SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年4月 1日

#423 有賀 剛 『ブレない』

常にチームのリーダーの1人であり続けて、10年目のシーズンを迎える有賀剛選手。2014-2015シーズンを振り返りつつ、新しいシーズンへの展望を語ってもらいました。(取材日:2015年3月16日)

◆苦労があったシーズン

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—— 2014-2015シーズンは練習試合を含めると46試合を戦いました。シーズンが終わって、どういう心境ですか?

公式戦だけでも20試合を戦い、これだけ多くの試合をしたシーズンはありませんでしたし、トップリーグで上位4チームに入れなかったのは初めての経験だったので、色々なことを含めて、僕がサンゴリアスに入って一番苦労があったシーズンだったと思います。

—— どこが苦労したところでしたか?

2013-2014シーズンで優勝できなかったことに対して、はっきりとした反省点が出ないまま自分たちのスタイルを変えすぎた結果、チームの方向性に迷いがでたのかなと思いますね。

—— チームを強くしていくためには変えることも必要だと思いますが、変えることに対してはどう感じていましたか?

エッセンスは必要だと思っていました。2013-2014シーズンのプレーオフでパナソニックに負けた試合を見ると、ディフェンスのところでペナルティーを犯してしまっていて、ディフェンス力をアップさせないといけないとは思っていましたが、アタック自体はそんなに悪くはなかったので、プレーの精度を上げていけばいいのかなと思っていました。

春シーズンではアタックについて色々なことにチャレンジしましたが、そこで「サントリーのラグビーはそうじゃないのでは」と感じていた選手がいて、気持ちの面でも上手くいかなかったから止めたのではないかと思います。

—— トップリーグ5位、日本選手権準優勝という結果の反省は?

これからスタッフが来シーズンの方向性を決めていき、選手はその方向性に従わなければいけないと思います。そのためにもスタッフと選手が一緒に話し合って、方向性を決められたら良いと思いますね。

◆まだ出来るんだ

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—— 個人としてはどんなシーズンでしたか?

シーズン前は怪我などもあり、あまり調子が上がりませんでしたが、メディカルのおかげでセカンドステージでは良いパフォーマンスを出すことが出来たと思っています。怪我から戻ってくるまでは「剛は80分間持たない」と言われることもあったんですが、その悔しさをエネルギーに変えて、「まだ出来るんだぞ」という気持ちでリハビリをしていました。

—— これまでに何回も経験していると思いますが、リハビリは辛いですか?

いや、辛くはありませんね。またグラウンドに立つためにやっていることですし、目標がはっきりしているので、リハビリを苦と思ったことはほとんどありません。

—— 今回のリハビリでは、怪我をする前よりも強くなって戻ってきたという感じですか?

強くなって戻ってくるほど時間はなかったので、そこまでは行っていなかったと思います。ラグビー選手ですし、9年もやっていると怪我をした個所以外のところにも痛みがあったりします。だから、怪我以外の個所も一緒に良くなるように、という感覚でリハビリをしていました。

今回のリハビリは上手くいき、怪我した個所も良くなりましたし、それ以外のところの痛みも和らいだので、ポジティブに考えてやってきたことが、良い結果に繋がりました。

—— 来シーズンが楽しみですね

来シーズンのトップリーグの開幕はワールドカップ後になると思うので、上手く時間を使い、焦らずやりたいと思います。

◆チームに何が残せるか

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—— 来シーズンは10年目になりますが、自分の役割は何だと思いますか?

ブレないことだと思います。初めてプレーオフ進出を逃してワイルドカードを戦うことになり、1回戦の近鉄戦は、シーズンを象徴するような戦いぶりで、内容があまり良くありませんでした。そこで「選手自身がもっと集まって団結してやらなければダメだ」とリーダーたちが思い始めたんです。

チームの3分の2の選手が優勝を経験しているんですが、その選手たちは「なぜ勝ってきたか」を知っている選手なんですよ。「自分たちがこだわってやってきたことを、きっちりやろう」と伝えたのが、ワイルドカード2回戦のリコー戦の前でした。

「自分たちの文化、優勝した時にやってきたことを忘れかけているんじゃないか」と感じていましたね。それは例えコーチが変わろうと、変わっちゃいけない部分なんですよ。ただ、人によっては変わってしまった部分もあって、そこをしっかりと示せなかったことが団結できなかった部分だと思います。

僕としては、そこはブレちゃいけないと思いますし、スタッフが変わってもサントリーはこの先もアタッキング・ラグビーをやっていくのと同様、その他にもカルチャーはあるので、「それにこだわってやらずにどうするんだ」と思っていました。そこをこだわってやろうとみんなが理解して、そこからチームが良くなったという印象を持っています。

—— そこをどう来シーズンに繋げますか?

僕自身の考えは、サントリーがこれまでグラウンド内外でこだわってきた部分やルールを、チームとしてしっかりとルールを決めた上で、教えていかなければいけないと感じています。

チームの中には色々な世代がいるので難しい部分があって、自分が良かれと思って言っていることが、上手く若手に伝わらなかったりして、そこは今シーズンとても感じました。

僕がいま考えていることは、もう少しシニアプレーヤーが集まって、若手に教えていった方が良いんじゃないかと思っています。それがチームに残る選手の宿命だと思いますし、池谷さんと話していても「今シーズンは少し遠慮しすぎた」と言っていたので、スクラムのスペシャリストとして若手にどんどん伝えてもらいたいですし、シニアプレーヤーはチームに何が残せるかを考えなければいけないと思います。

—— リーダー選手たちは責任重大ですね

スタッフから来シーズン、どういう形を提示されるかは分かりませんが、直弥さんも言っていましたが、「選手がその気になってやる」ことに尽きるのかなと思います。それをやらなければ、今シーズン以上に来シーズンは大変になると思います。

◆周りが見えるという力

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—— 来シーズンの始めから上手くチームがまとまるためのポイントは?

先ほども言いましたが、ブレないことです。個人としてだけじゃなく、チームとしてブレないことと、信じてやり切ることだと思います。疑問を持ちながらやったり、セカンドステージの神戸製鋼戦のように自分たちのスタイルにチャレンジせずに負けるということが、一番良くないことだと思います。

そのためには、30歳前後の僕ら世代の選手が考え方をまとめて、それをやることが出来れば良くなっていくと思います。ただ、若い選手を混乱させてしまうことは良くないと思います。若い選手はまだ「サントリーはどういうラグビーをするのか」という芯の部分までは理解しきれていないと思うので、そこをシニア選手が教えていかないといけないと思います。

若い選手はみんな素直さを持っているので、きっちりと色々なことを決めた上で、伝えた方が良いのかなと思いますね。どうしても経験が少ないので、自立して考えて行動させるのは、まだ早いのかも知れないと感じます。

—— 自分自身が求める完成形と比較して、今の状態はどれくらいですか?

1年1年が勝負で、良い年もあれば悪い年もあるんですが、まだ成長できるという自信はあります。これまでしっかりとトレーニングを積んでシーズンを迎えられたことが少なかったので、自分の持っているものを再度鍛え直して、今のラグビーにはキレやスピードが大事になってくるので、その部分を取り戻したいですね。

—— 体力的にも問題ありませんか?

1シーズン通して戦えたので、問題ありませんね。あと周りを見る力は、今シーズン確実に上がったと思います。体の調子などはメンタルの部分で左右されるんですが、周りが見えるという力は歳を重ねるごとに上がってきています。周りが見える上に体が思った通りに動いたら、面白いと思いますよ。それを考えると、もっと上に行けるという感覚があります。

◆言い合えるチーム

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—— 日本のラグビーは成長していると思いますか?

成長していると思います。トップリーグもフィジカルになっていますし、スピードも上がっていると思います。もちろんスタイルを持ち続けなければいけないんですが、ある程度の個人の判断力も大事になってくると思います。判断を1つ間違えることで勝敗が決まるレベルまで来ていると思います。

そこが経験を積まなければ勝ち取れない感覚だと思います。2シーズン優勝出来ていませんが、若い選手がファイナルの舞台を経験できていることは、3年後や5年後など、後々のサンゴリアスの財産になれば良いなと思います。

—— 若い選手が何シーズンにも渡り活躍を継続するためには何が必要だと思いますか?

気持ちの持ち方が重要だと思います。活躍したとしても「もっと上手くなってやる」とか「前のシーズンよりも活躍してやる」というハングリーさを持てるかだと思います。中靍はその気持ちを持つことで良くなりましたし、そういう気持ちを持てるかどうかだと思います。

今の若い選手は、そういう気持ちを表に出しにくいのか、表に出すことが恥ずかしいと思っているのかは分かりませんが、僕はそういう気持ちを表に出していいと思いますよ。勝負の世界で生きているわけですし、ラグビーという競技の特性上、そういう部分が大事だと思います。

—— サントリーが強くなるための理想形は、どういう形だと考えていますか?

スタートの段階から、選手もコーチも全員が同じ考えを持たなければいけないと思います。何とか日本選手権決勝まで進みましたが、「最後に勝つ」というのはそんなに甘いものじゃないですよ。僕も決勝には何とかして出たかったんですが、僕が出たからといって勝てたとは思いませんし、気持ちや一体感だけで勝てるものではなかったと思いますよ。

最後のファイナルで勝つためには、考え方とやるべきことをみんなが理解して、それぞれが良い判断をしてミスをしないということが、全て揃わないと勝てないレベルだと思いますし、それを練習から実践していかないとファイナルでは発揮できないと思います。

自分たちでやろうということは、お互いに言い合うということに繋がっていると思うんですが、パナソニックが秀でているところはそこだと思います。試合中も仲間に厳しいことが言えるというのは、練習の延長線上で、彼らの文化だと思います。自分たちで言い合うことでチームのまとまりにもなりますし、そういう集団であればチームとしての伸びしろは大きいと思います。

意見を交わし合うことはとても大事なことだと思うんですが、ミーティングなどで意見を求めても、怒られるんじゃないかと構えて、はっきりと意見を言えない人もいると思うんですよ。「僕はこう思ったから、こういうプレーをしました」と自信を持って言って、それに対して「違うんじゃない」と言われても良いと思うんですよね。そういう言い合えるチームの環境作りもしていかなければいけないと思います。

—— 来シーズンのサントリーに期待してもらいたいところはどこですか?

色々な意見はありますが、アタッキング・ラグビーは変わりません。ファンの皆さんに会場へ足を運んで頂けるような、「サントリーのラグビーは楽しいな」と思ってもらえるようなラグビーをしなければいけないと思いますし、そこにこだわってやりたいと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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