2016年9月21日
#502 西川 征克 『スクラムでペナルティーを取り、モールでトライを取る』
開幕戦で決勝トライを挙げた西川征克選手。普段目立たないところで頑張っている成果が出たシーンではないでしょうか。相変わらず謙虚な西川選手に、開幕第1号インタビューを行いました。(取材日:2016年8月30日)
◆しっかりとトライに繋がった
—— 今シーズンのトップリーグが開幕しました。開幕戦を振り返ってみて、どんな試合でしたか?
チームとしても個人としても、汗でボールが滑りやすい状況の中、ハンドリングミスやファンダメンタルの部分のミスが多かったので、そこを修正していかなければいけないと感じました。あと、相手の近鉄が良いプレッシャーをかけてきていたので、それに対して受けてしまったと思います。
—— 逆転トライの時はどんな感じでしたか?
アドバンテージが出ていたので、晃征(小野)の判断でキックを蹴ってくれて、僕自身はそのボールを取るだけでした。100回やって1回取れるかどうかのプレーだったので、上手いことボールが手の中に入ってきてくれました(笑)。
—— 小野選手から蹴るという合図が出ていたんですか?
特に決めていることはなかったんですが、アイコンタクトで蹴るということが分かったので、それに反応しただけです。相手のペナルティーも多かったですし、アドバンテージが出ていたので、準備はしていました。
—— ボールをキャッチした後、一度は倒れましたが、すぐに起きてインゴールに飛び込みましたね
一度は倒れましたがタックルが外れていたので、グラウンドにボールを置かずにそのまま持っていけたということが大きかったと思います。しっかりとトライに繋がったので、良いプレーだったと思います。
—— そのプレーに至るまでの試合を通してのプレーはどうでしたか?
僕が犯したペナルティーでショットを狙われたところもあるので、全体としては防げる反則は絶対になくしていかなければいけないと思いますし、ハンドリングのところであったり、減らせるミスを無くしていかなければいけないと思いましたね。
—— シーズンの初戦ということについては、どういう試合になりましたか?
相手も必死でやってきた中で勝てたということが大きいと思います。
—— 開幕スタメンで出場することには自信がありましたか?
他の同じポジションの選手と競い合ってきたことで、スタメンで試合に出ることが出来たので、試合に出るからにはしっかりと仕事をしなければいけないと思っていました。
◆意識をもって繰り返していく
—— 現在の調子は?
春からトレーニングを積んできて、大きな怪我もありませんし、フルで練習にも参加しているので、良い調子だと思います。今シーズンは“インターナショナル・スタンダード”をチームで掲げている中で、ウエイトの数値も上がっていますし、フィットネスの部分でも良いタイムを出せているので、チームとして掲げていることに対してしっかりと取り組めていると思います。これから大きく伸びることはないかもしれませんが、ひとつずつ少しずつでも良いから伸ばせるところを伸ばしていければと思っています。
—— 今シーズン、自信を持っているところはどこですか?
これまではボールキャリーでしたが、これからはそれ以外のところが絶対に必要になってくると思っています。敬介さん(沢木)が監督になったことによって、メンタルの部分の弱みを改めて認識することが出来たので、その弱みを強みに変えていこうとしているところです。
今は行うこと全てが数値化されていて、出来たか出来なかったのかがハッキリと分かるんです。辛い時でも同じように出来るかどうかという部分は、ラグビーの上手い下手が関係なく、意識すれば出来る部分だと思います。言われてから意識するようになったのでは遅いのかもしれませんが、指摘をされたことによって、常に意識して取り組むようになりました。ただし、意識しなくても出来るようにならなければいけないと思うので、そのためには体に染みつかせていかなければいけないと思っています。
—— 体に染みつかせるためには何が必要だと思いますか?
ただ単に、意識をもって繰り返していくしかないと思います。
—— 辛いことを率先してやるということはラグビーの根底でもありますね
具体的に数値化されるということは、それだけ見られているということです。トップになるためには絶対に必要なことだと思いますし、チーム全体に目標とする数値を超えていくという意識があるので、チームとしても成長していると思います。その数値を超えなければ、その先は見えてこないと思います。
◆15人でどれだけチームとしてまとまれるか
—— 2012-2013シーズンではほとんどの試合に出場していましたが、その後は、メンバーに入ったり入らなかったりを繰り返していましたね
2013-2014シーズンでは怪我をして試合に出られませんでした。その次からは常に試合に出られるように準備はしていましたが、同じポジションには外国人選手もいますし、なかなか出場までにはいけませんでした。
—— 2012-2013シーズンでは何かを掴んだ感覚があったんですか?
そのシーズンは、タケさん(竹本隼太郎)が怪我で試合に出られず、それで僕が出場出来た部分もありましたが、その年に多くの試合に出場することが出来たので、試合に向けた準備を常に心掛けるようになったと思います。
—— 怪我をして試合に出られない時には精神的にはどんな状態でしたか?
ラグビーには怪我がつきものという感覚がありましたし、怪我をしたからと言って、大きく落ち込むことはなかったと思います。同じチームでも他のチームの選手でも、怪我で手術をして試合に出られないという選手を多く見てきていたので、それがたまたま自分だったという感覚でしたね。
—— 西川選手にとってラグビーとはどんなものですか?
コンタクトがあるので格闘技に近い部分もあると思いますが、1対1ではなく15対15で戦いますし、1チームが15人というのは他のどのスポーツよりも多いので、その中でどれだけチームとしてまとまれるかという部分も魅力のひとつだと思っています。
—— 格闘技は好きですか?
小さい頃は相撲をやっていたので、その影響もあると思います。コンタクトが嫌いではないですし、ラグビーに限らず、勝ち負けがつくということが好きなのかもしれません。
◆15人が同じ絵を見る
—— 今シーズンはセットプレーが強化されると共に、フォワードがパワーアップしたと思いますが、どう感じていますか?
開幕戦でその成果を出せた部分もあれば、まだまだ改善しなければいけない部分もありました。スクラムやセットプレーが強化されたので、そこは武器になっていると思います。ラインアウトは、デリバリーまでのところで90%の成功率を目標にしているので、そこに向けて更に精度を上げていかなければいけないと思います。
—— 同じポジションにはジョージ・スミス選手が帰ってきましたね
さっそく開幕戦でジャッカルを披露していましたし、あの状況でボールを奪い返せるのは、相変わらず凄いなと思いました。あれだけボールに絡める選手はほとんどいないと思いますし、練習中からジョージに教えてもらったり、普段接する中で感じるラグビーに対する姿勢などは、本当に参考になります。
—— 開幕戦を終えての課題は何だと思いますか?
どれだけ大きなプレッシャーがあっても、自分たちのスタイルにフォーカスして出来るかどうかが重要だと思います。個人としては、先ほども言いましたが、簡単なミスは絶対に減らさなければいけないと思っていますし、バックローとしては相手にどれだけプレッシャーを掛けられるかが求められていると思うので、ブレイクダウンやその周りでしっかりと仕事量を増やしていかなければいけないと思っています。
—— これからチームとして良くなっていくと感じる部分はどこですか?
チームとしてはスペースを攻めることを意識しているので、15人が同じ絵を見られるという部分が大事になってくると思います。フォワードとしては、今のラグビーではセットプレーがポイントになっているので、もっともっと精度を高くやっていけるようにしたいと思っています。
相手を分析することは大事だと思いますが、相手に合わせたスタイルではなく、自分たちのスタイルを持たなければ勝てないと思います。だから、自分たちにフォーカスを当ててプレーの精度を高めていくことが必要だと思います。
—— チームとして同じ絵を見るということに関しては、現時点ではどの程度まで見えていると思いますか?
まずは大きなプレッシャーがある中で、フィジカルの部分で相手を上回らなければ自分たちがやりたいことが見えてこないんです。だからこそ、フォワードが相手にプレッシャーを掛けていかなければ、バックスが活きてこないと感じています。
—— 今シーズンのサンゴリアスのフォワードについて、ファンの人たちにはどこに注目してもらいたいですか?
これまではスクラムで押されてトライを取られたり、ペナルティーを取られたりしていましたが、それが今シーズンは逆転し、サントリーの強みと思ってもらえるようにしていきたいと思っています。スクラムでペナルティーを取り、ラインアウトからのモールでトライを取る姿をお見せしたいなと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]