SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年10月14日

#451 大島 佐利 『絶対に走り勝つ』

7人制日本代表となってオリンピック出場を目指す大島佐利選手。間近に迫ったオリンピックのアジア予選に向けて、その意気込みを訊きました。(取材日:2015年9月29日)

◆ボールを動かす

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—— アジアラグビーセブンズシリーズ第2戦タイセブンズで優勝し、昨日帰国しましたね

アジアシリーズは中国、タイ、スリランカ、香港の4戦あって、このアジアシリーズでリオデジャネイロオリンピックの出場権を得られるのは、香港大会で1位になったチームのみになります。ただ、その前の大会でいい成績を収めていれば、組合せに影響するので、香港大会ではタイトな試合は減ると思います。日本は第1戦中国大会、第2戦タイ大会で優勝しているので、アジアシリーズのポイントでは1位につけています。

—— 2戦続けて優勝出来ている要因は?

今までにないくらいセブンズ日本代表としての合宿を行っていますし、その合宿の中で厳しい練習をしています。チームとしても「絶対にオリンピックに出場するために勝つんだ」という思いがありますし、勝つためにこれをやろうと決めて取り組んでいることがあるので、それが要因だと思います。

—— 以前のインタビューではブレイクダウンが課題と言っていましたが、現在の課題は?

ルールや世界のセブンズのトレンドが変わってきていて、ラックを作らないわけではないんですが、それよりもボールを動かすことに重点を置いていて、必要がある時に、しっかりとラックを作るスタイルになっています。これまでよりもボールを動かして、空いたスペースにボールを運ぶ展開を目指しています。

—— そのスタイルだと、日本のアドバンテージはどの辺りになるんですか?

日本人の俊敏性を活かせるということで、スペースが空いているところにボールを運ぶことが、日本人にとってはポジティブなアドバンテージとなり、トライまで繋げられるんです。そのためにキックを使うこともありますし、スペースが空いていれば、まずはそこにボールを運ぶことを考えてプレーしています。

—— 世界も同じようなスタイルのチームが多いんですか?

スタイルは色々ですね。ポイントをどんどん作るチームもいれば、フィジーのように個の力でボールを前に運びラックを作らないチームや、ニュージーランドのように個々の能力と組織力で戦うチーム、南アフリカやオーストラリアのように規律の取れたアタックをするチームもいます。なので、15人制よりもチームの特徴が出ていると思います。

—— 各国の特徴としては、15人制と共通している部分はありますか?

近い部分もあると思いますし、セブンズならではの特徴もあると思います。

◆組織ディフェンスで大事なこと

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—— アジアでのライバルは?

香港が一番のライバルになると思います。オリンピックを懸けた大会が香港大会になるので、ホームアドバンテージは絶対にあると思いますが、僕らも長い時間をかけて積み上げてきたものがあるので、その力を香港大会でぶつけたいと思っています。

—— セブンズ日本代表も成長を続けていると思いますが、どの部分が良くなっていると思いますか?

一番はディフェンスの部分です。春から個々のタックルスキルを上げる取り組みをしてきましたし、組織ディフェンスの考え方をみんなで共有してやり続けてきたので、以前よりもレベルアップしていると思います。

日本人の個々のスピードやパワーは強豪国に劣る部分があるんですが、組織ディフェンスで大事なことは、タックルをして速く起き上がることを意識して、ディフェンスラインを速くセットすることことです。

—— そのスタイルを実行するためには、かなりハードなトレーニングが必要そうですね

そうですね。朝からトレーニングを開始して、3部練をしたり、たまに4部練を行うこともありました。このスタイルでやると決めたからには、絶対に走り勝つということをテーマに春からトレーニングをしてきました。僕も走りすぎて痩せてしまうくらい走り込みました(笑)。これまでのラグビー人生の中で、一番走っているんじゃないかと思いますね。

—— 合宿や練習はどこでやっているんですか?

その都度、色々なところで合宿をしていて、大会が近くなるとほとんどの大会が海外なので、成田空港の近くで練習をしたりします。8月にはオーストラリアに遠征に行かせてもらい、オーストラリア代表と合同練習や試合をさせてもらいました。

—— オーストラリア代表と戦ってみて、どうでしたか?

ブレディスローカップの前座試合としてオーストラリア代表と試合をしたんですが、結果としては0対45のボロ負けでした。ただ、通用すると感じる部分がいくつもありましたし、取り組んできたディフェンスの課題も見つかったので、収穫のある試合だったと思います。点差は離れましたが、最後まで走り切って、タックルした後もすぐに起き上がるという春から取り組んできた部分が、世界に通用すると感じることが出来たことが大きかったと思います。

◆オリンピックの出場権を取る

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—— 今後の大会のスケジュールは?

10月10日、11日とアジアシリーズ第3戦スリランカ大会があり、香港大会が11月7日、8日になります。10月3日からスリランカ大会に向けた合宿がスタートします。

—— 大島選手としては、今は7人制をメインにトレーニングをしていることになりますか?

そうですね。けど、サントリーにいる時はチームの練習に参加して、全体練習が終わってから個人でトレーニングをしています。

—— 今のセブンズ日本代表の良さはどこだと思いますか?

全員が「オリンピックの出場権を取ること」と、「世界のベスト4に入るチームを倒すこと」を目標に取り組んでいて、これまで積み上げてきたことを最後まで諦めずに出し切れば、絶対に目標は達成出来ると思いながら取り組めているところだと思います。

この前のタイ大会の準決勝は香港と対戦したんですが、その試合では先制をしながらも逆転をされ、取って取られての展開となり、ラストワンプレーで同点にし、延長戦で逆転勝ちしたんです。最後まで諦めず出し切るという試合が出来るようになってきていると思います。

—— セブンズ日本代表としての経験が、自分自身にどう影響を与えていますか?

セブンズのスピード感覚は良い経験になっていますし、やはり日本代表として負けてはいけないという状況の中で戦えていることが、本当に良い経験になっていると思います。

—— オリンピック出場や強豪国を倒すというモチベーションはどこから来ていますか?

15人制の日本代表選手と僕らが7人制で戦ったら僕らが勝つと思います。だからこそ、「僕らがここにいるんだ」というプライドをみんなが持とうという話をしています。7人制にはオリンピックがあるということと、僕らが日本一のセブンズプレーヤーという思いを持っていることが、一番のモチベーションになっていると思います。

ラグビーワールドカップで日本代表が南アフリカに勝ったことは、セブンズをやっている僕らにとっても嬉しいことでしたし、一緒にサントリーでプレーしているみんなが活躍してくれたり、頑張っている姿を見ることで、本当に勇気をもらいました。

ワールドカップ、オリンピックのどちらに出たから良かったということではなく、これまでラグビーに接する機会がなかった人たちに、ラグビーを好きになってもらえるのであれば、15人制でも7人制でもどちらでも良いと思っています。

—— 今年のワールドカップでの盛り上がり、そして来年にはリオデジャネイロオリンピックがあり、日本のラグビー界にとってはとても大きなチャンスですよね

15人制の日本代表が南アフリカに勝った時、7人制の日本代表メンバー全員でその試合の放送を見ていたんですが、7人制日本代表として本当に勇気をもらいました。そしてこれまでラグビーをやってきた中で、これだけ大きくニュースや新聞に取り上げられることは初めてのことでした。15人制日本代表が頑張ってくれたおかげで、初めてラグビーを見るという人が増えたと思います。

7人制日本代表としても、この盛り上がりに負けたくないという思いがありますし、来年は僕らの番なので、日本のラグビー全体として頑張っている姿を見せて、ラグビーをやる人が増えて、ワールドカップもオリンピックも、どちらも子供たちが目指す夢になってくれることが、僕らがラグビーをやっている意義だと思っています。

◆1人1人の役割が大きくて明確

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—— 7人制の面白さはどこですか?

トライも多いですし展開も速いですし、ルールに関しても見ていて分かりやすいと思います。その部分が初めてラグビーを見る方には見やすいと思います。やっている側としても、トライが多いので誰もがトライに絡めるという部分が面白いと思います。僕はあまりトライを取れていませんが(笑)。

細かいところで言えば、1人1人の役割が大きくて明確なので、その部分は15人制よりも楽しい所ですね。誰かがミスをすればすぐに結果に繋がってしまうので責任が大きいと思いますし、やはり代表としては勝たなければいけないプレッシャーがあるので、良い経験をすることが出来ていますし、その状況を楽しめています。

—— トライを取るために、これからどうしていこうと思っていますか?

トライを取るために大事だと思っていることは、どんな局面でも顔を出すことです。味方が作ってくれたチャンスや相手ディフェンスにひずみが出来たところに僕が仕掛けていくことで、もっとトライが取れるようになると思います。

—— 15人制で1試合行うのと、7人制を3試合行うのでは、疲労具合はどうですか?

セブンズでは1日3試合行いますし、2日間行うので、トータルで考えると7人制の方が大変だと感じます。アジアシリーズでは、初日に2試合、2日目に3試合行っていて、1大会で5試合行います。5試合目が決勝になって、1試合前後半7分ずつだったのが、決勝だと前後半10分ずつになるので、体力が最後まで残っていた方が勝つことになります。

僕らは春から決勝をターゲットにトレーニングを積んできているので、アジアでは10分ハーフの決勝になれば、どのチームにも負けないという自信があります。後半残り1分であっても、残り30秒であっても、走り続けられる練習をしてきているんです。

◆7人制の武器をサントリーでも出していけば

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—— サンゴリアスとしての目標は?

プレシーズンリーグ期間中はずっと7人制を行ってきたんですが、11月からのレギュラーシーズン以降は、ずっとサントリーでプレーするので、試合に出て優勝することが目標ですし、チームが掲げている3冠を必ず達成出来るように、チームの力になりたいと思っています。80分であろうと、7分であろうと、1分でも1秒でも、試合に出る機会があれば、全力を尽くすだけです。

—— サンゴリアスで試合に出るためのポイントは何だと考えていますか?

春から7人制をやってきたので、スピード感や運動量、タックルからの起き上がりの部分は、15人制でも必ず武器になると思っています。その武器をサントリーでも出していけば、試合に出るチャンスは必ずあると思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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