2015年10月21日
#452 成田 秀悦 『トライを取ることがチームに貢献すること』
スクラムハーフ、ウイング、そして今度はフルバックに挑戦中の成田秀悦選手。9年目のシーズンを迎えても、新しい挑戦は続きます。初フルバック直前、そして直後の成田選手に話を訊きました。(取材日:2015年9月24日)
◆新しいことにチャレンジ
—— 9年目のシーズンとなりましたが、明日(9月25日)のリコーとの練習試合では、初めてフルバックで出場しますね
この歳(31歳)になって、新しいことにチャレンジ出来るということは良いことだと思います。自信が無ければ出来ませんが、不安はたくさんあります(笑)。
—— 初フルバックとしてのお手本はありますか?
自分が実際にプレーすることを考えながら、これまで剛さん(有賀)や他のフルバックの選手のプレーを見てきたわけではありませんが、これまでもフルバックの人がこう動くからウイングとしてはこう動こうとか、フルバックがこう動いてくれるとウイングとしてはトライを取りやすいという話はしてきました。
—— ディフェンスについてはどうですか?
ディフェンスは難しいですね。剛さんも言っていましたが、アタックについてはある程度は自由に動けるんです。試合の前日でも不安な部分があるので、この不安は経験を積まなければ解消されないものだと思っています。
—— 練習でフルバックをやり始めたのはいつ頃ですか?
網走合宿が終わって、プレシーズンリーグが始まる頃からです。ワールドカップで代表選手が抜けている中、ウイングの選手は多くチームに残っているんですが、みんな調子が良くて、試合に出られるか出られないかは、本当に少しの差で決まっている状況です。
—— フルバックをやることになった時、最初はどんな感じでしたか?
スクラムハーフをやった時もそうでしたが、違うポジションをやることによって、ウイングのことが少し違った目線で見られるようになるんですよ。フルバックをやることは良い経験になると思います。
◆ウイングで勝負
—— フルバックでの手応えは?
ウイングとフルバックで“バックスリー”とまとめられますが、改めて仕事内容は全然違うと感じましたね。フルバックは色々なポジションの選手とコミュニケーションを取らなければいけませんし、色々なところを見なければいけないので、新鮮な気持ちでやっています。
フルバックは指示を出すことが大事になりますが、これまでウイングとしてフルバックに言っていたことを、今は逆に言われています。今まで言っていたことを、実際に自分がやるとなると、意外に難しいことなんだなと感じています(笑)。
—— 自分の中でフルバックとしてやっていけると思えるタイミングはいつ頃だと思っていますか?
僕が1年目、2年目の選手であれば、長期的に考えて取り組んでいきますが、もう9年目ですし、いつ終わるか分からない年齢になってきているので、完璧なフルバックになることは難しいかもしれません。けれど、自分の中でのフルバックはこういう選手という姿は見せていきたいと思います。
フルバックはある程度は自由にアタック出来るポジションなので、ウイングよりもボールタッチは増えると思っています。相手との抜き合いは得意なので、そういう場面を増やすことが出来れば、フルバックでも僕の形を作れると思います。キックを蹴られても、カウンターで僕の持ち味を出せるんじゃないかなと思っています。
—— ワールドカップの日本対スコットランド戦で、前半終了間際の五郎丸選手のタックルのようなシーンも見られそうですか?
あのプレーは、フルバックをやっている選手にとっては良いイメージを持てると思います。勉強になるプレーでした。フルバックでプレーしていて、ヤス(長友)と一番話をしているので、後輩だけど頼りにしています。普段のヤスはふざけたことを言ったりするんですが、ラグビーに対しては真面目なので、ヤスの言葉は響くんですよね。
—— ディフェンスでの最後と砦としてのプレッシャーはありますか?
正直に言うと、明日のリコー戦をやってみないと、何とも言えない状況です。楽しみ6割、不安4割という感じです。今はフルバックをやっていて、孤独を感じる時があります。広いスペースに一人で残された状況の時の怖さがあります。剛さんに話を聞くと、「経験だよ」と言われるので、実際に剛さんと一緒にプレーして、経験を積んでいきたいと思います。
—— 今シーズンはフルバックで勝負していくんですか?
いや、あくまでもウイングで勝負します。もし明日のリコー戦で良い感触を掴めれば、またひとつ武器を得ることになるとは思っています。
◆周りの家から
—— ワールドカップの日本対南アフリカ戦を見て、どう感じましたか?
感動しました。選手であれば誰しもがあの場に立ちたいという感情が出てくると思いますが、それよりも先に感動が来たので、かなりのインパクトがありました。感動の後に、あの場に立ちたいという感情が出てきたので、思い出しても凄い試合だったと思います。
—— あの試合は日本代表の出来が良かったと思いますか?
南アフリカの調子が悪かったとか、色々と言う人はいると思いますが、そういう状況は関係なしに、日本代表が良かったと思います。
—— ああいう試合では、どこを中心に試合を見ていたんですか?
バックス全体を見るようにしていて、日本代表にもアタックの形があるので、その形全体を見ています。ボールを良く動かしていましたし、調子が良さそうに感じましたが、まさか勝つとは思っていませんでした。
—— サントリーの選手には思い入れを持って見ていたんですか?
見ていますね。日和佐やハタケ(畠山)は、2011年のワールドカップでのプレーも見ていたので、頑張って欲しいという思いで見ていました。けど、一気に注目されるようになったと思います。スコットランド戦を家で見ていたんですが、妻が急に「音を消して」と言うので、一度だけ音を消したら、周りの家から「行けー」とか「止めろー」とか聞こえてきて、家にいる時にそういう声を初めて聞きました。凄く注目されているんだと思いましたね。
◆自分自身がアグレッシブ
—— 今シーズンの目標は?
チームとしては頂点を狙うことはブレていないので、その目標を達成したいと思います。個人としては試合に出て、トライを取りたいと思います。トライを取ることがチームに貢献することだと思っています。1試合で何トライも出来る日は、何回ボールをもらってもトライを取れる感覚があるので、そういう感覚になる試合を増やしていきたいと思います。
—— その感覚になるためのコツは?
過去に何トライもした試合を振り返ると、自分自身が凄くアグレッシブだと感じます。明日のリコー戦では色々と考えてしまうと思うんですが、逆に不安に思っていることを忘れて開き直った方が、アグレッシブなプレーが出来るような気がしています。ぜひ試合が終わった後にも話を聞いてください(笑)。
(リコー戦直後に改めてインタビューをしました)
—— 初フルバックはどうでしたか?
みんなに良かったと言われます(笑)。ただ、実際に映像で自分のプレーを振り返るまでは何とも言えません。インタビューで孤独と言いましたが、実際に試合をやってみて分かったことは、フルバックは孤独ではありませんでした。
—— 手応えは?
ウイングでプレーしていたら、すぐにその日のプレーを振り返れるんですが、初めてのポジションだったので、本当に今は分からない状況です。
—— 面白かったですか?
フルバックとしてというよりも、この試合自体が面白かったですよ。みんながファイティングスピリッツを出してプレーしていましたし、僕がダメでも、みんながどんどん動いてくれていたので、心強かったです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]