SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年2月 5日

#365 日和佐 篤 『世界に通用する9番になりたい』

ジョージ・グレーガン(豪)、フーリー・デュプレア(南ア)というサントリーに加わった“世界”のスクラムハーフから、貪欲に学び続ける日和佐篤選手。日本を代表するスクラムハーフになるために、現在、そして未来をどの様に見据えているのでしょうか?日和佐選手に展望を聞きました。

◆テーマはコントロール

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—— 現在の調子はいかがですか?

調子は良い方だと思います。

—— 今年4年目、これまでを振り返って、どのように成長してきたと感じますか?

1年目がこれまでラグビーをやってきた中で、いちばん伸びた年だと思います。2年目ではワールドカップもあり、疲れも溜まったせいか少し伸び悩んだ年だったと思います。大学の時は1シーズンに多くても10試合くらいだったんですが、社会人1年目では15試合に出場し、身体的には大丈夫だったんですが、精神的に疲れました。1年目が終わってそのままジャパンの合宿に参加して、そしてあっという間にワールドカップになって、そこで成長できれば良かったんですが、出場時間も短くて、あまり成長を感じられませんでした。

ワールドカップから帰ってきて、フーリー(デュプレア)がチームに加わることになって、僕が先発で試合に出ることもありましたが、徐々にフーリーが先発で出るようになってきて、打ちのめされたというか、フーリーのプレーを見て、「すごく上手だな」と思いました。そこで「勢いだけじゃどうにもならない」とも感じましたね。2年目で成長しなければいけないと感じて、3年目にはキックも少し出来るようになりましたし、ゲームのコントロールも少し出来るようになって、そのまま順調に来ていると思います。

—— 今年のテーマは何ですか?

今年は“コントロール”をテーマにやっています。コントロール出来ているところもありますが、まだまだ力が足りない部分もあると思います。

—— 1年目にいちばん成長したと感じたのは、学生と社会人のラグビーが全然違ったということですか?

フィジカルも速さも全然違いましたね。その1年目は、対戦相手に僕の情報がなくて、マークされていなかったから出来たという部分があると思います。2年目、3年目、今年と、すごくプレッシャーがあると感じる時がありますね。

1年目の時はエディーさん(ジョーンズ/当時監督)に「もう少し走れ」などと怒られながらも、社会人としての入りは良かったと思います。僕がやりたいようにサポートをしてもらいました。

◆今は「学びの時期」

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—— 現在、サントリーでも日本代表でも途中から出場することが多いと思いますが、負けず嫌いの日和佐選手にとしては、この状況をどうにかしたいと思っているんじゃないですか?

何とかしたいですけどね(笑)。難しいことではあるので、今は「学びの時期」と思ってやっています。ベースを作らなければ勝てないので、まずは土台をしっかり作ることを考えています。

フーリーと比べて経験も少ないですし、出場時間を長くすることが大事だと思います。試合に出場しなければ伸びない部分でもありますし、もう少し出場時間を長く出来るようにしたいですね。

上手になっているのは自分でも感じているんですが、もう一歩進むためには、何か武器を身につけなければいけないと思っています。

—— フーリー選手の前は、ジョージ・グレーガン選手(2010年度引退)や、田中澄憲選手(現チームディレクター)、田原耕太郎選手(現主務)がいる中で、日和佐選手は試合の途中から出場することが多く、日和佐選手が出てくると試合のテンポが上がると思いますが、そこは意識していますか?

途中から入る時にはすごく意識しています。特に負けている時などは意識しますね。

—— 日和佐選手が出場する時は、トゥシ・ピシ選手と一緒に出場していますね

長いこと一緒に出ているので、考えていることもだいたい分かるようになってきました。トゥシもアグレッシブなので、とにかくボールを動かすことを意識していますし、トゥシを自由に動かしたいと思っています。

2ndステージの第3節のボコボコに負けたパナソニック戦では、振り返ると攻め急いだと思います。あの状況を何とか変えなければと考えたんですが、後半40分ある中で組み立てれば良かったと思いました。もう少しコントロール出来れば良かったですね。

映像を見返すと、パナソニックのディフェンスはゴムみたいというか、突き破れずに跳ね返されてそのままトライされるというイメージがあります。あの試合は、パナソニックがやりたいことをそのままやらせてしまったという感じです。

—— 試合中は相手の気迫のようなものは感じましたか?

すごく集中していると感じましたし、ディフェンスの意識がすごく高かったと思います。そしてサントリーがミスしたボールを一発でトライに繋げていたので、パナソニックはすごく集中していたと思います。

—— あの試合ではサントリーの集中が足りなかったと思いますか?

そんなことはないと思いますが、やはり研究されていると思います。サントリーはその研究を上回る何かをしなければ勝てないと思います。他のチームのレベルも上がっていると感じます。

それに相手チームのターゲットはサントリーだと思いますが、僕らのターゲットは優勝することで、そこのギャップがあると思います。

—— リーグ戦最終戦のヤマハ戦も競った試合でしたね

ヤマハは負けたら終わりという試合で、サントリーはプレーオフ進出が決まっていて次に繋げたいという試合で、そこでも相手とのモチベーションのギャップはありましたね。ラグビーはコンタクトスポーツなので、気持ちで試合内容が変わってしまうと思います。

◆いかにゲインラインを越えるか

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—— 現在の日和佐選手は途中からの出場が多く、出場時間が限られているので、気持ちを高めるということには、かなり集中してやっているんですか?

僕の場合は、試合前に高め過ぎると疲れてしまうので、試合を見ながらどういうことをするかを考えますね。試合を見ていて、僕が出ていたらこういうプレーをするという見方はせずに、9番の周りのプレーや裏のスペースを重点的に見るようにしています。でも外から見ている時には空いているスペースも、僕が出場したらそのスペースが閉じてしまうこともあります。生き物みたいに動いています。

—— 生き物みたいに動いているスペースを見つけるもの面白いですね

だから途中から入るのも面白いんです。最初から試合に出るとゲームを作れるんですが、途中から入るとゲームを変えることが出来るんです。

—— 出場して、上手くゲームが作れないとか、変えられないという時は、すぐに感じるものですか?

ちぐはぐしていると感じる時は上手くいっていませんね。9番と10番がゲームを動かしているので、上手くいっていない時は、選択するプレーを変えるなどしています。

難しいプレーを選択すると、一発で獲り切れる可能性が出てきますが、サントリーは一発で獲り切るチームではなく、フェーズを重ねてトライを獲るチームなので、いかにゲインラインを越えられるかを考えています。

—— 日本代表ではどうですか?

日本代表もアタッキング・ラグビーを目指していて、やりたいようにやらせてもらっています。ただ色んなチームから色んな考えの人が集まってくるので難しくはあるんですが、色々な意見を尊重しながらやっています。

—— キックについては、理想に近づいていますか?

近づいていると思います。1年目に比べると、かなり上手くなっていると思います。

◆難しいプレーをしない

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—— フーリー選手から学ぶところはどこですか?

コントロールですね。自分で行かなければいけないところでは前に行きますし、パスしなければいけないところでしっかりとパスをすることであったり、難しいプレーをしないという部分も大事だと思います。

—— プレー中に、パスやランといういくつかの選択肢があると思いますが、正解というものはあるんですか?

その場での正解はないと思います。トライに繋がるプレーやチームを良い方向に動かすプレーになっていれば、正解だと思います。だから、僕の場合は、あの時にキックをしなかったからダメということは考えません。悪いプレーが続いても、ゲインラインを越えていたら良いと思っています。逆に良いプレーをしていてもゲインラインを越えられない時もありますが、良いプレーをしているとチームに勢いを与えると思います。

—— 日和佐選手が考える理想的なプレーとは、どんなプレーですか?

どの試合だったかを忘れてしまいましたが、フーリーが出ている時で、長くプレーを継続して、良い形でみんなが動いて、良い形でボールが出るということを繰り返してトライを獲った時がありました。そういう形が理想ですね。その時はみんながリンクして動いていましたね。

そういうプレーをするためには良い準備が必要だと思います。速いコミュニケーションを取って、良いポジションにみんながいて、それが重なれば出来ると思います。

—— 試合をコントロールする上で気をつけていることは何ですか?

ボールを出すタイミングは気をつけているつもりです。敵陣22m内に入った時が難しくて、フーリーはそこで速くボールを出すのか、ゆっくりと出すのか、それとも自分で行くのかという判断が上手で、そこを見習わなければいけないと思います。

—— 良いプレーをしてゲインラインを越えられない時と、悪いプレーでもゲインラインが超えられる時と、どちらが良いと思いますか?

ケース・バイ・ケースですね。けれど、良いプレーをしなければ、良いゲインラインは切れないですね。ゲームレビューをした時に、ゲインラインを越えられていたのは何%という中で、良いシェイプが出来ていた方が、確実にゲインラインを越えられています。

◆体力も伸ばす

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—— 今の課題は何ですか?

もっと状況が読めるようになりたいですね。フーリーは味方が何人並んでいて、相手は何人並んでいるのかも見えていると思うので、僕もそこまで見えるようになりたいです。相手がどういう目線で見ているかというところまで見たいんですが、なかなか難しいですね。

そこを改善するためには、普段の練習から意識して取り組むしかないと思います。1年目の時は何も考えずにポイントに向かっていて、パッと顔を上げたら誰もいないということもありました(笑)。

体力がなければすぐに疲れてしまって良い判断ができなくなってしまうので、体力も伸ばす必要があると思います。サントリーでは、良い試合の時にはスクラムハーフは110~120回くらいボールタッチをします。それだけ判断する回数があるということで、その全てで正しい判断をすることは難しいと思うんですが、いかにコンスタントに良い判断を積み重ねられるかが重要になります。走ることがまずベースにあって、そこからのプレーチョイスだと思います。

—— いちばん悔しいと思う時はどんな時ですか?

拮抗した試合で負けた時は、もっと出来たんじゃないかと思い悔しい気持ちになります。試合中のプレーでは悔しいと思うことはなくて、冷静さもなければ試合にならないと思うので、気にしないですね。

—— これから目指すところはどこですか?

世界に通用する9番になりたいですね。かなりレベルアップしなければいけませんが、あのレベル追いつくというよりは自分の持ち味を出していきたいと思っています。フーリーがいると良いお手本になるんですが、そうすると試合に出られないんですよね(笑)。フーリーがいなくても大丈夫と言われるくらいのレベルにならないといけないと思っています。

—— そう言われるのは、いつ頃になりそうですか?

次のワールドカップ(2015年)までには、そうなりたいですね。その時には9番をつけて試合に出たいです。

—— 今シーズンのファイナルラグビーへ向けて、ファンへメッセージをお願いします

昨シーズンは順調過ぎました。サントリーは勝つことを知っているチームなので、プレーオフや日本選手権という負けたら終わりの戦いになれば、また1つスイッチが切り替わると思います。1点差でも勝てばいいので、勝ちに貪欲になります。負けるのは嫌いなので、勝ちたいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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