2016年2月29日
#471 フーリー デュプレア 『サントリーはあと少しでトップに立てる』
2011年から5年間、スクラムハーフとしてサンゴリアスを牽引したフーリー・デュプレア選手。ワールドカップでの優勝経験のあるスクラムハーフとしてサンゴリアスの選手たちに多くのものを残してきました。その世界的名選手からのサンゴリアス、そしてファンへのラストメッセージです。(取材日:2016年1月19日)
◆日本のレベルが上がっている
—— 2015年のラグビーワールドカップはどうでしたか?
日本に負けて、厳しいスタートとなりました。日本戦には20分くらいしか出場出来ませんでしたが、その後の試合からは多くの出場時間を得ることが出来ましたし、キャプテンを務めさせてもらったので、信じられない経験をさせてもらいました。大変でしたが、あまり良くないスタートから優勝に近いところまで進むことが出来たので良かったと思います。
—— 日本と対戦してどう感じましたか?
接戦でタフなゲームとなりましたが、日本代表はよく準備されていて素晴らしかったと思います。
—— 試合をする前には、日本があれだけ素晴らしい試合をすると思っていましたか?
僕は日本に約5年いて、日本代表のレベルが上がっていることは分かっていましたし、あのようなラグビーをしてくることも分かっていました。試合を進めていくうちに、観客が日本を応援する雰囲気になったので、チームに動揺を与え、タフなゲームとなってしまいました。
—— これまでワールドカップに3度(2007年、2011年、2015年)出場していますが、やはりワールドカップは特別な場所ですか?
特別な場所です。4年に1度しかありませんし、ラグビーの大会の中で一番大きなイベントです。今回のワールドカップでキャプテンを任されたことは喜ばしいことで、キャプテンとしてチームを優勝に向けてリードすることが出来たことはとても光栄なことでした。その中で、チームがひとつになっていったことが良かったと思います。
◆スカルクと一緒にチームを立ち直らせることが出来た
—— キャプテンをやってみて良かったと思うところは?
日本に負けてチームが落ち込んでいたんですが、そこから盛り上げて、予選プールの残りの3試合で勝てたことが良かったと思いますし、スカルク(バーガー)がバイスキャプテンだったことが心強かったですね。スカルクと一緒にチームを立ち直らせることが出来て本当に良かったと思います。
これまでの経験だと、キャプテンをやると自分の調子を落としてしまったりすることがあったんですが、今回はそういうことがなく、ずっとチームをリードすることが出来たので、自分にとっても誇らしいことでした。
—— 今回のワールドカップで自らのキャプテンシーに気づいたんですか?
気づいたというわけではありませんが、キャプテンは肉体的にも頭脳的にも、そして精神的にもチャレンジしなければいけないと思います。今回のワールドカップでは、キャプテンをやっていく中で楽しんで出来るようになっていきました。そこが良かったと思います。
南アフリカ代表としては、バイスキャプテンなどがキャプテンを支え、その力がチームを支える力になっていて、逆にチームからもキャプテンやバイスキャプテンなどのリーダーシップメンバーを支えるという文化があるんです。
自慢をするわけではありませんが、キャプテンとしてチームを引っ張っていける自信はありました。自信がなければ出来ないこともあると思うので、自信をもって取り組めたことを誇りに思っています。
◆なぜ日本代表は勝ったのか
—— 日本のラグビーの今後については?
日本代表は良い流れがあると思いますが、一歩間違えば、一気に落ちていく危険性もあります。この時期の判断は非常に重要で、これからどうしていくかが注目すべきポイントだと思います。だから、特別な人をチームに入れて、これまでの4年で培った経験を、次の4年に活かさなければいけないと思います。
日本代表のヘッドコーチは新しくなるので、この4年間でコーチをしていた人たちの話を聞いたり、スタッフに入れたりして、「なぜ日本代表は勝ったのか」ということをしっかりと分析し、新しいスタイルでいくのか、それとも今のスタイルを継続していくのかということを判断しなければいけないと思います。
—— 今回のワールドカップを戦った日本代表にはメンタルコーチがいましたが、南アフリカ代表にもメンタルコーチはいますか?
南アフリカ代表はワールドカップの直前にメンタルコーチが入りました。色々な選手がいるので、メンタルコーチが必要な選手もいると思います。日本代表ではどういう役割があったかは分かりませんが、南アフリカ代表では、ラグビーのことというよりは、個人的な相談をしている選手が多かったと思います。
◆自分を高める言葉を書き出す
—— 準備をする上で大切にしていることは何ですか?
自分がやらなければいけないこと、到達しなければいけないことを書き出し、それを見ることと、自分の体力とフィジカルが100%の状態かどうかを確認することをいつもやっています。サントリーでのシーズンで言えば、「なぜ試合をするのか」、「何を望んでいるのか」ということや自分を高める言葉などを書き出しています。チームに対して何かメッセージを発信する前に、自分の中でやらなければいけないことを固めなければいけないので、そういうことをしています。
この図が、自分がどうしてラグビーをするのかという理由です。十字架があって、そこに僕の子供と友達、家族がいて、そのために僕はラグビーをやっているんです。試合をする前にこの図を書いて、この図の下にその試合で必要なことを書くようにしています。
—— サンゴリアスのスクラムハーフの選手に対して、そしてサンゴリアスの選手に対してメッセージをお願いします
サントリーのスクラムハーフの選手に対しては、5シーズンを一緒にプレーしてきてとても楽しかったです。良い選手ばかりでしたし、このまま諦めずに一生懸命トレーニングを続けていって欲しいと思います。そして、常にサントリーの為にプレーするということを思っていて欲しいですし、常に責任を持ち、実行していってください。
サントリーの選手たちに対しては、あと少しでトップに立てるところまで来ていて、来シーズンにはその位置に立てると思っています。大切なことは常に一緒に取り組んでいくということです。来シーズンには素晴らしい成果が出ることを予想しているので、その姿を僕に見せて欲しいと思っています。
(通訳:白鳥あゆ美/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]