SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年5月21日

#378 江見 翔太 『ポジティブは言動、そのスタイルは変えずにやっていきたい』

学習院大学卒業の期待の新人。よく笑い、よく話すルーキーに、社会人ラグビーへの展望を語ってもらいました。今期新人のトップバッターです。

◆ジャカルタで生まれた

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—— 出身は?

インドネシアのジャカルタです。父親の仕事の関係で、ジャカルタで生まれました。

—— 何歳までインドネシアにいたんですか?

5歳までいました。

—— インドネシアの言葉はインドネシア語ですよね?

はい、インドネシア語です。けれど、まったく話せないんです。インドネシアを離れて以降、インドネシア語を聞いていないから分からないのですが、インドネシア語を聞いたら、もしかしたらインスパイアされるかもしれません(笑)。

—— 日本に住むようになってからは、東京に住んでいるんですか?

そうです。5歳からは東京に住んでいて、小学5~6年生くらいの時に、オーストラリアにも住みました。

—— 英語は話せるんですか?

少しだけ聞き取れるようになったくらいです。小学5~6年生の時は、程良く英語を習得して、程良く日本語を忘れて帰って来たという感じです(笑)。たぶん英語圏の国では、生きていけるくらいの英語は出来ると思います。今でもTOEICテストなどで、リスニングは良い点数を取れるんですが、リーディングの点数があまり良くないんです。

◆野球、サッカー、タッチフット

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—— 大学は学習院大学ですが、小学校からですか?

高校から学習院です。

—— なぜ学習院に入ろうと思ったんですか?

小学校、中学校と公立の学校に通っていて、高校も都立の学校を受験するつもりだったんですが、塾の先生に、「高校から入れる人数は少ないけど、学習院も受けてみたら?」と言われて、「受かれば良いな」という気持ちで受験したら、合格しました。学習院に行くことはたまたまの部分が多いですね。

—— ラグビーを始めたのはいつからですか?

高校からです。入学してすぐに、たまたま後ろの席の人がラグビー部で、僕も身体は大きい方だったので、その人に誘われてラグビーを始めました。

—— ラグビー以外にスポーツの経験は?

野球とサッカーをやっていました。今でも野球は好きで、僕がやっていた時は、色々なポジションをやらせてもらいました。ピッチャーやショート、外野もやりましたし、最終的にはキャッチャーもやりました。

サッカーを始めたのは、野球のためだったんです。小学校の時に、進学する中学の野球部の顧問の先生が凄く厳しい方という噂を聞いたので、サッカー部に入って、走れるようになろうと思ったからサッカーを始めたんです。

—— サッカーのポジションは?

サッカーも色々なポジションをやらせてもらいました。フォワードをやったり、ミッドフィルダーやディフェンダーをやり、最終的にはゴールキーパーでした(笑)。

—— なぜ高校ではラグビーをやろうと思ったんですか?

肘を悪くしてしまったので、野球は諦めようと思っていましたし、サッカーはゴールキーパーだったらある程度は出来るという自信はあったんですが、サッカーに対して執着心はなくて、他のスポーツもやってみようかと思っている時に、たまたま声を掛けてもらったので、ラグビーを始めました。 オーストラリアに住んでいた時も野球をやっていたんですが、ウォーミングアップでタッチフットをやったりしていたので、ラグビーのことを全く知らないわけではなかったんです。

◆ラグビー選手になりたい

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—— ラグビーを面白いと感じたのはいつ頃ですか?

高校2年生くらいからです。周りに比べて身体が大きい方だったので、その身体を活かしたプレーが出来るようになってきて面白さを感じるようになりました。

—— 当時から身体が大きかったということは、柔道などには誘われませんでしたか?

柔道には誘われませんでしたし、屋外でやる球技が好きですね。

—— 大学でラグビーをやることに迷いなどはありませんでしたか?

ラグビーをやることに迷いはありませんでしたが、学習院のラグビー部はレベルの高いチームではなかったので、ラグビーのために他の大学に行こうかと考えたことはありました。ですが、高校時代には他の大学から声が掛かるわけでもなく、自分からアクションも起こさなかったので、そのまま学習院大学に進んで、ラグビーを続けました。

—— 自分の中で、これからもラグビーを続けていくと思ったのはいつ頃ですか?

高校2年生の終わりの頃か、高校3年生の頃だったと思います。ただし、社会人でもラグビーが続けられるとは思っていませんでした。小学校の時は「プロ野球選手になりたい」と思っていましたし、中学では「プロサッカー選手になりたい」と思っていて、そういう感覚で「ラグビー選手になりたい」と思っていました。

◆試合に出られるようになれば

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—— 高校や大学時代に見ていたサントリーというチームは、どう見えていましたか?

最強チームと思っていました。高校、大学とラグビー強豪校でプレーしていた選手が集まっているチームだと思っていました。

—— そんなサントリーから声が掛かって入ることが出来たんですよね

声を掛けて頂いたというよりも、自分から売り込みました。大学の時に竹本さん(隼太郎)と知り合うことが出来て、そこからチームと話をすることが出来ました。中学の時に学習院で、高校は久我山に進み、大学は慶応に行かれた方がいて、その方が学習院大学でコーチをされていて、そのコーチの方の紹介で、竹本さんと知り合うことが出来ました。

それから澄憲さん(田中)が大学のグラウンドまで来て下さって話をさせていただき、「一度、サントリーの練習に参加してみるか?」と言ってくださったので、練習に参加させてもらい、サントリーに入ることが出来ました。

—— サントリーの練習に参加してみて、どうでしたか?

最初は大変でした。大学時代と比べて、走る量が多かったですし、これまで経験のないトレーニング方法だったので、キツいと感じましたね。練習時間は短かったんですが、その中で内容の濃い練習をしていて、「試合に出られるようになれば、めちゃくちゃ楽しいだろうな」と思いました。

—— 何度か練習に参加して、サントリーに入れたんですね

そうですね。何度も練習に参加させてもらって、年末も1週間くらい練習に参加させてもらっていました。

—— サントリーの練習について、何か事前に聞いていたことはありましたか?

練習が大変ということは聞いていましたが、社会人でもラグビーをやるのであれば、強いチームでやりたいという想いがありました。

—— サントリーに入れたのは、自分のどこが良かったと思いますか?

これまでしっかりとしたコーチングを受けていない僕が、サントリーの中でちゃんとトレーニングを積めば、どれくらい成長出来るかというポテンシャルの部分を評価して頂いたんだと思います。

◆先を読む力

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—— 現時点での課題は何ですか?

身体を大きくしたいと思っていますし、経験値の部分で他の選手よりもラグビーの知識が劣っていると思うので、そこを成長させたいと思っています。

—— いま感じるラグビーの面白さは何ですか?

高校時代は、身体が強い方で、その部分で通用していたので、個人プレーの傾向が強くて、「早くボールを回せ」とか「自分がどうにかしなければいけない」と考えていたんですが、大学では部員が30人くらいしかいなく、学習院は対抗戦Bに所属していたので、「少ない人数の中で、どうやって昇格するか」を考えた時に、チームプレーの大切さや1人ではどうしようも出来ない部分の魅力を感じました。

「味方の強みを引き出すために自分はどうすればいいのか」とか、「自分がぶつかりに行かず、あえてパスをする」とかなどを考えられるようになって、ラグビーの面白さを知ることが出来たと思います。そして、そのためには先を読む力が大事だと感じました。

—— 野球やサッカーをやっている時には感じませんでしたか?

幼かったからかもしれませんが、ゴールキーパーをやっていた時には、飛んできたボールを守れば良いというくらいしか考えていなかったと思います。

◆ポジティブに捉える

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—— 考え過ぎて悩んでしまうことはありませんか?

大事なことをしっかりとピックアップして、やっていけるとは思っています。仕事の方は初めてのことで、詰め込むことばかりなんですが、それも楽しいと感じています。お酒は嫌いじゃないですし、お酒の知識を積むことも面白いですね。

—— 学ぶことが好きなんですか?

好きなことを学ぶことに関しては好きですね。本などを読んで学ぶことはあまりなくて、人と話をして学ぶことがほとんどです。

—— 話すことが好きですか?

話すことが好きです。おしゃべりな方だと思います(笑)。

—— 自分の性格で良いと思うところはどこですか?

僕が大学2年生の頃だったと思いますが、その時にチームに新しくコーチが来て、その方から「ネガティブなことを言うな。ネガティブなことを言うと気持ちも下がるし、チーム全体の士気も下がる」と言われました。例え、練習中にミスをしてもポジティブに捉えるような言動をしていたので、自分の性格もポジティブになったと思います。

ポジティブな言動をした方が、結果的には良い方向にチームが進んでいったと思います。またミスするんじゃないかと思って投げるパスよりも、そういう想いをなくして投げるパスの方が通りやすいと思いますし、受け手側もプレーしやすいと思います。大学ではそういう想いでプレーをしてきたので、社会人になってもそのスタイルは変えずにやっていきたいと思っています。

—— ラグビーのプレーに関しては、自分の持ち味は何になりますか?

身体を活かしたアタックです。サントリーの中では足が速い方ではないので、1発の強さであったり、タックルを正面から受けないようなプレーであったり、ゲインすることが持ち味だと思っています。

◆センターとしての理解度を高めていく

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—— ポジションはどこをメインにやろうと思っていますか?

今はセンターをやっていますが、大学時代はウイングとフルバックをやっていました。複数のポジションでプレー出来た方が試合のメンバーに選んでもらいやすくなると思うので、将来的にはその3つのポジションをしっかりと出来るようになりたいと思っています。

—— 今シーズンの新人選手は3名で、他の年代と比べて少ない方だと思いますが、サントリーに入る選手3名の中に選ばれたことについてはどう思いますか?

他の2人は凄い選手だと思います。早稲田大学と帝京大学の両キャプテンの中に学習院大学が入って、「こいつは誰だ」ってなると思いますが(笑)、僕は彼らのことを尊敬しています。2人とも日本代表に参加していて、最初は気落ちしていた部分がありましたが、僕は僕でサントリーの中で出来ることがあると思っています。

—— 江見選手の中で日本代表に選ばれるイメージはありますか?

絶対ではないと思いますが、僕の中ではサントリーでレギュラーを獲れれば、日本代表にも選ばれると思っているので、それは遠い話でもないと思っています。

—— サントリーに入り、本格的にラグビーをやることに対して、家族は何か言っていましたか?

特に何も言われず、「好きなようにやりなさい」という感じでした。

—— ご両親も何かスポーツをやっていたんですか?

2人とも学生時代にバレーボールをやっていたそうです。だから2人ともスポーツは好きで、野球やサッカーをやっていた時も応援に来てくれていました。

—— 長期的な目標はありますか?

まだはっきりとは描けていません。選手として長く続けることが目標になるとは思っていませんし、これから経験を積んでいくことで、最終的な目標も見えてくると思います。

—— 今シーズンの目標は?

僕はセンターとしてチームに入れて頂いたので、センターとしての理解度を高めていくことが必要だと思っていて、やるべきことは明確になっています。

—— トップリーグの新人賞を獲るチャンスは1度しかありませんが、獲る自信はありますか?

正直、考えていませんでした。そういう賞というものは、自分がやったことに付いてくるものだと思っているので、狙って獲りにいくものではないと思っています。

—— ファンに向けて、注目して欲しいポイントはどこですか?

笑顔ですかね(笑)。もし笑顔じゃない時を見かけた時には、「笑顔!」と言ってもらいたいです。

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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