SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2016年2月24日

#470 中村 亮土 『チームの先頭に立って壁をぶち壊しに行く』

サンゴリアスで大きな飛躍を期待されている若手のひとり。2015-2016シーズンは、伸び悩んだ分、飛躍するための大事なヒントを掴んだようです。社会人3年目へ向けて、中村亮土選手の意気込みを訊きました。(取材日:2016年2月3日)

◆チームを引っ張っていくという自覚を持って

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—— 2015-2016シーズンは9位となり、トップリーグが始まって以来、初めてとなる順位でした

この結果になった原因は、メンタルだと思います。シーズンの中でも良い試合は何試合かあって、そういう試合ではチームとして良い内容なんですよ。ただ、そういう良い試合が出来た後の試合では、負けてしまったり、雰囲気の悪い試合になってしまったりしていました。シーズンの中で浮き沈みが激しくて、メンタルコントロールの部分が、個人としてもチームとしても良くなかったので、そこが一番の原因だと思います。

前の試合の勢いのまま次の試合に行こうとする気持ちと、次も勝てるだろうという心の隙があって、練習の中からそういう気持ちが出てしまっていたんだと思います。高いスタンダードをキープするメンタルがあるチームでは無かったと思います。

—— 若い選手が多くなっている中で、チームを引っ張っていこうという思いはありますか?

あります。シーズン中からそういう気持ちは持っていたんですが、まだチームに影響を与えられるような選手では無いと思っていました。ただ、次はもう3年目になりますし、ベテランと若手のかけ橋になるポジションになってくるので、チームを引っ張っていくという自覚を持って取り組まなければいけないと思います。

—— 2015-2016シーズンの自身の出来は?

パフォーマンスで言えば、50%以下だったと思います。プレー全体の質と、実際のプレーのレベルが自分の思い描いているレベルまで全く達していませんでした。とにかくミスが多かったですし、自分の強みを活かせていないプレーが多かったと思います。ミスのところで言えば、キャッチやパス、キャリアーとなって前に出たらボールを落としてしまうとか、ボールを持った時のミスが多かったですね。

—— 判断ミスというよりもスキルの部分でのミスが多かったんですか?

そのミスの中には判断も含まれますね。判断がしっかりしていないままプレーをすると、ミスが起きてしまいますし、判断が遅かったり、迷いがあったのでミスに繋がっていたと思います。自分自身で決断をせずにプレーをしてしまっていたんだと思います。なんとなくプレーをしてしまったり、意志がないままプレーをしていると、必ず迷いが生じます。そこが原因でミスが多かったと思います。

—— なぜそういう状況になってしまったと思いますか?

色々なことを考え過ぎていたんだと思います。パスかボールキャリーかキックか、という選択肢をたくさん持ち過ぎていて、それが迷いに繋がったと思います。

◆練習でどれだけ意志を持ったプレーが出来るか

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—— シーズンの途中で改善することは出来ましたか?

シーズンの後半には、僕自身の強みを活かすために早い判断をしようと心掛けていました。僕の強みは体の強さなので、迷ったら体をぶつけに行くイメージでプレーしていましたが、体がしんどくプレッシャーが掛かった状態の中で判断するということは、まだまだ出来ていなかったと思います。

—— どう改善していこうと考えていますか?

練習でどれだけ意志を持ったプレーが出来るかだと思います。シーズン中からやる気はあったんですが、1つ1つのプレーに対してしっかりと意志があったかと言われると、そこが足りなかったんじゃないかと思うので、次のシーズンでは1つ1つのプレーにこだわって練習していきたいと思っています。

—— 意志を持つためには?

何が出来るのかということを今シーズン学ぶことが出来たので、しっかりと自分の能力を理解して、自信を持って判断すれば、そのプレーに意志が出てくると思います。シーズンの前半よりも後半の方が勢いも出ていたと思うので、来シーズンは更に改善していきたいと思います。

—— 2年目のシーズン前半で課題が見つかったということは、自分ではどう捉えていますか?

1年目と比べると、2年目の方が自分のプレーにも余裕が出てきていたとは思うんですが、余裕が出てきた分、全体を見ようとし過ぎてしまったと思います。ゲームのコントロールや組み立て方のところまで考えていて、特にプレシーズンでは10番に竜太郎さん(竹本)と圭輔さん(阪本)がいて、10番とコミュニケーションを取り、自分もゲームを組み立てる1人として参加していました。それが逆に自分自身のプレーに迷いを生じさせていて、目の前のことが出来なくなっていました。

—— 視野が広がっていたということですか?

視野をどこに向けるかの判断の部分がずれていたんだと思います。10番としてゲームを組み立てろと言われれば考えることも出来ますが、12番として一番必要なことはゲインラインを取っていくことなんです。僕は12番を任されていたにもかかわらず、12番の仕事を怠ってしまっていたんです。考え方が10番になっていたと思います。

プレシーズンの時はそれでも良かったんですが、代表選手が戻って来てからも同じ考え方で取り組んでしまい、意味のないところでエネルギーを使ってしまっていたと思います。

—— どうやって気がついたんですか?

自分自身のパフォーマンスを見て気づきました。なぜ上手くいかないのかという中で、シーズン中にはその"なぜ"が分かっていませんでした。自分の強みを活かすということは言われていたんですが、シーズンがもうすぐ終わるという時になって、しっかりと振り返ることが出来て、そこで気づかされましたね。

そのことに気づいた時には、あと2、3試合しかない状況で、そこから思い切りの良さなどの部分では良くなったと思いますが、全体的なパフォーマンスとして考えると、サントリーの12番を背負うレベルではありませんでした。

◆やり方と熱意次第で辿り着ける

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—— 中村選手のイメージでは、2年目には更に先に進んでいると思っていましたか?

2014-2015シーズンが終わった時には、2年目のシーズンでは日本で一番良い12番と言われるくらいまで成長していたいと思っていたんですが、そのレベルには辿り着けませんでした。

—— 来シーズンにそのレベルに到達できる自信は?

自分自身のやり方と熱意次第で辿り着けると思っています。来シーズンも結果を出すことが出来なければ自分の責任ですし、結果が出たとしても自分がやってきたことが出たというだけなので、来シーズンにどうなっていきたいかを思い描くよりも、やるべきことをやっていきたいと思っています。

—— 2年目のシーズンは停滞だと思いますか?それとも成長したと思いますか?

自分の弱さが出て、そこに気づくことが出来たので、その部分が成長したところだと思います。この1年を成長したと思えるようにするためにも、次のシーズンが勝負の年だと思います。

—— 体の強さの部分ではパワーアップしていたんですか?

どちらかと言えばスピード系のトレーニングをしていたので、それはあまり変わっていないと思います。もちろんフィジカルの部分も向上はしていますが、大きく体重が増えたということはありませんでした。

—— 次のシーズンでの目標は?

もちろん日本一です。個人としてはレギュラーとして定着することですね。そのためにアタックでもディフェンスでも、ゲインラインを切っていける選手になりたいと思います。チームの先頭に立って、壁をぶち壊しに行くイメージで、オールブラックスのマア・ノヌーのような選手になっていきたいと思っています。

◆自分の弱さを痛感

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—— オフェンスとディフェンスではどちらに課題が多いですか?

どちらかと言えば、オフェンスだと思います。オフェンスは先ほど言ったことが課題で、ディフェンスでは、個人の部分で言うと、タックル成功率の部分はまだ改善していかなければいけないですね。全員でディフェンスする中でのコミュニケーションであったり、ラインの上げ方、幅の取り方というところは出来るようになってきたと思います。

—— ワールドカップで日本代表の活躍を見て、何か感じるものはありましたか?

嬉しい半面、悔しさがありました。あと、自分の弱さを痛感しました。大学の時には代表に呼んでもらっていたんですが、社会人になってなかなか試合に出ることが出来ず、代表にも呼ばれなくなってしまって、ワールドカップで日本代表が活躍する姿を見て、このチームに残れなかった自分の弱さを、本当に認めた瞬間になりました。

今までは、なぜ呼ばれなくなったのかと疑問に感じている部分が少なからずあったんですが、ワールドカップで素晴らしい試合をして3勝する活躍を見て、「ここに出ている選手たちって凄いな」と、まざまざと思い知らされました。

—— 認めた弱さとは、例えばどういう弱さですか?

日本代表に残れなかったということは、自分の中に甘さがあったり、熱意を感じてもらえなかったんだと思います。振り返った時にもっと出来たと思いますし、それをやっていた選手たちがワールドカップに出ているんだと思いました。あの場に立てなかったことは自分のせいだと感じて、「自分は弱いな。まだ全然甘いな」と感じました。

—— それを感じて、ラグビーに向き合う意識は変わりましたか?

意識が高くなるというよりは、2019年にはあの場に立ちたいという思いが強くなりました。

◆前に出続けていかなければいけない

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—— ラグビーでは、次のシーズンでどういうプレーが見られれば順調だと思っていいですか?

前に出ていれば、順調に来ていると思ってもらえればと思います。相手のディフェンスラインを越えられているか、それとも戻されているかというところを見てもらって、それが1回だけじゃなく、前に出続けなければいけないポジションだと思いますし、それが僕の役割だと思っています。

—— 12番の面白さは?

相手との駆け引きもあり、1対1で抜く楽しさやラインで抜く楽しさがあります。あと裏や外のスペースを見なければいけないので、広い視野を持ちながら目の前のことに全力で取り組まなければいけないというところが面白いですね。それに12番は全てに関わってくるポジションでもあるので、そういうところが面白いと思います。

—— 同じポジションの選手から学ぶこともありますか?

宮本啓希さんを見ていると、ボールが無いところでコミュニケーションを取って、如何に味方をラインとして動かすかというところが非常に上手いと思います。ラインとして駆け引きに勝つことが出来れば、相手を抜くことが出来るんです。啓希さんはそういう能力が非常に高くて、いつも学ばせてもらっています。

—— ラグビーに取り組む上で気をつけていることは?

僕は筋肉が張りやすいので、ストレッチには気をつけています。この2年の間で、筋肉が張るとパフォーマンスが落ちるということを学んだので、そうならないためにケアは入念にやっています。それが癖になっていて、テレビ見ている時などにも、いつの間にかストレッチしている時もあります。

—— オフの期間はどういうことに取り組んでいるんですか?

チームからトレーニングメニューを出してもらっていて、それに加えスピード系のトレーニングを入れたいと思っているので、若井さん(正樹/ヘッドS&Cコーチ)と話しながら、週3~4回のペースで取り組んでいます。

—— 次のシーズンでのテーマは?

今までの自分を変えたいと思っているんですが、それは自分の結果を変えたいということかもしれないですね。シーズンが終わった時に、今年はパフォーマンスが良かったと言えるシーズンにしたいと思います。

—— 仕事は順調ですか?

最初の頃は得意先に怒られてばかりでしたが、担当を持つようになって1年半くらい経って、良い関係を築けていると思います。ただ、怒られていた頃は、質問をされたことに答えられなかったり、単純なミスを犯してしまったりしていて、「こっちは命を懸けてやっているんだから、お前も命を懸けて取り組め」というようなことも言われました。そういうことを言って頂いたお陰で勉強することが出来ましたし、その方に育てて頂いたと思っています。実際に怒っていただいた方のお店での実績が一番上がってきていますし、そういうことが大事なんだなと思いましたね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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