SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年8月24日

#498 ジョージ スミス 『必要な場所に行くための近道が分かる』

サンゴリアス在籍時代にトップリーグで2年連続MVPに輝いたジョージ・スミス選手が再びサンゴリアスに帰ってきました。チームを離れていた2年間で、更なる進化を遂げたスミス選手は、トップリーグに向けて何を考え、どこを目指しているのでしょうか。落ち着きのある、自信と笑顔にあふれたインタビューとなりました。(取材日:2016年7月20日)

◆サントリーはトップのチームに戻らなければいけない

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—— 久しぶりの日本ですね

2年前にサントリーを離れる時には快く送り出してもらい、それからイングランドで色々な人に出会い、良い経験をさせてもらいました。以前もサントリーではベストのラグビーが出来ていましたし、またこういう機会をいただくことが出来たので、挑戦してみようと思い戻ってきました。スムーズにサントリーに戻ってくることが出来ましたし、これからサントリーでプレーすることをとても楽しみにしています。

—— 以前にサンゴリアスにいた時と比べて、どういう部分が成長していると思いますか?

まだサントリーに合流して間もないですし、2年間離れていたので、どこが成長しているかは分かりませんが、これからどれだけ成長出来るかという部分が楽しみですし、時間が経てば他のメンバーにも更に色々なことが伝えられると思っています。トップリーグが開幕する頃には成長した姿を見せられると思います。

サントリーに帰ってきた時に感じたことは、全員にやる気がみなぎっていて、私のことを快く迎えてくれましたし、色々な選手がいてダイナミックな良いチームが出来上がっていると感じました。そういうチームを作り上げている敬介さん(沢木監督)の下でプレーすることにとてもワクワクしています。チームの雰囲気については、私がいた時のチームと比較をしているのではなく、今のチームに合流してみて感じていることです。

—— 離れている間もサンゴリアスのことは気になっていましたか?

選手の入れ替わりがあることも、私がいた時とは違う練習をしているということなども聞いていましたが、一緒にプレーした選手がたくさんいますし、チームに溶け込みやすかったですね。

—— スミス選手がチームを離れている間のサンゴリアスの成績については、どう感じていますか?

その時のチームを見ていた訳ではないので、私がその時のサントリーについて話をすることはあまり相応しくはないと思いますが、いま分かっていることは、サントリーはトップのチームに戻らなければいけないということです。その中で私が出来ることは、自分のパフォーマンスをしっかりと出して、チームをアシストしていくということです。そして、私の経験をチームにしっかりと伝えるという役目があると思っています。

◆プレシーズンが嫌い(笑)

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—— イングランドでは選手協会の年間最優秀選手賞に輝きましたね

イングランドでの生活もとても楽しかったです。サントリーにいた時とは違う準備であったり、違うプレーの質を求められていましたし、イングランドのチームには色々な国の選手が所属していて、色々な経験が入り混じっていましたね。ゲームに関しては、セットピースなどのフィジカルの部分を重要視していました。

プレミアシップが成功している要因としては、色々な国の才能ある選手たちがたくさんプレーするようになっていて、レベル自体が高くなってきているからだと思います。あと、チームによって取り組むことのレベルが全く違っていたので、そういう部分も良い経験になったと思います。

—— イングランドのラグビーはスミス選手に合っていたんじゃないですか?

イングランドでプレーする自分と日本でプレーする自分は違うんです。日本ではボールキャリアーになることが多いんですが、イングランドではパスをすることが多くなります。イングランドの中では体が小さい方になるので、日本と同じスタイルでプレーすると効率が悪くなってしまいます。それぞれの国のリーグによって、選手の体の作りが違うので、自分のスタイルも変えていかなければいけないんです。

—— 準備の部分ではどう違ったんですか?

日本では強度の高いランニングを求められますが、イングランドでは試合数も多く、それに応じて多くの練習をしなければいけませんでした。それに日本の試合はボールが動く時間が多いんですが、イングランドではボールが止まる時間が多いんです。ボールが止まるということはセットピースが多いということで、日本とは試合の展開が違うので、それに応じたトレーニングが必要になります。

—— 2016-2017シーズン終了後には、レッズの一員としてスーパーラグビーにも復帰しますね

レッズでスーパーラグビーを戦いますが、現時点ではまだそこにフォーカスはしていません。まずはサントリーでのシーズンのことに集中しています。これまでもサントリーとスタッド・フランセ、サントリーとブランビーズというように、行ったり来たりの生活をしていたので、そういう環境には慣れています。

なぜそういう生活をするかというと、プレシーズンが嫌いなんです(笑)。私としては、トレーニングだけをするよりもゲームでプレーしたいんです。

◆より速く、より強く、より大きく、より上手く

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—— 今年で36歳になりましたが、年齢を感じさせませんね

歳を取ることは事実なので、それを隠す必要はないと思っていますし、自分自身がどういうところで自信を持てるかというと、そのシーズンの最後の試合をどうやって終えたかということです。ワスプスでプレーし、年間最優秀選手を獲得したということは、自分にはまだそういう賞を獲得できるだけの力があるという大きな自信になっています。歳は取っていますが、まだまだ自分のベストで競え合えるポジションにいると思っています。

—— 改めて、ラグビーの魅力とは?

違うチームに行くことによって、違うスタイルでプレーできるところかもしれません。もちろん相手も違うスタイルのチームと対戦することになります。もう17年くらいラグビーをプレーしていますが、その間にもラグビーのスタイルは大きく変わってきていて、より速く、より強く、より大きく、より上手くなってきているので、そういうところが魅力だと思います。

—— 今シーズン、サンゴリアスで取り組みたいことは何ですか?

もちろんゴールはタイトルを獲ることです。サントリーは競争が激しいチームですし、ゴールに向けて妥協しないチームなので、必ず勝利したいと思います。そのためには多くの準備が必要で、その中で私はゲームに向けて、素晴らしい選手たちが素晴らしい準備をするためのツールを与えていかなければいけないと思っています。

—— 今シーズンはスミス選手の他にも多くの外国人選手がサンゴリアスに加わりました

他の外国人選手たちとはこれまで一緒にプレーをしたことはありませんが、日本でプレーすることへの意欲が高くて感心しています。

日本人選手について言えば、ハタケ(畠山)などのリーダーシップは素晴らしいと思います。他の選手からもリスペクトされていますし、ラグビーの知識も高くて、自分の経験を他の選手たちに伝えているという取り組みも素晴らしいと思っています。

◆常にボールの内側を走っています

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—— スピリッツ・オブ・サンゴリアスの特別編として、「ジョージ・スミスを語る」というテーマで色々な選手にスミス選手のことを語ってもらいました。その話を聞いていると大きな特徴として、必要な場所で必要なプレーをしていて、それは基本的なプレーですが、なかなか出来ないプレーという話がありました

私は足が速い訳ではないんですが、必要な場所に行くための近道が分かるからだと思います。それは他の選手よりもラグビーのことをよく知っているということが影響していると思います。世界的にも素晴らしい7番と言われている選手たちは、常にボールの内側を走っています。必ずボールを追いかけているんですが、常に前と外側を見ています。その時にはボールが進む方向のグラウンドはカットしてしまい、少しずつグラウンドを小さくしていくイメージを持ってプレーしています。

—— そういうイメージは最初から持っていたんですか?

もちろん最初からは出来ませんでした。経験を積むことによって理解していきましたし、試合の中で何かを学んだり、出来なかったことを少しずつ改善していかなければ、自分自身の成長に繋がっていかないと思います。

—— もうひとつ、オンとオフの切り替えが上手いという話も出ました

私が育った地域では、グラウンドでは凄くハードに取り組み、グラウンドを離れたら楽しくお酒を飲むということが一般的でした(笑)。若い頃からチームメイトと一緒になって楽しむという環境で育ってきていて、「そういう環境で育ったシニアと若いメンバーが混ざり合うことは、良いことだ」とエディー(ジョーンズ/イングランド代表監督)も言っていましたね。

私が若い頃にはSNSというものはありませんでしたし、周りの雑音で気が散るということもなく、選手との繋がりの方が強かったので、そういう環境が私には合っているんだと思います。現在では私もSNSなどを使ってコミュニケーションを取るということもありますが、チームメイトと一緒になって楽しむという方が好きですね。

—— お酒は何が好きですか?

もちろん「ザ・プレミアム・モルツ」です(笑)。最近はハイボールもよく飲みますね。もしオーストラリアで私がビールを売る側であれば、サントリーのビールをたくさん売ることが出来ると思います(笑)。

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(通訳:吉水奈翁/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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