SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年12月31日

#409 ツイ ヘンドリック 『ポジティブなエナジーをチームに』

サントリーが勝ち抜いていくために、そして日本代表チームにとっても、重要なキーマンの1人。"ラガーマン"としての考えはもちろんのこと、"人間"ツイ選手に迫るインタビューを試みました。

◆常に勝てるチャンスがある

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—— ラグビーをしている姿は怖い顔をしているように見えますが、普段はどんな性格ですか?

普段はハッピーで、リラックスしていますよ(笑)。グラウンドに入る時には、スイッチを切り替えています。意識していることは、グラウンド上では「チームメイトがポジティブになれるように」と心掛けています。例えば、お互いに勇気づけ合うために話し合ったり、ベーシックなことを言い合い、確認し合ったりしています。ポジティブなエナジーをチームに与えられるようにしています。

—— 基本的な性格はポジティブなんですね

はい(笑)。

—— ポジティブな性格はもともとですか?

学んだことが大きいと思います。選手の中には、負けることなどマイナスなことを考えてしまう選手もいます。僕の場合は、「常に勝てるチャンスがある」と信じて、ポジティブに考えるようにしています。疲れた時でもチームメイトがしっかりとサポートしてくれると分かっているから、そう考えられるんだと思います。

—— そう考えられるのは、そういう場面を多く経験してきたからですか?

本当にそう思います。日本代表としてプレーしている時も負けてしまうような僅差の試合もたくさんありました。そういう試合でもポジティブな気持ちで、自分たちのゲームプランに沿った通りにプレーすることで、最終的には勝つことが出来た試合があります。

—— 経験を積むことでポジティブになったんですね

学びながらポジティブになってきました。ネガティブな考えでプレーをしていると、気持ちが重くなってしまい、ネガティブなことが起きてしまいます。そして、ネガティブなことが起きると、試合全体を見ることが出来なくなってしまいます。頭の中は常に冷静でなくてはなりません。

僕が帝京大学にいる時に早稲田大学と試合をして、相手選手が当たってきたのでそれに対して当たり返したら、僕がシンビンになりグラウンドから出なければいけなくなりました。そして、僕が外に出ている間にトライを獲られてしまって、負けてしまいました。その後に、岩出さん(雅之/帝京大学監督)から「常に冷静でいるように」と言われました。

—— それは相当悔しいですね

とても悔しかったんですが、その経験から学ぶことができました。それ以降は早稲田大学に負けたことがなかったと思います。僕が犯した行動が、チームメイト全てに影響を与えてしまいました。

—— もともとの性格はシャイですか?

シャイではないと思いますが、少し静かかもしれません。少し後ろに下がって、周りを観察することが好きですね。そして、時々いたずらっ子になる時があります(笑)。

◆自分のベストを尽くす

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—— チームの中でのポジションとしては、チームを引っ張っていくタイプですか?それとも支えるタイプですか?

チームの中で各パートのリーダーが決められているので、リーダーをサポートしなければいけないと思っていますが、僕が出ていかなければいけない時には前に出るようにしています。一番に考えることとしては、「自分のベストを尽くす」ということです。自分がベストを尽くすことで、他の人をリードすることにも繋がると思っています。

—— 大学時代の悔しい経験の後は、あまり怒ることもなくなりましたか?

もちろん怒ることもあります。自分たちの基準が下がってしまっている時や、相手チームよりも自分たちが上回っていると分かっているにも関わらず、上手くプレー出来ていない時には凄く怒りますね。ただし、誰かを責めるような怒り方はしません。そういう場面では、「みんな、もっと出来るだろ!」と言って、一緒に気持ちを盛り上げていくようにします。

—— ポジティブになるには楽しむことも大事だと思いますが、ラグビーをしていて一番楽しいところはどこですか?

始めた時からずっとラグビーが大好きなんですが、その中でも特に楽しいと感じるところは、「仲間と一緒に同じことをやっている」というところですね。あとは「80分フィジカルにプレーできて、自分のためだけではなくて、チームメイトのために戦っている」ところです。そして、試合に勝利し、試合の後もチームメイトと一緒にいて、プレミアムモルツを飲むことです(笑)。プレミアムモルツを飲みながら、チームメイトと一緒に話をしている時間は最高です。

—— 体は昔から大きかったんですか?

日本に来た時から比べるとかなり体重が増えています。昔は凄く細かったですね。子供の頃から足はそんなに速くはなかったんですが、力は強い方だったと思います。良いバランスだと思います(笑)。

—— もしラグビーをやっていなければ、他のスポーツでも活躍できたと思いますか?

バスケットボールが大好きですが、ラグビーの方が好きですし、ラグビーを選んで良かったと思います。

◆日本代表はラインアウトが良くなっている

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—— 今シーズン開幕から3節まではスタメンで出場していましたが、その後はリザーブでの出場となっていて、セカンドステージ第2節でまたスタメンでの出場となりましたね

やはりスタメンでの出場となると、気持ちが更に引き締まります。11月の日本代表での試合でも、全てスタメンで出場しているので、コンディションとしてもとても良い準備ができています。今はもうセカンドステージの途中ですが、1試合1試合戦っていくだけです。

—— 日本代表ではスタメンで出場しながらも、サントリーではリザーブでの出場が多くなっていて、そこのバランスはどう取っているんですか?

サントリーではサントリーのゲームプランをコーチたちが考えていると思うので、ポジティブな考えを持って、チームがベストのパフォーマンスを出せるように準備をするだけです。リザーブで出場して、出場時間が15分だろうが10分だろうが、出場した時には自分のベストを尽くすだけです。

—— 日本代表は強くなったと思いますか?

経験の部分でもスキルの部分でも、とても力をつけていると思います。そういうチームでプレー出来ることが、僕にとってもプラスになっています。具体的に言うと、ラインアウトが良くなっていると思います。多くの時間を使ってトレーニングをしたので、僕自身も成長出来ていると思います。

—— 日本代表では、フォワードは朝5時半や6時からトレーニングをしているそうですね

そうです。JP(ジョン・プライヤー/日本代表S&Cコーディネーター)タイムです(笑)。3年くらい日本代表で続けているので、もう慣れましたね。

◆良いタイミングで調子が上がってきている

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—— サントリーの今シーズンは接戦を制してきていますが、チームの状況としてはどう感じていますか?

そういう苦しい試合を勝つことで、多くの経験を積むことが出来ていると思います。今シーズンは新しいコーチが入ってきて、チームの調子が上向くまでに、いつもより少し時間がかかったと思います。良いタイミングでチームが1つになってきていると感じています。シーズンの早いタイミングでチームの調子が上がりすぎてしまうのも良くありませんし、他のチームの調子も上がってきているので、本当に良いタイミングで調子が上がってきていると思います。

—— 競った状態で、試合の途中から出場する時には、どういうことを考えて試合に臨むんですか?

まずはスコアを頭に入れて、どのエリアを向上させていかなければいけないのかを考えます。そして、出場した時には、他のメンバーに「何をしなければいけないのか」を説明します。試合が始まったら、ゲームプランを見ながら、リーダーと話し合い、そのプランに沿ってプレーしていくだけです。

—— 将来の目標は何ですか?

今シーズン終了後には、スーパーラグビーのレッズに加入することが決まったので、まずはレッズのメンバーに選ばれることが最初の目標です。その後にワールドカップがあるので、ワールドカップに出場し、もしその後にもチャンスがあれば、スーパーラグビーにチャレンジしたいと思っています。もちろんサントリーでも活躍したいですし、スーパーラグビーにチャレンジすることが、日本代表にも繋がっていると考えています。

—— スーパーラグビーにチャレンジする上で、どういうところに期待していますか?

経験を積むということも大事なのはもちろん、高いレベルの中に継続していられるようになることを期待しています。

—— これから大事な試合が続いていきますが、一番大事なことは何だと思いますか?

大事なことはたくさんあるんですが、サントリーのラグビーをする上で大事なことはワークレートです。そして、ディフェンスでは我慢することが大事です。その2つがしっかりとできれば、良いサントリーラグビーが見られると思います。 その中で、僕は「勝つことに集中する」だけです。試合に勝ち、一番上の順位になることを考えています。ファーストステージでは、僅差の試合が多く、周りからサントリーは一番のチームではないと思われたと思います。それは違うということを証明しなければいけません。セカンドステージはサントリーのラグビーを見せるだけです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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