SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年8月20日

#391 篠塚 公史 『みんなのレベルが上がった状態で、良いポジション争いをしたい』

黙々と自分の役割をこなす職人肌の篠塚公史選手。静かな外見の中に秘めた闘志は、サンゴリアスの中でも1、2を争うのではないかと感じることがあります。その篠塚選手の闘志の一端に触れようと試みたインタビューです。

◆後悔したシーズン

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—— 昨シーズンの終盤から現在までを振り返っていかがですか?

プレーオフファイナルの前に怪我をしてしまい、その時はファイナルに出場することは無理だろうと思ったんですが、雪の影響で試合が延期されて、ファイナルに出場することが出来ました。ですが、試合中にまた痛めてしまって、パフォーマンスも良くありませんでした。初めて試合に出て後悔しました。

自分の「試合に出たい」という願望を押し通してしまい、「その結果、負けてしまったのかな」と思うことがあります。日本選手権の準決勝では怪我の影響もあり、出場することが出来ませんでした。後悔したシーズンでした。

—— 責任を感じていますか?

昨シーズンに関しては、かなり責任を感じています。「自分が出ない方が良かったんじゃないか」、「太一さん(田原)やツジ(辻本)の方が、確実に僕よりも良いプレーが出来たんじゃないか」と思っています。

2011-2012シーズンの時も終盤に怪我をして、プレーオフファイナルに出場することが出来なかったんですが、治療をして怪我を治して日本選手権の決勝に出場しました。これまで怪我をして試合に出なかったことはありましたが、怪我をした状態で試合に出たことが初めてでした。

—— 根本的には常に試合に出たいという気持ちがあるんですよね?

そうですね。試合をする前は、「プレーオフファイナルは1年に1度しかないので、試合に出ないと後悔する」と思っていました。

—— その経験からどういう教訓を得ましたか?

100%のコンディションじゃない限り、試合に出るなということですね。今までは意地でも試合に出ようと思っていたんですが、それが良くなかったんだと思います。

—— 今後、コンディションが100%じゃなくて試合に出ないという判断をした時に、スタンドから試合を見ていて、悔しさが出てくる可能性もありますよね?

これまで試合に出ずに、スタンドから試合を見たことが何試合かありますが、やっぱり自分がグラウンドに立っていないと悔しいですよ。怪我の影響で試合に出られなかったとしても、スタンドから試合を見ていると、なんだか虚しくなります。それは、「なぜ怪我をしてしまったのか」とか「グラウンドに立たなきゃダメだ」という想いが出てきて、虚しくなりますね。

◆トントンとレギュラー

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—— どのくらいからグラウンドには立ち続けていますか?

大学1、2年の時は試合に出ていませんが、それ以外はほとんど試合に出ていると思います。

—— 大学1、2年で試合に出られなかった時は悔しかったですか?

大学の時は、やっぱり4年生が凄かったので「しょうがない」と思っていましたね。

—— 大学1、2年の時を除いては、試合に出ていて当然という感じでしたか?

そう思っていました。試合に出ていないと嫌なんですよ。大学1年の時も試合に出ずに見ていた時は、心から応援できませんでしたね(笑)。

—— ラグビーを始めたのはいつからですか?そして、始めてすぐから試合に出ていたんですか?

ラグビーは高校からです。すぐというほどでもありませんが、全国大会の前に、今まで試合に出ていた人が怪我をしてしまい、それでリザーブの入ることが出来たんです。そして、代わりに先発に入った選手も怪我をしてしまい、そのままトントンとレギュラーになったんです。

その時はまだ始めたばかりで、まったくルールを知らない状態でした(笑)。ボールを前に投げちゃダメとか、ボールを落としちゃダメくらいしか知りませんでしたね。その全国大会では決勝まで進んだんですが、当時もロックでプレーしていて、1人だけルールを知らずに走り回っているだけでしたね(笑)。

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—— トントンとレギュラーになったと言いましたが、その後はレギュラーの座は守ったんですか?

花園が終わった後は、やっぱり高校生なんで、天狗になっていましたね。それでコーチから凄く怒られて、そこから変わることが出来て、必死に取り組みました。ルールに関しても勉強をしましたし、プレーについても勉強しました。

—— レギュラーで試合に出ることは自信がないと出来ないことだと思いますが、ラグビーを始めた時から自信はありましたか?

中学までは野球をやっていて、高校では違う競技をやろうと思っていた時に、これから進む高校のラグビー部のコーチが僕のいた中学まで来て、「ラグビーをやらないか?」と声を掛けていただいたんです。たぶん背が大きかったから声を掛けてくれたんだと思います。それをきっかけに高校からラグビーを始めました。

それまでラグビーを見たことがなかったんですが、そのコーチが「お前なら高校の日本代表になれる」と言ってくれたので、その言葉を鵜呑みにしてラグビー部に入ったんです(笑)。入る前はその言葉を信じてある程度の自信はありましたが、実際にラグビー部に入ってみたら、「これはヤバい」と思いましたね(笑)。まったくやったことのなかった競技なので、パスさえも出来ず、「騙された」と思いながら、ずっとやっていました。

◆家族全員で応援してくれている

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—— 初心者ながらにも自分のアドバンテージになる部分などを感じていましたか?

当時から背が高かったので、ラインアウトしか出来ませんでしたね。跳んでボールを獲ればいいと思ってやっていました(笑)。

—— 体は横にも大きかったんですか?

横にはまったくなかったですね。身長は192~193cmくらいだったので今とあまり変わらなかったんですが、体重は85kgくらいしかなかったので、かなり細かったと思います。

—— コンタクトプレーは出来たんですか?

周りの選手もそんなに体が大きくなかったので、なんとか上手くやっていたと思います。コンタクトプレーはあまり得意じゃないので、高校、大学時代はごまかしながらやっていました。

—— ラグビーが面白と感じたのはいつ頃からですか?

ラグビーはキツイものだとずっと思ってきましたね(笑)。

—— よくここまで続けて来られましたね

家族が応援してくれたことが大きかったと思います。進む高校でラグビーを始めることも、家族に相談することなしで決めたんですが、何も言わずにラグビーをやらせてくれて、家族全員で応援をしてくれているので、簡単には辞めるわけにはいきません。

—— 今でも家族で応援に来てくれますか?

両親に関しては、毎試合どこでも来てくれます。本当に有難いです。地方での試合の時には、観光をメインにした応援だと思うんですけどね(笑)。家族が喜んでくれる姿を見ると、ラグビーをやってきて良かったと思えます。家族が一番です。

—— 篠塚選手の奥さんやお子さんは?

応援してくれていると思います(笑)。子供に関しては、まだ何をしているのかが理解できていないかもしれません。

—— 子供がラグビーを理解するまでは続けたいと思いますか?

出来ればやりたいと思いますが、あまり先を見てしまうと続かなくなってしまうと思うので、その年その年で勝負をして、チームから必要ないと思われたら、それで終わりだと思います。

◆負けて嬉しい人はいない

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—— 今シーズンのテーマは?

チームのスローガンでもある「We want it back !」です。なくした物を獲り返すために取り組んでいます。

—— ラグビーのプレーで嬉しさを感じることは?

やっぱり勝つことは嬉しいです。負けて嬉しい人はいないと思うので、負けてシーズンを終えると面白くないですよね。それに負けると、試合に出ていないメンバーに申し訳ない気持ちになります。

—— 高校から一緒のチームでプレーしてきた野村選手(副務)が昨シーズンで引退しましたね

引退についてはチームが決めたことで、どうしようも出来ないことなので、しょうがないと思いますが、スタッフとしてチームにいるので、あまり変わらない感じがしますね。今はスタッフですが、一緒に練習したり、春シーズンには練習試合に出場したりしていましたし、楽しそうにやっているなと感じます(笑)。

—— 野村選手の仕事ぶりはどうですか?

ノム(野村)の副務の仕事は表に見えない仕事が多いので、選手の立場から見るとノムが頑張っていると実感することが、なかなかないかもしれません。ノムは指導者になりたいと言っていたので、その一歩としては良いのかなと思いますね。

—— 今シーズンの個人としての目標は?

100%のコンディションで試合に出ることが1番ですね。同じポジションの選手の中で1番良いプレーをしなければ試合には出られないですし、スタッフや選手からの信頼を得られなければ試合には出られません。練習で一生懸命取り組むことは当たり前で、その中で同じポジションの選手の中で1番になれるように日々頑張ります。

—— その目標達成への意気込みは?

やらないとダメでしょ(笑)。いま、太一さんもツジもかなり調子が良いんですが、僕からポジションを明け渡す気はないので、ベテランの意地を見せます。

—— ベテランとしてチームにどういう影響を与えたいですか?

ツジなどに気になったことがあればアドバイスをするようにしていますし、同じポジションの選手みんなの技術が上がるようにしていきたいですね。ジャンボ(仲村)もロックに転向して頑張っていますし、気になったことはどんどん言って、みんなのレベルが上がった状態で、良いポジション争いをしたいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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