2014年2月19日
#367 小澤 直輝 『高く、強く、丁寧に』
8番に加えて2番もこなすユーティリティープレーヤーの小澤直輝選手。ファイナルラグビーでは、本来のポジションであるNo.8で公式戦初トライを挙げるなど、今まさに登り坂を力強く進んでいます。社会人3年目にしてレギュラーの座を掴もうとしている小澤選手に、現在の心境を聞いてみました。(取材日:2014年2月6日)
◆強く行こう
—— トップリーグプレーオフトーナメントセミファイナルの神戸製鋼戦では、逆転トライを挙げましたが、あの時はどんなことを考えてプレーしていたんですか?
相手のディフェンスが揃っていたので抜けるとは思っていませんでしたが、常にボールキャリーは強く行こうと考えています。あの時も強く行って、その結果、相手のバインドが外れて、抜けられたんだと思います。抜けた後は前が空いていたので、自分で行くことだけを考えてトライを獲りに行きました。
—— トライを獲った瞬間は、どんな気持ちでしたか?
公式戦での初トライだったので、嬉しかったですね。ライアン(ニコラス)のシンビンがあって、トライを獲られた後だったので、あのタイミングでトライが獲れてよかったと思います。
—— リードを許していたあの場面でトライが獲れた要因は何だと思いますか?
僕は上手いプレーなどは出来ないので、“強く”ということだけを意識してプレーしていました。そこが良い方向に出たんだと思います。
—— 強さを持っていなければ強く行くということは意識できないと思いますが、強くなったという自覚はありますか?
春シーズンと比べて体重も増えましたし、体重が増えてもスピードが落ちていない感覚があるので、そこが自信に繋がっていると思います。体力も上がっているとは思いますが、ゲームの理解度を上げることで無駄な動きもなくなり体力が維持できますし、速く良いセットアップが出来るようになったことが、成長できた部分だと思います。
—— 春シーズンと比べると、どのくらい体重は増えたんですか?
4kgくらいですね。コンタクトを繰り返すと体力が消耗されるんですが、体重を増やしたことでコンタクトの繰り返しにも耐えられるようになりました。
—— ゲームの理解度が上がったことで無駄な動きがなくなったというのは、具体的にどういうプレーですか?
例えばブレイクダウンでは、相手があまり人数をかけていないのにも関わらずに、3人も4人もブレイクダウンに入ってしまったら、攻撃が出来なくなりますよね。そういう時に前を向いて判断することが大事になります。ディフェンスの時はタックルをしたらすぐに起き上がることを意識していて、ボール奪うチャンスがあれば人数をかけて、チャンスがなければ人数をあまりかけないという判断してプレーしています。
◆意識しているのはブレイクダウン
—— No.8としてスタメンでの出場はいつ以来ですか?
昨シーズンのリーグ戦で、神戸製鋼との試合以来2回目の先発出場でした。最近はフッカーでも試合に出させてもらっているので、No.8の方がスクラムやラインアウトの負担は少ないと思います。ただ、セットプレー以外のプレーに関しては、2番でも8番でも同じ意識でプレーしています。
—— ポジションが変わっても、目指しているところは変わらないということですか?
個人的に試合でターゲットとするところは、フッカーになるとラインアウトやスクラムの部分が増えますが、それ以外は変わりません。具体的に言うと、ワークレートを高くすることと、ブレイクダウンやボールキャリー、ディフェンスで強く行くという2つになります。
効果的にワークレートを高めるためには、試合や練習を映像などで見返したり、試合中に周りとコミュニケーションを取ることが大事になりますし、しっかりと顔を上げて周りの状況をチェックすることが大事だと思います。
—— 試合中は常に喋っているんですか?
必要な時には、自分が今どこのポジションにいるのかとか、他の誰かに来て欲しいという声を、周りのスクラムハーフやフォワードと話すようにしています。
—— コミュニケーションの他に、周りを引っ張っていくプレーも意識しているんですか?
最初のプレーから激しく行ったり、チームがきつ時間帯などには更にワークレートを上げるようなプレーを意識しています。
—— 自分の中で上手くいっていると思うところはどこですか?
上手くいっているかは分かりませんが、意識しているのはブレイクダウンですね。
—— お手本にしている選手はいますか?
佐々木隆道さんはブレイクダウン・リーダーなので、試合中も声やプレーでリードしてくれます。例えば、ブレイクダウンで出来ていなかった仕事を声で発してくれるので、他のみんなと意識を共有できます。僕の場合はまだ周りを見ることと自分のプレーに集中することだけになっているので、周りをリードしていけるようになれば、もっとレベルを上げることが出来ると思っています。
—— 他に課題はありますか?
フッカーとしては、スクラムとラインアウトはまだまだ力不足です。
—— 試合中にポジションチェンジをすることがあると思いますが、切り替えられるものですか?
ラインアウトやスクラムでは、その後のプレーの動作が違ってくるので、切り替えるようにしています。
—— いま考えるラグビーの面白さは何ですか?
やっぱりコンタクトが多いところですかね。好きという訳ではないんですが、パスとかよりもコンタクトの方がいいですね(笑)。アタックでもディフェンスでも、コンタクトで相手に負けなかった時は嬉しいですね。
—— 昨シーズンと比べて、今のチーム状況はどうですか?
周りのチームのレベルが上がっているとは感じますが、これまで貫いてきたアタッキング・ラグビーを変えるつもりはなくて、そこをどれだけ突き詰められるかだと思います。規律を守って丁寧にやることを追及していきます。自分たちのラグビーを信じる気持ちは揺るがないと思います。
—— プレーオフトーナメントセミファイナルの試合後の記者会見で、大久保監督が記者から小澤選手について聞かれて「いちばん練習している選手の一人」と答えていましたが、その自覚はありますか?
いや(笑)。自覚してない訳ではないんですが、僕だけじゃなくて、チーム全体として昨シーズンよりもハードトレーニングをしていますし、意識も高くなっていると思います。会見で名前を出していただいたのは光栄なことですが、僕だけじゃないですよ。
—— チーム力は上がっているということですか?
今シーズンは47人中37人の選手がトップリーグに出場しました。これまではメンバーの入れ替えがそこまで多くはなかったんですが、今シーズンはこれだけの選手が出場していて、誰が出てもサントリーのラグビーが出来て勝つことが出来ているということは、1人1人がしっかりとハードワークしているからだと思います。
—— 早朝に練習をしてから仕事をして、その後にまた練習をするというスケジュールは大変ではないですか?
もちろん大変ですが、コーチやスタッフの人たちは僕らよりもさらに大変なスケジュールで僕らをサポートしてくれているので、やらなければいけないという想いがあります。
—— 3年目になって今のスケジュールには慣れましたか?
1年目の時よりは慣れました。大学のシーズンは12月末や1月には終わって、僕が大学4年の時は、そこから2ヶ月くらいオフがあったので、1年目の時は大変でした。しかもワールドカップがあったので、シーズンが3月まで続いて、すごく長く感じましたね。今シーズンはここまであっという間に来たと感じています。
—— ファイナルラグビーでの目指すところはどこですか?
プレーヤーとしてチームの勝利に貢献したいので、体を張ってファイナルラグビーの試合に出たいと思います。試合に出るためには、ここまで自分が積み上げてきたものを変わらずにやることだと思うので、ハードワークをして仕事量を上げることと、強さという持ち味を出していきたいと思います。あとファイナルラグビーで大事なことは規律なので、規律を守ったプレーをしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]