2015年5月27日
#431 阪本 圭輔 『仕事ができるようになることが、ラグビーでの成長にも繋がる』
入部して2シーズンが終え、トップリーグのキャップをまだ獲得していない阪本圭輔選手。自分自身をどう見つめ、どんな思いで今シーズンに臨んでいるのでしょうか。食事、仕事の面も含め、その意気込みを訊きました。(取材日:2015年5月11日)
◆10番でも12番でも
—— 3年目のシーズンとなりますが、これまでの2シーズンを振り返ってどうですか?
あっという間でした。シーズン中には常に試合に出るためのチャンスを探してもがいている感じで、あっという間に3年目になりますね。公式戦に出られないメンバーは、練習や練習試合でアピールするしかないので、そこでいかにハイパフォーマンスを出せるかというところでもがいています。
—— 練習試合に臨む時にはどういうことを考えていますか?
思い入れが強すぎで力んでしまう時もありますが、練習試合に出るメンバーは全員、パフォーマンス次第では公式戦のメンバーに選んでもらえるという気持ちを持って臨んでいると思います。
僕のポジションは10番で、ゲームをコントロールしなければいけないんですが、そのコントロールが上手くいかない時があります。ゲーム全体を見れていない時があるので、その波をなるべく小さくして、安定したプレーが出来るようにしていかなければいけないと思います。
—— イメージ通りのプレーが出来るようになれば、公式戦のメンバーにも入れそうですか?
全ての試合で完璧にコンロトールすることがイメージしていることですが、よく指摘をされるところが、「全てのプレーを完璧にしようとしている」とか「1つのプレーに自信を持てていない」、「思い切りの良いプレーが出来ていない」というところです。
その指摘されている部分は、精神的な面が大きく影響していると思います。そこは自分でも分かっていて、強いメンタルを持てるようにならないと、変わっていけないと思います。
—— メンタル面を意識したのはいつ頃からですか?
サントリーに入ってから、特に意識するようになりました。サントリーのラグビーはシェイプがあったり、他のチームとは少し違うラグビーをしていて、そこで「上手くやろう」と考え過ぎていました。その考えが強すぎたことで、これまで自分の強みであったプレーが練習試合などで出せなくなってしまっていたと思います。これまでの2シーズンを振り返って、そこを変えていかなければいけないということを思いましたね。
—— 強みであるプレーとはどういうプレーですか?
例えば、多くの人が右利きなのに対して、僕は左利きなので、他の人が蹴りにくいところでも僕はキックが出来たりして、そこでディフェンスがずれたりします。あとは、自分から仕掛けて、接点ギリギリでプレーすることであったり、パスダミーであったり、そういうプレーが得意だと思っているので、そういうプレーをサントリーのラグビーをしながら出していけるようになりたいと思っています。
—— 2年やってみて、サントリーのラグビーは身についてきましたか?
シェイプやゲームの進め方などは、晃征さん(小野)やトゥシ(ピシ)のプレーを見て、勉強になっていますし、出来るようになっていると思います。
—— 公式戦に出るために最大の課題は何ですか?
僕は12番も出来るので、試合に出られるのであれば、10番でも12番でも良いと思っています。とにかく試合に出るために、チームからの信頼を得ることが大切だと思います。そして、その信頼を得るために、練習試合などで常に良いパフォーマンスを出さなければいけないと思います。その中で一番の課題は、自分に自信を持ってプレーすることだと思います。
—— 自信を持つためには何が必要だと思いますか?
公式戦には1試合も出られていないので、経験値としてはゼロだと思います。だから、他の人の倍の練習をして、自信をつけていくしかないと思います。あとは、練習の時に試合をイメージして取り組んでいくことが大切だと思います。
—— これまで納得いく練習が出来ていますか?
練習の量としては納得出来ていますが、もっともっとイメージしながら練習をして、1つ1つの練習を大事にしていきたいと思います。チームには良いコーチがたくさんいます。チームがオフの時にトレーニングのためにクラブハウスに行ったら、ヒューイ(ピーター・ヒューワット/BKコーチ)がいたので、マンツーマンでキックやパスの練習をしてもらいました。
◆管理栄養士の指導
—— 今の時期はどういうトレーニングをしているんですか?
この時期は基礎を作るために、ハードワークして、ウエイトや走ることに特化してトレーニングをして、春シーズンの練習試合で結果を残していかなければいけないと思います。この時期に少しでも手を抜いてしまうと、シーズン中に強い自分を見せることができないと思うので、今の時期が本当に大事だと思ってトレーニングをしています。
—— これからも身体を大きくしていきますか?
これから1~2kgくらいは大きくしたいと思っていますが、体のキレや瞬発的なスピードを上げていきたいと思っています。ウイングと違って、ボールを持って走る時間はそこまで長くないので、瞬間的な勝負になるんですが、自分から仕掛けた時に「もう少しスピードがあれば抜ける」と思う場面があって、そこを上げていきたいですね。
—— 身体を大きくしながらキレやスピードを上げることは大変ですよね
ウエイトトレーニングの中にもスピードを上げる要素が含まれているので、そういう部分にフォーカスして取り組んでいます。
—— 食事についてはどういうところに気をつけていますか?
毎日3食の食事については、チームの管理栄養士の金剛地さん(舞妃/森永製菓)が指導してくれるので、それを意識して食事を摂るようにしています。ただし、アスリートにとっては3食の食事だけでは不足していて、間食としてウイダーinゼリーやウイダーinバーなどを食べるようにして、エネルギー補給をしています。
—— 間食を摂ると摂らないとでは違いを感じますか?
しっかりとした栄養の知識を持って食事を摂ることで、筋肉の質も変わってきます。やはり食事だけではエネルギーが足りずパフォーマンスに影響が出てくるので、間食を摂ることが大事だと思います。
—— シーズンオフの食事はどうしているんですか?
今は会社の寮に住んでいるんですが、事前にお願いをしておけば、寮で朝ご飯を出してくれるんです。その朝食に自分で卵や納豆を付け加えて、必要な栄養を摂るようにしています。もしコンビニでお弁当などを買うことになった場合でも、そういう時の食事の選び方も金剛地さんから教えてもらっているので、その知識を活かして食べています。どれくらいの食事を摂れば、必要な栄養が補えるということが分かるようになってきました。
—— 食事を意識することで身体も変わりましたか?
サントリーに入った当初は、少し体脂肪が多かったんですが、昨シーズンの後半には体脂肪率がずっと1桁台でした。
◆大きい仕事を任されるようになっていきたい
—— トレーニングや食事をしっかりと意識しながら、仕事もしていますよね
1月から大きなチェーン店を任せてもらえるようになっていて、ラグビーと一緒で、仕事でも成長していかなければいけないと思っています。仕事でやらなければいけないことも増えてきていますが、仕事が出来るようになってくることは僕にとってプラスになっていますし、仕事が出来るようになることが、逆にラグビーでの成長にも繋がると思って取り組んでいます。
—— 仕事をしていて面白いと感じるところは?
2~3ヶ月先の新商品をバイヤーさんと商談するんですが、その商品に良い印象を与えることが出来れば、取り扱ってもらえる数量が変わってくるので、そこで大きな数量を獲得できた時には面白いと感じます。それに、これまでは取り扱いが無かったワインやジムビームなどを新たに取り扱ってもらえるようにチャレンジしていて、少しずつ取り扱ってもらえるお店が増えているので、そういうところに面白さを感じています。
ワインについては、僕はチェーン展開しているドラッグストアさんにも営業していて、サントリーには「カロリー30%offのおいしいワイン。」という商品があるので、カロリーが30%オフというところを押し出して、バイヤーさんに試飲などをしてもらいながら、数店舗で試験的に導入してもらいました。それが好評だったので、全店舗でも取り扱ってもらえるようになりました。ワインはどうしてもカロリーが高いので、カロリーを気にされている方にも飲んでいただけると思います。
—— 仕事での目標は?
ラグビー部の先輩にはもっと大きい仕事を任されている人もいるので、僕も大きい仕事を任されるようになっていきたいと思います。
社会人になって最初の頃は分からないことが多くて大変でしたが、今は仕事の仕方も身についてきて、楽しさを感じるようになっています。ラグビーも同じで、最初は大変でしたが、身についていることが実感できていて、仕事でもラグビーでも、もっと上を目指したいという気持ちがあります。
仕事が上手くいっているとラグビーも上手くいきますし、その逆もあるので、仕事もラグビーも並行して成長していきたいですね。
◆試合に出たい
—— 今シーズンの目標は?
10番でも12番でもポジションにはこだわらず、トップリーグの試合に出場することが目標です。10番をやっているので、12番で出場したら、しっかりと10番をサポートできると思いますし、10番で出場した場合は、周りを動かして、しっかりとゲームコントロールしていきたいと思います。本当に試合に出たいという気持ちが強くなっています。
—— 試合に出た時にはどういうプレーをファンの人たちには見てもらいたいですか?
ラインブレイクを狙っている姿が見れたり、積極的にボールを動かしているような試合は、僕の持ち味が出ている試合になると思うので、そういうところを見てもらいたいです。もしそういう試合になっていない時には、「自信を持て」と声を掛けてもらいたいですね(笑)。
—— 自分の性格はどんな性格だと思いますか?
ネガティブだとは思いませんし、自信が無いわけではないんですが、プレーに迷いが出てくると、積極性がなくなってしまうんだと思います。どうしても完璧にしようとしてしまうので、「どう選択すれば完璧に出来るか」と考えてしまうんだと思います。完璧を求めているから、それが出来ない時に迷いに変わってしまって、そういう部分が出てくると良くない状況ですね。
そのためには良いコンディションを保って、良いパフォーマンスを出すことが必要だと思います。チームの調子が良くない時は、10番に責任があると思ってしまって、全ての責任を背負いこもうとしてしまうんだと思います。ミスをしたとしても、すぐに次のことを考えて、「良くない」と考えるのではなくて、「悪くはない」と考えられるようなマインドを持てるようになりたいです。
—— チームには色々な選手がいて、他の選手と話をしていて、考え方が勉強になる選手はいますか?
晃征さんは同じポジションで、「80分間ずっと良いプレーをし続けるのは難しいから、その中で、サントリーのラグビーができる時間をなるべく増やしていければ良い」と言われますし、「前半がダメでも後半がある」という考え方を持っているので、そういう考えがあるから落ち着いてプレーしているんだと思います。80分間を見据えてプレーしているんだと感じますね。
僕の場合は、その一部分だけを見て、「悪い時間帯だ」と考えてしまうんですが、その時間は全体の一部という考え方をすれば、「次で良い時間帯にすれば良い」と考えられると思うので、試合全体を通して考えられるようになりたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]