SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年8月 3日

#495 『流大を語る』

今回のスピリッツ・オブ・サンゴリアスは、1人の選手を本人ではなく周りのメンバーが語って浮き彫りにするという特別編です。スピリッツ・オブ・サンゴリアスの新しい試みとしてトライしてみました。新キャプテン流選手を、森川由起乙選手、小澤直輝選手、中村亮土選手、小野晃征選手、芦田一顕選手、そして竹本隼太郎選手が語ります。どうぞお楽しみください。(取材日:2016年7月5日)

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『絶対にぶれない』
森川 由起乙 (帝京大学から同期)

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大学時代もキャプテンという名の通り、誰よりも先頭に立つ男でした。周りを使うことも上手いですし、自分自身がチーム内で誰よりもまず全力でやる、誠実かつ堅実。大学では2、3、4年とレギュラーでプレーしていました。

そしてオンとオフの使い分けが上手かったですね。ラグビーの時のオンと、私生活の時のオフがぜんぜん違いました。オフの時は学生として楽しんで遊んだり、普通の学生と変わりませんが、オンになった時は違います。普通の人だったら「これぐらいでいいかな」と思いがちなところを、ラグビーに関してはグラウンド内外、そして学校内にいる時でも、「これぐらいでいいかな」と自分で決めつけません。そこが凄かったですね。

また流は目先のことだけで判断しないので、「これが何かに繋がる」というのを考えながら動いているんだと思います。だから、本人にとっては「普通」にしていることが、僕からしたら「凄い」と。あと、後輩に対してのアプローチで、彼らに余裕がないのを分かっていて、話しかけたり、気を遣って状況を聞いてあげたりとかしていましたね。

とにかく自分が思ったことに対してブレません。芯はめちゃくちゃ強いと思います。決めたことに対して、誰が何を言っても、絶対にぶれないです。「やる」となった時には、自分でその前に煮詰めて来て、しっかり自分の考えを持ってチームに言って、それを達成するまでは、ブレません。

2年目にキャプテンになって、流の姿を見ていると、1年目とはかなり変わったと思います。どんどんやらないと流らしいプレーも出ないですし、1年目の時は日本代表メンバーが帰ってきた後、同じスクラムハーフのプレーを見ながら、試行錯誤をしてきたんだと思います。

1年目の試行錯誤があったからこそ、今年伸び伸びやっていて、流のスタイルがだいぶ確立されてきつつあるように見えますし、一緒にやっていてもそう感じるところがあります。同期としても、やっぱり「凄い」と思わされるところがあるのが流です。それが「どこが」ということではなく、流と一緒にいることでの関係の積み重ねで、自然と「凄いなぁ」と感じます。

キャプテンになってもチームの責任を背負い過ぎず、かつ自分も試合に出ることが大事だと思います。それでどれだけのパフォーマンスを出せるかで流の色が出ますし、その流がキャプテンをしているサンゴリアスのカラーというのも出てくると思っています。

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『分からないことはすぐに聞く』
小澤 直輝 (会社の部署が一緒)

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職場が一緒ですが、職場での流は分からないことがあればすぐに色々な人に聞くタイプです。甘え上手という訳ではないですが、その分からないことを聞く姿勢は、とても良いと思います。ラグビーをやっている姿とは違いますし、とにかく真面目なので、仕事面でも成長していると思います。

ラグビー面では1年目と比較すると、より「チームを引っ張ろう」という姿勢が強くなったと思いますし、2年目で大変だとは思いますが、ユタカはそういうことが出来るタイプだと思います。それを周りがサポートして行く必要もあると思います。

キャプテンに向いていると思います。自分に厳しい。キツい時にどういう判断が出来るか、というところが向いているかどうかの分かれ目だと思いますが、そういう時にもしっかり動いて、自分のやるべき仕事をしっかりとやっています。

選手としてのいちばんの良さは、裏のスペースをよく見ていることだと思います。キャプテンとしては、若さがすごく良いと思います。フレッシュな感じが良いですね。

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『よく周りが見えている』
中村 亮土 (帝京大学時代に1年先輩のキャプテン)

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人間としては、年上とも年下ともつき合いが上手いですし、人としてのつき合いも上手く、それは彼自身の誠実さや、しっかりしているところが影響していると思います。そして、責任感の強さから人がついていくという部分も関係していると思います。プレーヤーとしても、よく周りが見えているというところが、彼自身の持ち味だと思います。

もちろん生まれ育った環境も影響していると思いますが、色々な壁に彼自身もぶち当たってきたと思いますし、帝京大学の頃から見てきましたが、試合に出られない時期を乗り越えてきたところが、彼自身の自信にもなっていて、少しずつ余裕が出てきたのかなと僕は見ています。

1年目の去年は、同じポジションに偉大な人たちがいるということだけで、勉強になった1年だったんじゃないかと思います。そういう人たちがいるといないとでは全然違って、多くのことを学んだ良い1年だったんじゃないかなと思います。

もともとリーダーシップはありますが、全てをひとりで背負ってやっていくタイプではなくて、上手く先輩たちを巻き込みながらやっていると思います。そして、そこでもちゃんと気を遣って、先輩たちとコミュニケーションをとってやっていると感じます。凄く頼もしいですし、誇らしいですね。

僕自身、彼に対してもチームに対しても貢献しないといけないですし、助けてあげたいと思っています。その中で、チームには彼を助けてあげられる選手が他にもたくさんいるので、僕としてはグラウンドの中でしっかり責任を果たし、いちプレーヤーとして、そしてラグビーに対してプロフェッショナルな姿を示していくだけなのかなと思っています。変にチームを引っ張るというよりかは、流や周囲のプレーヤーたちに頼れるところは頼って、しっかりとプロフェッショナルなプレーヤーになれればと考えています。

流は気が利くし、良い意味で適当になれる人だと思います。あまりナーバスにならずに、何を重要視しなければいけないのかということを上手く判断してやれていると思います。物事の優先順位をつけるのが上手いですね。

『コミュニケーションでリードしてくれる』
小野 晃征 (9番・10番の司令塔コンビとして)

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流はまずコミュニケーション能力があると思います。今は特にサントリーでは優勝していた世代と、この数年間優勝できず決勝までも行けなかった苦しさを知っている若手がいる中、ベテランと若手の間にしっかりと入って、そこの間で声を出せる選手であり、そこでリードしてくれる選手です。特にベテランから盛り上げるのではなく、下から盛り上げてコミュニケーションを取れる選手ですね。プレーに関してはしっかりと体を張っていますし、スペースが良く見えていて、キック、パス、ランの判断力が良い選手です。

去年と今年で大きく変わったところは特にないと思いますし、キャプテンとかリーダーになってもプレーがブレないというところが一番大事だと思います。見ていてそこは全然落ちていませんし、自分のスタンダードを常に上げて、しっかり自分がやっている分、周りにも厳しく言うようになっています。常にスタンダードが高いところでプレーするということについて、ベテランが出来ていても若手が出来ていなかったりする時や、逆にベテランがサボっている時には、しっかり言える選手です。

そこはキャプテンとして、他のみんなもリスペクトしているところだと思いますし、そういう影響力がある選手です。クラブハウスに来た時には、ラグビーのスイッチの入り方のレベルが高いですね。だから、プロ選手も社員選手も関係なく、全員がその意思を持っているということが大事なところなので、流を見本として、みんながフォローしていくことが出来るかなと思います。

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『ポイントを絞ってしっかりと話す』
芦田 一顕 (同じスクラムハーフのライバルとして)

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2年目でキャプテンになりましたが、実力もリーダーシップも持っている選手です。他のメンバーもしっかりとリーダーシップを発揮することが出来るので、それをまとめるという役目になると思いますが、チームを上手くまとめていますし今のところとても良い形で出来ているのではないかと思います。

1年目の時には、少し遠慮していたところがあったと思いますが、2年目になって適応も早いですし、同じポジションながらも、すごく有望な選手だと思っています。また2年目の選手がキャプテンをやることで、周りも「自分ももっとやらないと」と感じていると思うので、良い効果が生まれていると思います。ただ例えキャプテンでも、ポジション争いは話が別です(笑)。

練習前に、その週に力を入れて取り組むことであったり、練習でやらなければいけないことの要点をしっかり自分で落とし込んで、それをグラウンドでみんなが集まった時に、ポイントを絞ってしっかりと話しています。多くを言っても全てが伝わらなかったり、混乱してしまうこともあるので、幾つかに絞って言えているところが良いと思います。

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『緩急つけて グラウンドで熱く言うこともできる』
竹本 隼太郎 (元キャプテンそして8番・9番でつながる選手として)

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良いところが色々あります。物怖じせず、しっかり意見を言い、コミュニケーションが取れる。僕がキャプテン1年目の時にこんなに落ち着いて、周りの空気を感じながら発言できていたかと言うと、出来ていなかったと思うので、「あっ、これは凄い」と思いました。「フォワードとバックスでも違うのかな」とも思いましたが、それにしても「さすが帝京大学6連覇のキャプテンだな」と思いました。

ラグビーの知識があり、しっかりと意見を持っていることに加えて、コミュニケーション面で、何が良いのか悪いのかを、コーチとシニアグループ、そして同世代に対して素早く伝えられています。基本的にソフトなコミュニケーションを取っていますが、グラウンドで熱く言うことも出来るので、緩急があり、キャプテンとしてとても良いと思いました。

「その手があったか」と思ったのが、最初に流がキャプテン就任と聞いた時です。「確かに」「色々なメリットがあるな」と思いました。もともとプレーの判断が良い選手でしたが、今年はキャプテンになったことで、毎回ミーティングで話していて、1年目の時と比べて発言数は10倍くらいに増えていると思います。しかも、流の発言はコンパクトにまとまっていて、スッと入ってきます。これから経験を積んで信頼関係をより積み重ねていけば、更に良いキャプテンになっていくと思います。

8番と9番という関係では上手くコミュニケーションが取れていて、例えばスクラムからのオプションがいくつかなる中で、迷いなくプレーが出来ているので、やりやすいですね。判断を任せて安心な9番という選手です。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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