SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年9月14日

#501 特別編 『松島幸太朗を語る』-2

1人の選手を本人ではなく周りのメンバーが語って浮き彫りにするというスピリッツ特別編・第3弾は、松島幸太朗選手です。第2弾となる今回は有賀剛選手、小野晃征選手、畠山健介選手が、それぞれの視点から語る後編です。どうぞお楽しみください。(取材日:2016年8月15日&16日)

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『これからの第一人者』
有賀 剛

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ポテンシャルが高くて、生まれ持ったものが違うと思います。あの年齢でワールドカップに出場して、その大舞台でもちゃんとしたパフォーマンスが出来るということは、精神的な面も備わっているなと感じます。

周りから見ていて、マイペースな感じがしますね。自分に何が必要かということも分かっているでしょうし、自分でしっかり考えながら生きてきたと思うので、人に合わせたりするよりかは、自分のペースでやっていく感じですよね。

彼も高校は桐蔭学園で、日本で育ってきた訳ですが、ずっと日本でやっていると、無理に頑張ったり、根性を見せたり、そういうことを求められがちですけど、彼はしっかりと自分の考えを持ってアクションを起こすので、昔の自分なんかと比べても、凄いなと思うところがあります。良い意味でとてもマイペースだなと感じます。

プレーでは流れを変えるプレーも出来ますし、確実にチームへの影響力があって、スタンダードの高いプレーが出来るので、間違いなく今後サンゴリアスの中心になっていく選手だと思います。加えて今後は、プレー外のところでも引っ張っていって欲しいなと期待しています。スーパーラグビーもジャパンでも経験があるのでナレッジも高いし、ラグビーをよく分かっていると思います。よく考えているなと思う発言もしていると思っています。

大学生も含めて、今これからの若い有望株が何人かいると思いますけれど、これからの日本ラグビーの第一人者だと思いますし、中心になって行くのはやっぱり彼じゃないかと思います。

『落ち着いていて強気』
小野 晃征

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すごく落ち着いています。あまり騒ぎすぎないし、かと言ってテンションが低くなる訳ではないし、すごく冷静です。歳はまだ若いけれど、周りを見ながら落ち着いている感じです。どちらかと言うとシャイだし、その中で人をよく見ているかなと思います。とくに明るくも暗くもなく、本当に普通な感じです。性格は優しいですね。

マツも歳上、歳下関係なく、全員と同じように喋ることが出来るキャラクターで、スタッフ、マネジメント、ファン、そしてメディアにもちゃんと喋ることが出来る人だから、みんながアプローチしやすい人かなと思います。自分からはあまりいかないですけれどね。

プレーにおいては国内だけでなく、インターナショナル・スタンダードでも、みんなが持っていないものを持っている選手です。いちばん良いところは、ステップとスピードですね。瞬発力はやっぱりワールドクラスじゃないでしょうか。そのポテンシャルはワールドカップのインターナショナル・レベルでも見せているし、国内で外国人を相手にした時でも通用していると思います。

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持っているものはワールドクラスなので、あと10年、毎年このパフォーマンスを繰り返して出来るかどうかだと思います。しっかりとした体を作り上げ、ケアと、パフォーマンスのバランスを上手く取りながら、常にトップのレベルでやれるかということが、マツのチャレンジかなと思います。

ピッチに立ったら強気で、早くボールをもらって勝負したいというスタンスなので、常に「ボール回して」って言っていますね。グラウンドでは、必要な時はちゃんと喋っています。まだ若いけれど経験もあるし、リーダーシップもあるので、チームとしての必要な選手、鍵になる選手になっていると思います。

キャプテンとかは別かもしれないですけれど、キープレーヤーとして、自分のパフォーマンスだけじゃなく、周りのことも見えて、引き上げる力があると思っています。だからリーダーグループには絶対に必要になってくる選手だと思います。

彼はよくラグビーを知っています。どちらかと言うとセンス系なので、色んな場面を経験して、しっかり自分でどう対応するかを理解している選手ですね。言っていることと、やっていることが、すごく繋がっています。

自分の意見をしっかりと持っている選手で、エディー(ジョーンズ/前日本代表ヘッドコーチ)に言われても自分の意見をしっかり言い返しますし、自分の意見を言って、相手を納得させる力を持っていると思います。

今シーズンはサンゴリアス3年目なので、もうバックスのリーダーの1人だと思いますし、バックスリーを引っ張って、何回もボールにタッチして、チームを前に出して行って欲しいです。

『ヤンチャなやつ』
畠山 健介

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良い意味で悪童です。ヤンチャだし、いわゆる体育会系のラグビー部という枠にとらわれない感じのヤンチャなやつです。高校卒業して南アフリカへ行ったりした経験を踏まえて、枠にとらわれずに色んな人と接しているなと思いますね。

体育会系のラグビー部の良いところと悪いところは一緒だと思うんですけれど、礼儀正しすぎて、グラウンドでもそれを出しちゃうやつがいるんですよね。敬介さん(沢木監督)が最近よく言うんですけれど、"too nice"って。つまり「良すぎる」ってことで、グラウンド外では紳士な態度や行動が必要な部分があると思うんですが、グラウンドに入ったらそういう部分を捨てて、いかに貪欲になれるかとか、いかに相手を倒してやろうと思えるか、思ってプレー出来るかが大切です。

どれだけ自分たちの強みを出そうと思えるかだと思うんですけれど、グラウンド内外で同じ"too nice"だという選手が、サントリーでもそうですし結構若い選手に多いんですよ。マツはそういうことにとらわれずに、グラウンドでしっかりパフォーマンスを出しますし、グラウンド外でも必要以上にかしこまらずに、ふつうに話をします。そこには、持って生まれたものも、育ってきた環境もあると思います。

みんなかわいいい後輩ですけれど、マツは代表でも一緒にやっていましたし、サントリーに入る前に代表で会っているし、早稲田の頃から知っているんですよ。ワセダクラブで中学生の彼が練習している時に、僕が4年生でやっていて、その時教えていたコーチも知っていたという出会いでした。

パフォーマンスや能力は凄くあるんだけれども、問題はやる気だけだな、みたいなことを当時も言われていたので、そういうところは相変わらずな部分はありますけれど、持っているポテンシャルは間違いないと思います。そういう時から知っているし代表でも一緒になって、彼が桐蔭学園で花園に出てそのまま南アフリカへ行ったということも、ニュースで見ていましたので、まったく知らない存在ではなかったですね。そのあと代表で初めて一緒になって、それからサントリーでも代表でもずっと一緒にプレーしています。接している時間が多いですよね。

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ポテンシャルはみんな見ていて間違いないと思っていると思うんですが、モチベーションの部分は彼にしか分からない部分だと思います。それを引き上げてあげるのが、スタッフの仕事なんじゃないかと思います。彼自身が感じなきゃいけない部分もあるでしょうし、そこは彼自身がコントロールする部分なので、僕らは僕らで自分たちのパフォーマンスをして彼としっかりコミュニケーションをとるというのがグラウンド上ですね。

モチベーションに関しては彼だけじゃなく、自分がどうプレーしたいかという部分が鍵だと思います。例えばマツに関して言えば能力が高くて、モチベーションが低くてもある程度のパフォーマンスは出せる。そうじゃない選手が、パフォーマンスが出せないのにモチベーションが低ければ、良いパフォーマンスどころか良いアティチュードも出せる訳がないので、それはそのバランスだと思います。

マツに関してはあまり頑張りすぎてガムシャラにやりすぎると、体に負担がかかり過ぎるというところもあると思います。そこは彼もしっかりバランスをとってやっているでしょうし、僕らがコントロールするところじゃなくて彼がコントロールするところ、トレーナー、監督とかスタッフがコントロールするところだと思います。

彼は大人としても出来る部分があります。そういうふうに振る舞うシチュエーションではしっかり振る舞うし、別にそういう必要がないところでは、普通に子供です。子供っぽいところもいっぱいあります。面倒くさがりっていうのは、あるでしょうね。みんなの前で挨拶するようなオフィシャルな場などは苦手というか、得意な方じゃないと思います。面倒くさがり屋って言うか、恥ずかしがり屋なんですね。

彼は頼もしい存在ですし、一緒にプレーしていたいという気持ちはありますけれど、今後もっと高みでやりたいのであれば、高みに行けばいいし、今はどこの国へ行っても1年中ラグビーが出来るというシステムがあるので、サントリーに留まってそういうことをするのも良し、思い切って挑戦するのも良しで、それも応援します。それだけのポテンシャルと能力を彼は持っています。

悪い意味でなく、チームを引っ張って行こうと自分で思うタイプではないと思うので、まだ若いですし自分のパフォーマンスを出すことに集中させてあげれば良いと思います。その時のジャパンのリーダー、あるいはチームのリーダーがしっかり彼のモチベーションを上げたり、彼を含むチーム全体の士気を高められるようであれば、自然と彼もパフォーマンスを発揮すると思います。火のつけ方でいかようにでもなる存在だと思います。

今シーズンは、なるべくしっかり体をケアして、試合に出てくださいってことですね。ジャパンもあったり、レベルズへ行っていたり、サントリーも敬介さんが監督としてチームに戻って来て、また練習も厳しくなってなかなか大変でしょうけれど、まだ若いですし、しっかり今のうちに経験を積んでおいて、それこそ彼が20代後半ぐらいになってチームの中での存在感を発揮するようになった時に、そういう経験を活かせるように、パフォーマンスは申し分ないと思うので、今のうちからしっかり経験を積んでおいてほしいと思います。

僕がいちばん彼の好きなところは、生意気なところですね。体育会系にいるとどうしても「さん」付けで呼ばれることが多かったり、僕もシニアメンバーみたいな形でミーティングに出る機会が多くなってきたりしていますが、だんだん上の代や同期も減って行く中で、そういう意味での面白さがなくなっています。そんな中で、あぁいう生意気なやつがいると僕はすごく楽しいし、ふざけて「おまえ」とか「おい」とか、歳の差はあるけれども言い合える関係性があって、そういう存在はかなり貴重です。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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