SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年12月 2日

#458 沢木 敬介 『日々進化するサントリーのオリジナリティあるラグビーを』

3年前にU-20日本代表ヘッドコーチ就任。そして記憶に新しいラグビーワールドカップ2015イングランド大会では、日本代表コーチングコーディネーターとしてエディー・ジョーンズHCをサポートし成果を挙げた沢木敬介コーチがサンゴリアスに帰ってきました。グラウンドに出たその日からチームの雰囲気を変える存在感は健在。 3年間チームを離れた期間に経験した沢山のこと、これからの日本代表の方向性、そしてサントリーに今必要なことは何なのか? 3年振りに戻ってきた沢木コーチに大いに語ってもらいました。(取材日:2015年11月24日)

◆U20日本代表HC、日本代表コーチングコーディネーター

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—— 3年ぶりにチームに戻ってきましたが、チームを離れていた3年間はどんな活動をしていましたか?

まず3年前にU20日本代表のヘッドコーチとなり2年間取り組みましたが、ヘッドコーチ2年目からは、日本代表のバックスコーチも掛け持ちでやっていていました。U20日本代表が上のカテゴリー(ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2015)へ昇格することが出来ました。その後、ワールドカップが終わるまで、日本代表のコーチングコーディネーターとして仕事をしていました。

—— U20日本代表での手応えは?

当時は、大学ラグビーやその年代のレベルがどの位のものかもあまり分かっていませんでしたし、実際にやってみたら、失礼な言い方になってしまいますが、練習3日目で「今年は勝てないな」と思いました。トップリーグの選手と比べると、ラグビーのレベルもメンタルの部分もまだ成長中の選手ばかりなので、そこですぐに考え方を切り替えました。

今だから言えますが、1年目はしっかりと作り上げて、2年目で昇格させることを考えて、そのためには1年目にどういう選手を選ぶかと考えました。 2大会連続でU20を経験させるため、まだ選ばれるレベルじゃないかもしれないけど将来可能性のある選手を、年齢が若くても選びました。15人のうち8人は2大会に出られる選手を選び、2年目の時にその8人を中心にチームを組んで昇格することが出来ました。

—— チームの現状を見た上での対策が上手くいったんですね

あの年代には2大会連続で出場するということが、とても大きな経験になりますし、大会に出ることによってインターナショナルラグビーはどういうレベルなのかが分かるようになります。8人を軸にチームを作るというプランを持って取り組めたことが、大きかったと思います。

—— どういう経緯でU20日本代表のヘッドコーチに就任したんですか?

エディー(ジョーンズ/元日本代表ヘッドコーチ)から言われました。U20ヘッドコーチになる時に、エディーからは「2年で昇格させて、その後は日本代表のコーチになれ」と言われていました。

—— U20日本代表で軸にした8人が日本代表へと成長しそうですか?

U20であの大会を経験して、すでに2人は日本代表キャップを持っていますからね。だから、順調に育っていけば、日本代表にも選ばれると思います。

—— 沢木コーチの後は中竹竜二ヘッドコーチとなりましたが、上手く引き継げましたか?

昇格した次の年で落ちるわけにはいかないので、そこも見据えて、更にその次の大会にも出場出来る選手を6人くらい残してきました。あと、僕がやっていた時は、外国人選手はいませんでしたが、今年は良い外国人選手が3人いるので、全体として良い選手が揃っていると思います。

◆U19、U20の強化が連携出来た

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—— 人間的にも成長させるため、かなり厳しいトレーニングを課したんですか?

相当、厳しくしましたよ。やり始めてすぐの頃には、みんなラグビーが嫌いになっていたと思います(笑)

例えば、フィットネスのトレーニングで、スタート位置や折り返し位置を守っていなかったりしていたので、規律のところはめちゃくちゃ厳しく言いました。 グラウンド上で規律の部分を厳しく言っていると、私生活でも規律が守られるように自然となっていくんです。僕は学校の先生ではないので、グラウンド外ではあまり規律のことは言っていないと思います。

—— 初めて代表でのヘッドコーチ経験がU20日本代表でしたが、この経験はどうでしたか?

チームの全体を見なければいけないということは勉強になりましたね。ただ、ラグビーの戦略や戦術という部分については、サントリーでもずっとやってきていましたし、直弥(大久保/前サントリー監督/NTTコミュニケーションズFWコーチ)と一緒にやっている時から、その部分は任せてもらっていました。監督としてチームを持ったことはU20日本代表が初めてでしたし、特に若い選手たちだったので、色々と勉強になることが多かったですね。

—— 具体的にどういうところが一番勉強になりましたか?

選手だけじゃなくスタッフも含めて、全体をしっかりとマネジメントしていかなければいけないというところですね。僕がヘッドコーチになる前までは、U20日本代表のプランニングが全くなかったんです。

そのことを岩渕(健輔/前日本代表GM)に伝えたら柔軟に対応してくれましたし、U20は海外で試合をやる機会がなかったので、そういった機会も設けてくれました。結果を出すための新しいチャレンジを色々とやらせてもらいました。

—— U20日本代表はどこを拠点にトレーニングをしていたんですか?

拠点はなくて、色々なところを転々としていたので、そういうところも勉強になりました。あと学生なので、テスト期間もありますし、学校の授業にも出なければいけないので、その合間を縫ってキャンプのスケジュールを組まなければいけません。だから、全大学の試験日をマネージャーに言って調べてもらって、空いているところでどんどんキャンプを組んでいきました。

学生の成績が悪くなってしまってはいけないと思いますし、各大学の練習や試合もあるので、その部分の調整は大変でした。ただ、その中でしっかりと強化していかなければいけないので、難しかったですね。それでも最後の方は期間的にもある程度は拘束することが出来たので、そこで集中的に強化をすることが出来ました。

—— 選手を見に、全国色々なところに行ったんですか?

良い選手がいるという情報が入れば、実際に見に行きましたし、色々な情報を集めました。昇格を決めた時のメンバーはU19の時から見ていた選手たちで、その選手たちを中心にU20のチームを作りました。

今までの代表を見ていると、U19はU19で終わり、U20はU20で終わりという感じで、強化の連携が全くなかったんです。だいたいの選手のレベルも知っていますし、強化が連携出来たことが良かったと思います。

◆日本代表に次の日に合流

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—— 日本代表にコーチングコーディネーターとして参加したのは、いつからですか?

2014年4月に香港で昇格を決めて、1週間くらいゆっくりしてから日本代表に加わるというイメージを持っていたんですが、エディーから「次の日に合流」と言われて、一度も家に帰らないまま、香港から羽田空港に行って、羽田空港のホテルに泊まって、そのまま朝一で宮崎に行きました(笑)。

—— 沢木コーチが加わる前から日本代表はワールドカップに向けて活動をしていたわけですが、途中からチームに入ってみてどう感じましたか?

その1年前から菅平のキャンプなどには行っていて、そこにはサントリーの選手もいましたし、キン(大野均/東芝)は僕が現役の時に日本代表で一緒にやっていたので、顔を知らない選手はほぼいなかったんですよ。エディーの強化は物凄く拘束時間が長いんですが、それはもともと知っていたので、日本代表に加わった時に驚いたことはありませんでした。

—— エディーさんが鍛えていた選手たちはどう見えましたか?

最初の頃は、まだ高いレベルではありませんでした。ワールドカップの時とは全く違いましたよ。僕が参加した時は、強化してまだ2年目くらいでしたし、運動量や体つきの部分でも、これから出来上がってくるという段階でした。

—— コーチングコーディネーターとしての役割は?

色々な人に聞かれるんですが、日本代表ではエディーが決めたトレーニングをコーチ陣たちと話し合って具現化して、それを反映させたトレーニングメニューを作っていくというのが僕の仕事でした。あとは試合で使うサインプレーのプレーシートを作ったり、ウィークリーのスケジュールを作ったりしていました。エディーから課されるお題があるので、それをクリアしていくという感じです。

—— そのお題はどういう感じで出されるんですか?

「これをやれ」というお題がボンボンと出てくるので、それをどのタイミングでどう入れて、どういうドリルでやるかというのを、各担当のコーチと具現化していっていました。

—— どのくらいのペースでお題が出されるんですか?

毎日出されます。エディーからメールで届いたお題に対して、日ごとにも作っていますし、1週間単位でも、1ヶ月単位でも作りました。

◆エディーが更にパワーアップ

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—— 沢木コーチの前は誰がその役割をやっていたんですか?

ワイジー(スコット・ワイズマンデル)がやっていて、その姿を見て凄いなと思っていました。「よく毎日こんなことが出来るな」と思っていたので、最初の頃は嫌で仕方なかったですよ(笑) これを毎日出来るかなと思っていましたが、人間は慣れればやれるもんですね。最初はやり方も分からなかったので、2~3週間は本当に大変でした。

ただ、僕はこういう性格なので、色々と言われたとしても、その話は聞きますがシリアスに落ち込んだりはしません。エディーがサントリーにいた時も、ある程度は同じような感じでしたが、日本代表では更にパワーアップしていて、めちゃくちゃ細かくなっていたと思います。

—— 日本代表では外国人コーチもいて、そこについては大変ではなかったですか?

トレーニングの時間も限られていましたし、エディーが何を求めているのかということをコーチ陣は物凄く気にしていました。毎日ディナーの後に、コーチ陣だけでミーティングをして次の日のトレーニングメニューを作っていました。

そのメニューを次の日の朝一で僕がエディーのところに持って行って、そのメニューをもとに、朝にエディーを交えたコーチミーティングがあるんです。そのコーチミーティングでエディーが質問してきたことにバンバン答えられないと、各コーチがエディーから色々と言われるんです。だから、その準備をしっかりとやるようにしていました。

—— 外国人コーチたちも、エディーさんのことを100%理解していたわけではなかったんですね

やっぱりどういうことを求めているかということは、一緒に仕事をしていないと分からないですよね。ディフェンスコーチだったリー・ジョーンズは、ウェールズ代表でコーチをした経験があっても、エディーとは一緒に仕事をしたことがなかったので、毎回指摘をされていて、大変だったと思いますよ。

—— 選手もコーチも厳しく言われて大変だったんですね

トレーニングの時間が限られていたので、選手には厳しく言わないですし、言ったとしてもその場だけなので、選手はまだ良い方だったと思いますよ。コーチはそこに答えやパフォーマンスを求められますからね。

◆ゴローのキック成功率の全責任

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—— 日本代表の映像を見ると、五郎丸選手のキック練習の後ろで沢木コーチが付き合っている姿が映っていましたね

それも「ゴロー(五郎丸歩/ヤマハ発動機)のキックのパーセンテージを上げるにはどうしたらいいか」という難題がエディーから来るわけです。当時の日本代表のトレーニングは凄くハードで、ハードなトレーニングが終わった後にキックを蹴っても、良いキックは出来ないんですよ。

だから「週に1回、ゴローにチームの練習をしないでキックだけの日をくれ」とエディーに言ったら、それに対してはOKを出したんです。それでゴローのキックの成功率が上がったから良かったですけど、もし成功率が上がらなければ、その全責任は僕に来るところでした(笑)。

—— キックの練習はどれくらいやっていたんですか?

ウォームアップを入れて40分くらいです。本当に集中して、1本1本時間を掛けながらゆっくり蹴らせて、それを1本1本見ていました。

—— メンタルコーチとの連携もあったんですか?

荒木さん(香織)って、大学の先輩なんですよ。同じ学部で、僕が1年の時の4年生でした。荒木さんは当時から僕のことを知っていたみたいなんですが、僕はまったく記憶がありませんでした(笑)。もちろん日本代表で連携を取っていましたが、あえて変なプレッシャーを掛けるような練習をさせていました。

宮崎合宿で、ゴローがキックの練習をする時にも、蹴る時のルーティーンを止めて練習をさせて、あえてストレスを掛けるような練習をしていましたし、ルーティーンを崩した時にどういう精神状態で蹴れるかということもやりました。

それをやる前に、荒木さんに話してみて、「そういうことをやったら面白いから、トレーニングに入れていった方が良いんじゃない」という言葉ももらいました。

—— 五郎丸選手のキックデーはいつ頃から設けたんですか?

たぶん1年くらい前だったと思います。

◆準備が完璧にはまった

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—— 色んなコーチが集まったことの良さがワールドカップで出たと思いますが、コーチングコーディネーターとしては、どこが良かったと思いますか?

みんながスペシャルな能力を持っていたと思いますし、エディーはそういう人じゃなければ呼ばないですよ。エディーは「その分野で自分よりも優れていると思った人じゃないと呼ばない」といつも言っていました。スペシャルな能力があるコーチたちと一緒に仕事をすることが出来たので、僕にとっても勉強になりました。

—— 今後、沢木コーチが同じような立場になった時の参考になると思いますか?

もちろん参考になります。僕のやり方で僕に合っている方法もありますし、エディーがやっていたことで良いなと思ったことは取り入れてみようとは思いますが、エディーのコピーをしようとは一切思っていません。

—— エディーさんがやっていたことで良いなと思ったことは何ですか?

やっぱりコーチのチョイスですよね。そこがヘッドコーチの一番の仕事だと思います。

—— ワールドカップが始まる前の段階で、今回のような結果を残せるチームになったという手ごたえはありましたか?

絶対に2勝は出来ると思っていました。残りの1勝をスコットランド戦だと考えていたんですが、それが南アフリカに変わりました。

—— 南アフリカに負けて、スコットランドに勝っていれば、結果としてはベスト8には進めていましたね

そうですけど、スコットランドも強いですからね。あとは、初戦に全てのピークを持って行っていたので、あのような結果になったんだと思います。

—— ワールドカップでの結果は、驚きでしたか?それとも当たり前の結果でしたか?

南アフリカと試合をする前は、チャンスはあるだろうなとは思っていましたが、絶対に勝てるとは思っていませんでしたよ。あの試合で色々なことが上手く巡り合わさって、チャンスになった時にしっかりと得点に繋げて勝てたということは、今までずっとやってきたことがあったから、あのような状況でもしっかりとパフォーマンスとして出せたんだと思います。

—— あの勝利から得た一番のものは何ですか?

あの試合では何もかもが上手くはまったんですよ。こういうこともあるんだなと思いました(笑)。ただ、そのための準備をしっかりとしていて、その準備が完璧にはまったという感じです。先ほど話したピーキングの部分であったり、グラウンドコンディション、天気、観客まで、予想していたことが全てはまったんです。

—— 予想する力が大事になるんですね

凄く大事だと思います。あとは予想していることを現実にするためのしっかりとしたプロセスも大事だと思います。

◆結果を出す

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—— ワールドカップの試合中はどういう役割でしたか?

試合ではエディーのコメントを選手に伝える役目があるので、ウォーターのところにいました。

—— 実際にワールドカップを振り返ってみてどうですか?

正直、ベスト8に進みたかったんですけど、確実に今までの日本のラグビーの歴史は変えましたし、日本独自の「JAPAN WAY」というオリジナルの戦い方というものを世界に見せられたので、満足はしています。ベスト8に進めなかったので、結果については満足していませんが、ワールドカップで3勝したことと、確立したスタイルを発信出来たことに対しては良かったと思っています。

—— このスタイルは、監督が変わろうが、日本代表として継承していくべきものだと思いますか?

そういうものでもないと思いますよ。もしかしたら違ったやり方で、今回のワールドカップよりも良い成績を残せる方法があるかもしれませんし、ラグビーではこのやり方が正しいというものはないと思っています。

—— 2019年のワールドカップ日本大会に向けて、今後の日本代表はどのように取り組んでいけばいいと思いますか?

まずはもう一度、しっかりとしたビジョンを掲げなければいけませんし、そのために出来るだけ早く優秀な監督を連れて来なければいけません。あとはどうやって強化していくかというところで、スーパーラグビーと日本代表をどう繋げていくかという部分がまだ明確になっていないと思うので、そこをしっかりとクリアにして、世界で勝つためのプランや準備を、すぐにでも取り組まなければ2019年に良い結果が残せないと思います。

—— また沢木コーチが日本代表に呼ばれることもあり得ますね

外国人監督になった場合、これまで一緒に仕事をしてきたコーチを連れてくることが多いので、僕が呼ばれることはあまりないとは思いますよ。僕はサントリーに帰ってきたので、まずはサントリーで結果を出して、結果を出すことによってまた新しいチャンスが巡ってくると思っています。2019年の日本大会の時には、また新しいチャレンジが出来るようなポジションにはいたいと思っています。

◆同じことをやっていたのでは勝てない

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—— サンゴリアスを離れていた3年の間、サンゴリアスのことをどういう気持ちで見ていましたか?

もちろん勝って欲しいと思っていましたよ。ただ、ラグビーは日々進化しているんですが、これまでのサントリーのスタイルは進化をせずにやってきていたと思います。毎年進化をさせていかなければいけない中で、勝てないサントリーを見ていると、同じことをやっていたのでは勝てないなと感じました。

—— これまで進化出来ていなかった原因は何だと思いますか?

変えようとしていても、チームが変わるところにまで手を付けていなかったんだと思います。ただ、小さな変化であっても、それが選手のパフォーマンスに反映されていれば良いと思いますよ。結局は、僕らは結果やパフォーマンスで評価される仕事をやっているので、進化させようとしていても、結果が変わっていなければ、また同じことをやっていると評価されても仕方がないですよね。

—— 沢木コーチが戻ってきた役割がそこにあるんですか?

そこは凄くあると思いますよ。

—— シーズンの途中からサンゴリアスに加わることになりましたが、さっそくその役割に取り組んでいるんですか?

まずは僕の持ち場を責任もってやるということです。ただ、僕が日本代表を見てきて目が肥えているのかもしれませんが、はっきり言って今のサントリーのスキルのレベルは、全く高いものではありません。サントリーが理想のラグビーをやるための武器を身につけているかと言えば、僕は違うと思っています。昔の武器しか持っていなくて、それで理想のラグビーをやろうとしても、それでは勝てないんです。しっかりレベルアップした武装をしていなければ、レベルアップした戦い方は出来ないと思います。

—— フィジカルについてはどう思いますか?

フィジカルにテッペンはないと思いますし、フィジカルレベルはあればあるだけいいと思います。

—— スキルやフィジカルを上げていくためには、何をしていかなければいけないと思いますか?

取り組むトレーニングの内容が選手のパフォーマンスに直結するやり方に、どんどん進化させていかなければいけないと思います。今と同じ時間を使っても、もっと成果のあるトレーニングにしていかなければいけないと思います。

—— 日本代表でのコーチングコーディネーターと同じような役割がサンゴリアスでもあるんですか?

サントリーでは全く違います。僕は途中からチームに入ってきているので、途中から入ってきた人の感覚で意見が言えますし、チームに足りない部分を客観的に言える立場にいると思います。ただ、僕の立場としては、チームが勝つための力にならなければいけないと思うので、上手くバランスを取りながらやっていこうと思います。

—— 今シーズン中にスキルやフィジカルのレベルアップは出来そうですか?

これからやる練習や試合、選手の心構え、コーチングのレベルアップ次第で、変わっていくと思います。

—— 選手からも期待されているんじゃないですか?

嫌がっている選手もいると思いますよ(笑)。「また帰ってきたのか」と思っている選手もいるとは思いますが、僕は選手に好かれようとは一切思っていませんし、嫌われてもいいから、その選手を「ラグビー選手として伸ばしてやろう」としか思っていません。

—— 選手として、そしてコーチとして日本代表を経験してきて、今だから思うラグビーの面白さって何ですか?

ラグビーは日々進化していて、ボールの動かし方ひとつとっても何パターンも出来てきていて、僕が現役の時と比較にならないくらい増えています。それはキック然り、パス然り、ラン然りなんですけど、そこの判断力とオプションなどのボールを動かすための手段については、昔と比べると歴然とレベルアップしていると思います。

そういう世界のレベルに、日本も早く追いついていかなければいけないと思いますし、サントリーは日本のトップをずっと走っていかなければいけないと思うので、日々進化するサントリーのオリジナリティあるラグビーを見つけていかなければいけないと思います。

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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