SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2015年3月 4日

#419 垣永 真之介 『叫ぶことがひとつの役割』

新人ながら試合に出場し続ける垣永真之介選手。サンゴリアスの中で、試合中に最も叫ぶ選手でもあります。シーズン終盤までの状況や今後の展望を聞きました。(取材日:2015年2月17日)

◆チームにとっても良いトライ

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—— 日本選手権2回戦神戸製鋼戦でのトライは元気いっぱいという感じでしたね。シーズン終盤に来て、今の調子はどうですか?

調子はずっと変わらないんですが、あの時のトライはたまたまです。

—— 良い所でボールが来たという感じでしたか?

全然、そんなことはなかったです。

—— 抜けると思わず突っ込んでいったということですか?

そうですね。とりあえず前に行こうと思って行ったら、良い結果になりました。大学の時は抜けると思ったところでは抜けていたんですが、トップリーグではさすがに抜け出すことは難しいですね。神戸製鋼戦では、最初のタックラーで倒されるかと思ったんですが、そのタックルが外れて、次のタックルも外れたので、「よし!行ける」と思って、インゴールに飛び込みました。チームにとっても良いトライになったと思います。

—— リーグ戦でも2トライをしていますが、常にトライを狙っていますか?

チャンスがあれば、そうですね。チャンス次第です(笑)。

—— 結構チャンスをモノにしていると思いますか?

そんなことはないと思いますよ。

—— 試合後の記者会見で大久保監督が「ルーキーで、途中に出て結果を出す選手はなかなかいない。そこは大したもの」と言っていました

途中出場の役割としては、インパクトプレーヤーとして何か1つはやらなければいけないと思っていますし、それがチームの結果に繋がると思っているので、そこは常に意識しています。

◆118kg

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—— 調子は変わらないと言っていましたが、一定した調子を維持することを目指しているんですか?

上がっていくことが良いと思いますが、上がらず下がらずの状態です(笑)。だから、今シーズンが始まってから、特に調子が良いと思う日もありません。

—— 体は強い方ですか?

そんなことはないとは思います。試合が終わると、疲労困憊になります。

—— 次の試合に向けてリカバリーをしっかりしているということですか?

リカバリーは意識しないと出来ないので、出来る範囲で疲れを残さないようにしています。

—— 調子が上下動しない要因は何だと思いますか?

体重の増加だと思います。一般的なアスリートは、体を絞って調子を上げるというのが普通だと思うんですが、僕の場合は現状に合わせて体重を増加させています。

—— 中長期的な目標があり、体重を増加させているんですか?

長期的な目で見て、今年はワールドカップイヤーですし、以前の体重ではやっていけないと思っています。

—— 以前の体重はどのくらいで、目標はどれくらいなんですか?

以前は111kgから112kgくらいで、最終的には118kgくらいにしたいと思っています。

—— 試合をしながら体重を上げていくのは大変ですね

体重だけを増やすことは簡単なんですが、筋肉を増やしながら体重を増やさないといけないので大変です。体脂肪が減って体重が増えているので、筋肉量は増えていると思います。

—— 調子が良いと思える動きが出来そうになる時期はいつ頃になると思いますか?

2年くらいかかるかもしれないですね。これまでも体重を増やしてきて、体に馴染んでスムーズに動けるようになるまでにだいたい2年くらいかかっているので、今回もそのくらいかかると思っています。

—— 過去にはどういう段階を踏んできたんですか?

高校に入った時と大学に入った時と、今ですね。それぞれで3年目くらいから良くなってきます。

◆自分を鼓舞する

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—— 垣永選手の特徴として、試合中に大きな声を出すことがありますが、試合中は何を叫んでいるんですか?

いや、あれは「元気出そう」とか、「ここが勝負所」とかです(笑)。

—— 他に叫んでいることはありますか?

常に「勝負所」と言っているかもしれないです(笑)。

—— それを言うことで、他のメンバーも呼応してくれるんですか?

あまり返ってくることはありません(笑)。最初はそういう予定はなかったんですが、今は叫ぶことがひとつの役割だと思っています。

—— そういう役割をやるようになったのはなぜですか?

どの試合か忘れてしまいましたが、凄く静かな時があって、その試合で負けてしまったんです。その時に、1人くらいは叫んでいる選手がいてもいいのかなと思い、やるようになりました。

—— 大学時代から叫んでいたわけではないんですね

いや、叫んでいました(笑)。けれど、大学時代よりも今の方が声を出していると思います。

—— 叫ぶコツは?

自分がキツい時に、自分を鼓舞する意味でも声を出すようにしています。

—— 練習の時はどうですか?

練習の時は学ぶことを優先して、試合で表現している感じです。

◆試合になるとスイッチが入る

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—— いま現在で、理想とするラグビーの何割くらい出来ていると思いますか?

常に10割と考えて、更に伸びていければいいなと思っています。

—— ポジティブな性格ですか?

あまりポジティブな方ではないと思います。常に今がベストと思っていて、先を見てポジティブという感じではないんです。

—— 昔からそういう考え方なんですか?

最近ですね。そういう考え方になったきっかけは特にありませんが、大きな試合になると、みんな今までやってきたことを自信にしてやっていると思うんです。僕も今までの全ての日々が今日のためにあったと思えば、その日も頑張れるんじゃないかなと思って、日々を送っています。

—— ラグビーに限らず色々なスポーツの選手などの考え方や言葉などを参考にしたりするんですか?

野球のイチロー選手は参考にしています。「限界まで努力した人間に夢を叶えていない人はいない」というような言葉だったと思います。それを常に考えて、やれることはやろうと思っています。ラガーマンとして本質的な部分を考えられるようになったのはサントリーに入ってからだと思います。

—— 謙虚さを感じるんですが、意識している部分はありますか?

いや、ただ自信がないだけだと思います。何をするにしても良いイメージがわかないというか、悪いイメージしか浮かばないですね。

—— 表現している言葉や行動は良いものだと思うんですが、どうスイッチを切り替えているんですか?

試合の時には切り替わっています。試合になるとスイッチが入るというか、普段は凄くネガティブだと思います。

—— 周りからネガティブだと言われますか?

心配性だと言われます。サントリーに入ってからはないんですが、例えば、「忘れ物をしたらどうしよう」と考えたり、あとは本当に小さいことなんですが、「あの時に言ったあの発言は大丈夫だったかな」とか考えてしまいます。

◆0か10

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—— 「今が10割」とか「やれることはやろう」という発言はポジティブだと思いますが、考え方はネガティブなんですね。そのギャップはどうやって埋めているんですか?

やったことに対して後悔はしないタイプなんですが、発言したことに対しては後悔というよりは、反省であったり罪悪感があるんだと思います。

—— それはもともとの性格なんですか?

そうですね。もともとネガティブです。

—— そういうタイプには見えないですね。手堅いという感じでしょうか?

あまり挑戦的なことはしないですね。上手く伝えられないですが、大胆な時は大胆になるんですよ。0か10のタイプで、やる時はやるし、やらない時はやらないという感じです。それでも、やらないと不安になったりするので、かなり矛盾している人間だと思います(笑)。あまり良い性格ではないと思うんですよね。

—— その性格が安定するのはいつ頃だと思いますか?

40歳~50歳くらいだと思います。

—— 心配性なところが悪く出たケースはありますか?

そう言われると、あまりないと思います。寝られなくなる時はあります。悩み事があると寝られなくなります。

—— どういう悩み事があるんですか?

「あれはやったかな」とか「あの発言は大丈夫だったかな」とかを考え始めると寝られません。

◆やれることを徹底する

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—— 今シーズンのこれまでを振り返ってみてどうですか?

トップリーグの試合は、練習試合とは桁が違うくらい激しいですね。そして、勝つことの難しさを感じました。2年連続2冠を獲ったチームですし、昨シーズンはトップリーグでは準優勝で、日本選手権ではベスト4に入っていたのに、今シーズンは僅差で勝つことが多くて、これまで成績を残してきたチームでも勝つことは難しいんだと思いました。

—— 自分の手応えはどうでしたか?

スクラムに関しては少しずつ良くなってきていると感じていますが、フィールドプレーに関してはスクラムほど手応えはありません。

—— 手応えを感じなかったのは、経験によるものですか?

経験が大事ですし、出場時間があまり多くなかったと思います。

—— 最初から試合に出る時とリザーブから出る時とでは違いますか?

全く違いますね。やはりリザーブの方が出場時間が短いので、最初から力を出し切れますが、先発だと難しくなります。先発の時も、基本的には最初から出し切っているつもりなんですが、試合によって展開も違ってくるので難しいです。スクラムでも相手が疲れていた方が押しやすくなりますが、先発で出ると慣れるまでに時間がかかってしまいます。

—— どこが一番難しかったですか?

先発で出させてもらった試合は難しかったですね。先発だとやはり爆発的には走り切れないので、そこの調整は難しく感じました。

—— 良かったところはどこですか?

最近は、良かったことのイメージがあまりありません。最初はスクラムが徐々に良くなっていったことがありましたが、最近はそこまで伸びていないように感じます。課題としては、先発でもリザーブでもやることは一緒で、セットプレーでやれることを徹底するように考えています。

◆意識とフィットネス

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—— 具体的にセットプレーの何になりますか?

先発で出るとセットプレーの回数も多くなるので、リザーブで出る時よりも質が下がっていると思います。質を上げるためには、意識とフィットネスしかないと思います。毎プレーで良いプレーが出来るように意識していくしかないと思っています。

—— 試合に入る時の集中力が大事になりますね

凄く大事です。基本的には外の声は聞こえなくなります。それで、声が聞こえ始めると、疲れてきたかなと思いますね。

—— 聞こえない時の方が多いんですか?

基本的には聞こえません。もちろん選手やベンチからの声は聞こえますが、観客席の声は聞こえないですね。

—— 例えば、出場時間が60分だとして、どのくらいの割合で聞こえる時と聞こえない時があるんですか?

感覚的には、50分間は聞こえなくて、10分間は聞こえる感じだと思います。前半30分過ぎくらいから聞こえてくるような感じですね。

—— 聞こえてきた時にはどうするんですか?

どうするわけではないですが、少し疲れてきたかなと思いますね。それで、ハーフタイムになってリフレッシュして、後半が始まるころにはまた聞こえなくなります。

◆激動の1年

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—— 自分の中で、社会人でも通用すると感じた部分はどこですか?

あまりないんですが、スクラムについては大学時代と比べて成長していると思いますし、まだまだ成長出来ると感じています。まずはスクラムを第一に考えていますが、モールも含め、もっと成長していかなければいけないと思っています。

—— ランやパスなどはどうですか?

そういうプレーも大事ですが、フロントローなので、まずはセットプレーを成長させなければいけないと思います。

—— 今シーズンを経験して出た課題は何ですか?

全てのプレーにおいて、質の部分ですね。これまでの試合の中で、良いプレーもあったと思いますが、そういうプレーが1つでも多く出来るようにしていかなければいけないと思います。

—— そのために取り組むことは?

学ぶことと経験を積むこと、そして今よりも体を一回り大きくしなければいけないと思います。

—— サントリーに入る前にイメージしていた姿と今の姿を比べて違いはありますか?

僕にしては激動な1年でした。

—— 順調に成長しているように見えてみましたが、どの辺が激動だったんですか?

日本代表に選んでもらえたり、試合に出たり、あと仕事をしたりと、初めてのことばかりで激動でしたね。

—— 面白かったですか?

面白さを感じる余裕はありませんでしたが、楽しかったですし、良い経験を積むことが出来たと思います。

—— 今後の目標は?

日本選手権で優勝することです。その先については、個人としてはワールドカップを目指して、もう1つ階段を上がれればと思っています。

—— 今のチーム状況はどうですか?

凄く良い状態だと思います。チームみんなの意思が統一されている状態なので、優勝出来ると思います。

—— また試合で叫びますか?

そうですね(笑)。期待されていることを、期待通りにやろうと思います。

スピリッツ画像

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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