2014年10月 8日
#398 ジャスティン ダウニー 『サントリーでベストのラグビーをやる』
南アフリカのトッププレーヤーが複数所属するサントリー。ジャスティン・ダウニー選手はその中でも将来を期待される若手選手です。スカルク・バーガー選手とポジションが重なりながらも、多くの試合に出場しているフランカーは、日本のラグビーについてどんなことを考えているのでしょうか。
◆エナジーを与えるプレー
—— 今シーズン、サンゴリアスに加入して、何試合か出場しましたが、日本のラグビーはどうですか?
今のところ凄く良い経験になっていると思います。日本のラグビーは速いですし、思っていた以上にレベルが高いですね。それにスキルが高いですし、良い選手がたくさんいます。
—— サンゴリアスに入る前に、そういう情報は入っていましたか?
それほど情報はありませんでした。イングランドやフランスのチームに入ることも考えていましたが、もちろん日本のチームに入ることも選択肢の中にありました。
—— サンゴリアスに入ろうと思った理由は?
まずは日本という場所が南アフリカとは全く違うということです。それに日本人の印象として、凄く良い人が多いということもありました。豊田自動織機のライアン・カンコウスキー選手は友達なんですが、彼も日本でプレーすることを勧めてくれました。
—— 実際に日本に来てみて、日本の文化はどうですか?
最高です。人々は凄く親切ですし、分からないことがあれば助けてくれますし、チームメイトも「学びたい」という姿勢があって、凄く話しかけてきてくれます。本当に良いスタートを切ったと思います。
—— サンゴリアスには同じ南アフリカ出身のフーリー・デュプレア選手やスカルク・バーガー選手がいますが、チームを選ぶ理由になりましたか?
僕の中では「日本のベストチームでプレーしたい」という想いがありました。その中でシャークス(前所属)のコーチからサンゴリアスを紹介してもらい、サンゴリアスでプレーするチャンスがあったので、日本に来ることを決めました。
—— フーリー選手はまだ今シーズンチームに合流していませんが、スカルク・バーガー選手と一緒にプレーしてみてどうですか?
トップリーグでは外国人選手は同じグラウンドに2人までしか同時に出場出来ないですし、同じポジションなので、同時に試合に出る機会はほとんどありませんが、日本人選手は僕ら2人から色々と学ぼうとしてくれますし、僕らとしてもチームに貢献したいと思っています。
—— ジャスティン選手がスカルク選手から学ぶこともありますか?
彼は素晴らしい選手なので、どういう選手であっても彼からは色々と学ぶと思います。
—— チームプロフィール欄で、自分の性格を「負けず嫌い」と書いています。トップリーグの開幕戦ではスタメンに入りましたが、2節と3節はメンバー外、4節と5節ではリザーブで、その状況については悔しいですか?
ラグビーの試合は80分間ですが、それが40分間でも20分間でも、自分がチームに貢献することが大事だと思います。毎試合、スターティングメンバーに入りたいと思っていますが、チームプレーに徹することが大事だと理解しているので、自分が求められる場所で貢献しようと思っています。
—— ジャスティン選手がチームに貢献出来るプレーはどんなプレーですか?
タックルやワークレートの部分だと思います。そして他の選手にもエナジーを与えるプレーだと思っています。サントリーは速いテンポでプレーしているので、僕もその中に入り、みんなに元気を与えてきたいと思っています。
—— 速いテンポのラグビーに入ることは問題ありませんでしたか?
それは全く問題ありませんでした。
◆負けず嫌い
—— ラグビーを始めたのは何歳頃ですか?
たぶん6歳か7歳くらいだったと思います。もちろん南アフリカでラグビーは凄くメジャーなスポーツなので、自然な流れでラグビーを始めました。
—— 他のスポーツの経験は?
クリケットをやりました。ラグビーとクリケットのどちらで生活をしていくかというレベルまでいきました。高校までは、ラグビーやクリケット以外にも、様々なスポーツを経験しました。
—— その中でもラグビーを選んだんですね
やはり負けず嫌いという性格だったので、上達していく中でラグビーが面白いと感じるようになりました。競争心があったので、ラグビーで上達したり試合に勝ったりするという達成感を得ることが、本当に面白かったですね。
—— それは現在でも変わりませんか?
変わりません。色々なところでラグビーをやりましたが、サントリーでラグビーをやることを心から楽しんでいます。サントリーは本当にプロフェッショナルで、このチームの中でプレーしていて、楽しまない選手はいないと思います。
日本に来るということは、自分が落ち着いていられる場所から離れるということですが、そういう場所から抜け出し、日本語も難しいと思いますが、そういう環境の中でも本当に楽しむことが出来ています。
—— 日本語の勉強はしているんですか?
日本語のレッスンを受けていて、言葉を覚えることは下手ではないと思います(笑)。
◆本当に情熱を持って観に来てくれている
—— サンゴリアスに入ってみて、日本のラグビーで感じることはありますか?
ラグビー全体としてどんどんレベルが上がっています。サントリー以外のチームのレベルもどんどん上がっていて、自分たちは更に上手くならなければいけません。日本代表も世界ランキング10位になりましたし、日本のラグビー全体がレベルアップしています。
—— 今までの中で印象に残っている試合はありますか?
ラグビーを始めた頃の試合からサントリーでの試合まで、全てが思い出に残る試合だと思っています。特にサントリーのスタイルは、試合終了まで常に走ってプレーしているので、凄く良いことだと思います。
あと、スーパーラグビーでの最初の試合となったクルセイダーズ戦は印象に残っていますね。会場がクライストチャーチだったので、地震で壊れてしまって小さいスタジアムで試合をすることになったんですが、あの地震発生以降初めてのクルセイダーズのホームゲームで、観客も凄く情熱的な応援をしてくれて、スタジアムの雰囲気が凄かったんです。
—— それ以降、同じような雰囲気を味わったことはありますか?
それ以降も思い出深い試合ばかりで、どれがベストかを選ぶことは難しいですね。
—— 日本のラグビーファンについてはどう感じますか?
スーパーラグビーの観客と違いはありますが、日本のファンも本当に情熱を持って試合を観に来てくれていると感じます。7月に名古屋で行ったトヨタ自動車との練習試合は凄く覚えています。試合の途中から大雨が降ったんですが、見に来てくれたファンの皆さんは、その中でも最後までずっと試合を観ててくれました。
—— 2019年に日本でワールドカップが行われますが、どのように盛り上げていけばいいと思いますか?
日本の中でスポーツが成長していて、スポーツに興味を持つ人が増えていると思います。その中でラグビーは、野球やサッカーなどの他のスポーツに追いつこうと頑張っているところだと思います。
色々なところでラグビーが出来る環境を作ることが大事になると思います。ワールドカップを開催することは日本にとって素晴らしいことだと思いますし、多くの人が観に来てくれると思います。
—— ジャスティン選手は2019年ワールドカップに南アフリカ代表として出場するかもしれませんね
それは分かりませんが(笑)、その時もまだ日本でプレーしているかもしれません。
—— 2015年ワールドカップについてはどうですか?
南アフリカ代表は、いま凄く安定しています。どの選手もスプリングボクス(ラグビー南アフリカ代表チームの愛称)に選ばれたいと思っていると思いますが、選ばれる人数は決まっているので、もしサポート出来るチャンスがあるのであればサポートしたいと思っています。ただ、僕の中で一番フォーカスを当てていることは、サントリーでベストのラグビーをやることです。
◆タフで魅了するプレー
—— 結婚はしていますか?
ガールフレンドはいますが、まだ結婚はしていません。
—— ハンサムなので人気がありそうですね
いや、背が高くて金髪なので、日本では怖がられるんじゃないですか(笑)。
—— 家族の中でラグビーをやっていた人はいますか?
父親は僕と同じで、色々なスポーツをやっていて、プロのサッカー選手でした。成長していく中で、体が大きくなっていったので、僕はラグビーを選びました。
—— プロのアスリートの大変さは小さい頃から感じていましたか?
多くの時間やたくさんの犠牲を払わなきゃいけないこともあるので、凄く大変だと思います。プロになった後はそのチームに残らなきゃいけない大変さもありますね。
—— ジャスティン選手がプロのラグビー選手になって、お父さんは喜びましたか?
父親だけじゃなく母親も、僕が色々なスポーツをやっている中で、どのスポーツをやっていても、僕の判断を尊重してくれて、素晴らしいサポートをしてくれました。
—— もし子供が産まれたら、子供にもスポーツをやらせたいですか?
そうですね。もし子供がプロ選手になれたとすれば、僕はサポートして応援していきたいと思っています。
—— 今シーズンの目標は?
トップリーグと日本選手権で勝ち、2冠を獲ることです。そして、それに向けてベストを尽くすということです。勝つことは楽しいことですし、サントリーには才能ある選手がたくさんいるので、その目標は達成できると思っています。
個人としては毎試合スターティングメンバーに選ばれたいと思っていますが、トップリーグでは同時に2人までしか外国人選手が出られないので、難しいこともあると思います。
—— ファンにどういうプレーを見て欲しいですか?
凄くタフで、魅了するプレーを見て欲しいです。良いタックルをしたり、良い走りをしたりするプレーを見て欲しいですね。
—— 自分の性格はどういう性格だと思いますか?
フレンドリーで、親しみやすい性格だと思います。どんな人が来ても、受け入れることが出来ます。いつもハッピーな気持ちでいます。ただ、ラグビーのグラウンドの中では違って、クレイジーな動物になると思います(笑)。
(通訳:吉水奈翁/インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]