SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年7月22日

#439 篠塚 公史 『みんながリーダーという意識』

10年目のシーズンを迎える篠塚公史選手が、ラグビーへの思い、そして新たな夢を語ってくれました。今シーズンの活躍がとても楽しみです。(取材日:2015年7月3日)

◆責任感を持ってやる

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—— 2シーズンの間、優勝から離れてしまいましたが、またチャンピオンに返り咲くのはかなり大変ですよね

絶対に簡単なことではないですね。今思うのは、昨シーズンの中盤までは、「言われたことをやっていただけ」だったかな思います。昨シーズンは2ndステージで5位となり、プレーオフ進出を逃しワイルドカードに回ることになってしまいました。そこで選手たちがこのままではいけないと気付いて、自分たちがやりたいことを再確認し、そこからはそれを信じてやり切ることが出来たと思っています。自分たちで色々と考えてやることが、まず重要なんだと思います。信じたことに対して、責任感を持ってやることが大切です。

—— 優勝していたシーズンでもその部分はなかったんですか?

5シーズン前に優勝した時には、他のチームがそれほど重要としていなかったフィットネスで、完全に優位に立っていました。ボールを蹴らず、常に走るラグビーをしていて、試合の中盤以降で、相手が疲れている中でもサントリーは元気な状態で試合をしていました。

それから他のチームもフィットネス強化を始めて、シーズンを重ねるごとに、フィットネスでのアドバンテージが徐々になくなってきて、それだけでは勝てなくなってきました。その時に、「次に自分たちが何をすればいいのか」が曖昧になってしまいました。もちろんアグレッシブ・アタッキング・ラグビーという軸はあったんですが、細かい部分で迷いが生まれていました。「これだけをやる」という明確な目標が、徐々に分散してしまっていたような気がしますが、今シーズンはまた明確な目標を掲げ、やり切ることを目指しています。

—— 選手が考え行動することについては、選手間でのコミュニケーションが密になければ、チームとして1つにはなれないですよね

コミュニケーションは大事です。コミュニケーションというのは、相手に言いたいことを伝えればいいのではなくて、相手がしっかりと理解して、それに対して返答があった時に初めてコミュニケーションが取れたということになると思います。今シーズンはそういう状況を少しでも多く作れるようにして、リーダーに任せるんじゃなくて、みんながリーダーという意識を持つようにしていかなければいけないと思います。

そのためにはやりたいことをみんなが理解しなければいけませんし、「みんながこう言っているから、自分の意見を言うのをやめておこう」という状態をなくしていきたいんです。

—— 選手がお互いに周りを気にしていなければ、その状態は見えてこないですよね

僕はもうベテランですし、そういうところまで見ようと努力をしているつもりです。今まではガムシャラにやってきましたが、昨シーズン辺りからは周りに目を配るようにしています。

—— 意識すると見えてきますか?

見えますね。何かを言いたそうな顔をしている人がいると分かります。その人がその場で何も言わなければ、後から聞きに行くように心がけています。

—— サントリーというチームは、先輩後輩はほとんど関係なく、フラットに話が出来るような雰囲気がありますよね

先輩後輩を気にして話が出来ないという雰囲気は全く無いと言っても良いかもしれません。それが良いかというと、少し違うような気もしています。仲良くすることは大事なんですが、年上の人を尊敬し、敬うことも必要だと思います。仲良くて何でも言える関係の中にも越えてはいけない一線はあると思っています。

◆いちばん最初にグラウンドに出る

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—— 改めて、今シーズンの目標は?

全試合スタメンで出場することです。試合に出ることは重要なんですが、スタートで出るのとリザーブで出るのでは、役割が全く違います。最初からグラウンドに立っていたいです。

その理由としては、いちばんは長い時間グラウンドに立っていたいという思いがあります。ハーフタイムが終わってグラウンドに出てくる時も、いちばん最初にグラウンドに出ることを心掛けています。ほとんどの人が気づいていないと思いますが(笑)、それがルーティーンになっていて、それくらい長くグラウンドに立っていたいと思っているんです。

—— それはなぜですか?

グラウンドの上が自分を表現できる場だからです。グラウンドに立っている姿が僕の本来の姿なので、普段の僕の姿は仮の姿です(笑)。

グラウンドでは激しいプレーをしながらも、常に冷静さを持っていなければいけないと思います。僕の場合は熱くなりすぎてしまうと、何も考えられなくなってしまいます。真壁みたいに常に熱い状態の方が良い人もいます。真壁はガムシャラにプレーすれば良いと思いますが、ロック2人ともそういうプレースタイルだと、個人的にはダメだと思っています。片方がポジティブでガンガン行く人で、もう1人が少しネガティブでサポートプレーに専念する人で、それでバランスが取れれば良いと思っています。

—— 昔からそういうスタイルだったんですか?

昔はガンガン行きたいと思っていました。やはりボールを持つと目立つので、試合に出るからには目立ちたいと考えている人が多いと思います。最近はサポートプレーのことを考えていて、トライに繋がるまで良いサポートが出来れば嬉しいですね。

—— なぜ考え方が変わったんですか?

サポートプレーがラグビー選手として僕の活きる道だと思っています。真壁があれだけガンガン行くので、もし5番が真壁でなければ、今の僕のスタイルにはなっていなかったかもしれません。

何年か前に直弥さん(大久保/前サンゴリアス監督)から、「お前はラインアウトが取れないと、フィールドプレーもダメだ」と言われたんです。それまではラインアウトが取れないと、他のプレーの時もラインアウトのことを考え過ぎてしまっていました。今は例えラインアウトが取れなくても、その場で割り切って、次のプレーに専念出来るようになっています。

—— 成長を続けてきたんですね

成長出来ていなければ、今シーズンで10年目になりますが、これだけ長く続けることは出来なかったと思います。

◆ワールドカップに出たい

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—— チームとしての目標は?

もうそれは優勝することです。この時期は代表選手がチームを離れていて、全員が集まっていない状態ですが、今の時期はとにかく若手が経験を積んで、みんなでスタメン争いが出来る状態にしていくことが最低条件だと思います。

レギュラーメンバーと替わって入る選手との間に力の差があっては勝てないと思うので、まずは若手が頑張らなければいけない時期だと思います。そのためにベテランメンバーがしっかり見てあげて、アドバイスをしていければと思っています。この時期は土台を作る時期です。

日本代表メンバーは、今は日本代表として頑張ってもらい、ワールドカップでベスト8以上という目標を達成し、自信をつけてチームに帰ってきてもらいたいと思います。

—— 2019年に日本でワールドカップが開催されますが、その時の自分をイメージするとどうなっていると思いますか?

少し前までは、まだ先だし選手としては関係が無いかなと思っていて、昨シーズンのオフには、社会人でも優勝を経験したし、日本代表にも選ばれたことがあるので、ラグビー選手としてはやり切ったかなと考えた時期もありました。

でも、やっぱりワールドカップに出たいんですよね。2019年は自国開催なので、その座を狙っています。簡単に言っちゃいけないことだと思いますが、そのための努力をしたいと思います。もしそれまでに引退を迎えてしまえば、それはそれで仕方が無いことですが、残りのラグビー人生をやり切りたいと思っています。

—— そのためには何を大切にしてやっていこうと考えていますか?

まずは怪我をしない体作りです。もう10年目になりますが、もう少し体を大きくしていこうと思っています。体の状態も成長出来ていると思いますし、パフォーマンスについても昨シーズンのワイルドカード辺りから上がってきているので、ベストのパフォーマンスが出せていけていると思っています。そういう状態でもあるので、諦めてはいけないと考えるようになり、夢を持ち続けて、夢を大きくしていこうと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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