2015年4月29日
#427 長野 直樹 『トライを取り、結果を残す』
昨シーズンは結果を残すことが出来なかった長野直樹選手。一昨年スタート時に見せたトライを取り切る力を、再び見せることが出来るか?過去2年間を振り返り、勝負の年となる新シーズンへの意気込みを聞きました。(取材日:2015年4月10日)
◆走り切る力
—— 長野選手にとって2014-2015シーズンを振り返るとどういうシーズンでしたか?
トップリーグのグラウンドに立ち成果を出すことを目標に取り組んでいる中で、新しいことにもチャレンジしたシーズンでしたが、それを成果に結び付けられなかったので、残念なシーズンだったと思います。ただ、これから大きな成果を挙げるためには、昨シーズンのような経験は必要だと思っているので、良いシーズンであったと思うようにしています。
—— チャレンジした新しいこととはどんなことですか?
大きい部分で言えば、7人制の日本代表に選んで頂き、セブンズに挑戦したことですね。公式戦でなかなか出場機会がない中で、練習試合では味わえない緊張感を経験することが出来ました。公式戦でしか味わえない反省点を得ることが出来ましたし、自分の通用する部分も理解することが出来たので、良い経験になったと思っています。
—— 反省した部分と通用した部分はどこですか?
通用した部分は、アジリティーの部分です。反省点としては、単純にトライを取り切る力のところです。
—— 15人制にはどう活かせそうですか?
アジリティーの部分は15人制の1対1の場面でも活かせると思いますが、セブンズでは結果的に5試合で1トライしか取れませんでした。スピードやアジリティーだけを切り取れば通用するんですが、そこから走り切る力にどう広げられるかだと思います。
相手との駆け引きであったり、上手くディフェンスをされた時の対応であったり、そういう部分がまだまだ足りていないと思います。ただ、力不足な部分ではあったんですが、まだ伸びしろがある部分とも感じました。
—— 7人制日本代表からサンゴリアスに戻ってきてからは、どういうトレーニングをしたんですか?
単純に経験が足りていないと思うので、成功体験を体に覚えさせようとしています。練習の中で1対1を勝負してみたり、最後までトライを取り切るイメージを持って練習することが大切だと思っています。
昨シーズンにそういう部分を考えトレーニングをしてきましたが、まだ成果としては見えてきていない段階です。深く掘り下げれば掘り下げるほど、単純な1対1ですが、相手によって変わってきますし、パターンは何通りもあります。
とにかくもっともっと経験を積まなければいけないと思っています。試合だけでは数も限られてしまうので、練習であったり、映像を見て振り返ることや先輩からアドバイスを受けることなど、少しでも吸収していかなければいけないと思います。
—— スピードは上がっていますか?
タイムは計っていないので実際には分かりませんが、年々上がっているという気持ちでいるようにしています。
◆周りを巻き込む力
—— 2013-2014シーズンはトップリーグ6試合に出場し5トライを挙げていますが、2014-2015シーズンは出場できませんでした。その違いをどう分析していますか?
大きな違いとしては、“チームにとって必要な人材だったか”だと思います。一昨年のシーズンに出場できたのは、それまでにトライを取っていましたし、若手としての勢いやアグレッシブな姿勢が、チームにとって良い影響を与えられる存在として見てもらえていたんだと思います。
試合に出られなくなった時には、僕がメンバーに入るとチームにとって良い影響が与えられないという評価を受けていたんだと思います。
2013-2014シーズンの開幕戦から第6節まではメンバーに入っていたんですが、第7節の前に怪我をしてしまい、いま振り返ると気が抜けていたんじゃないかと思います。そこから自分の中でも歯車が狂ってしまって、以前まであったアグレッシブさがなくなってしまっていたと思います。
—— その時期をどう乗り切ろうとしたんですか?
こういう時期も経験だと思い、前を向いてやるしかないと思っていました。当時を振り返ると、少し考え過ぎて、上手くいっていなかった部分もあったと思います。
—— その時の経験を、今後はどう活かしていこうと考えていますか?
当時は、個人技に走ってしまっていましたし、チームにとって何が出来るかということを考えられていなかったと思います。チームがどういう人材を必要としていて、それに対して自分は何が出来るかを考えて行動していかなければいけないと思っています。
次のシーズンに向けては、チーム内でもっと自分の意見を発信していくことが必要だと思っています。これまでは先輩やリーダーが言うことを受けていることが多かったんですが、もう5年目になりますし、自分から発言をして責任を持っていかなければいけないと思います。
それに、以前、小野澤さん(宏時/キヤノンイーグルス)に「自分にベクトルが向き過ぎている」と言われたことがあって、もっと周りを巻き込む力をつけていかなければいけないと思っています。「自分がどうにかしなければ」ということばかり考えてしまって、組織的な部分で「チームとしてどうすべきか」というところまで考えられていなかったと思います。
—— 誰かお手本にしている選手はいますか?
有賀さんです。そういう話を有賀さんとはよくさせてもらっています。
◆チームに必要な人材
—— あまり怒ったりしませんか?
怒りって、相手に対してと自分に対してとあると思うんですが、僕の場合は自分に対しての怒りが大きいと思います。そういうところがあるから、自分にベクトルが向き過ぎてしまうのかもしれません。
—— 何かやることに対して、深く考えるタイプですか?
やることに対して、しっかりと準備をして、整理してからやるタイプだと思うんですが、僕は整理することに時間がかかってしまうんだと思います。社会人1年目の時などは、良いと思うことをどんどん取り入れて、3年目くらいから本当に良いものを選べるようになってきたんですが、まだ自分の中ではゴチャゴチャしていて、5年目のいま、やっと整理がついてきたように思います。
—— 理想とする選手像に対して、どの辺りまで成長できていると思いますか?
半分もいっていないと思います。これまで個人的に、こういう選手になりたいという思いがあったんですが、今はチームにとって必要な人材になれるかに重点を置いています。もちろん個人としても成長していかなければいけないと思います。
チームに必要な人材にならなければいけないと思いますし、チームから求められていることはトライを取ることだと思うので、そういう選手になりたいと思います。
僕の場合は、どうしても考え込んでしまうことがあるんですが、ラグビーはスピード感があるスポーツで、とっさの判断や直感が大事になる場面があると思います。そういう意味で、僕の深く考え込むというところは、良いところとして残したい部分でもあり、脱皮したい部分でもあります。
—— 良い直感を得るためには何が必要だと思いますか?
それは成功体験や経験が必要な部分だと思います。
—— 今の時期はどういうトレーニングをしているんですか?
今は少し痛めているところがあるので、そこを治療することと、トライを取るウイングになるための体作りをしています。仕事の状況を見ながら、行ける時にはクラブハウスに行ってトレーニングをしています。
—— 今シーズンの目標は?
悔しいシーズンが続いていますが、チームとしては優勝することが目標です。個人的には過去の自分よりも成長したいという思いがあり、その成長を見せるためには具体的に成果で超えることだと思うので、2シーズン前の自分のトップリーグ出場試合数とトライ数を超えたいと思っています。
—— チームとして昨シーズンのチームを超えられそうですか?
昨シーズンの終盤には選手がまとまることが出来て、そのベースがあるので、必ず昨シーズンを超えられると思います。
—— チーム内でのポジション争いも激しいと思いますが、何を武器に勝負していこうと考えていますか?
トライを取ることであり、結果を残すことです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]