2014年4月16日
#373 村田 大志 『開幕戦に照準を合わせる - 1』
昨シーズン後半から復帰し、シーズン終了後、日本代表にも初選出された村田大志選手。サンゴリアス期待の若手に新シーズンに向けての意気込みを聞きました。
◆行けるところまでガンガン
—— 昨シーズンは途中から復帰しましたが、何試合出場でしたか?
2ndステージ第6節のキヤノン戦がトップリーグ復帰戦で、第7節のヤマハ発動機戦、プレーオフトーナメントのセミファイナル、ファイナル、そして日本選手権準決勝の5試合です。
—— 出場試合が5試合というのは、1年前には想像していなかったんじゃないですか?
2012-2013シーズンには10試合に出場していたので、全試合に出たいと思っていました。
—— 伸び盛りの時期に休まなくてはならない期間があって、焦りなどはありませんでしたか?
怪我をしたことで、自分がさっぱりした人間なんだなということが分かったというか、怪我をしたことに対して、ずっとウジウジしていることもありませんでしたし、良い意味で「しょうがないな」と思って受け入れられたことは良かったと思います。それはまだ若く、復帰出来るという想いもあってのことだと思います。
怪我をした瞬間に軽い怪我ではないという感覚があったので、「もう諦めるしかないな」と思いましたね。もちろんちゃんと検査するまでは「軽い怪我だったらいいな」と思っていましたが、感覚的には「大きな怪我だろうな」と思っていました。
—— 2012-2013シーズンが終わった後、ジュニア・ジャパンの遠征中での怪我でしたが、疲労が溜まっていたと思いますか?
身体の調子は凄く良くて、疲れは溜まっていましたが、試合間隔が短い遠征の中でも動けていて、もしかしたら日本選手権決勝よりも動けていたかもしれないという状態でした。
もしかしたら状態が良すぎて、自分の中の限界よりも動けてしまう状態だったのかもしれません。間違いなく疲れは溜まっていたんですが、その中でより動けていたので、身体と感覚との間でズレが生まれていたんだと思います。
—— 怪我をしたことで学んだことはありますか?
怪我をする状況を理解しなければいけないと思いますが、これでブレーキを踏むようになってしまうのはもったいないと思います。僕はまだ今年で26歳ですし、まだ行けるところまではガンガンやりたいなと思っています。それでまた怪我をしたら、しょうがないと思います。
◆以前の自分は超えなければいけない
—— 昨シーズン5試合に出場してみて、ブレーキを踏んでいないという感触はありますか?
もしかしたらまだブレーキを踏んでしまっていたかもしれません。気持ち的には100%でやりたいと思っていますが、身体が100%で動いていない感覚があります。そういう意味では、今シーズンは楽しみですね。
—— どのぐらいまで回復している感覚ですか?
筋力的には怪我をする前の状態までは、ほぼ戻りましたが、感覚的にはまだ8割5分くらいですね。今シーズンは、年齢的にもより結果を求められる歳になると思いますし、責任も増える歳になると思うので、そういう意味でも、以前の自分は超えなければいけないと思っています。
—— そういう中で、日本代表に選ばれましたね。それはどこを評価されたと思いますか?
まだ自分が一番びっくりしてるんですよ(笑)。最初にキヨさん(田中澄憲/チームディレクター)に「日本代表に選ばれた」と言われた時も、冗談だと思っていました。
—— エディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)とは話をしましたか?
まだエディーさんとも直接話をしていなくて、特にメッセージなども聞いていない状況です。僕の感覚としては、日本代表の試合を見ていて、たまに攻守の切り替えのリアクションが少し遅いと思う時があったので、僕が日本代表に入っても、その部分は自分の色が出せるかなと思っています。
—— 攻守の切り替えが強みですか?
強みとは言えないかもしれませんが、攻守の切り替えは自分のプレースタイルとして、チームでも意識してやってきた部分です。チームでもその部分を評価してもらって、試合のメンバーに選んでもらっていたんだと思います。
—— 攻守の切り替えの部分は、あまり意識してプレーしている選手は多くないと思いますが、なぜそこにフォーカスして取り組んできたんですか?
社会人になってからフィジカルの面ではまったく通用しなかったので、まずは他の選手よりも先に動き出す部分を意識して取り組もうと思ってトレーニングをしていました。
—— お手本にしている選手はいますか?
やっぱりジョージ(スミス)は、そういうプレーをしていますよね。明らかに先を予想しながら動き出していますよ。あとは、ニュージーランドのチームを見ていても、リアクションの部分で絶対に負けなくて、強いチームにはそういう選手が多いと思います。
◆ディフェンシブな選手
—— リアクションにはフィットネスが必要だと思いますが、フィットネスがあっても無駄なところに動いてしまっては意味がないと思います。その見極めはどう考えていますか?
僕の場合は逆で、フィットネスがないから先に動き出すことを考えたんですよ。
—— そのためには、状況を見ながら、先を考えてプレーしているということですよね
僕の場合は、アタックをしながらも、危ない状況になったらディフェンスのことも考えながらプレーしています。
—— アタックをしながらディフェンスのことを考えてプレーしていると、頭の中で混乱しませんか?
そんなに凄いことをしているわけじゃなくて、アタックをしていて「いまターンオーバーされたら危ない」と思う状況ってあるんですよ。プレーをしていて、ずっとアタックのこともディフェンスのことも考えているわけじゃなくて、味方のサポートが遅い時やルーズボールになりそうな時などで、どちらにも対応できるように考えています。
ラグビーはアタックでもディフェンスでも一瞬のところでプレーしているので、他の選手も考えてプレーしているとは思いますが、その中でも他の選手よりも早く動き出したいと思っています。サントリーの中では、僕は元々ディフェンシブな選手で、ディフェンスの意識を切らずにプレーすることが自分の仕事という意識を持っています。最近はウイングでの出場が多いんですが、元々はセンターでプレーしていたので、ディフェンスの強さは評価してもらっていると思います。
—— 具体的に、プレーの予防線とは?
例えば、ミーティングで出たことを、何度も何度も準備のコールで入れてあげるとか、今日のブレイクダウンではこのプレーをしようとか話すことで、それが1つの基準になるんです。その後に、実際にプレーしてみてどうだという反省をすることで、次の予防線になると思うのですが、事前の予防線がないとプレーが追いつかなくなっていくんですよ。
—— ですが、ウイングとセンターとでは、ディフェンスの仕方も違いますよね
ディフェンスをするシチュエーションも違いますし、タックルの仕方も全然違います。ウイングでプレーしていると、僕がディフェンスに入る時にはボールを繋がれるとピンチになってしまうので、簡単にロータックルは出来ません。けれど、センターでは、ロータックルがすごく大事になるので、そういう部分でディフェンスの仕方が変わってきます。
タックルの回数で言えば、センターの方が多いんですが、ウイングでタックルミスをすると、相手にビッグゲインをされてしまうので、そういう意味では責任は大きいと思います。
—— ウイングというポジションでは、ついアタックに目が行きがちですが、ディフェンスにも注目して欲しいと思っていますか?
いや、やっぱりラグビーはトライを重ねて、得点で勝敗を決めるスポーツなので、アタックを見る方が面白いと思いますよ。それに、サントリーはアタッキング・ラグビーなので、アタックを見るべきだと思います。アタックを見てもらいながら、ディフェンスもしっかりやっているという感じで見て欲しいですね。
—— ですが、ウイングとセンターとでは、ディフェンスの仕方も違いますよね
ディフェンスをするシチュエーションも違いますし、タックルの仕方も全然違います。ウイングでプレーしていると、僕がディフェンスに入る時にはボールを繋がれるとピンチになってしまうので、簡単にロータックルは出来ません。けれど、センターでは、ロータックルがすごく大事になるので、そういう部分でディフェンスの仕方が変わってきます。
タックルの回数で言えば、センターの方が多いんですが、ウイングでタックルミスをすると、相手にビッグゲインをされてしまうので、そういう意味では責任は大きいと思います。
—— ウイングというポジションでは、ついアタックに目が行きがちですが、ディフェンスにも注目して欲しいと思っていますか?
いや、やっぱりラグビーはトライを重ねて、得点で勝敗を決めるスポーツなので、アタックを見る方が面白いと思いますよ。それに、サントリーはアタッキング・ラグビーなので、アタックを見るべきだと思います。アタックを見てもらいながら、ディフェンスもしっかりやっているという感じで見て欲しいですね。
—— ディフェンスをしっかりやりながら、多くのトライが獲れれば理想的だと思いますが、例えディフェンスでミスをしたとしても、そのミスを挽回するくらい多くのトライが獲れれば合格点だと思いますか?
合格ではないですが、そういうプレーが出来れば素晴らしいと思います。ただ、僕はそういうプレーをする選手ではないんですよ。僕のイメージで言うと、ウイングはスペシャルな人がやるべきポジションで、トライを獲れる人がやるべきだと思っています。
◆13番にチャレンジ
—— 今回の日本代表では、センターとして呼ばれたんですか?
聞いていないので、分からないんです。けれど、直弥さん(大久保/監督)からは「センターをやれ」と言われました(笑)。
—— 監督からそう言われたということは、今シーズンはセンターでプレーすることが増えそうですね
どうなるかは分かりませんが、そうあって欲しいと思います。僕自身も昨シーズン前に怪我をしなければ、13番にチャレンジしたいと思っていましたし、今シーズンは13番にチャレンジしたいと思っています。
—— 13番の面白さはどこだと思いますか?
僕がイメージする好きな13番は、バックスのインサイドとアウトサイドの繋ぎ役というか、目立たないけれど凄く重要なプレーをすることです。だから僕はそういうプレーがしたいと思っていますし、そういうプレーがあってチームが勝利したら、それが13番の醍醐味なんじゃないかと思っています。それはアタックでもディフェンスでも、ということです。
—— そういうプレーをするためにはフィットネスが重要だと思います。村田選手はフィットネスがないと言っていましたが、フィットネスの部分をどう補っているんですか?
気持ちです(笑)。昨シーズンは怪我で1年間プレー出来なかったので、他の選手よりも積み重ねてきたものが少なかったと思います。だから、試合の終盤で足がつってしまったりして、80分間走りきれませんでした。1年間しっかりとトレーニングをすることで、その結果80分間走り切るところまでいけると思うので、今シーズンは1年間怪我なくラグビーをやるというのが目標です。
—— オフェンスの面で13番の面白さどこにありますか?
サントリーは縦の動きが多いので、しっかりとゲインを切るという部分と、フェーズを重ねていくと自分の判断でアタックを決めれるというか、選手同士をリンクさせる役割が凄く重要になるポジションだと思うので、常に「どうやったら崩せるか」ということを考えながらアタックするのが楽しいと思います。
—— タックルも多く、アタックでもゲインを切る役割があるので、フィジカルも重要になりますね
僕の場合はフィジカルがあるかは分かりませんが、平さんの場合は、ランニングコースとフィジカルで相手を上回る選手で、フィジカルが強くて羨ましく思います。
僕は、センターをやるならば、もう少し体重増やすべきだと思いますし、体重を増やしながら走れる身体を作ろうと思っています。
◆毎回ラグビーを辞めるかどうか迷っていた
—— 社会人になって新たな強みを生み出すというよりは、元々の自分の強みに磨きをかけたという感覚ですか?
大学時代から持っていた自分の強みを残しつつ、ベースをより大きくしてきたイメージです。そして、その上にファイナルラグビーで勝ったり、負けたりした経験が上乗せされてきて、よりやるべきことが明確になってきている時期ではあると思います。
—— 考えて取り組む力があると思いますが、小さい頃から考えてプレーしてきたんですか?
そう言われてみると、中学、高校と割と考えさせてもらえたと思います。僕の場合はラグビーが強いチームでやってきたわけではなくて、中学の時には中学部が出来たばかりのクラブに入って、僕らが第一期生でした。まだチームを作っていく過程でしたが、基礎を大事にしてくれる先生に指導してもらい、ラグビーを教わりながら、その中で自分たちの好きなプレーをやりながら、楽しく試合に勝つことが出来ました。
高校は長崎北陽台高校に行き、その高校は進学校だったので、ラグビーと勉強を両立しながらやっていました。僕らの代は、半分以上がラグビー初心者で、初心者が多い中で経験者の多いチームにどうやって勝つかを考えながらやってきたので、そういう意味では、考えながらラグビーをやってきたと思います。
やっぱりラグビーをやっていれば、いつかは壁にはぶつかるので、そこでどうやったら壁を越えられるかとか、ラグビーを辞めようかと考えたりしていましたね。卒業などのタイミングで、毎回ラグビーを辞めるかどうかを迷っていました(笑)。
—— どうして辞めようかと迷ったんですか?
中学の時は、やらざるを得なかった部分もあります。僕は中学でバスケット部に入っていて、ラグビーはクラブチームでやっていたんです。そのクラブチームの同じ学年の中で、僕ともう1人だけが九州選抜に選ばれなかったんです。そこで「もう限界かな。バスケットが面白いし、バスケットだけにしようかな」って思いました(笑)。けれど、そこでも辞められず続けましたね。
—— バスケットとラグビーで、試合の日が重なることはなかったんですか?
凄く理解のある先生で、ラグビーを優先させてくれました。どうしても試合が重なる時が多かったんですが、バスケットの最後の大会では、試合にも出させてくれました。ラグビーをやっていて、バスケットの経験があって良かったと思うこともありました。
—— 例えば、どういうところがバスケットをやっていて良かったと思いますか?
バスケットは、ボールを見ながらドリブルはしないんです。ボールは見ずに、前を見てドリブルをしながら、空いているスペースを見つけながら攻めるんですよ。バスケットは、瞬間瞬間で判断が必要なスポーツだと思いますし、ハンドリングが上手くなりますね。
—— バスケットとラグビーでは、どちらが合っていると思いますか?
今は完全にラグビーですが、当時はどちらをやればいいかなんて分からないですよね。僕の体型では、バスケットを選ばなくて良かったと思います。
◆ディフェンスだけを練習していた
—— 高校では何で悩んだんですか?
親から「大学は私立じゃなくて、国立に行け」と言われていて、その時は僕の頭の中では、国立大学でラグビーをやるんだったら筑波大学しかなかったんですよ。今は筑波大学も強豪校になりましたが、当時はあまり強くはなくて、それならば、「ラグビーに縛られずに、行ける国立大学に行った方がいいかな」と思っていました。
SPIRITS OF SUNGOLIATHでも言いましたが、竹本さん(隼太郎)や竜太郎(竹本)が卒業した長崎北高校にラグビー部を作ったのが、僕の父親たちなんですよ。その高校に僕が行かなかったので、父親は「気まずかった」って言っていました(笑)。
—— 私立の大学に進学することが許されたのはいつ頃だったんですか?
高校3年生の夏頃だったと思います。当時、早稲田大学でサマースクールというのがあって、父親が急に「行ってみれば」と言ったので、サマースクールに行ってみたら受験指導が始まって、父親に「受験指導された」と伝えたら、「じゃあ、早稲田大学を受けてみれば」という感じになり、「受からなくても別の大学に行けばいいか。受かってからどうするかを考えよう」という気持ちでいました。
—— 大学時代も考えながらラグビーをしていたんですか?
僕らの代には凄くスターが揃っていて、アタックで目立つ選手が多く、1、2年生の時からチームの中心になるような選手が多かったんです。その時にアタックで勝負しても目立てないと思ったんです。ディフェンスで目立つためにはどうすればいいかと考えた時に、タックルが強い選手も多かったので、試合の流れの中でピンチになるところはどこかを探すようになったのかもしれません。
1、2年生の時は、まだアタックで目立とうとしていて、ディフェンスが苦手だったのでアタックでチャレンジしていたんですが、試合に出られず限界を感じました。3年の時にディフェンスをやるしかないと思い、ずっとディフェンスだけを練習していましたね。
—— その時は面白かったですか?
全然面白くありませんでした(笑)。体は痛いし、タックルしても褒められるわけではないんですが、ある時に「ディフェンスは自己満足かな」と思ったんです。良いタックルが出来た時は、自分で自分のことを褒めていました(笑)。
—— 今でも自分で自分のことを褒めることはありますか?
今は褒められたいと思ってやっている訳ではないですし、チームが勝つために自分に出来ることを考えてやっています。それでも、たまに「今このポジションにいたのが良かった」と思うことはあります(笑)。
(つづく)
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]