2014年11月 5日
#402 仲村 慎祐 『どんどんボールに絡んでいく』
“ジャンボ”の愛称がすっかり定着した仲村慎祐選手。大きさと親しみやすさからついたニックネームに相応しいプレーが、そろそろトップリーグでも見られるのではないでしょうか。進境著しいジャンボに今の心境を訊きました。
◆バランスよく取り組む
—— 久しぶりの登場ですが、身体は大きくなりましたか?
身体は小さくなりました。脂肪が少なくなって、入部当時よりも14kg痩せました。ポジションをプロップからロックに転向したので、それで身体も絞りました。
—— 体重を減らしたことで、動きに変化がありましたか?
入部した当初に比べたら、全然違うと思います。1km走のタイムで言えば1分以上縮んでいますし、それに最初は130kgくらいあって、懸垂が全く出来なかったんですが、今では10回以上は出来ます。サントリーに入って、人生の中で初めて懸垂が出来たと思います(笑)。
—— 懸垂が出来るようになったのはいつ頃ですか?
半年くらいで出来るようになったと思います。
—— それは体重が減ったから出来たんですか?それとも筋力が上がったんですか?
両方だと思います。ただ、半年でめちゃくちゃ体重が落ちたわけではないので、筋肉の影響が大きかったと思います。腕立て伏せでも同じですが、腕の力だけでは出来なくて、体幹がしっかりしていないと出来ないと思います。僕の場合は、体重が重過ぎたこともありますが、その体重を支えるだけの筋力が不足していました。僕の場合は懸垂でしたが、何事においても、「この部分だけをやれば良い」ということはなくて、色々なことをバランスよく取り組むことが、近道だと思います。
—— 体重を減らすためには、食事にも気をつけたんですか?
気をつけました。ただ、クラブハウスで出る食事は、栄養を完璧に考えられている上、味が落ちないので、凄いと思います。そういうサポートをして頂いていたので、そんなに大変ではありませんでした。ただ、現時点での身体ではまだダメで、体重は今のままで、体脂肪率を更に落とさなければいけません。 今シーズンに入って、体脂肪率が急激に落ちたんですが、それは素晴らしい食事のサポートがあったからだと思います。あと取り組んでいることがあって、クラブハウスで食べる以外の食事を、毎回写真に撮っているんです。それをチームの管理栄養士さんに評価してもらって、その評価をもとに改善することで、体重にも現れてきました。
例えばですが、ある日のお昼を、カルビ焼き肉弁当とおにぎり1個、そしてサンドイッチを選んだとします。その写真を撮って、栄養士さんに見てもらうと、「まずは野菜がないですよね。それにカルビ焼き肉弁当は脂が多い。あと炭水化物が多すぎます」と評価してくれるんです。それにどう変えるべきかを教えてくれて、「おにぎりをやめてサラダにして、カルビ焼き肉弁当を幕の内弁当に変えた方が良いですね」などと言ってくれます。あとは栄養士さんから評価して改善するだけじゃなくて、写真を撮ることによって、食事を選ぶ際に自分で考えるようになるんです。それによって、食事を選ぶチョイスが変わるようになったと思います。
朝ご飯に関しても、しっかりと栄養バランスを考えて食事をすることが大事ですね。栄養士さんの受け売りですが(笑)、体重を落としたい人の中には、食事を少なくする人がいると思うんですが、朝ご飯はたくさん食べた方が良いんです。朝ご飯をしっかりと食べることによって、1日の代謝が上がって、痩せやすい身体になるそうです。ただし、食事の内容も考えなければいけなくて、僕の場合は朝ご飯にたんぱく質をしっかり摂るようにしています。
◆プロップからロックに
—— ポジションを変えたことで体重を落としたんですか?
体質が変わったことは、入部してから継続してトレーニングを行っていることなので、ポジションは関係ありませんが、ポジションが変わったことで、より考えるようになりました。プロップからロックになったことで、より走らなければいけないとか、よりブレイクダウンに入らなければいけないと考えるようになったので、食事についても今までよりも考えるようになりました。
—— 実際にロックでプレーしてみて、フィットネスなどにも変化はありましたか?
以前であれば、周りの選手についていけなかったんですが、今では他の選手と同じメニューのトレーニングが出来ています。
—— プロップからロックに変わって、ロックでの面白さは感じていますか?
プロップよりもコンタクトが多くなりますし、スクラムでもラインアウトでも、ロックがいなければ成り立たなくなってしまうので、より責任感を持って取り組むことが出来ていると思います。ラインアウトはまだまだ向上していかなければいけませんが、ジャンパー役を初めてやらせてもらいましたし、新しいことが経験出来て、楽しさを感じていますし、更に上手くなりたいと思っています。
もともとコンタクトプレーは好きだったので、ロックになってコンタクトプレーが増えたので、嬉しさがありますね。ブレイクダウンも好きなプレーの1つですし、自分ではコンタクトの強さが長所だと思っているので、ボールを持ったら、力強く当たりに行くことを常に心がけています。それでゲインラインを切れたり、僕に相手ディフェンスが3人くらい来てくれたら、嬉しいですね。
—— コンタクトプレーには力強さの他に、スピードも大事になると思いますが、スピードには自信がありますか?
短い距離であれば、僕のこの身体の大きさを考えると、速い方だと思います。10m走のタイムを計ったんですが、1秒66だったんです。今はもう抜かれてしまいましたが、その時はバックスの圭輔(阪本)と同じタイムだったんですよ。今の圭輔はもっと速くなりましたが、僕の身体の割には速いタイムだったと思いますし、ロックの中でも速い方だったので、自信になりました。
◆やるべきことがシンプルに
—— ロックとして初めて試合に出場したのはいつですか?
昨シーズン末に行ったキヤノンとの練習試合だったと思います。初めてのポジションで試合に出るという部分では不安を感じていましたが、「スクラムを1列目で組まなくていい」と考えたら少し気が楽になった記憶があります(笑)。
—— スクラムに対するプレッシャーが大きかったんですか?
プレッシャーは凄かったと思います。上手くスクラムが組めなかったらと悪い方に考えて、苦しくなってしまっていたと思います。スクラムに対する不安が和らいだお陰で、更にコンタクトに力を注げると考えるようになりました。
—— その試合でのロックとしてのプレーはどうでしたか?
その時はラインアウトジャンパーも出来なかったので、フィールドプレーで頑張ることしか出来ませんでした。その分、試合でやるべきことがシンプルになって、ボールを持ったら力強く当たっていくことだけを考えてプレーしたので、まあまあ上手くいったと思います。プレーしている時は自分のプレーが良かったのかなどは分からなかったんですが、色々な人から「良かったよ」と言ってもらえたので、嬉しかったですね。
—— その時と比べて、よりロックにフィット出来ている感覚はありますか?
自分自身が楽しんでプレー出来ている感覚がありますし、やらなければいけないことをはっきりと理解してプレー出来ているので、そういう意味では上手くいっていると思います。
—— 改めて、ロックの面白さは?
今は5番でプレーすることが多くて、試合の中でインパクトプレーヤーにならなければいけませんし、ボールキャリーもやらなければいけません。ブレイクダウンではクリーンアウトして、良いボールが供給出来るようにしなければいけないので、どんどんボールに絡んでいくことを意識しています。動けないくらい疲れていても、誰よりもボールに絡んでいかなければいけないと思っています。
「あの場面でボールに絡めなかった」と気づく場面があれば、「なぜボールに絡めなかったのか」を考え、フィットネスの向上や体脂肪率を落とすことを考えトレーニングに取り組み、その成果がプレーに表れることを楽しみにしています。
—— そろそろトップリーグの試合でもロックとして出場したいですよね
チャンスがあれば、いつでも出たいです。1年目の時に1試合だけ出場してから、トップリーグでの出場がないので出たいですね。
—— トップリーグの試合に出るという“飢え”はありますか?
トップリーグの試合に出たり出られなかったりするメンバーが、試合に出ることになった時に羨ましさを感じますね。
—— サントリーキャップは1ですが、日本代表のキャップは6ですよね
そういう選手は珍しいと思います(笑)。
◆コーチ陣に話すようになった
—— セカンドステージに向けた目標は?
試合に出ることも目標の1つですが、そのために今やらなければいけないことは、真面目にトレーニングに取り組むことだと思います。そのためには怪我をしてはいけませんし、いつでも試合に出られる準備をしていくことが必要だと思います。
—— あまり怪我をしないタイプですか?
最初の頃は怪我が多かったんですが、最近は怪我をすることが減ってきています。あと、ケアの仕方も分かるようになりましたし、少し痛む箇所があれば、すぐにトレーナーに相談するようにしています。そして、その時の状態を逐一報告するようになりました。「昨日、治療してもらった箇所は、今の状態はこんな感じです」とか、「こういう練習をすると、痛みが出ます」とか、細かく報告するようになったと思います。
—— ラグビーに対する取り組み方も変わっているということですか?
目標がはっきりしたと思います。試合に出たいという想いが強くなっていますし、そのためにはどうすればいいかを考えるようになりました。
—— いま振り返ると、昔の自分はどう映りますか?
今でもまだ足りないと思いますが、昔は甘すぎたと思います。
—— 更に良くするために、誰かに相談などをしているんですか?
コーチ陣には話をしていますし、昔よりも話すようになったと思います。ビビっていたのかもしれませんが(笑)、変に遠慮してしまっていたと思います。そのせいで、プレーにも影響していたと思います。
—— 日本代表に返り咲きたいという想いは?
いや、今はサントリーで結果を出すことだけを考えています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]