SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年9月 9日

#446 山岡 俊 『勝つことが一番の恩返し』

3年というブランクを感じさせない山岡俊コーチ。コーチ業も早くも板につき、サンゴリアスになくてはならない存在感を醸し出しています。新コーチとしての現状と抱負を聞きました。(取材日:2015年8月13日)

◆どう道筋を示していくか

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—— 3年振りにチームに戻ってきて、選手を引退した時と比べると、今のチームは違いますか?

変わらない部分もありますが、やはり3年離れると、選手、スタッフ含め、メンバーは変わっていますよね。サントリーのベースの部分は変わりませんが、トップリーグ全体としてディフェンシブなチームが多くなっていると思いますし、フィットネスレベルも上がっていると思います。ここ2シーズンは勝てていないので、変えていかなければいけない部分はあると思います。

—— 3年間チームを離れている時に外からサンゴリアスを見ていて、何か感じることはありましたか?

選手は自信を持ってプレーしていると思いますが、外から試合を見ていると、「今は少し迷っているのかな」と感じることはありました。サントリーはアタックのチームで、やっているラグビーはすごくシンプルだと思うんです。ただアタックをすることは簡単なことではなく、キツいプレーを選択してやっていかなければいけないんです。

勝っていた時があれば、どうしても比較されてしまうと思います。勝っていた時はキツい選択をして、それが機能していると感じていたと思いますが、勝てていない時には、キツい選択をしていても、「キツい選択をしていないんじゃないか」と思われてしまうと思います。

—— 現役時代とコーチとしてチームに戻ってきた今と、フォワードを比較するとどうですか?

サントリーのスタイルは変わっていなくて、僕が現役だった頃よりもベースは確実に上がっているんですが、他のチームもレベルアップしているので、当時と比較することは出来ないと思います。

フィットネスもストレングスも、僕が現役としてチームにいた時よりも、確実にレベルアップしていると思います。あとは選手がどういうイメージを持って、その能力を使っていくかだと思いますし、コーチやスタッフが、選手に対してどう道筋を示していくか、ということも必要だと思います。

◆フォワードとしてプライドを持つべきところ

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—— アシスタントコーチとしてチームに戻ってきて、フォワードの強化が期待されていますよね

チームを離れていた期間があったので、チームに戻った最初の頃は、「どうしたらいいかな」という思いはありましたが(笑)、チームを離れ外から見ていた経験というものは、チームに良い影響を与えられると思っています。

あと僕は長く現役をやらせてもらっていたので、勝っていた当時のチームの姿と、今の選手を比べた時に、「自分だったらこうしていたんじゃないか」とか、「周りの選手はこうやっていたんじゃないか」と気づく部分もあります。

今の流れというものはありますが、絶対に変えてはいけないベースはあると思うので、フォワードとしてプライドを持つべきところは示せると思っていますし、サントリーのラグビーをやるためには何が必要かという目線でチームを見ることは出来ていると思います。

—— サンゴリアスのベースを発揮するためのフォワードの役割は?

サントリーのベースはアグレッシブ・アタッキング・ラグビーであり、一番はアタックをすることなんです。そのためにフォワードがやるべきことは、セットプレーやブレイクダウン、そしてディフェンスなどになります。アタックをするためにはどうすべきかを考えなければいけません。

昨シーズン勝てなかったことで、今シーズンはどこを強化するかという話になると思いますが、いま挙げたポイントが重要になってきて、アタックをするための生命線だと思っています。アタックするためのベースのレベルを更に上げていかなければいけないと思います。

◆変えていかなければいけない部分

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—— 最初に話に出た、変えていかなければいけない部分とは?

昨シーズンの日本選手権決勝では、ヤマハにスクラムで負けてしまっていましたし、あの状況からアタックしようとしても、プレーの選択がネガティブになっていたと思います。あとはブレイクダウンでプレッシャーを受けて、速い球出しが出来なくなって、サントリーのラグビーが出来なくなってしまっていたと思います。

そこは変えていかなければいけない部分だとは思いますが、ひとつバランスを崩すとサントリーのラグビーは出来なくなってしまうと思うので、ベースのバランスは崩さず、セットプレーやブレイクダウンのスキルを上げていかなければいけないと思います。

—— 昨シーズンの日本選手権決勝をどういう思いで見ていましたか?

スコアは3対15だったので、追いつける点差だと思っていましたし、流れが来れば逆転出来ると思っていたんですが、上手くゲームをコントロールされてしまっていましたね。大事な場面で、上手くスクラムを組めば相手がタッチに蹴ってマイボールから始められると思えるところでも、スクラムでペナルティーを犯してしまっていたり、ボールをキープしたいところでミスをしてしまっていたりと、チャンスの場面で、そういうことが多かったと思います。ゲームを上手く組み立てられれば、違う結果になっていたとは思いましたね。

その時は、まだいちファンというか、OBという立場で、単純にチームを応援する立場で試合を見ていたので、客観的に「ここでこうすれば良いのに」ということを勝手に思っていました(笑)。

◆会社全体のサポート

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—— 選手の時は仕事をしながらラグビーをしていましたが、コーチとしての生活はどうですか?

コーチという立場になり、基本的にはクラブハウスでコーチの仕事をしていますが、会社員ではあるので、定期的に会社に行き、部署のミーティングに出ることもあります。選手の時も部署の皆さんにサポートしてもらっていると感じていましたが、今はもっと大きなところで、会社全体でラグビー部がサポートをされているということを感じています。そのため、コーチという仕事に全力を注いで取り組まなければいけないと思っています。

選手時代はその会社全体でのサポートには気づいていなかったので、今の選手に対しては、ラグビーをやりながら、会社のサポートという部分も伝えていかなければいけないと思っています。

やはり勝つことが一番の恩返しになると思うので、コーチとしてラグビーに全力を注がなければいけないと思いますが、ラグビーをやらせてもらっている立場でもあるので、選手にはそこも理解させていかなければいけないと思っています。

—— フォワードの中で、今シーズン期待している選手は誰ですか?

僕が現役の時に一緒にプレーしていたメンバーがまだチームにいて、そういうメンバーはシーズンに合わせてコンディションを上げてきて、期待通りのプレーをしてくれると思いますが、彼らはそれ以外の役割もあると思います。今シーズンは昨シーズンを超えるパフォーマンスをしてくれると思いますし、チームへの影響力もあるので、シニアメンバーがチャレンジすることで、若手が成長することに期待しています。

今は若いメンバーが増えていているので、代表がチームに戻ってきた11月のレギュラーシーズンで、どれだけの若手がメンバー争いに絡んでくるかだと思いますし、僕らとしたら、どれだけの若手をその競争に絡ませられるかになると思います。全ての選手が競争し、チームを成長させてくれると思うので、全ての選手に期待していますよ。

—— 若いメンバーの中にはなかなか公式戦に出られていない選手もいますよね

そこはもうハングリーに、そしてタフにやるしかないと思います。シニアメンバーは、今は練習からプレッシャーを掛けて合って取り組んでいますが、最初からそれが出来たわけではないんです。それを繰り返すことで、大事なことに気づいていったので、若いメンバーもただ見ているだけではダメで、まずはなぜメンバーに入れていないのかを理解しなければいけないと思います。そして、試合に出るためには何をしなければいけないのかを考えなければいけないと思います。

若いメンバーは自分で考えて、自分にチャレンジしなければいけないと思います。例えば、同じポジションに4人の選手がいたら、他の3人には勝たなければいけないですし、そのためには常に自分の力を出し切るしかないと思います。そして、自分の力を出し切ることで、次が見えてくると思います。

今シーズンはイレギュラーな形で、シーズンが短いので、より試合に出るためには何をしなければいけないのかを考えなければいけないですし、それはその日の練習だけじゃなくて、1週間の準備も含めてのことだと思うので、そこにチャレンジして欲しいと思います。

◆ひとつひとつ丁寧に伝える

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—— コーチとして意識していることは何ですか?

チームには外国人コーチが3人いますが、コミュニケーションの部分では基本的に問題はないと思うので、選手目線でのコミュニケーションや、選手を成長させるためにどうすればいいのかという部分に重きを置いて考えています。そのためには選手に厳しいことを言わなければいけないと思いますし、他のコーチとは違った目線で選手と接していければと思っています。ただし、僕はコーチという立場になるので、コーチとしてもしっかりと機能しなければいけないと思います。

—— これまではコーチとしての経験はなかったわけですが、実際にコーチをしてみてどうですか?

やっぱり難しいですが、そこはサントリーのビールの良さを伝える営業と同じで、こちらが思っていることを、ひとつひとつ丁寧伝えることが大事だと思います。あとは、選手の立場で考えると、複雑に長々と説明されても、頭の中には入って来ないと思うので、シンプルに伝えることがポイントだと思います。

まだ難しさはありますが、そこが面白さになってきていますし、僕も成長しながら、選手が成長出来るようにしっかりとサポートしていきたいと思います。

—— 今シーズンの目標は?

ここ2シーズンは勝てていないので、チームとしての目標はやはり勝つことです。プレシーズンリーグとレギュラーシーズン、そして日本選手権とあるので、その3つ全てを取りにいきます。

あとコーチとして個人的な目標は、選手が良い状態で試合に臨めるようにサポートをしなければいけないですし、そのための準備をしっかりとして、選手と向き合っていきたいと思います。なので、目標は勝つということだけで、その目標を達成するために選手のサポートをしっかりとしていきます。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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