2015年2月 4日
#415 石原 慎太郎 『スクラムがあってフィールドプレーに繋がっていく』
先発、リザーブに関わらず、ほぼ試合に出続けている石原慎太郎選手。それでも「モヤモヤが溜まる」という石原選手に、社会人2年目の今とこれからについて語ってもらいました。(取材日:2015年1月19日)
◆モヤモヤは練習で発散
—— 2年目ですが、ほぼ全試合に出場していますね
昨シーズンは1試合だけメンバーから外れましたが、リザーブでの出場が多くて、1試合で3分だけの出場もありました。ただ、試合数だけで言えば、多くの経験をさせてもらっていると思います。
—— リザーブでの出場だと、試合が終わった後もまだプレーしたいという気持ちですか?
最近は、もっと試合に出たいという欲が強くなっていて、20分だけの出場では足りなくなっていますし、次の日に練習試合などが無かったりすると、そのモヤモヤが溜まったままで発散出来ない状態がありましたね。そのモヤモヤは練習で発散するようにしています。
—— 先発での出場は何試合ですか?
昨シーズンが3試合で、今シーズンは4試合(セカンドステージ終了時点)なので、7試合ですね。
—— 先発で出場する時は、リザーブで出場する時とは違いますか?
緊張感が全く違います。リザーブで出場する時も緊張をしていますが、それを遥かに超える緊張感があります。
—— 緊張という意味で言えば、リザーブでの出場の方が試合には入りやすいですか?
そうですね。リザーブの時は、試合を見ながら相手の状況や僕たちの状況も分かって試合に入るので、やるべき仕事が明確になった状態で試合に入ります。先発で出場する時は、自分たちでその状況を作っていかなければいけない段階から始まるので、やっぱり緊張しますね。
—— 緊張はどの辺で取れるんですか?
グラウンドに入ってしまえば、試合に集中しているので、緊張を考える余裕はなくなります。だから、試合中は緊張を感じることはあまりないと思います。
—— 試合の入り方が重要になると思いますが、何を意識していますか?
試合をコントロールするのは9番や10番の選手になるので、僕らフォワードはいつものプレーをやることを心掛けています。それ以外の部分で、例えばファースト・スクラムやファースト・ラインアウトでは、レフェリーへの印象も変わってきてしまうので、そこでの意識や感覚は違いますね。
—— コンディション的には先発フル出場出来る状態ですか?
先発フル出場したいという気持ちはありますが、先日のNECとの練習試合では久しぶりに先発フル出場をしたら、80分が長く感じられました(笑)。今までは出場時間が20分、長くても40分という試合が多くて、その中で80分プレーしてみて疲労感や充実感の違いを感じました。
◆右肩で押さえられる力
—— 現時点での課題は何ですか?
安定感を課題にしています。昨シーズンも監督やコーチから指摘されていて、今シーズンの最初の頃までは波が大きくて、チームからの信用も得られませんでしたし、使いにくい選手と思われていたと思います。そこを更に改善して、波があったとしても波の幅が小さくて、一定の力を出し続けられる選手にならなければいけないと思います。
良い日と良くない日があって、僕の中ではいつも通りの感覚で試合に入って行っているつもりでも、その中で出たパフォーマンスでミスが多かったり、スクラムを崩してしまったりすると、スタッフ陣も計算しにくい選手と思ってしまうので、そこを更に改善していかなければいけないと思っています。
—— なぜ波が出てしまうのでしょうか?
対戦相手にもよると思いますが、チーム全体で良いリズムが作れている時は、僕も一定のパフォーマンスが出せます。けれど、拮抗した試合や劣勢な状況の中で相手にプレッシャーを掛け続けられる選手かどうかと言うと、まだ力が足りなくて、相手からプレッシャーを受けてしまう場面が目立ってしまっていたんだと思います。
—— どう改善しようと考えていますか?
練習しかないと思います。気持ちの面だけじゃなくて、スキルやレベルが足りないからプレッシャーを受けてしまうと思うので、自信を持てるだけの力を身につけられれば、どんな相手に対しても同じプレーが出来るようになると思います。
—— どういう局面でよりプレッシャーを受けてしまうんですか?
NECとの練習試合でも出てしまいましたが、相手ゴール前でチャンスの時のマイボールスクラムでのミスであったり、ペナルティーを相手に与えてしまったりなど、そういうところですね。あと逆の立場で、自陣ゴール前で守らなければいけない場面でも、僕のポジション的にはプレッシャーを受ける、受けないという攻防で、波が出やすいポジションだと思います。
—— 改善するために、具体的にどう強化しようと思っていますか?
特にスクラムを強化するために、ハタケさん(畠山)や真之介(垣永)が日本代表から持って帰って来てくれたスクラムのトレーニングを取り入れたり、それにアオさん(青木)のトレーニングを加えたりして、フロントロー全体としてトレーニングをしています。それがスクラムの安定感に繋がってきていると感じています。 チームとしてのスキル向上も必要ですが、個々のレベルを上げていった上での8人としての強化が必要で、まずは自分のスキルを上げるためのトレーニングを意識して取り組んでいます。
—— 例えば、2番の選手が誰になろうとあまり関係なくなりますか?
そこは大きく関係してくると思いますが、その中でも例えば2番がプレッシャーを受けていたとしても、右肩で2番を押さえられる力を身につけて助けられるようになりたいですね。フッカーに僕がついていく形になれば、凄く組みやすいんですが、劣勢になった時に僕がプラスαの力を出せるような選手にならなければいけないと思っています。
—— 学生時代とはその辺りが違いますか?
学生の時はガムシャラに組んでいましたね(笑)。そこまで形などにこだわらずに、1対1の力で勝負していたと思います。それと比べると、今は凄く考えられていて、細かなところを気にしながら取り組んでいるので、そこのスキルを学んでいます。
◆スクラムが一番の軸
—— 身体についてはどうですか?
順調に成長出来ていると思うんですが、それをグラウンドで上手く発揮出来ていないと感じています。スクラムに関しては、安定感という部分でレベルが上がってきていると思いますが、フィールドでのコンタクトプレーなどでは、もっとインパクトあるプレーをしたいと思っているので、その部分では自分自身にまだ物足りなさを感じています。
—— どういう選手が理想ですか?
相手チームになるんですが、昨シーズン新人王を取ったパナソニックの稲垣(啓太)は、1年目から日本代表に選ばれていますし、彼のプレーをよく見るようにしています。プロップなのにチームの中で一番タックル数が多いんです。彼は凄いと思いますし、見習わなければいけないと思っています。 真似するわけではなくて、彼のようなプレーはチームにとって必要なプレーだと思いますし、僕もあのようなプレーをやっていかなければいけないと思っています。
—— 自分が理想とする姿と比較して、現時点ではどれくらいまで来ていますか?
理想とする姿からは、まだ5割、6割くらいだと思います。まだまだ安定感が足りないと思っていますし、どんな相手を前にしても、ずっと安定したプレーが出せる選手になるためには、まだまだ力不足だと思います。
—— 理想の姿になるためには、どれくらい時間がかかると思いますか?
安定感の部分でずっと悩みながら取り組んできて、インパクトあるプレーを出せずに来ていますが、最近は徐々に出せるようになってきていると思っています。それを継続させていくためには、あとどれくらいの時間がかかるかは予想できないですね。満足してしまえば、また波の下の方になってしまうと思うので、常に緊張感を持ってこれからも取り組んでいくことが大事だと思っています。
—— 課題に取り組んでいる過程の中で、一番面白いと感じている部分はどこですか?
スクラムはトレーニングをすればするほど、試合で顕著に結果が出るところだと思っています。それに、スクラムが安定してくると、フィールドプレーにも繋がっていきます。スクラムで優位に立てると、疲労感が全く違ってきて、相手よりも動けるようになります。
どうしてもスクラムでプレッシャーを受けてしまうと、フィールドでもずっと疲れが溜まったまま動き回らなければいけなくなるので、スクラムが一番の軸だと思っています。他のプレーにも良い影響を与えるために、まずはスクラムを安定させなければいけないと思っています。
—— チームとしてのスクラム強化が重要になりますね
昨シーズンからずっと強化に取り組んできていますし、日本代表が他の国に対して、あれだけ良いスクラムを組めるようになったことが、トップリーグのチームにも良い影響を与えてくれていると思っています。その影響で、僕のスクラムに求められるレベルも高くなってきていると思うので、それについていかなければいけないと思っています。
—— 身体は大きくなっていますか?
大きくなってきています。どうしてもお腹周りが落ちないんですが(笑)、体脂肪率が減ってきている中で身体が大きくなっているので、順調に来ていると思います。脂肪を除いた体重のことを除脂肪体重と言うんですが、体重をキープしたまま除脂肪体重がアップすることが理想です。除脂肪体重がアップするということは、体脂肪率が下がるということになります。それを考えてトレーニングをしています。
—— 食事にも気をつけていますか?
体質的にしっかりと食べないと体重が落ちてしまうので、気をつけながら食事をしています。一度にたくさんの量は食べられないので、細かく食事をするようにして、体重を落とさず除脂肪体重が増えるようにしています。
—— 世界を見て、自分自身のレベルはどの辺りだと思いますか?
僕の場合は世界と戦ったのが、U20日本代表が最後で、そこから4年も経っていますが、その間に世界と戦うチャンスはありませんでした。今の日本代表は神戸製鋼のフロントローが多く選ばれていて、その神戸製鋼とスクラムを組んでみると、まだまだ力が足りないと感じます。
◆精神状態をキープし続ける
—— 現時点ではまだ日本選手権出場が決まっていない状況ですが、ワイルドカードトーナメントを勝ち抜けば、日本選手権を1回戦から戦うことになります。1回戦から戦うことについてはどう考えていますか?
目の前にあるのはワイルドカードトーナメントなので、まずはそこを考えています。これまではプレーオフで決勝に進んで、日本選手権は準決勝からというスケジュールが多かったので、プレーオフをしっかり戦ってから、日本選手権にシフトしていたんですが、今回はもう負けたらそこでシーズンが終わる戦いになります。
その精神状態を6週間続けることは、これまでのサントリーの中でもなかったと思いますし、精神状態をキープし続けることが大事な6週間になると思います。もちろん日本選手権に出場するためにワイルドカードを勝ち抜かなければいけませんし、目の前の試合を1試合1試合乗り越えていくだけです。
—— 負けたら終わりの試合では、また緊張感も違いますか?
プレーオフに出場していれば、あと2回勝てば優勝という気持ちになりますが、これからは1試合1試合、目の前の試合にしっかりと臨んでいかなければいけないので、練習から緊張感がありますね。
—— リーグ戦5位という結果はどう考えていますか?
シーズン序盤はチームとしての方向性があまり固まらない状態でスタートしてしまっていたかもしれませんが、それがやっと1つのチームとして固まって、今はみんなが迷いなく1つ1つのプレーをしています。試合の流れを把握した状態でプレーの選択が出来ているので、本当に良いチームになっていると思います。
ただセカンドステージ第2節の花園で神戸製鋼に敗れた試合などは、いま振り返ると悔やまれますね。それが最後の点差に表れてしまったと思います。今シーズンはチーム自体が変わらなければいけないシーズンだったので、その部分においてはリスクもあったと思いますし、新しいことにチャレンジしながら戦っていたので、それも影響していたと思います。今はみんなが同じ方向を向いて取り組めているので、ワイルドカード、日本選手権に向けて、良い準備が出来ていると思います。
—— 日本選手権での目標は?
もちろん、優勝するつもりですし、チーム全体として「優勝してやろう」という気持ちでいます。
—— 試合ではファンにどういう姿を見てもらいたいですか?
先ほどは安定したプレーと言いましたが、僕はボールを持ちたいタイプですし、ボールを持つことが自分の持ち味だと思って、大学時代からやってきているので、そこを信じてプレーし続けています。スクラムやラインアウトの、僕のポジションとしての仕事も見てもらいたいですが、それ以外にボールを持ったプレーをしっかりと見てもらいたいですね。
今はスクラムも安定してきているので、フィールドでの僕のやりたいプレーも出来つつある状態だと思っています。スクラムがあって、それにフィールドプレーが繋がっていくと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]