2015年7月 8日
#437 仲宗根 健太 『絶対に負けたくないという気持ちがいちばん強い』
静かなたたずまい、優しい笑顔、落ち着いた物腰。その雰囲気を指摘し、あるべき姿を示唆した先輩の言葉に発奮し、現状から脱却しようとしてきた仲宗根健太選手。ようやくその成果が現れ始めたのではないでしょうか。初出場、初トライのデビュー戦から早2年。今シーズンに賭ける思いを訊いてみました。(取材日:2015年6月23日)
◆ジェントルマン過ぎる
—— 2013-2014シーズンに初キャップ、初トライを挙げてから今までの変遷を自分なりに話して頂けますか?
三ツ沢球技場での神戸製鋼戦で初キャップと初トライを挙げたのが2年目の時で、今は4年目になりました。2年目のシーズンでは2キャップで、昨シーズンは日本選手権1回戦のみに出場したので、これまでで3キャップを獲得しています。
3キャップという数字は、まったく納得出来るものではありません。個人としては2シーズン前よりも昨シーズンの方がキャップ数は少ないのですが、成長出来たシーズンだったと思います。昨シーズンはプレーだけではなくて精神的にもチャレンジ出来た1年で、それはきっと今シーズンに繋がってくると思っています。
—— プレーで成長出来たところはどこですか?
簡単に言うと、激しいプレーが出来るようになったと思います。1年目の時に田中澄憲さん(チームディレクター)に「お前はジェントルマン過ぎる」と言われて、その言葉を意識してトレーニングに励んできました。昨シーズンにはこれまでの積み重ねもあり、サントリーに入ったころと比べると体重が10kgくらいアップしました。
全体練習の後に、若井さん(ヘッドS&Cコーチ)に付き合って頂いてウエイトトレーニングをしていたので、フィジカル面での自信を持つことが出来ました。あと、練習でもチャレンジすることを心掛けて、スカルク(バーガー)に教えてもらいながら、ハードトレーニングが出来たと思います。
—— 体が大きくなると、感覚も変わってきますか?
90kgだった頃と比べると、重いという感覚はありますが、フィットネス面ではあまり変わらないと思います。大学時代はセンターをやっていたので、その時と比べるとスピードは落ちていると思いますが、バックローというポジションをやらせてもらっているので、フォワード中ではスピードを意識してトレーニングしていかなければいけないと思っています。
—— パワー面ではどうですか?
90kgの時はパワー負けすることもありましたが、今はブレイクダウン周りで楽になったというか、思うように体が動くようになってきたと思います。
—— 今もバックスを意識する時はありますか?
僕はもうバックスではないという意識があります。ただ、サントリーはボールを動かすチームなので、その中でハンドリングスキルは他のフォワードよりも自信を持っていますし、フィットネスにも自信があるので、センターでやってきたスキルを強みとして、フランカーで活かしていきたいと思っています。
◆今はファイター
—— 精神面の成長は?
タフになったと思います。1年目の時は、サントリーの練習についていくことで精一杯という感じでしたが、今は熱い気持ちを持ちながら、冷静な判断も出来るようになってきたと思います。相手が強いとか大きいということは考えなくなり、自分のスキルでどう相手を倒すかということしか考えていません。それに絶対に負けたくないという気持ちが、これまでラグビーをやってきた中で、今がいちばん強いと思います。
—— 1年目の時に言われた「ジェントルマン過ぎる」ということを、言われる前は自分でも意識していたんですか?
それまでは全く意識していなくて、言われて初めて気づきました。スカルクと一緒にプレーしていると、練習であっても本気でタックルに来るので、そういうところを見習っていきたいと思います。
—— ジェントルマンからは抜け出せていますか?
フランカーというポジションは、ブレイクダウン周りや相手が嫌がるプレーが大事になってくると思います。ジェントルマンから抜け出すということに、今はもう意識せずにプレー出来ていて、スイッチの入れ方が変わったと思うので、今はファイターになっていると思います。
—— 他に意識しているところは?
運動量は意識しています。僕が試合に出るためには、そこがいちばん必要なことだと思うので、目標とする運動量やタックル回数を意識しながらプレーしています。
◆ブレイクダウンと運動量
—— 今シーズンの目標は?
まずは9月から始まるプレシーズンリーグの開幕戦が1つのターゲットで、僕は隆道さん(佐々木)と同じポジションなので、隆道さんを倒して試合に出たいと思います。プレシーズンリーグが始まるまでにはあと2ヶ月くらいしかないので、しっかりとアピールして、メンバー入りを勝ち取りたいと思います。
—— そのためのキーワードは何ですか?
ブレイクダウンに絡みボールを取ることと、運動量になります。ボールを取るためには、まずは相手をしっかりと倒さなければいけないので、タックルで相手をしっかりと倒し、ボールを取ることに繋げていきたいと思います。
—— チームでの立ち位置は意識していますか?
この春の期間では、フォワードをリードする立場を任されていて、サントリーでは今までそういう経験が無かったので、これまでとは違った視野でチームを見ることが出来ていると思います。
—— ファンにはどういう姿を見せたいですか?
泥臭いプレーが大事だと思っているので、試合などで僕のプレーを見た時に、良い意味で「ジェントルマンじゃないな」と思ってもらえるようなプレーが出来るようにしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]