SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年8月10日

#496 特別対談 ~競技を超えて~ ビーチバレーボール選手 藤井桜子×江見翔太『2019年、2020年、何が何でも出場』

サンゴリアスに縁のある他競技のトップアスリートたちは、ラグビーというスポーツをどう思っているのでしょうか。そしてサンゴリアスの選手たちは、他の競技から何かを感じ取ることがあるのでしょうか。競技を超えて、トップアスリート同志がスポーツの魅力を語り合う対談をお届けします。(取材日:2016年7月12日)

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【藤井 桜子(ふじい さくらこ)プロフィール】
1990年10月15日生まれ。東京都出身。ビーチバレーボール選手。竹本隼太郎選手の義理の妹。
日本体育大学時代にインドアからビーチバレーボールに転向し、2013年度から本格的に国内ツアー大会に参戦。同年11月には日本バレーボール協会の「JVAビーチバレーボール強化指定選手」に選出される。現在、ベテランの田中姿子選手とペアを組み国内ツアーに参戦し、2016年7月1日~3日に行われた第4戦では準優勝。

◆冷静にプレーするところが凄い

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—— 藤井選手はサンゴリアスの試合をよく観戦されていますが、サンゴリアスにはどういう印象を持っていますか?

藤井桜子(以下藤井):クラブハウスに入るといつもファミリー感があり、チームとしての温かさを感じています。ビーチバレーは2人で戦うスポーツで個人競技に近い部分があるので、よりチームスポーツという部分を感じます。

江見:ラグビーはグラウンドに出ている15人だけではなく、リザーブのメンバー、ノンメンバー、スタッフも含めてひとつのチームでなければいけないと思っています。

—— 江見選手はビーチバレーに対してどういう印象がありますか?

江見:あまりビーチバレーの知識がない中での印象となってしまいますが、2人で戦うので、コミュニケーションや連携が大事になると思います。ビーチバレーのペアはずっと固定して戦っていくんですか?

藤井:オリンピックに出場するような海外のトップ選手たちは、何年もペアを変えずに戦っていますが、日本ではシーズンの途中でもペアが変わってしまうことがあるのが現状です。

—— サンゴリアスというチームに対しては、どんな印象を持っていますか?

藤井:義理の兄である竹本隼太郎さんから色々と話を聞いているんですが、若い選手からベテラン選手までいる中で、今シーズンからは2年目の流選手がキャプテンになって、若い選手が中心となりチームを引っ張りつつベテラン選手が上手い具合でサポートしているので、役割がしっかりとしていて良いバランスのチームだと思います。

—— ラグビーのプレーについては?

藤井:まずビーチバレーは相手と接触することがないので、ラグビーはあれだけ激しくぶつかったり、間近で相手とにらみ合ったりしている中でも、冷静にプレーするところが凄いと思います。

江見:目で相手を動かすということもありますし、特にスタンドオフがどこを見ているのかということは気にしながらプレーしています。本当に一瞬なんですが、視線とは違う方向にパスをしたり、ステップを切ったりすることもあるので、相手との駆け引きがあります。

◆最初の3歩が大事

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—— ビーチバレーは走るというイメージがあまりありませんが、練習などでは走ったりしているんですか?

藤井:今はシーズン中なので長い距離を走るトレーニングなどはしていませんが、ビーチバレーは8m×8mのコートの中を動き回るので、最初の3歩を意識したトレーニングなどを行っています。反応してから如何に最短でボールの位置までいけるかということが重要になります。

江見:僕らもアタックでもディフェンスでも"最初の3歩が大事"と意識してトレーニングをしています。砂の上と芝生の上という違いはありますが、タイミングを見極められるか、相手の動きを予測しながら動けるかという部分は共通すると思います。

藤井:ビーチバレーでディフェンスをする時には、相手のアタックが強打なのか、違う打ち方をしてくるのかという部分を考えて構えています。強打ばかりを意識してしまうと体に力が入り過ぎてしまい、意表をついて手前にふわりと落とされた時などに反応できなくなってしまいますので、ボールの動きと相手をよく見て、如何に反応を速くするかということと、反応してからの3歩に気を付けています。

—— インドアのバレーボールと比較すると、その最初の3歩がより重要になるんですか?

藤井:インドアと同じサイズのコートを2人だけで守るので、大事になると思います。

—— 藤井選手は江見選手のプレーを見ていて、どう感じていますか?

藤井:バックスの選手なので、遠くから見ている時にはもっと小柄かと思っていたんですが、実際には体も大きくて、あれだけ速く走れるので凄いと思います。

江見:体重が軽いと相手に当たり負けてしまうので、自分の体をコントロール出来て、その上で相手に当たっても負けない体にしなければいけません。脂肪で体重を増やしても意味がないので、そのバランスが大事になります。

藤井:ビーチバレーでも骨格がしっかりしている選手は強いですね。背は高いけれど細い選手は、砂の上では体力が持たなくなってしまいます。私はシーズン中には体重が落ちてしまうタイプなので、維持するためにしっかりと食事を摂り、ウエイトトレーニングなども行っています。

—— 藤井選手はどういうプレーを得意としていますか?

藤井:サーブ、レシーブ、強打アタックを得意にしていますが、どれかに絞るとしたらサーブですね。サーブでは相手の構えているところに打ってしまうと、相手に良い攻撃をさせてしまうので、ラインのギリギリを狙って相手を動かして態勢を崩して、良い攻撃に繋げさせないようにしなければいけません。あと、ビーチバレーは屋外で行うので、風の影響を受ける中で相手のコートに正確に打たなければいけないんです。先ほど視線という話が出ましたが、ビーチバレーでも視線とは違うところに打てる選手は強い選手だと思います。

江見:砂の上で2人だけというもの大変ですね。ルールはインドアのバレーと一緒なんですか?

藤井:ラリーポイント制という得点のルールは一緒なんですが、風の影響があるので、合計7点毎にコートスイッチ(対戦相手とのコートの入れ替え)があります。あと細かいルールを言えば、アタックの際にフェイントショットを打ってはいけないんです。相手コートの手前などに落とす時には、指を曲げて手を豚の足のような形にしたポーキーショットという打ち方をしなければいけないんです。ぜひ今度ビーチバレーを見に来てください。

江見:そういう打ち方があることを初めて知りました。今度見に行きたいですね。

◆自分のやるべきことをやる

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—— ラグビーは自己犠牲の精神がありますが、ビーチバレーではどうですか?

藤井:自己犠牲という部分はあまり強くないと思いますし、我が強い選手が多いと思いますが、2人のコミュニケーションが大事なので、我が強いだけでは勝てないスポーツです。今はベテランの選手とペアを組ませてもらっているので、私から何かを要求するということはありませんが、自分の役割をしっかりと果たしていれば、どちらかがミスをして得点を取られたとしてもギクシャクするということはないと思います。

江見:ビーチバレーの場合は2人しかいないので、どちらのミスかということがはっきりしてしまうんじゃないかと思うんですが、ミスをした時にはどういうことを考えるんですか?

藤井:ミスなどから連続失点が続いてしまっても、やることを変えてはいけないと思いますし、自分がやるべき基本的なことに立ち戻るようにしています。色々なことを考え始めるとやるべきことが分からなくなってしまうので、ミスをしたとしてもシンプルに考え、やるべきことをやり通すようにしています。

江見:ラグビーもグラウンドの15人それぞれに役割がありますし、ミスをしてもプレーは続いていくので、次のやるべきことを考え、15人が連動して動けるようにしなければいけません。自分のやるべきことをやるということは通じる部分だと思います。

藤井:ラグビーでも我が強いという部分はあるんですか?

江見:ある程度は我の強さも必要だと思います。相手に勝ちたいという気持ちがなければいけませんし、自分がトライしたいんだという気持ちがあるからこそゲインラインが切れたりすると思います。ただ、その中でこれ以上は行ってはいけないというボーダーラインを設けなければいけなくて、そのギリギリを攻めて、次の選手に繋いでいくことが必要だと思います。最初から「あいつのために」という気持ちを前面に出すのではなくて、まずは「これ以上やったらチームのためにならない」というギリギリまで自分が頑張った上で、「あいつのために」という気持ちを持たなければいけないと思っています。

藤井:私の場合は、コミュニケーションを取る相手が1人しかいないので、2人の連携を高めていけばいいんですが、ラグビーではグラウンド上に自分以外に14人の選手がいますし、チームには更に多くの選手がいるので、普段のコミュニケーションを密にしていかなければ、試合で良いパフォーマンスは出せないですよね。

江見:ディフェンスでも隣の選手が毎回決まった選手になるわけではないですし、選手によって特徴が違うので、この選手が隣の時にはこういう動き方をした方が良いということがあります。全員がそういうことを考えて動けるようになれば、より強いチームになっていけると思っています。ビーチバレーでは、2人だからこそコミュニケーションが難しいことなどはありますか?

藤井:これまで色々な選手とペアを組みましたが、2人しかいないので合う合わないということは言っていられない状況になります。だから、基本的にはビジネスパートナーとしてお互いがスタートしなければいけません。やはり人間同士なので、合う部分と合わない部分はどうしても出てきますが、そういう部分も含めて認め合える関係性を築かなければやっていけないと思います。そこが築けない選手は、どんなに力を持っていても勝てないと思っています。

◆日本代表、スーパーラグビーで戦う仲間に入りたい

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—— トップのカテゴリーでプレーするようになって、比較的早いタイミングで、江見選手は最多トライゲッターやベストフィフティーンに選ばれたり、藤井選手は日本代表としてアジア大会を戦ったりしましたね

藤井:私はトライアウトで日本代表に選ばれて、2014年のアジア大会では準々決勝で負けてしまい、あまり良い成績を残すことは出来ませんでしたが、まだ始めたばかりの時期にチャンスをいただくことが出来たので、その経験は今の自分の大きな力になっていると思います。それ以降は日本代表を外れてしまい、昨年は思うような結果を残すことが出来ず、悔しい思いもしました。

今年はベテラン選手とペアを組むことによって、自分の中で変わろうという意識が強くなってきていて、徐々に成績を残せるようになってきていると思っています。7月の大会では準優勝でしたが、決勝の相手は日本代表チームでしたし、1年以上ペアを続けているチームなので、チーム力の差が出たと思います。チーム力を高めていければ、優勝するチャンスはあると思っています。

江見:正直、昨シーズンはトップリーグ直前にワールドカップがあり代表選手がチームを離れている時期が長かったですし、試合数自体も少なかったので、本当の意味での最多トライゲッター、ベストフィフティーンではなかったと思っています。それに僕の中では目指すべきところはそこではなくて、やはり日本代表に選ばれたいと思っていますし、スーパーラグビーで戦う仲間に入りたいという思いもあるので、そこを目指すことによって、個人的な賞がついてくると思っています。2019年には日本でワールドカップがあるので、選手としてはやはり出場したいですね。

藤井:2020年には東京オリンピックがあって、私は今年26歳になる年なんですが、女子のビーチバレーでオリンピックに出場する選手の平均が30歳なんです。ちょうど2020年は30歳になる年ですし、はっきりとした目標となっているので、「何が何でも出場してやる」という気持ちでいます。

—— お互いにメッセージをお願いします

江見:ビーチバレーを見に行きたいと思っていますし、見に行った時には会場で一番の応援をしたいと思います(笑)。

藤井:もともとラグビーが好きですし、私の家族もサンゴリアスの大ファンなので、トライを期待して応援します。頑張ってください。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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