SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年12月30日

#462 流 大 『試合をコントロールするところで勝負』

流 大 『試合をコントロールするところで勝負』

新人ながら順調に試合経験を重ねる流大選手。サンゴリアス、そして日本代表の次代を担うであろうスクラムハーフは何を考え、何を目指しているのか?今年の新人“初登場選手”として話を訊きました。(取材日:2015年12月8日)

◆テンポやリズムを一段階上げる

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—— サンゴリアスに加わってから順調に試合に出場していますね

リザーブではありましたが、プレシーズンリーグでは全試合に出させていただき、トップリーグ開幕戦で先発として出た以降はリザーブでの出場となりました。これまで全ての試合で出させていただいているので、悪くはないスタートが切れていると思います。ただ、全く満足していることはなく、試合の中でもっと良いパフォーマンスが出せると常に思っているので、更に上を目指していかなければいけないと思っています。

—— 通用していると思う部分は?

リザーブとして出場する時には、チームのテンポやリズムを一段階上げることをターゲットにしています。実際にそれが出来ているので、そこは通用している部分だと思います。ただ、開幕戦のパナソニック戦は、先発で出場して、強い相手に対して自分のパフォーマンスがあまり出せなかったので、「まだまだ未熟、トップリーグのレベルにはまだ達していない」と思いました。

—— トップリーグ開幕戦は緊張しましたか?

僕はあまり緊張するタイプではないんですが、開幕戦の前日は少し緊張しました。試合当日には緊張もなくて、良い精神状態で試合に臨めたと思います。

—— これまで試合を経験してみての課題は何ですか?

開幕戦に関してはアタックのリズムが常に同じで、パナソニックに楽にディフェンスをさせてしまったと思います。もっとリズムを変えたり、キックを使ったり、アタックの方向性などを変えたりして、試合の中で相手の状況を見て対応していければ、違う結果になっていたんじゃないかと思っています。

◆なぜあの選択をしたのか

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—— スクラムハーフというポジションは、ボールを持った瞬間にあらゆる選択肢があると思いますが、どういうプレーが得意ですか?

特に苦手なプレーはないので、多くの選択肢を持つことが出来ていると思います。それがサントリーのシェイプにもなりますし、そこから僕や10番がどの選択肢を選ぶかになると思います。

—— その選択をする上で、学生時代とトップリーグとでは違うと感じた部分はありますか?

これもパナソニック戦の話になってしまいますが、パナソニックは壁のようなディフェンスで、綺麗にラインブレイクしたり、綺麗にディフェンスを崩すという場面があまり出せなかったので、そういう時にどういう判断が出来るかという部分を意識して練習しています。アタックがどんどん前に出られる時には判断がより楽になるんですが、相手のディフェンスが強い時の判断が、僕の課題だと思います。

—— その課題を克服するために、実際に練習ではどういうところに気をつけて取り組んでいるんですか?

練習では常に強いディフェンスを相手にしている意識で取り組むことを心掛けています。試合では、ブレイクダウンやボールキャリーの部分でしっかりと前に出ないと厳しい展開になるので、周りの選手にしっかりと要求するようにしています。

—— ワールドカップが終わって、フーリー・デュプレア選手と日和佐篤選手がチームに戻ってきましたね

フーリーのプレーを近くで見ると、やっぱり凄いですね。全てにおいて高いスキルを持っていますし、ゲームをコントロールしながら1つ1つの判断が的確で速いと思います。

—— 自分に置き換えながらフーリー選手のプレーを見ているんですか?

もちろんそういう見方で見ています。フーリーのプレーを見ながら、「なぜあの選択をしたのか」と常に考えますし、「僕だったらまだあのプレーは出来ない」と感じることもあります。フーリーのプレーを見るだけじゃなくて、直接話をして「どういう意図であのプレーを選択したのか」と聞いたりします。

—— 他のスクラムハーフと比較をして、自分らしさはどこにありますか?

リザーブで入った時にはテンポを上げることを求められることが多くなりますが、テンポを上げることだけが仕事ではなくて、試合をコントロールすることがとても重要だと思っています。その力を磨いて、コントロールするというところで勝負していきたいと思っています。

◆スポーツが得意

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—— いつからスクラムハーフでプレーしているんですか?

僕は小学5年生くらいからスクラムハーフでプレーし始めて、中学生くらいまではスクラムハーフをやりながら、スタンドオフやウイングもやっていました。スクラムハーフ1本になったのは、高校からですね。

—— ラグビーを始めたのは?

小学2年~3年くらいから始めました。僕は兄が2人いて、2人とも野球をやっていたので、僕も小学1年の時には野球をやっていたんですが、ちょうど野球を止めた時に、親の知り合いのラグビーコーチの方からラグビーに誘われて、そのままラグビーを始めました。当時はかなり足が速い方で、ボールを持って走ればトライになるような感じで、トライをたくさん取れたので面白かったですね。

—— ラグビーを始めることに関して、家族は何か言っていましたか?

僕の選択を尊重してくれていましたね。高校や大学を選ぶ時も自由にやらせてもらっていました。兄は、今は2人とも会社員ですが、2番目の兄は野球塾を開いて、子供たちに野球を教えています。

—— 色々なスポーツをやってきたんですね

自分で言うのも変ですけど、様々なスポーツが得意です。サッカーも野球も得意ですし、バドミントンや卓球、バスケットも得意です。あと3歳から水泳をやっていたので、割とスポーツは何でも出来ます。その中でもラグビーは色々な要素が集まっているので、好きなんだと思います。

◆ポジティブに反省

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—— 当時のラグビーの面白さと今の面白さは違いますか?

全然違いますね。中学生くらいまではトライを取ったり、ラインブレイクすることが面白かったんですが、高校くらいからは自分の1つのパスやキックがチームの良し悪しに繋がることを実感するようになって、そこからはまた違う面白さを感じるようになりました。

—— 調子が悪い時にはどう改善しようとするんですか?

ミスしたことや調子の悪かった試合をそのままにせずに、まずはしっかりと反省するようにしています。ただ、頭の中はポジティブに反省して、次に向かうようにしています。

—— 試合中はプレーしていてグラウンド全体を見ている感じですか?

今はかなり全体を見られるようになってきました。春シーズンではボールを捌くことばかりに集中してしまっていましたが、今は裏のスペースもチェック出来ていますし、後ろからの声も聞こえているので、余裕を持ってプレー出来るようになっていると思います。上からグラウンドを見ている感じとまでは言えませんが、広い視野でプレー出来ているとは思います。

—— 大学の時から視野は広い方でしたか?

大学の時から常に意識してプレーしていましたし、サントリーではヒューイ(ピーター・ヒューワット/バックスコーチ)や敬介さん(沢木/スペシャルスキルコーチ)に「裏のスペースや全体を見て判断するように」とアドバイスを受けているので、より意識してプレーしています。

—— 全体を見る上で一番大切にしていることは何ですか?

プレーを予測することがとても大切だと思っていて、サントリーがこういう攻め方をしたら、相手のウイングはこう動いて、フルバックがこう動くから、ここが空くという想定をしておくことで、プレー中にパッと見た時に、その想定がはまっていれば、そのプレーを選択すれば良いというだけになります。だから、想定や予測がとても大事になります。

—— 自分がプレーした試合だけではなく、他の試合の映像もよく見ているんですか?

そうですね。例えば、フーリーがキックを蹴ったシーンを見ると、相手のウイングが移動して、その空いたスペースにキックしているんです。それに至るまでにどういう仕掛けをしていたかを見るようにしています。

◆ラグビーの方が有名になれる

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—— ラグビーをこれからもやっていくと決意したのはいつ頃ですか?

高校に入る時ですね。ラグビーを始めたのは小学2~3年の時でしたが、小学5年からはサッカーもやっていて、中学くらいまでは両立させていたんです。小学生の頃は、平日はサッカーの練習をして、土日は午前中にラグビーの練習をして、午後からサッカーの試合に行くということを続けていました。

小学生の時は両方ともクラブチームで、中学ではラグビーはクラブチームで、サッカーはサッカー部に入っていました。サッカーではフォワードかトップ下でプレーしていて、得点に絡むポジションでした。

—— サッカーで得点を取る喜びと、ラグビーで試合を動かす喜びとでは、どちらが大きかったんですか?

当時はサッカーで得点を取った方が嬉しかったと思いますが(笑)、今となっては自分の判断でチームが勝利する方が喜びは断然大きいですね。

—— なぜラグビーを選んだんですか?

当時はかなりサッカーを選ぶ方に心が傾いていましたね。高校に入る時にサッカーかラグビーかを選ばなければいけなくて、全体的に考えるとラグビーの方が面白いと思ったので、ラグビーにしました。あと、正直、サッカーではもっと上手い人がたくさんいるだろうと思いましたし、ラグビーの方が有名になれるだろうという思いもありました(笑)。

—— 高校時代での活躍は?

地元は福岡で、高校は熊本の荒尾高校に行っていました。高校時代は九州代表には選ばれていて、高校日本代表の候補までには選ばれましたが、高校日本代表には選ばれませんでした。

—— 大学では何年生からレギュラーでしたか?

2年からレギュラーでした。1年の時には副キャプテンの滑川さん(剛人/トヨタ自動車)がいたので、なかなか試合には出られず、Bチームでプレーしていました。2年になって、対抗戦の初戦は違う人が先発で僕がリザーブだったんですが、それ以降は僕が先発でプレーさせてもらえるようになりました。

—— 試合に出ることへの自信はありますか?

スクラムハーフをやっている選手は、基本的には負けず嫌いな性格だと思いますし、試合に出たいという思いは強いと思います。

◆提案口調で言われた方が受け入れやすい

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—— サンゴリアスの現在の調子はどうですか?

僕は1年目なので、チームが勝っていた時を知らないですし優勝も知らないんですが、リーダーやスタッフが色々なことを考えて取り組んでいると感じます。その中で、僕は1年目だからと言ってリーダーたちが取り組んでいることを遠目に見るのではなく、そこに一緒に加わってチームのことを考えて、更に良くしていかなければいけないと感じています。

—— リーダーシップはあると思いますか?

リーダーシップは人それぞれで、色々な形があると思いますが、僕は大学でもキャプテンをやっていましたし、それ以前もリーダーという役割をやってきているので、チームのことを考えたり、しっかりと周りとコミュニケーションを取るということは得意な方だと思っています。

ただ、組織の中にいると、「1年目だから遠慮するな」という考えもありますが、リーダーに任せた方がチームの雰囲気が良くなることもあります。だから、僕はあまりリーダーということを考えずに、フレッシュな気持ちでラグビーを追及していこうと思っています。

—— 周りの人がどう考えているかということも考えているんですか?

その人の言動や行動の意図を常に考えるようにしています。もちろんその意図が分からないことがあれば、話をして理解するようにしています。周りは色々な経験を積んできている方たちばかりなので、立場を間違えないようには気を付けています。例え、僕が自信を持って言える意見だとしても、それを上から言うようなことが無いように「こういう意見があるんですが、どうですか?」というように、立場や立ち位置を考えて伝えるようにしています。

—— その姿勢はどこで学んだんですか?

学んだというよりも、僕の感覚では普通な感じではありますね(笑)。これまで指導を受けてきた中でも、上から命令口調で指示をされるよりも、「こういうことがあるけど、どうだ?」と提案されるような口調で言われた方が、聞く側も受け入れやすいと思います。

◆ワールドカップで9番をつけて活躍する

—— 自分の課題とチームの課題は?

チームの課題としては、パナソニック戦は完全に力負けした感じがあり、あの試合を初戦で経験出来たことは、ある意味良かったと思います。近鉄戦に関しては、チームがバラバラになってしまっていて、意思がないプレーでトライを取られてしまっていたと思います。ただ、その試合があったから、次の練習からは、「チームとして何がやりたいのか」というミーティングをして、しっかりと意思のある練習が出来ていると思います。

それによって、ホンダ戦ではチームの良い部分がたくさん出たと思います。もちろん反省する部分はありましたが、これからはどれだけ同じ方向を向いて、意思のあるラグビーを出来るかだと思います。

自分の課題としては、サントリーが良いプレーが出来ている時は自分も良いプレーが出来るのは当たり前なんですが、ディフェンスが強いチームに対してどう試合を作るか、という部分だと思います。

—— 意識としては常にラグビーのことを考えているんですか?

24時間というわけにはいかないんですが、仕事をしている時でも、水分をちゃんと摂って体のケアをするようにしています。仕事中にラグビーの戦術のことを考えることはありませんが(笑)、寮に帰ってから部屋で他のチームの試合を見て、自分であればどういうプレーをするかを考えながら過ごすようにしています。

—— ワールドカップはどういう思いで見ていましたか?

南アフリカ戦に関しては、正直、ファン目線で見ていましたね(笑)。初めて見る時にはファン目線で見て、2回目からは分析しながらラグビー選手としての目線で見るようにしていました。

ラグビー選手としての目線で試合を見ていても、やっぱり南アフリカ戦は「凄い」と思ってしまいますね。日本代表選手みんながハードワークをして、良い判断をして南アフリカに勝ったので、奇跡ではないような気がします。

—— あの場に立ちたいと思いますか?

もちろんそう思っています。ワールドカップの舞台で9番をつけて活躍することがターゲットですし、そこはブレていません。ただ現時点では、まだまだそのレベルには達していないと思うので、先は見つつも、しっかりと1日1日を積み重ねていくことが大切だと思います。だから僕に必要なことは、毎日を全力でハードワークすることだけだと思います。

—— 注目して欲しいポイントは?

素早いパス捌きでチームのアタックを生むところは、もちろん見て欲しいところではあるんですが、1年目なので、キックやランなどでの僕の思い切りの良さを見てもらいたいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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