2016年4月27日
#481 長友 泰憲 『小さな部分で一つひとつ勝っていく』
体全身がバネというデビュー当時のイメージから、様々な経験を積み、落ち着いた雰囲気が加わってきた長友泰憲選手。今シーズンでは、あの爆発力と粘りあるプレーに加え、しなやかさの中にも鋭さを感じさせるプレーを見せてくれるのではないでしょうか。変化し続ける長友選手に、今シーズンの抱負を訊きました。(取材日:2016年4月5日)
◆アイコンタクトだけで分かる
—— 調子はどうですか?
自分の体に対して、更に気と頭を使い始めて、これまで如何に感覚でプレーしていたかということが分かりましたし、その場しのぎでのプレーが少なくなってきています。ラグビーでは特にコミュニケーションが大切で、頭を使うことによって、チームメイトに対して事前に要求を出せるので、プレーのオプションが増えるんです。事前のコミュニケーションを密に行うことによって、パスをする側と受け手側がシンクロすることが出来るので、その部分がこれから更に良くなっていくと思います。ラグビーはチームプレーが大切で、そのためにはコミュニケーションが大切になると思っています。
—— 練習中から意識しているんですか?
練習中から取り組まなければ試合では出せないと思うので、練習が一番大事だと思います。
—— 試合によってはメンバーが変わるので、普段の練習では色々な人とコミュニケーションを取らなければいけませんね
なので常に自分の存在感を出すようにしていますし、練習でも毎回同じメンバーで取り組むわけではないので、その時のメンバーでしっかりとコミュニケーションを取ることを、毎回の練習で行っていけば、試合に出ても練習と同じプレーが出せると思います。
—— コミュニケーションを意識して取り組むことによって、試合でも違いを感じましたか?
違いますね。練習中からコミュニケーションを取っていると、名前を呼んだりアイコンタクトだけで、チームメイトがどういうプレーをしたいのかが分かるようになります。試合の終盤で疲れている時でも、名前を呼ぶだけで相手が理解してくれたりするので、そういう状態にするためには、日ごろの練習が大事なんです。
◆しっかりリカバリーをする
—— 身体的な調子は?
2年前くらいから取り組んでいるんですが、毎朝自分でスムージーを作って飲んでいます。筋肉をつけるためには食事が大事になるんですが、食事をすると脂肪もつきます。如何に脂肪を落として筋肉をつけて動ける体にするかと考えた時に、今の食生活にたどり着きました。あと食事だけではなく、走るフォームも更に意識して取り組んだことによって、体の状態が良い方向に向かっていきました。
以前のプレーと比べると、がむしゃら感はなくなっていると思うので、これからもう少しがむしゃら感を出していきたいと思っています。そのためには足腰の強さが大切になるので、今は足腰の強化をターゲットにしています。
昨シーズンの状態は良かった方だと思いますが、今年で31歳になるので、これから衰えていってしまうのではないかという不安はあります。そこの不安は練習で取り除いていくしかないと思っています。
—— 実際に衰えを感じたことは?
感覚としては衰えを感じたことはありませんが、若い頃と比べると、疲労感をより感じるようにはなっていると思います。最近は会社の仕事も増えてきているので、疲れを感じることが多くなっていると思います。
—— どうケアをしているんですか?
こまめにマッサージをしてもらったり、取れる時に睡眠の時間を取ったり、しっかりとリカバリーをするようにしています。
◆サントリーのテンポでプレー出来なかった
—— 昨シーズンの自分自身のプレーを振り返るとどうでしたか?
プレー自体は悪くはなかったと思いますし、まだまだ伸びる余地があると思っています。昨シーズンはフォームを意識して走ることによって、良い形を身につけられたと思うので、今シーズンはそこに粘り強さをプラスしていきたいと思っています。
そして、昨シーズンは試合に出ながらも、優勝争いに絡めるような位置にいられなかったので、今シーズンは優勝争いに絡めるようにならなければいけないと思います。
—— これまでは試合に出て、優勝争いに絡んでいたと思いますが、昨シーズンはどこが違ったんですか?
やっぱりアタックが単調で相手に分かりやすかったというところと、ブレイクダウンで絡まれてしまうことが多く、サントリーのテンポでプレー出来なかったことが、ああいう結果に繋がったと思います。昨シーズンはテンポがずっと同じだったと思うので、緩急をつけなければいけないと思っていますし、バックスのオプションが少なかったので、もう少しオプションを増やした方が良いかなと思います。
—— 先ほど粘り強さをプラスするというお話でしたが、粘り強さはどうやったら身につけられますか?
下半身の強さとバランスが重要だと思います。そのためには考えて取り組むことが大切で、色々な指導方法があると思いますが、この方法は良いなと思うものがあれば、まずは自分でやってみて、それで良い効果があると感じたら、継続して取り組むようにしています。
◆あの中の一員になりたい
—— 昨年はラグビーワールドカップで日本代表が活躍しましたが、長友選手は日本代表の活躍をどう見ていましたか?
エディーさんが日本代表のヘッドコーチになった1年目に僕も日本代表に選ばれていましたが、その時のチームと比べると、ワールドカップの時には全く違うチームになっていましたし、全員が勝ちたいという気持ちが表れていたと思います。本当に良いチームだなと思いました。
やっぱり選手としては、自分もあの中の一員になりたいと思いましたが、セレクションで漏れていましたし、あの悔しさをバネに、これからやっていきたいと思っています。
—— 2019年には日本でラグビーワールドカップがありますが、日本代表として出場するイメージはありますか?
もう31歳になりますし、1年1年が勝負で、毎年「今年が最後」という意識で取り組んでいるので、2019年のイメージはないですね。まずはサントリーで結果を出さなければ、日本代表にも繋がらないと思います。
◆全てにおいてパワーアップ
—— 今シーズンの具体的な目標はありますか?
まずは昨年の自分を超えなければ、試合のメンバーにも入れなくなると思うので、アタックでもディフェンスでも、全てにおいてパワーアップしなければいけないと思っています。あとは後輩が増えているので、アドバイスをしながら後輩から刺激をもらい、自分自身が成長していきたいと思っています。
自分1人だけでは成長出来ないと思うので、例えば調子が上がっている後輩がいれば、その後輩に要因を聞いてみたりして、自分に取り入れられるところは取り入れてやっていければと思っています。
—— 長友選手の代は同期が他に3人いましたが、今では畠山選手のみになりましたね
そもそも僕自身がここまで長く出来るとは思っていなかったですけど、やっぱり同期が減っていくのは寂しいですよ。
—— サンゴリアスの中では、上から2番目の世代になりましたね
早いですね(笑)。1~2年目の時は1日1日が必死であっという間に過ぎましたし、まさかこの歳まで現役でいられるとは、その時は考えてもいませんでした。チームで上から2番目の世代ということは普段は意識していませんが、後輩たちが増えていくと歳を取ったんだなと感じますね。
—— 長友選手が社会人1年目の時のラグビーと今のラグビーを比較すると、かなり進化をしていますか?
進化していると思いますよ。僕が1年目の時のサントリーのスタイルは、モールなどのセットプレーが強かったと思うんですが、今は凄く走るチームになりましたし、他のチームもたくさん走って、アタックのバリエーションが増えていますよね。
◆色々な場面で存在感がなければ出られない
—— いまラグビーをやっていて、楽しいと感じることは何ですか?
やっぱりまずは勝つことが嬉しいですし、個人で言えば、1対1で勝つことやトライを取ること、ディフェンスでは一発で相手を止めることなど、小さな部分で一つひとつ勝っていくことが楽しみですね。
—— 自分に勝つということも楽しみですか?
どうしても妥協してしまうことがあったりするので、そういう部分は消していかなければいけないと思います。
—— 冒頭で頭を使うという話がありましたが、今シーズンではどう頭を使っていこうと考えていますか?
敬介さん(沢木監督)がよく「ラグビーの知識をもっと上げろ」と言っていて、僕としては海外の試合などをよく見るようにして、そこで気づいたことを練習で応用していけば自分の成長にも繋がると思っています。
—— 社会人1年目の時にイメージしていた姿と今の姿を比較するとどうですか?
1年目と比べると確実に成長はしていると思いますし、1年目の時はただがむしゃらにやっていて、トライを取れば良いという、個人にフォーカスした考えがあったかもしれません。今はチーム力がなければ勝てなくなっていますし、どうすればチームに貢献できるかを考えながら取り組んでします。
ウイングというポジションなので、トライを取ることは大事なんですが、トライだけじゃなく他の部分でもチームに貢献できることはあると思っています。やっぱりこの年齢になってくると、色々な場面で存在感がなければ試合には出られないと思うので、チームとして必要とされる選手になっていきたいですね。
◆練習から緊張感
—— 今シーズンのサンゴリアスの雰囲気はどうですか?
昨シーズンは、本当に仲良しこよしのチームになってしまっていたと思います。今シーズンは敬介さんが監督になって練習から緊張感がありますし、練習から緊張感を持って取り組めば試合でのミスが少なくなると思います。
試合を想定した練習内容になっているので、そこで選手がただの練習と思って取り組んではいけなくて、常に試合をイメージして練習をすることが大切だと思います。練習メニューがラグビーに繋がった内容になっているので、効果的な練習が出来ていると思います。
—— 今シーズンでの一番の楽しみは?
チームとしてどれだけ成長できるかというところですね。今シーズンはチームとしてまとまって、みんなが同じベクトルで進んでいければ、良いチームになるという雰囲気があるので、そこが楽しみですね。
あとは、今シーズンこそは優勝しなければいけないと思います。そういうラグビーをお見せ出来るように頑張りますので、ファンの皆さんには、ぜひ応援に来ていただきたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]