SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年5月11日

#483 流 大 『新しいサントリーを作っていきたい』

皆を驚かせた2年目でのキャプテン就任。早くも本人の顔つきが変わり、話しぶりにもリーダーらしさが表れてきています。フレッシュなキャプテンの抱負を聞きました。(取材日:2016年4月22日)

◆部屋を出る時には楽しみに

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—— 今シーズン、キャプテンに就任しましたが、心境はいかがですか?

キャプテンの話をいただいたのが、昨シーズン最終戦の豊田自動織機戦に勝ち、シーズンが終わった2日後でした。その日にチームミーティングがあったんですが、その前に敬介さん(沢木監督)と個人面談を行い、そこで話をされました。呼ばれた時は何を話されるのかが分からない状態で、昨シーズンの話を少しした後に、「次のシーズンではキャプテンにするから」と言われて、正直、驚きました。

昨シーズンは、最初の頃は試合に出ていましたが、終盤ではフーリー(デュプレア)と日和佐さんが試合に出ていて、僕は試合に出られていない状態でしたし、まだ2年目という思いがあったので、まずは2年目でしっかりと選手として成長していくという考えを持っていました。いずれは僕もリーダーになるつもりはありましたが、2年目でキャプテンを任されるとは、正直思っていませんでした。

キャプテンの話をいただき、驚きはしたんですが、サントリーとして過去最低の9位という成績で終わった次のシーズンのキャプテンになれるということは、非常に貴重な経験になると思っていますし、これまで歴代のキャプテンがいますが、誰もがキャプテンになれるわけではないので、個人面談の部屋を出る時には楽しみに変わっていました。

—— どういうところを楽しみにしていますか?

個人面談の部屋の中では、そこまで具体的に考えることは出来ていませんでしたが、落ち着いて考えたら、僕だけの力では出来ませんが、「9位という成績からチームが変わり、キャプテンとしてまたチャンピオンに戻ることが出来れば、これ以上ない達成感を味わえる」と考えられるようになったことが、楽しみに変わったひとつの要因です。

◆みんなが気づいてやらなければいけないこと

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—— キャプテンの話をもらう前には、1年目のシーズンを振り返ってみて、どうでしたか?

1年間を通してしっかりとハードワークしてきたという自負はありました。ただ、シーズンを迎えるにあたり、フーリーや日和佐さんにもどん欲にしっかりとチャレンジし続けると決めていたんですが、振り返ってみると、少し引いてしまっていた部分があって、そこは反省しなければいけないと思いました。

その反省を活かして、次のシーズンではガツガツいき、「絶対に9番のジャージを着る」という気持ちを更に前面に出していこうと思っているところでキャプテンの話をいただきました。

—— 大学時代に強いサンゴリアスの姿を見ていたと思いますが、実際にチームに入ってみたら9位という成績でしたね

僕の中では、サントリーはチャンピオンであるべきチームで、チャンピンになるために入ってきたと思っていたので、9位という結果は非常に残念でした。ただ、1年間を振り返ると、なるべくしてなった結果なのかなと、正直思いました。

もちろんみんなは頑張って練習していたと思います。ただ、僕はサントリーで優勝した経験がないので優勝する時のチームの雰囲気などは分からない部分でもあるんですが、練習で細部にこだわる部分であったり、チームのまとまりであったり、そういう部分で、正直「これでは優勝することは難しいんじゃないかな」と思うことが何回かありました。

—— チームの雰囲気を変えようとチャレンジしたことはありましたか?

僕が感じたことのひとつとして、チームにはレギュラー組の練習とノンメンバー組の練習があって、シーズンの途中で僕が初めてノンメンバー組の練習に参加した時に、「この練習の雰囲気ではダメだな」と感じました。そこで「レギュラー組に対してもっとチャレンジしましょう」とか、「これじゃあ絶対にレギュラーにはなれないと思います」という話をしたことはありました。ただ、そこで大きく変わるということはなかったので、そこは新人とか関係なく、みんなが気づいてやらなければいけないことだと思います。

◆冷静にチームを見られるキャプテン

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—— これまでのキャプテン歴は?

小学校から地元のスクールでラグビーを始めて、小学校ではキャプテンをやりませんでしたが、中学でキャプテンをやり、高校、大学とキャプテンをやらせてもらっています。

—— 中学で初めてキャプテンをやってみて、当時はキャプテンの面白さを感じていましたか?

中学時代は面白さをあまり感じていなかったと思います。高校くらいまでは、とにかく僕が一生懸命やって、声を出して、グイグイ引っ張っていくようなタイプのキャプテンでした。なので、面白さというよりは、一生懸命やって、それについて来てもらっていたという感じでした。

大学時代は、そういうキャプテンとは違って、もちろん自分が一生懸命やっている姿も見せるんですが、その時々で「チームに何が足りないのか」、「今のチーム状況はこうだから、これが必要」ということを、冷静に見られるようになったのが、大学時代だと思います。

大学時代もキャプテンになった当初は出来ていませんでしたが、シーズンの途中で気づいて、最後には冷静にチームを見られるキャプテンになれたかなと思っています。

◆大きなイメージ

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—— サンゴリアスでのキャプテンも、大学時代のベースをもとに取り組んでいくことになりますか?

今までは全員が同期よりも年下のチームのキャプテンしかやったことがありませんが、サントリーでは1年目の選手しか年下がいなくて、あとは全員が年上という状況にはなります。ただ僕としては、そこはあまり気にせずにやっていこうと考えています。

チームの中にはチャンピオンになった時のサントリーを知っている選手もいれば、知らない選手もいる中で、僕は経験ある選手から色々なアドバイスを受けながらやっていきつつ、若い選手からの意見をどんどん促して、新しいサントリーを作っていきたいと思っています。

—— 新しいサントリーとはどんなイメージですか?

ラグビーで言えば、今までサントリーが勝ってきた時代は、とにかくアタックして走り勝つというラグビーだったと思います。もちろんその要素は絶対にブレちゃいけない部分ですが、フィットネスやフィジカルの部分は他のチームも強化をしているので、どのチームも差がほとんどないと思っています。

その中で、サントリーにしか出来ないアタックを作っていきたくて、敬介さんともそういう話をしています。勝っていた時代の文化や取り組みは大事にするんですが、そこに新しいエッセンスを加えて、本当に新しいサントリーを作りたいと思っています。

—— そのためのアイデアは浮かんでいるんですか?

正直、今の時期は個人に特化したトレーニングをしていて、チームとしての取り組みはほとんどしていないので、まだ具体的なアイデアは湧いていないんですが、大きなイメージは持っています。

◆選手主体で発信していきたい

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—— サンゴリアスの良さはなんだと思いますか?

僕は社員なんですが、社員としてしっかり仕事とラグビーの両方に力を入れられる環境がありますし、クラブハウスやスタッフなど充実した環境もあって、そこは強みだと思います。

あとそれ以上に、選手が主体性を持ってハードワークするという部分が良いところだと思うので、今シーズンは更に選手主体でやっていかなければいけないと思っています。スタッフから言われたからやるとか、提示されたことをだたこなすのではなくて、自分たちで発信していきたいと考えています。

もちろんコーチは練習プログラムを組むことも仕事なので、そのプログラムに取り組むんですが、こなすのではなく、「このプログラムには何の意味があって、これが試合にどう繋がるのか?そしてどうすれば勝てるのか?」ということを考えて取り組まなければ、また同じことの繰り返しになってしまうと思うので、そこを特に意識して取り組んでいこうと思っています。

—— 監督に対して選手の意見を伝えることもキャプテンの役目ですよね

監督に言われたことに対して、委縮してしまったり受け身になってしまえば、昨シーズンと同じような結果になると思います。敬介さんは選手の意見をしっかりと聞いてくれる方なので、どんどん発信していこうと思っています。

ベテラン選手や日本代表の選手は、自分の意見もしっかりとあって発言力もあるので問題ないと思いますが、僕は若い選手やまだあまり試合を経験していない選手の意見も大事にしたいと思っています。ベテラン選手たちは多くの経験があって、その経験をもとに意見を持っているので素晴らしいと思いますが、若い選手も若い選手なりに絶対に自分の意見があって、ベテラン選手と同じ意見もあれば違う意見もあると思います。

そういう状況をちゃんとアウトプットしなければ、何かモヤモヤが残ったまま月日が経ってしまうと思います。そうではなくて、しっかりと意見をぶつけた上で、最終的にひとつの意見、方向性になっていくべきだと思っています。

—— いつ頃からそういう考えを持つようになったんですか?

大学時代のキャプテンの経験が活かされていると思います。4年生やレギュラーの意見だけが通るのではなくて、僕はCチームやDチームのメンバーや試合に出ていない4年生の意見をとても大切にしていました。

そうすると、みんなの意見を分かった上で、それを加味したミーティングをして方向性を決められたら、全員が共有できた方向性になって取り組みやすかったので、そういう部分を大事にしたいと思っています。もちろん社会人では考え方のレベルが違うと思うので、その辺りも考えながら取り組んでいきたいと思っています。

◆レギュラーの保証はない

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—— キャプテンとしてチームを引っ張るという意味でも、選手としてレギュラーを獲得しなければいけませんね

そこは一番やらなければいけないところだと思います。敬介さんからも「キャプテンには選ぶけど、レギュラーの保証はない」と言われていて、日和佐さん、アッシーさん(芦田一顕)とコンペティションした上で、そこで勝つことが出来ればレギュラーとして試合に出られると思います。

「その競争に勝てなければレギュラーにはなれない」と言われているので、僕としてはその戦いに勝ち、絶対に9番を着ないといけないと思っています。その時にならないと分からないですが、9番を着て試合に出て、キャプテンとして振る舞うことが、僕の中でベストだと思っているので、そこは頑張りたいと思っています。

—— 9番を着るために一番大事なことは何だと思いますか?

ゲームを理解して、ゲームの中でしっかりと方向性を示すということが大事だと思っています。もちろんパスやキック、ランのスキルを、もっともっとレベルアップさせなければいけないんですが、そこだけではなくて、トータル的なゲームコントロールの部分で勝負したいと思っています。

—— その自信のほどは?

あります。自信があるというか、決意があるというか、絶対にやらなければいけないことだと思っているので、とにかくやります。

—— 選手としての力を伸ばすことに関して、リーダーという役割をやることによって相乗効果を起こすと思いますか?

必ず相乗効果として現れると思います。もちろんしんどくなる時期は絶対にあると思いますが、キャプテンとしてチームのことを見たり、色々なことを考えたりするということは、必ず選手としても活きてくる部分だと思うので、リーダーをやるということは選手としてプラスになると思っています。

◆これが求めていたサントリー

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—— どういうチームを目指していますか?

見ている人やファンの人たちに「これが求めていたサントリー」と思われるチームになることがベストだと思います。それは結果も内容も含めてですし、ラグビー以外の取り組みについても、そう思われるチームになりたいと思います。

—— ラグビー以外の取り組みでは、選手会長との連携が必要ですよね

選手会長の啓希さん(宮本)はチームのことを冷静に見られますし、色々な活動のアイデア、発言力もあって、色々な人の意見を取り入れる力もあるので、グラウンド外の部分については、啓希さんに任せている部分があります。

啓希さんとは連携を取っていますが、啓希さんとしたら、僕がその部分に入り過ぎないように気を遣ってくれていると思いますし、僕にはラグビーとチーム全体のことを考えて欲しいと思ってくださっていて、あまり僕に求めてきたりはしないので、そこはバランス良くやっていきたいと思っています。

—— キャプテンになったことで、現時点で自分が変わったと感じる部分はありますか?

チームを考えるようになったことだと思います。そこは変わったというよりも、増えた部分だと思います。昨シーズンは、選手として頑張ってレギュラーになることを考えていて、そこは今シーズンも変わらず考えていることですが、「どうやってチームを良くしよう」「どうやったら勝てるチームになるか」ということを考える度合いが変わりました。

—— その度合いが変わったことで行動も変わりましたか?

今はバックスとフォワードが分かれてトレーニングをしている状況ですが、バックスの1回1回のミーティングであったり、ウエイトトレーニングであったり、グラウンドでの練習でのみんなの表情や雰囲気をしっかりと感じるようにしています。

—— 他の選手の表情や雰囲気はどうですか?

良いスタートが切れていると思います。ただ、まだまだ満足できるレベルではないと感じているので、そこに関しては毎回の練習で伝えるようにして、継続していくうちに絶対に良くなる部分だと思っています。

—— キャプテンとして1年戦った後、どういうことを言われるようになっていたいですか?

僕個人のことに対してというよりも、「望んでいたサントリーになってくれて嬉しい」という言葉を聞きたいですね。僕がどうしたとかではなく、チームとしてこうなったという感想をもらえるように頑張らないといけないと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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