◆チームのために

—— 昨シーズンを振り返ってツイ選手自身が感じる成長した部分はどこですか？

体力やストレングスの部分などを上手くマネージメントすることが出来たと思います。プロ選手になったばかりの頃は、上手く体のコントロールをすることが出来ませんでしたし、そもそもプロということが、どういうことかさえも分かっていなかったと思います。サントリーに来て、「プロ選手の生活やトレーニングはどういうものか」が改めて分かった気がします。

—— サントリーに入った当初は戸惑いなどもありましたか？

最初の2ヶ月くらいは少し戸惑いがありましたね。サントリーのトレーニング方法や生活のリズムなどを理解するまでは少し大変でした。その後は問題なく取り組むことが出来ましたし、自分自身も改善できたと思います。

—— では、昨シーズンは良い状態をキープ出来ていたということですか？

常に先発として試合に出場することは出来ませんでしたが、ほとんどの試合でメンバーに入ることは出来たので、良かったと思います。リザーブとしてベンチに座っていてチームをサポートすることや、自分の気持ちを盛り上げるという準備の部分も行えたので、先発ではなくても得られたものはあったと思います。

—— 先発として試合に出られない悔しさはありませんでしたか？

選手であれば、誰でも先発として試合に出場したいという想いはあると思います。僕も先発で出場したいという想いはありますが、先発ではなくても「チームのために何をすべきか」というところにフォーカスしていました。「チームのために何が出来るか」を考え、行動することがプロの選手だと思うので、悔しさを感じることは少なかったと思います。

◆常に見ていてくれた

—— 昨シーズンまでトップリーグで2年連続MVPを獲得したジョージ・スミス選手がいて、同じポジションに偉大な選手がいるチームに入るというのは、どういう心境でしたか？

憧れのジョージ・スミスと一緒にプレーが出来ることを楽しみにしていましたし、一緒にプレーしたことで、彼からはとても大きなことを教えてもらいました。彼は良い先生であり、良いコーチであり、チームプレーを大事にする選手だったので、僕のプロ選手としてのキャリアの中でも、色々なことを教えてもらいました。

—— 具体的に言うと、ジョージ選手から教わったこととは何ですか？

グラウンドの中でどう動けばいいのかとか、実際にジョージがどうやっているのかを見て学びましたし、ブレイクダウンの技を磨く方法を教えてくれました。グラウンド以外の部分では、「プロの選手はどうあるべきか」ということを教えてもらいましたし、そのためには普段の生活からどうすべきかということを教えてもらいました。

—— プロの選手はどうあるべきと教えられたんですか？

分かりやすく言うとバランスです。例えば、グラウンドやクラブハウスにいる時は、プロフェッショナルであり、いつも周りを緊張させる雰囲気を持っていましたし、みんなのリーダー的存在という意識があったと思います。ただ、クラブハウスを離れ、プライベートな場所ではフレンドリーで、自分の時間を大切にしていたと感じました。そのオンとオフのバランスが取れている人だったので、僕も上手くバランスが取れるようになっていきたいと思っています。

—— ジョージ選手から何かを学ぼうとするときには、どういう方法で学んでいたんですか？

見て学ぶことがほとんどでした。ジョージのプレーを見て、実際に僕も同じコースを走ってみたりするんですが、そういう時にジョージは見てくれていて、僕のプレーに改善すべき点があった時には、直接教えてくれました。ただし、一方的に教えられるのではなく、お互いに意見を言い合える関係だったので、プレーについて話し合いながら学んでいったという感じです。

—— 1年間、ジョージ選手という素晴らしいプライベートコーチに指導してもらった感じですね

本当にそうだと思います。僕が見て欲しいと言わなくても、常に見てくれていました。しかも、ジョージは、自分が参加しないグループの練習であっても、しっかりと見ていて、僕がその練習を見ていなかったら、僕のところに来て、「自分の番じゃなくても、他の選手の姿をしっかりと見ていなければいけない」と常に言ってくれました。

◆悲しいとは思いません

—— では、ジョージ選手がチームを離れる時は、相当悲しかったんじゃないですか？

そうですね。ただ、会えなくなるわけではないので、「さよなら」は言わず、「乾杯」と言って別れました(笑)。それに、4月26日に行われる日本代表対アジア・パシフィックドラゴンズとの試合を見てくれると思いますし、いつもどこかで会えると思っているので、悲しいとは思いませんでした。

—— ジョージ選手が日本を離れる前に、ツイ選手に残した言葉はありましたか？

ノー(笑)。

—— ジョージ選手がチームから離れたことで、今シーズンはチームの中でツイ選手の役割が重要になりますね

まだそこまで深くは考えていませんが、チームから求められる役割については、常に努力をし、頑張りたいと思っています。

—— ツイ選手にとっては、先発メンバーに選ばれるチャンスにもなりますね。それを踏まえ、今シーズンの構想はありますか？

昨シーズンのチームの結果はあまり良くはありませんでしたし、僕が前にいたチームに2冠を獲られてしまいました。今シーズンは「パナソニックに2冠を獲られた」ということをモチベーションにして、頑張っていきたいと思っています。

◆まずは勝つこと

—— 対戦チームとして見て、昨シーズンのパナソニックはどこが良かったと思いますか？

もともとディフェンスが良いチームだったんですが、昨シーズンはディフェンスとアタックとのバランスが良かったと思います。べリック・バーンズが加入したことも、バランスが良くなった要因だと思います。

—— 大学時代を含めると、日本での生活が8年目となります。自分自身の今後のビジョンは？

色々なことに興味はありますが、まずは日本代表がワールドカップに勝つこと、そしてサントリーで2冠を獲ることを考えています。そして、もし可能性があれば、将来はスーパーラグビーのどこかのチームでプレーしたいと思っています。

—— どんな選手になりたいと思っていますか？

もちろん誰からも良い選手と思われる選手であって、僕のことを知らない選手が「あの選手は誰だ」と言った時に、周りの人たちが「あいつはヘンドリックだよ。うちのチームにも来て欲しい」と思われるような選手になりたいですね。

—— ラグビーのプレーについてはどうですか？

正直、まだどんな選手になりたいかというはっきりとしたイメージはありませんが、個人的にはディフェンスを強化したいと思っているので、ディフェンスが強い選手になりたいと思っています。

僕の中では、あまり先のことを考えるよりは、今シーズンだったら今シーズン、また次のシーズンになったらそのシーズンというように、目の前のことにフォーカスしてやっています。

—— 様々な競技のトップレベルの選手は、目の前のことに集中して取り組んでいると聞きます。ツイ選手もそういう心境に達しているんですね

メイビー(笑)。