2014年12月10日
#407 西川 征克 『相手に嫌がられるプレーをしていきたい』
2年前にしっかりとレギュラーの座を掴んだものの、昨シーズンは怪我もあり殆どプレーせずに迎えた5年目の今シーズン。“中堅”に足を踏み入れつつある西川征克選手にとって今年は“勝負の年”であり、これから“勝負の後半”を迎えることになります。西川選手に意気込みを聞きました。
◆自分の強みを出してアピール
—— まずは昨シーズンを振り返るとどんなシーズンでしたか?
昨シーズンは怪我をしてしまい思うようなシーズンを過ごせませんでした。2年前にチャンスをもらって試合に出ることが出来たので、昨シーズンが始まる前には「勝負の年だ」と思って臨んだんですが、怪我をしてしまいほぼ試合に出ることが出来ませんでした。ですが、ラグビーをやっている以上は、怪我をすることも仕方がないと思っています。
—— これまでの選手生活の中で同じ様な大きな怪我をしたことはありましたか?
いや、半年もチームを離れるほどの怪我はありませんでした。
—— 昨シーズンの怪我を経て、今シーズン復帰してみてどうですか?
チームの始動と同じタイミングで復帰することが出来たんですが、最初はやはり怖かったですね。体力も落ちていたんですが、春シーズンでみんなと同じスタートだったので、そこはあまり気になりませんでした。
—— 今シーズンのここまでを振り返るとどうですか?
トップリーグのファーストステージでは3試合出させてもらいました。バックローのポジション争いは厳しくて、あまり試合に出られていませんが、サテライトや練習試合で自分の強みを出してアピールして、チャンスを掴み取りたいと思います。
—— ファーストステージで3試合のみの出場となった要因は何だと思いますか?
試合のメンバーに入るのは、チームから信頼されていて、チームのために体を張れる選手だと思うので、その部分が足りなかったんだと思います。
—— それは昨シーズン怪我をしたことが影響していますか?
いいえ、今は100%でトレーニングが出来ているので、そこは関係ありません。試合のメンバーに入るための力がまだまだ足りないという事です。
◆バックローの生命線ブレイクダウン
—— 2年前のシーズンの状態を100とすると、今の状態はどのくらいですか?
難しいですね。2年前は2年前のチームのスタイルに合った100%の状態で出来ていたと思います。今年は今年のスタイルがあって、最終的には100%に持っていきたいと思っています、ファーストステージを終えた段階で、自分に足りない部分やまだ伸ばせる部分が見えたので、そういう意味ではまだ100%ではないですね。
—— 足りない部分や伸ばせる部分はどこですか?
フィットネスやバックローの生命線であるブレイクダウンの部分が、まだまだ伸ばせると思っています。
—— 伸ばすためにはどういうことをしているんですか?
練習でより意識するようにしていますし、色々と試してみて、「このタイミングだとボールが獲れる」という感覚を増やしていっています。昨シーズンまでチームにいたジョージ・スミスのプレーは、やはり参考になりました。ジョージは相手が嫌がるようなプレーをしていましたし、そのプレーが出来るから精神的にも優位に立てていたと思います。
—— 相手に嫌がられるプレーは得意ですか?
バックローとしては、目指すところはそこですね。普段の性格からは苦手そうに感じるかもしれませんが(笑)、グラウンドの中では普段とは違う面も出るので、意識して相手に嫌がられるようなプレーをしていきたいですね。
—— 今シーズンからチームに加入したスカルク・バーガー選手はどうですか?
スカルクはジョージとはタイプが違います。スカルクにしてもジャスティン(ダウニー)にしても、南アフリカらしい激しいフィジカルプレーをしています。共通する部分としては、賢さだと思います。プレーの選択という部分でオプションをたくさん持っていて、その都度ベストのプレーを選択していると思います。
—— ベストの選択をしていくためにはどうすればいいと思いますか?
ジョージやスカルクと同じプレーは出来ませんが、オプションを参考にすることで自分の中でプレーの幅が広がると思います。がむしゃらにプレーしていると、視野を広く保つことが難しいんですが、世界で活躍する選手はかなり広いところまで見えていると思います。だから次の動き出しも早いので、凄いと思います。
—— あまり視野を広げすぎると、目の前がおろそかになるということはありませんか?
局面、局面でファイトすることがベストですが、ラインセットした時にはポイントだけを見るんではなくて、全体を見られるようにならないといけないと思います。フォワードはどうしても内に寄って行ってしまう傾向があるので、全体的は幅も意識して見るようにしています。
◆100%の力を出す
—— 以前の練習試合ではキャプテンを務めることが多かったと思いますが、どういう影響がありましたか?
キャプテンではありましたが、当時は2年目で若かったですし、周りの選手にサポートしてもらっていたので、気持ちの中では「キャプテンでいいのかな?」という想いは正直ありました。チームのベクトルを同じ方向に向けるという経験をさせてもらえましたが、周りのサポートが凄く良かったので、僕としてはプレーで示そうと考えていました。
当時は2年目で、自分のことしか考えていなかったと思います。あまりキャプテンということを意識することなく、自分のプレーに集中できるように、周りの選手にさせてもらっていたと思います。今は5年目で中堅の年齢になったので、それを若手選手に対してしていかなければいけないと思っています。
—— 2冠を獲った2年前のシーズンと今シーズンを比べると違いますか?
メンバーもだいぶ若返りましたし、アンディ(フレンドヘッドコーチ)が来たことで、今までのアタッキング・ラグビーにプラスαとしてキックなどで陣地を獲ることが加わったと思います。進化はしていると思います。2年前は前の年に2冠を獲ったということで負けられないというプライドがありました。今シーズンは昨シーズン負けて、また獲り返すということを考えてやっているので、視点も少し違うような気がします。
—— 試合に臨む上で、変わったことはありますか?
今シーズンはあまり出場出来ていませんが、試合に出たら100%の力を出すことを心掛けていますし、そこは変わっていません。今シーズンは若い選手の出場が多いので、そういう選手を引っ張っていこうと思ってはいるんですが、まだ出来ていないのが現状だと思います。
2年前は中堅やベテラン選手の出場が多かったので、今シーズンとはコミュニケーションの部分が違うと思います。戦術などで新しいことにも取り組んでいるので、お互いに確認し合うことは、意識しながらやっています。
—— セカンドステージは厳しい戦いが続くと思いますが、意気込みは?
セカンドステージが始まる直前に日本代表メンバーが帰ってきて、ここからサントリーとしてのチームが一体となって、目標である2冠獲得に向けてやっていくだけだと思います。僕自身としては、不安はありません。勝っても負けてもおかしくはない試合が続くと思いますが、1戦1戦でサントリーのラグビーを100%することにフォーカスしていけば、勝ちを積んでいけると思っています。
—— その中で西川選手として役割は何だと思いますか?
試合に出たら100%の力を出すことです。ディフェンスではブレイクダウンに絡んで、ターンオーバーであったり、相手の球出しを遅らせたり、バックローとしての大事な役割をしっかりと果たしていきたいと思います。
◆鼓舞することも自分の役目
—— ポジションにこだわりはありますか?
僕はレギュラーとしてまだポジションを与えられていないので、ポジションへのこだわりはなく、バックローのどこで試合に出ても100%の力を出すだけです。
—— 成長しているところはどこだと思いますか?
プレーに関しては、サントリーのスタイルがあるので、変わってはいないと思います。昨シーズンの1年間のブランクがあって、そこで気づきというか、チームを外から見ることが出来て、改めてコーチやスタッフ、選手が一体となって取り組めていると感じました。
これからもサントリーがまとまっていくために、メンバーに入る入らない関係なく、チームが良い方向に進むために取り組んでいかなければいけないと思っています。それに、サテライトや練習試合のメンバーに対して、「トップリーグに出場するためにチャレンジしていこう」という気持ちにさせるよう鼓舞することも自分の役目だと思っています。
—— サテライトや練習試合では、今年は良い時と悪い時がはっきりしているように感じますが、どうでしょうか?
僕らも試合に向けて練習に取り組んできているんですが、負けた試合では、相手の方が気持ちが強かったと思います。「試合の立ち上がりから自分たちの力を出し切ろう」と言っても、それが出来なかったことが点数にも繋がっていると思います。
立ち上がりから自分たちのラグビーを出すためには、1週間の練習が大事になりますし、試合で100%出すための準備が、個人個人であるんですが、どこかで不足している部分があったんだと思います。
—— 昨シーズンのリハビリ期間は大変な思いをしてきたと思いますが、その時に支えになったものはありますか?
リハビリをサポートしてくれる人への感謝と、仕事をして会社に貢献するという想いがありました。
◆喜びを分かち合え、信じ合える仲間
—— 改めて、今シーズンの目標は?
チームとしてはタイトルを獲ることですし、個人としてはそのチームの目標を達成するために貢献することです。もし試合のメンバーに入れなかったとしても、メンバーが試合で力を発揮出来るようになるために、練習でしっかりとサポートして、チームがぶれないようにしていくことだと思います。
—— 今後、選手として目指していることはありますか?
社員選手であろうが、プロ選手であろうが、必要ないと判断されればチームを離れなければいけません。1年1年勝負していかなければいけないので、あまり長期的なことは考えていません。僕も5年目ですし、危機感も芽生えているので、ラグビー選手として活動出来ることをチャンスと捉えて、1年1年をやっていくだけです。
—— そういう状況の中で、ラグビーの楽しさは何ですか?
試合に勝った時にはみんなで喜びを分かち合えたり、本当に信じ合える仲間が出来るところが、ラグビーの魅力だと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]