SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年11月 9日

#509 大島 佐利 『セブンズの悔しさをどれだけ体現できるか』

長期に渡りセブンズ(7人制ラグビー)の日本代表として活躍してきましたが、リオデジャネイロ・オリンピックのメンバーには選ばれず、悔しい思いをした大島佐利選手。その悔しさをバネに、今シーズンはトップリーグへの出場が増えています。大島選手の心境を聞きました。(取材日:2016年10月16日)

◆目の前にやるべきことがあった

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—— 3節以降メンバー入りを続けていて調子が良さそうですね

徐々に良くなってきています。僕の一番の売りは、走り回って色々なところに顔を出すところで、ずっとセブンズをやっていたこともあり、そこで培ったフィットネスは、今の自分の調子を支えている部分だと思っています。

セブンズ日本代表としてリオデジャネイロ・オリンピックの日本代表メンバーに入れなかったことは本当に悔しかったんですが、その中でずっと一緒にやってきたキャプテンの桑水流さん(裕策/コカ・コーラレッドスパークス)や他のみんなが頑張っている姿を見て、「このメンバーと一緒にやれて良かったな」と思いながら見ていました。

—— オリンピック直前でメンバーから外れて、そこからどう気持ちを切り替えたんですか?

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ずっとオリンピックを目指してやってきていたので、メンバーに入れなかった時は本当に悔しく思いました。けれど、敬介さん(沢木監督)から「切り替えが大事だ」と言ってもらいましたし、敬介さんと話をしてサンゴリアスでの目標を明確に掲げることが出来て、目の前のやるべきことに取り組むことで精いっぱいで落ち込む暇もないくらいでした。

チームとしての目標、個人としての目標があって、それに向けて僕が試合に出るためにやらなければいけないことがありました。僕が成長するためには、「試合に出てセブンズの悔しさを晴らすことが必要だ」と言われましたし、いまチャンスをいただいていますが、「試合に出られるかどうかは、その悔しさをどれだけ体現できたかどうかだ」とも言ってもらいました。

現在サンゴリアスで試合のメンバーに選んでもらっていますが、現状に満足することなく、もっともっと上を目指したいと思っています。

—— 第7節NEC戦は前半途中からの出場でしたが、出場する時はどういう心境でしたか?

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常に出場できるよう準備はしています。あの日も試合が始まってすぐにリザーブメンバーで集まって、「今日はいつ出場してもおかしくないゲームになる」と話していたので、試合の流れを見ながら体を準備させると共に、試合に入った時にはどういうプレーをするかということを考えて準備していました。

試合をする毎に課題は見つかるんですが、その中でも持ち味であるワークレートやタックルの部分は出せたと思います。周りとリンクせずにただ走り回っていたのでは意味がないので、よりコミュニケーションを取って、戦況を見ながらプレーしていきたいと思っています。

◆熱くなりながらも周りとしっかりコミュニケーションを取る

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—— もしオリンピックに出場していたら、15人制にフィットするまでにはもっと時間が必要だったと思いますか?

それはないと思います。セブンズのメンバーと、「15人制から7人制に変わる時は、頭も体も切り替えが大変だけど、7人制から15人制に戻る時は、体は大変だけど頭の切り替えはスムーズに出来る」という話をしたことがあります。

15人制から7人制に変わる時は、スペースが広くなることでより味方がどこにいるかを感じていなければ全体的にボールに集まってしまうので、その感覚を掴むことが大変なんです。逆に7人制から15人制に変わる時は、体の大きい人とぶつからなければいけなくなるので、体の切り替えは大変でした。

どちらが楽というわけではないんですが、セブンズで走れるようになっている分、頭の切り替えが間に合っていなくても、より走ることでカバーできる部分もあるんです。

—— 7人制の良さと15人制の良さを、どちらも活かしていくことは可能なんですか?

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難しいとは思いますが、僕としてはそれを求めていきたいと思っています。セブンズで築いたフィットネスの基礎と、スペースを見てアタックするということをやってきたので、そこは15人制にも活かしていきたいと思っています。

—— 試合に出るためにセブンズの悔しさを体現するという話がありましたが、メンタル面以外で成長していると感じる部分はありますか?

昨シーズンまでは僕のプレーは独りよがりなプレーと指摘されていたんですが、そこが少しずつ改善出来ていると思います。性格として熱くなると、目の前のことばかり集中してしまいがちな部分があったと思いますが、熱くなりながらも周りとしっかりコミュニケーションを取ることを意識して取り組んできたことが、少しずつ表れ始めていると思います。

体を当てる部分では熱くなければいけないと思いますが、当たった後にボールを味方に繋ぐという部分はクールでなければいけないと思います。だから、熱くなる時とクールになる時を瞬時に切り替えなければいけないと思います。

そのためには、視野が広くなければいけないと思います。先ほども言いましたが、目の前のことばかりに集中してしまいがちでプレー中に怒られていたんですが、そこでしっかりと話を聞くようにしていたら徐々に良くなってきました。

◆コミュニケーションが普段から出来る

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—— 第7節を終えて、開幕から7連勝中ですが、現在のチーム状況はどうですか?

快勝したり、苦しみながら勝利したりを繰り返していますが、その中でも勝てているということはチームにとってプラスだと思います。現状としては浮き沈みがありますし、試合の中でも浮き沈みがあって、そこは改善するためにチャレンジできる部分だと思うので、まだまだ伸びしろがあると思っています。

その中での課題としては、一貫性を持ってチャレンジできるかどうかだと思います。苦戦している時は試合の入りが悪かったり、先制パンチを食らってからやっとエンジンがかかったりする部分がまだあると思います。

NEC戦でも試合の入りが良くて、前半はサントリーのペースで試合をコントロール出来ていたと思いますが、後半では停滞してしまった時間帯があったので、そういう場面で一貫性を持って続けていかなければいけないと思います。

そのためには、全員がサントリーのラグビーを理解して、1人1人がそのための準備をしっかりとした上で試合に臨み、試合でやり切ることが必要だと思います。

—— リーグ戦も折り返しに来て、終盤には上位チームとの対戦も控えていますが、シーズン終盤に向けてはどういうイメージを持っていますか?

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苦しみながらも右肩上がりで成長してきていると思うので、これから更にその角度を上げられるようにしていきたいと思っています。

今のチームの状況としては、晃征(小野)やヘンディー(ツイヘンドリック)など経験ある選手たちが、選手から発信できるような環境を作ってくれていると思いますし、周りの選手たちもそういう選手たちに負けないように取り組むことが出来ていると思います。

春から選手が考える取り組みを行っていますし、例えばスーパーラグビーの試合を分析して、そのチームとサントリーが試合をする場合は、どういう戦い方をするかを選手同士が話し合うという取り組みを行ってきました。その取り組みによって、そういうコミュニケーションが普段から出来るようになったと思います。

—— 改めて、今シーズンの目標は?

それはしっかりと2冠を取るということです。その中で個人としては、1年間しっかりと戦って、タイトルを取る時にグラウンドに立っていることですね。今はリザーブでの出場が多いですが、リザーブで良いという選手はいないと思いますし、試合に出るからには先発で出たいと思っているので、それに向けてチャレンジし続けたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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