではないと思っているので、安定感がある、いわゆるベテランという選手になっていきたいと思っています。
—— まだまだ成長過程という感じでしょうか
まだまだ上がっていくと思っていますし、スクラム、ラインアウトのセットプレーの安定は、今よりも1%でも2%でも上げたいと思っています。それ以上にディフェンスのしつこさであったり、ピンチの時にしっかりと体を張れるように取り組んでいきたいと思っています。
—— 成長している中で、現在のフォワード全体としての課題は何ですか?
試合の中で疲れてくると、あまり考えられないままブレイクダウンに寄ってしまったり、感覚で動いてしまってしまうところがあるので、ただ走り回るんじゃなくて、自分たちのスタイルを1つ1つしっかりと考えて動いていけるようになれれば、もっと効率よく、シンプルに一番良いアタックをするための動きが出来るようになって、更に成長していけるんじゃないかと思います。
—— 青木選手から見て、今シーズンのチームはどう見えていますか?
ここ何年かで一番ハングリーに戦っていると思いますし、これまで全勝で来ている中、まだチームとしても波があるんですが、ダメな時でもしっかりと勉強させて貰っていますし、それを次の試合で活かせていると思います。これから浮き沈みの幅がどんどん小さくなっていって成長が加速していければ、更に良いチームになっていくと思います。
あとは、選手1人1人がもっとチームの為に何が出来るのかということを考えられると思いますし、各々の役割をしっかりと遂行することが出来ればチャンピオンチームに近づけると思っています。
—— 昨シーズンの成績が今シーズンのハングリーさに繋がっていますか?
それはあると思います。みんなが昨シーズン9位だったと自覚していますね。ただ、その中に「9位だったからこうしよう」とか「9位だったからこうしなければいけない」ということはありません。
◆試合に出られなければチャンスがなくなってしまう
—— 今シーズンのトップリーグはリーグ戦のみで順位を決める形式となっていますが、その形式について青木選手の考えはどうですか?
一度試合をしたチームとはもう今シーズンは当たらないわけですし、ノックアウト方式ではありませんが、一度負けたらやり返すチャンスがないので、毎試合1発勝負という感覚があります。僕の性格上、一度試合をして勝ったら、そのまま勝ち逃げしたいと思うので(笑)、今シーズンの形式は個人的には合っているのかもしれないですね。
大げさかもしれませんが、ほとんど試合に出られないシーズンが2年も続いたので、33歳という年齢ですし、試合に出られなければ、もうパナソニックや東芝と本気で試合をするチャンスがなくなってしまうんじゃないかという思いがありますね。
—— リーグ戦が半分過ぎましたが、シーズンの後半に向けてどういうところに注目してもらいたいと思いますか?
まだ結果が出せていないモールで強みを出し、武器として確立できれば、チャンピオンチームに近づけると思っています。
バックスからの信頼があればモールのサインも増えると思いますし、サインが増えれば試合で組む回数も増えるので、スタイルが確立できると思いますし更に伸ばしていけると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]