2014年10月 1日
#397 中靍 隆彰 『トライをもっと獲らなきゃいけない』
トップリーグデビューを今シーズン果たしたとは思えないほど、トライを重ねている2年目の中靍隆彰選手。その勢いの源は何か?レギュラーとなって初めてのインタビューです。
◆コツコツ積み重ねた結果
—— 今シーズンは第5節を終えて、これまで全ての試合でスタメン出場し、更に第3節のキヤノン以外全ての試合でトライを獲っていますね
トライを獲ることが仕事なので、ある程度の結果を出すことは出来ていると思いますが、トライを獲れる場面で獲り切れなかったことが多々あるので、満足は出来ていません。
—— トライを獲り切れなかった場面を振り返ってみて、どうして獲れなかったと思いますか?
相手にボールを叩かれて落とした場面もありましたし、フリーでボールをもらって走り切るだけの状況で相手に追いつかれた場面もありましたし、ポジショニングが悪く、もっと良いポジショニングをしていれば良い勝負が出来たと思う場面もありました。試合が終わった後、映像で振り返って見ても、本来であればトライを獲れる場面もあったので、悔しいですね。
—— 逆にトライを獲ったプレーのポイントは?
しっかりとボールを呼んで、良い形でボールをもらえて、良いタイミングで勝負出来ていることが多いと思います。
—— 新人の昨シーズンはトップリーグの試合出場がなく、今シーズンはスタメンで出場しトライと獲っています。何か変わるキッカケがあったんですか?
昨シーズン中も試合に出られるように準備はしていたんですが、1試合も出ることが出来ませんでした。今年の春シーズンの最初の頃は、トップリーグの試合に出ることを目標にしていましたが、試合に出ることを目標にしてしまうと、ファイナルラグビーや緊迫した試合になった時に、思い通りのプレーが出来ないと考えるようになりました。
—— 昨シーズンの自分と違うところはどこですか?
特に何かを変えた訳ではないんですが、色々なことをコツコツ積み重ねた結果だと思います。身体を大きくすることや食事のこと、あとはサントリーのラグビー理解度は、入った当初よりは高まっていますが、まだ足りない部分でもあります。
◆追いつけるという自信
—— サントリーに入った当初考えていたラグビー人生のスケジュールと現状とでは違いはありますか?
当初は1年目から試合に出て活躍したいと考えていました。試合に出られなくて焦っていた訳ではありませんが、同期のツカ(塚本)があれだけ試合に出て活躍していたので、1年目だから試合に出られなくても仕方ないという気持ちにはなりませんでした。
—— 相当悔しい思いをしたんですか?
そうですね。1年目の時にはサテライトの試合にもあまり出られなかったので、悔しかったですね。大学ではトップチームじゃなくても、トップチームと同じくらいの試合数はあるんですが、社会人になってからはサテライトのリザーブに選ばれるくらいで、残り5分ほどしか出られないことが多くて、凄く悔しい思いをしました。
—— 今シーズン試合に出られている理由は何だと思いますか?
春シーズンの練習試合で、長く試合に出させてもらえて、アピールするチャンスが多かったと思います。春の段階で、自分の中でディフェンスに安定感を持たせたいと思っていましたし、フィジカルが足りないと言われ続けてきたので、トップリーグで出場させても大丈夫と思われるように、春シーズンはしっかりとトレーニングを積み、成長出来たと思います。
—— ディフェンスでは具体的にどういうトレーニングをしたんですか?
特に個人で特別なトレーニングをした訳ではありませんが、身体を大きくすることが出来て、フィジカルの部分で負かされることがなくなってきたと思います。
あと、昨シーズンは焦って飛び込んでしまうことが多かったんですが、今シーズンは割と落ち着いていて、センターともコミュニケーションを取りながら、ディフェンスが出来るようになったと思います。
—— それはラグビーの理解度が高くなったということですか?
それもありますが、あとは抜かれた時に焦らなくても追いつけるという自信があるので、そういうところで余裕が出てきたんだと思っています。
—— まだ身体を大きくしている途中だと思いますが、現時点ではどのくらいの完成度ですか?
全然まだまだですね。どういう身体が理想かということが、まだはっきりと見えていないんですが、持ち味はスピードやアジリティーの部分なので、そこはブレずに、もっとスピードを速くしたいですし、ステップもパスも上手くなりたいですね。
—— 持ち味であるスピードやアジリティーの部分も成長していると感じますか?
少しずつですが成長出来ていると思います。スピードやステップ自体はそれほど変わっていないかもしれませんが、例えば、身体を大きくすればスピードが落ちると思うんです。でもスピードを落とさず身体を大きく出来ていますし、ラグビーの理解度が上がったことでボールに触る回数も増えて、自分の良さを活かす場面を増やすことが出来たので、全体的にプラスになっていると思います。
◆気が抜けないプレッシャー
—— 今シーズンの開幕戦が、トップリーグデビュー戦となりましたが、実際にトップリーグの試合に出場してみてどうでしたか?
試合の時はあまり緊張するタイプではないんですが、ずっとリードされて接戦が続く試合だったので、気が抜けないプレッシャーがありました。
—— 2節も3節も同じような試合展開となりましたが、同じようにプレッシャーを感じていたんですか?
試合前には、簡単に勝てる試合はほとんどないと思ってはいたんですが、もっと点差が開いて、リードした状態で試合が進むのかなという想いはありましたね。
—— 中靏選手もそうですが、今シーズンは新しいメンバーが選ばれていますが、コミュニケーションは問題ありませんか?
1年目だった昨シーズンの時に試合に出ていないので、あまりよく分かりませんが、特に違和感はありませんね。サントリーはアタッキング・ラグビーをするチームなのに、ロースコアの試合が多かったのは、チームとして上手く機能していないのかなとも思ったんですが、毎試合出た課題をクリアしていき、シーズンが進むにつれてチームが強くなっていければいいのかなと思っています。
—— 個人的にはもっとトライを獲れると思いますか?
そこはもっと獲らなきゃいけないと思います。チームが勝てていたので、まだ良いと思いますが、僕がトライを獲れなかったことで負けてしまっていたら、もっと落ち込んでいたと思いますね。
◆ルーティーンを作って生活を送る
—— 今は14番で出場していますが、他のポジションで出場する可能性はありますか?
あるとすれば11番ですね。ただ、僕としてはずっと14番でプレーしてきて、得意なポジションだと思っているので、14番で勝負をしていきたいです。
—— シーズン後半に向けて、やっていきたいことはありますか?
1試合だけ活躍するのではなく、シーズンを通してハイレベルな活躍をしていきたいですね。僕の理想なんですが、パナソニックなどディフェンスが強いチームに対しては、なかなか突破口が見つけられないことがあると思うですが、チームがそういう苦しい状況の時に切り開いていけるような力をつけたいと思っています。
—— 生活面で意識していることはありますか?
しっかりしたルーティーンを作って生活を送ることが、毎試合同じような状態で臨めるポイントだと思うので、そういった部分はかなり意識しています。
—— そのルーティーンの中で、一番気を付けていることは何ですか?
食事と睡眠です。試合の前の日には7時間~8時間くらい睡眠を取るようにしていますし、食事に関しては脂質が少ないものを選んで食べるようにしています。
—— 食事はたくさん食べますか?
体質的にあまり体重が増えなくて、意識しないと体重が減ってしまうので、しっかりと食べるように気を付けています。
—— 好きな食べ物は?
好きなものは、実家が福岡なんですが、実家から送られてくる馬刺しが好きです。よく寮のみんなにおすそ分けしています。一応、午年生まれでもあるのですが、走り方は馬っぽいとは言われたことがないですね(笑)。
◆ポジティブな反省
—— 試合を振り返るのは、誰かと話しながら行うんですか?
基本的には自分で何回も映像を見返して反省をするんですが、クラブハウスではヒューイ(ピーター・ヒューワット/バックスコーチ)や直弥さん(大久保/監督)やアンディー(フレンド/ヘッドコーチ)などからフィードバックしてもらっています。
よく「もっとこう出来た」という考えが強くて、ネガティブと思われているかもしれませんが、自分としてはポジティブな反省をしていて、自分が設定したプレーをもとに、どこまで出来たかを考えています。
—— よく考える方ですか?
プレーをしている時は、瞬間的な判断が必要になるので、そんなに深くは考えていませんが、それ以外の時は色々と考えている方だと思います。24時間ラグビーのことを考えている訳ではないんですが、例えば、「この食べ物を食べると良くない」とか、その時に食べたい物があったとしても、ラグビーに繋がることを考え、試合で理想の動きが出来る方を優先しています。
—— 今までの中で、自分の中で完璧な動きが出来た試合はありますか?
過去にその時の自分が理想とする動きを出来た試合はありましたが、それが勝ちに繋がっていませんでした。今も練習中に良い動きで抜いたという感覚はありますが、その動きがファイナルラグビーの大事な場面でも出せるようにならないといけないと思っています。
—— 改めて、今シーズンの目標は?
これまで優勝した経験は、国体の時に優勝した1回くらいで、チームとして優勝した経験がないんです。大学時代も帝京大学に4年間負けてしまいましたし、決勝でメンバーに選ばれて、優勝に貢献して、みんなでトロフィーを掲げたいですね。ただ、もしメンバーに選ばれなかったとして、しっかりとメンバーをサポートしたいと思っています。全員で勝ちにいくところがサントリーの強さだと思うので、サントリーで優勝したいですね。
—— ファンにはどういうプレーを見てほしいですか?
僕自身が相手をどんどん抜いていくプレーが出来ると楽しい気分になっていきますし、チームからのそういうプレーを求められていると思うので、走り回っている姿を見てもらいたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]