2016年10月 5日
#504 竹下 祥平 『真っ向勝負。相手を突き抜けていく』
“当たる”ことに対する気持ち、そして子供の頃に養われた、“負けず嫌い”を内に秘めた熱い思いとして常に持っている竹下祥平選手。竹下選手を新しい角度から見るインタビューとなりました。(取材日:2016年9月12日)
◆パワーがついて来ている
—— 今シーズンの第3節でのスタメン出場、どうでしたか?
自分の持ち味を少しは出せていたと思いますが、まだまだ課題は多く、成長していかなければいけないと思っています。
—— 開幕戦の西川選手のトライもそうでしたが、竹下選手のトライも小野選手からのキックパスでした
前半からディフェンスの裏が空いていて呼んではいたんですが、キックをするとそれだけボールを手放すリスクがあるので、またボールを奪い返せる可能性がなければ、なかなかキックという選択肢は選ばないですよね。僕がトライをした状況では、アドバンテージが出て、コスさん(小野晃征)に合わせポジションについて、キックに合わせて飛び込んだんです。
あのような状況で、後半の終盤へと入っていく時間帯だったので、ここでトライを取りたいと思っていましたし、絶対にボールを落としたくないという思いで飛び込みました。トライ以外でも、前半にゲインラインを切れた場面もありましたし、ブレイクダウンでしっかりと体を当てることが出来たので、そういう部分では役割は果たせたんじゃないかと思っています。
—— この試合で感じた課題とは?
プレーで言えばペナルティーを犯してしまった部分や、隣の選手とのコミュニケーションを更に高めていかなければいけない部分があったと思っています。あとは、ワークレートの部分も更に上げられたと思っています。
—— 現在の調子は?
調子自体は悪くはないと感じていて、徐々に上がってきています。昨シーズンと比べると、今シーズンは春から俊さん(西原俊一S&Cコーチ)、沼田さん(幹雄S&Cコーチ)と一緒にウエイトに力を入れてやってきて、フィジカルの面で上がっていると実感していますし、それに伴って全体的に良くなってきています。単純にボールを持って相手に当たる時も、タックルをする時も、パワーがついて来ていると感じています。
—— フィジカルを強くしたことで自分のスピードに変化を感じたりしますか?
速くなっている自覚はありませんが、遅くなっているという感覚もないので、良い方向に進んでいると思います。
◆接点を強みにする
—— スタメンでの出場だったことについては、どう考えていますか?
合宿の時から目に見えて相手に当たり勝っている場面が増えてきていて、それをコンスタントに出せるようになってきたことがあると思います。
今は5年目ですが、2年目くらいまではリハビリが多くてベースが本当に低く、特に上半身は弱いと自覚していました。3年目くらいの時に力を入れてベースを上げなければいけないと思いましたし、継続してやってきている中で、徐々にその成果が表れてきているんだと思います。
—— 同じポジションで他の選手が試合に出ている姿を見ていて、どういう思いがありましたか?
僕の中では、同じバックスリーの選手でもタイプが違うと思っていて、ヅル(中靏隆彰)や健太(塚本)はスピードで勝負できる選手で、僕はスピードでは負けるかもしれないですが接点では負けないと思っています。その違いをもっとアピールしていかなければいけないと思っています。
極論を言えば、相手に触れさせずに抜けられれば良いと思いますが、今のラグビーではどうしても接点が増えていますし、僕としては接点が嫌いではないので、それも含めて接点を強みにするスタイルになりました。
—— 社会人を経験して、そういうスタイルになっていったんですか?
いや、もともと接点では負けたくないという感覚がありました。プレーを見ていても分かるかもしれませんが、相手が誰であろうと真っ向勝負が好きで、真っ直ぐ行くんですよ(笑)。良い所でもあり悪い所でもあると思いますが、そこで勝ちたいと思ってプレーしています。
ただ、その中でも体の使い方が分かってきたので、成果を感じているのかもしれません。サントリーに入ってから10kg弱は体重が増えていますし、3年目くらいからトップリーグでの出場も経験して、トップリーグのフィジカルの強さも分かってきたので、その経験から自分の強い部分で当たったり、良いタイミングであったり、100%で当たれるようになってきたと思います。
—— 100%で当たるコツは?
相手との間合いで、当たる瞬間にスピードを上げたり、踏み込むタイミングなどですね。「体重×スピードはパワー」ですので、いかにトップスピードまで持って行って、どう踏み込むかが重要だと思います。
あと、相手に当たりに行くというよりは、相手を突き抜けていくイメージで走っています。ディフェンスの選手の芯の部分に当たってしまうと止められる可能性が高くなるので、当たる直前に少しずらして走るんです。
—— ディフェンスについては?
僕の中では、アタックよりも先にディフェンスを評価してもらえるようになったと思っています。ディフェンスでも真っ向勝負で来る相手にタックルするのが好きです(笑)。それで当たり勝って、相手を向うに倒した時に優越感があるんです。それが自分よりも大きい相手であれば、尚更です(笑)。
—— 自分より大きな相手に対して怖さはないんですか?
今でも怖さを感じることはありますが、どこかでワクワク感がありますね。
—— そのルーツは何だと思いますか?
姉が2人の3人姉弟なんですが、小さい頃はよく力で負かされていたので、そういうところから負けたくないという思いがついていったんだと思います。6歳からラグビーを始めたんですが、そこで培った負けず嫌いがラグビーに繋がっていったんだと思っています。
◆喜びをみんなで分かち合いたい
—— まだ3節を終えた段階ですが、勢いに乗って勝ちを増やして行けそうですか?
チームとしても個人としても、まだ細かなミスがあるので、しっかりと修正していかなければいけないと思っています。まだ勢いに乗っているとは言えない状況ではあるので、そのキッカケを作っていけるよう貢献していきたいと思っています。
—— 現在のチーム状況はどうですか?
良い方向に成長していると思っていますが、試合の開始から自分たちの力を出せるように持っていかなければいけないと思っています。試合のスタートから良いパフォーマンスを出すためには、良い準備をするしかなくて、それは練習の時から笛が鳴ったら100%を出すという習慣を、選手全員が身につけなければいけないと思います。
—— 個人としては、目指す姿と比較して、現在はどのくらいまで成長出来ていると思いますか?
先輩たちを見ていて、いくつになっても成長はしていけると感じています。タケさん(竹本隼太郎)やアオさん(青木佑輔)、シノさん(篠塚公史)、剛さん(有賀)、隆道さん(佐々木/日野自動車)たちを見ていて、毎年成長していっていると感じていますし、そうなるとどこまででも成長していけるんじゃないかと思うようになっています。
そういう思いがあるので、自分の中での完成形を求めるというよりは、自分の中で成長出来得るところまで頑張っていきたいと思っています。
—— 5年目となった今の立ち位置を、自身ではどう考えていますか?
考えていたよりも、低い位置にいると思います。同じポジションの選手との競争に勝たなければ試合には出られませんし、そこでメンバーに選ばれないのであれば、それはまだまだ力不足な部分があるからだと思います。常に試合に出たいという気持ちを持っているので、そのために足りない部分をどんどん伸ばしていかなければいけないと思っています。
—— 今シーズンのターゲットは?
個人としては、やっぱりスタートの15人の中に常に名を連ね続けることです。そのために、怪我をしないためのケア、良い準備をする、そして接点などの僕に求められている部分を、もっともっと上げていきながら、最終的には優勝というチームのターゲットに貢献したいと思っています。
ただ、メンバーに入れなかったとしても、チームの中で仕事はあって、メンバーが良い練習をするためにノンメンバーがしっかりとファイト出来れば、それもチームへの貢献になると思っています。僕の中ではチームに勝って欲しいという思いが強いんです。その中でチームに必要とされれば、一番嬉しいですね。
僕が1年目の時は全勝優勝を果たした時なんです。その時はグラウンドに立てませんでしたが、チームとして勝った喜びがあって、僕らの下の世代は優勝の喜びを味わっていませんし、またあの喜びをみんなで分かち合いたいと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]