2016年9月 7日
#500 特別編 『松島幸太朗を語る』-1
1人の選手を本人ではなく周りのメンバーが語って浮き彫りにするというスピリッツ特別編・第3弾は、松島幸太朗選手です。2週に渡ってお届けしますが、第1弾の今回は松島選手を、石原慎太郎選手、中靏隆彰選手、中村亮土選手、村田大志選手が、それぞれの視点から語ります。2週に渡りお届けいたしますので、どうぞお楽しみください。(取材日:2016年8月15日&16日)
『かわいいやつ』
石原 慎太郎
ひとことで言って「シャイボーイ」ですよ、「ザ・シャイ」。「これがシャイって言うんだな」っていう感じです。幸太朗は初め僕らと同じくサントリーの中野島寮に入ったんです。僕らより半年遅れて入ってきたということもあるかもしれませんが、中野島寮にいる時は、本当に会話は一切していないんです。会話した覚えがないんですよね(笑)。
あいつ自身もちょっと壁をつくるというところがあるんですが、この話をすると「いや、自分が途中から入ってきて、壁をつくる訳ないじゃないか。もし壁があったとしても、それを越えて溶け込ませようとしてくれる役目は、おまえたちにあるんじゃないか?立ち位置がおかしいんじゃないの?」と言い合いになるんです(笑)。
初めの頃は話した記憶がなくて、だんだん肩に軽くポーンといたずらをしてくるようなボディ・コミュニケーションから始まって、ご飯を一緒に食べに行くようになりました。それが頻繁になるに連れて、今では暇さえあれば一緒に居るような感じですし、メールも「今日晩飯は?」とか、奥さんから来るような文面で送られてきます(笑)。
ちょっと馴染むまでに時間がありましたけれど、最初の壁さえ乗り越えたら、もう誰とでも仲良くなるし、今は「シャイ」と思っているやつはいないと思いますが、初めての人はそこを感じていると思いますよ。それが馴染んだら「寂しがり屋」だと感じると思います(笑)。なんか怒られそうだな(笑)。
幸太朗は寂しいんですよ。自分で言葉には出さないですけれど、「行こうよ」「一緒にじゃあ行こう」みたいな、そういう感じの言葉ばっかり掛けてきます。歳が3つ違う分、それもまぁ「可愛いな」「若いな」と思いながら一緒にいます。最初のワンクッションさえ越えたら人懐っこくて、誰とでも仲良くしますね。どっちかというと、そこさえ越えたら僕らが行けないようなベテラン勢にもグイグイ行きます。
面白いやつです。プライベートでは寂しがり屋で、どちらかというと人に付いて行く感じですけれど、ラグビーの部分ではブレないものを持っているので、ラグビーの話をすると楽しいですよ。高校卒業してからプロでやってきているからなのか、自分の中のブレない部分、芯が出来上がっていて、違うと思ったら話していても「それは違う」と指摘してきます。
ベテラン勢の方たちが言っている意見に対しても、自分の意見をちゃんと持っているので、そこはプライベートとまったく違うところで、スイッチが入るところだなと思います。グラウンドの中ではめっちゃ声を出していますし、印象が変わります。たまに練習終わりにお茶を飲みに行って、そういう話になった時には、結構、熱く話したりします。
プライベートでも最初の壁さえ越えたら、人と付き合うのは上手いと思います。それは若手もみんな感じている部分だと思います。あいつの軸は、優しさで出来上がっています。見た目のツンツン感はありますけれど、メチャ明るいですし、最初は喋らないのかと思っていましたけれど、今ではうるさいぐらい言ってきます。
それが最初からではなくて、一山越えた人に対して見せる姿ですね。「あ、こいつ行けるわ」と思ったやつには、スイッチ入って、いや逆に警戒心のスイッチが切れてるのかな。そういう極端なところがあります。シャイなのも良いところかなと思いますし、根本良いやつなんですけれど、毎回ご飯に行く度に「じゃあ迎えに来てね」って言ってきます。かわいいやつです。ちょこちょこカワイイって感じです。
『状況を打開する無敵な選手』
中靏 隆彰
本当に身体能力が高くて、何でも高いレベルで出来て、個人的には「こういう選手になりたいなぁ」と思う選手です。13番でプレーすることが多いと思いますが、僕は幸太朗をウイングとして見ています。いずれにせよ本当に頼もしい選手です。
相手のディフェンスがたくさんいても、強さや一瞬の加速でラインブレイクが出来て、状況を打開する無敵なイメージの選手ですね。気持ちの起伏がなくて、試合になると自分がやることをやるだけ、というタイプです。たぶんチームのみんなも、「ボールを渡せば何とかしてくれるんじゃないか」と思っていると思います。バックスの中で一番信頼感がある選手なのではないでしょうか。
普段は寂しがり屋です。ネガティブな方にではなく、練習後とかに何人かでお茶を飲みに行ったりしますが、幸太朗は独り暮らしをしていて、「今度、お前ん家でワイワイやろうや」と言うと、「いやだ」という答えが返ってきます。「なんで?」と聞いたら、「盛り上がって皆が帰った後が、寂しくなるから」って(笑)。明るいし、よくイタズラとかも出してきます。
チームメイトとしては一緒に優勝したいですし、社員選手である僕らもあのレベルまで行かないと、なかなか優勝というのは厳しいと思います。本当にプロフェッショナルな選手で、ラグビーで道を切り拓いていっている選手だなぁと感じています。海外の話とかも聞くことが出来て、歳も近いので、とても刺激になっています。
『勝負どころが分かっている』
中村 亮土
かわいいですね。寂しがり屋で、オフとかになるとあまり一人でいたくないんじゃないかなと思います。かわいくてわがまま、みたいなところがあるし、弟みないな感じがしますね。愛されキャラで、憎めないかわいさがあります。
普段はちゃんと相手のことを考えながら話し、自分の考え方の軸も持っていると思います。何も考えていないように見えて、意外と自分のキャリアとか、チームのこととかもしっかり考えているんだなというのを、凄く感じる時があります。
最初は人見知りで取っつきにくい感じはありましたけれど、でもチームメイトになってみたら、その真逆で喋りやすいし、同じ世代ですし、ポジションも近くて両センターとして一緒にプレーしたりするので、気軽に話せる選手です。
プレーでは、スピードとしなやかさが良いところだと思います。しなやかさというのはバネの部分で、そこに関しては生まれ持ったものだと思います。ラグビーの知識も高いし、ここっていう時に、タックルしてくれたり一人で点を取り切ってくれたり、勝負どころが分かっているなという気がします。そして勝負強いと思います。
何よりハートが強いと思います。海外にも行っていて、ワールドカップにも出て、色んなことを経験して、そういう経験値をもとにした勝負強さがあると思います。そして常に余裕を持っている感じがします。慌てないし、焦らないし、常にどしっと構えている感じはありますね。彼自身いろんなものを経験して、自信があると思いますし、その中で自分の強みを分かっているので、そこを出している感じがあります。
世界へ行ってもトッププレーヤーとしてやっていけるような人材だと思うので、僕も今こうやって一緒にやれている中で、色んなものを学んで共にやっていきたいなという気持ちがあります。彼自身、日本の中に留まるようなプレーヤーじゃないので、そこも僕は楽しみにしながら、応援していますし、一緒に高いレベルの中で、同じグラウンドに立てるように頑張りたいと思っています。
彼にとって今チームの中では大半が歳上だと思うんですけれど、みんな幸太朗のことをかわいいがっている感じがあります。分からないですけれど、次に下が入ってきた時にその面倒を見るという感じではないですね(笑)。
『何にも縛られていない』
村田 大志
何にも縛られていない感じ、自由なイメージがあります。規律がないという意味ではなくて、完全にプライベートとラグビーを分けている感じがしますし、常に自分のペースで、自分の心地良い時間を作っているイメージがあります。オンとオフの切り替えが上手いなと思いますし、それがしっかりパフォーマンスにも出ているので、良いことだと思います。
相手によって結構変わると思いますけれど、同じぐらいの歳だったり話しやすい人といる時は、良い意味で若いと言うか、結構ワイワイやっていますし、一方で真剣な話をしている時には真剣です。そこにもメリハリがある感じがします。
プレーは凄いですよね。もともと持っている身体能力も凄いですけれど、それに加えてハードワーク出来るところもあるし、ブレイクダウンだったりタックルだったり、人が嫌がる仕事も率先して出来るし、なかなかいないタイプだと思っています。経験を積んで、まだまだ成長するんじゃないでしょうか。
ラグビー観については話したことがないので分かりませんが、しっかり将来のことを考えて、インターナショナルな選手になっていくと思います。今は自分のプレーを成長させることに集中していると思いますけれど、まだそれはそれで良くて、もう少し経ったら、チーム全体に発信していくような役割を担っていってくれると、チームとしても助かると思いますし、マツとしてももっと成長出来るのではないかと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]