2014年12月 3日
#406 長友 泰憲 『グラウンドを常に動いている』
トップリーグデビューから日本代表まで一気に駆け上がった長友泰憲選手ですが、その後、怪我などでコンディションを崩し、なかなか期待通りの活躍が出来ない状態が続いています。今回の復帰が、真の復帰に、そして更なる飛躍に繋がるでしょうか?現在の心境を聞いてみました。
◆キックも武器に
—— 10月31日のサテライトNTTコム戦が復帰戦となりましたね
やはり最初は怖くて思うようなプレーが出来なかったんですが、試合を重ねていく毎に慣れてきていると思います。これまでも何回か復帰する体験をしてきましたが、今回は今までよりも慣れるのに時間がかかるかもしれません。
—— 復帰するまでにはどれくらい時間がかかりましたか?
チーム練習に戻るまでに1ヶ月くらいで、試合に復帰するまでには更に1ヶ月くらい時間がかかりました。最初は筋肉も落ちてしまったんですが、チーム練習に参加する前には元の状態くらいまで戻すことが出来たと思います。
—— このまま順調に調子が上がっていけば、セカンドステージでは試合にも出られそうですか?
試合に出られるかどうかは監督やコーチの判断になりますが、このまま調子を上げていければ、試合に使ってもらえると思っています。
—— 長友選手は倒れないプレー、倒れても再び起き上がるところが最大の魅力だと思いますが、その状態に戻るまでにはまだ時間がかかりそうですか?
そうですね。まだあの時の状態までには戻せていないですね。今回の顔の怪我の前に、脚を怪我した時があって、その時から脚のトレーニングにも力を入れていて、その成果が出てくれば、前みたいなプレーが出来るようになると思います。
ですが、前みたいなプレーに戻るまで待ってはくれないと思うので、新しいスキルを身につけなければいけなと思っています。例えば、キックのスキルを更に向上させようと取り組んでいます。海外のウイングの選手のプレーを見ると、ディフェンスの裏にキックをして、そのボールを自分で拾ってトライするシーンなどもよく見ます。ですので、身体をぶつけるだけではなく、キックも武器になるようにしていきたいと思っています。
◆腹筋と脚
—— 怪我を乗り越えて、いま目指しているプレースタイルは?
僕も今年29歳で中堅の年齢になってきたので、スピードだけでは若い選手の方が速いと思います。そこで勝負をするのではなく、仕事量を更に増やしていきたいですし、フィジカルは武器なので、これからも磨いていきたいと思います。あとは、相手チームにとって嫌なところに顔を出せるようなプレーをしていきたいと思っています。
—— なる前に考えていた29歳の自分と、今29歳になった自分は、どうですか?
怪我のことは考えていなかったので、上り調子でどんどん成長していくと考えていました。実際にはやはり浮き沈みがあって今の状態になっているんですが、復帰もしたので、これからはどんどん試合に出て調子を上げていきたいですね。
—— いま特に力を入れて鍛えている個所はどこですか?
コアが大事なので、腹筋です。あとは脚ですね。
—— 若手も成長してきていて、練習試合に出てみた感触はどうでしたか?
悪くはないと感じたので、これからどんどん調子を上げていきたいと思います。出場時間は短かったんですが、その短い時間でも存在感を示せるようになっていかなければいけないですね。
—— これまで世界的選手とチームメイトになってきていますが、そういう選手から学んだことはありますか?
それぞれ個性が違うので一概には言えませんが、共通する部分としては自分の中でルーティーンを持っていて、試合だけじゃなくて練習から態度で示してくれていると感じます。例えば、ジョージ・スミスは、ただがむしゃらに走るんではなく、先を読んで、ピンチになるであろう場所に走っているんです。そういう姿を練習中から見ていて、危機管理能力が凄いと感じましたね。そういうプレーはジョージ・グレーガンも凄かったと思います。
アタックの場面でも、無駄に疲れないように最短の距離を走っていたりしますし、スピードコントロールが上手いので、見習うべきところが多かったですね。
◆黒いヘッドキャップ
—— 中堅の年齢になってきて、グラウンド外で若手に指導する役割もあるんですか?
僕はリーダータイプではないですが、気づいた時には声をかけるようにしています。僕は言葉で何かを説明するのが得意な方ではないので、態度で示せるようにすることを心掛けています。
自分で言うのは恥ずかしいんですが、自分が納得するまで居残り練習をしたり、早くグラウンドに来れる時は、他の人よりも早くグラウンドに来て、トレーニングをしていたりするので、そういう姿を見て何かを感じてくれればいいかなと思っています。伝えることも大事ですが、伝える前に自分がやるべきことに取り組み、そういう姿を見せられればいいと思っています。
—— 会社の仕事は順調ですか?
今はスーパーなどを担当させてもらっていて、2ヶ月くらい先の数字を考えて仕事を進めていかなければいけないので大変ではありますが、他の人も大変だと思いますし、上手く仕事とラグビーを両立していければと思っています。
—— 今シーズンの目標は?
今シーズンはまた2冠を獲ることが目標ですし、その瞬間にグラウンドに立っていたいと思っています。ですが、ファーストステージでは開幕戦のコカ・コーラ戦しか出場出来ていないので、早くトップリーグの試合に出られる状態にしていきたいです。
—— 試合に出た時には、ファンにどういうプレーを見てもらいたいですか?
やはりウイングなので、たくさんトライを獲りたいですし、そのためにはボールの近くに顔を出せるプレーをしていかなければいけないと思うので、そういうプレーを見てもらいたいですね。ウイングだからといって、ボールを待っていたのではトライは獲れないと思うので、自分からボールをもらいに行って、トライに繋げたいと思います。 アタックでもディフェンスでも運動量と仕事量が大事なので、見ている人が「グラウンドを常に動いている」と感じてもらえるようになりたいです。
—— 最後にファンに向けてメッセージをお願いします
顔の怪我をしてからは試合に出る時に黒いヘッドキャップを被ってプレーしているんですが、みんなから「全然似合っていない」と言われているので、その姿を見て楽しんでください(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]