SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2014年1月22日

#363 青木 佑輔 『もっと的確な指示が出せるようにしていきたい』

よりラグビー選手らしくなった—— 最近の青木佑輔選手のたたずまいから、ある種ラグビー選手の厳しさみたいなものが漂ってきていると感じていました。それは何故だろうかと、最近の練習や試合を見る度に思っていましたが、インタビューを進めるうちに、少しずつその謎が解けてきました。進化し続ける青木選手の“今”をお届けします。

◆ボールがもらえる位置に立つ

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—— 昨年、シーズン前にインタビューした時から、パフォーマンスが上がり続けているように感じます

昨シーズンの前から体重を増やして、今シーズンも体重を増やして97kgくらいまで増えたんですが、その後、体重だけで言えば、上がったり下がったりしています。パフォーマンスについては、自分でも上がってきていると思います。

—— シーズンに入ると試合が続き、体重を増やすことは大変ですよね

体重は維持するくらいしか出来ませんが、試合を重ねてきてフィットしてきたと感じる部分がありますし、気温も下がったので、良い感じになってきました。僕は暑い気候に弱いんだと思います(笑)。

—— パフォーマンスは上がる一方ですか?

緩やかに上がってきています。数値的に見て、夏よりも今の方が走れていますし、ボールキャリアーやブレイクダウン、タックルなどを数値化したものも上がってきていると思います。

—— 昨シーズンと比べて、具体的なプレーはどうですか?

今シーズンは、昨シーズンよりもブレイクダウンを見極めて無駄に入らないようにしていて、たとえボールをもらえなかったとしてもボールがもらえる位置に立つようにしています。だからボールをもらう数も増えましたし、ボールがもらえないとしても良いダミーランが出来るように心がけています。

—— ブレイクダウンに入るところで、どうやって見極めているんですか?

特に疲れてくると、近くにブレイクダウンが出来ると「入らなきゃいけない」と思って入ってしまうんですが、入る前に周りをよく見て入る必要があるかを判断しています。疲れている時に入ってしまうことがないようにしています。

◆規則的に組むように

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—— 各試合でターゲットを決めているんですか?

今シーズンはスクラムが良くなってきているので、より相手にプレッシャーをかけて、良いボールが出せるように意識しています。今まではスクラムで疑問に思ったり、やり難いと思ったとしてもあまり発言はせずに、言われたことをやろうと考えていたんですが、今シーズンはやり易い方法を取らせてもらったり、セットアップの部分を変えさせてもらったりして良くなってきたと思います。

元さん(申騎/アシスタントコーチ)とも話をして、自分が感じたことを紙に書いたり、サントリーのセットアップの流れを全部紙に書いて提出して、その中で良いものは採用してもらい、実際に試合でやってみて上手くいけば、それがサントリーのスタイルになると思います。

—— どうして変えようと思ったんですか?

春シーズン中に日本代表に参加していて、どっぷりとスクラムについて考える時間がありました。それに他のチームの人たちと情報交換している中で、他のチームの人たちはサントリーよりもスクラムのことを考えていると感じました。今までのサントリーの場合は、スクラムからボールが出せれば、その後のアタックでトライが獲れるという感覚だったんですが、他のチームの人たちと話をしていて、もっとスクラムについても考えなきゃダメだと感じました。

スクラムで良いヒットをするためには、良いセットアップが出来ていなければいけません。そして良いセットアップをするためには、毎回同じような動きが出来なければいけません。同じ動きをするためには、決め事にするしかなくて、そういうことを全て紙に書きました。試合を見ていたら1~2秒の動きなんですが、どこからスタートして、どう動くかということを紙に書き出して、元さんに提出してから良くなってきたと思います。

もし試合中にヒットが悪いスクラムがあれば映像を見返して、そこでセットアップが悪かったと思えば、セットアップの工程が5つくらいあるんですが、それを1つずつチェックしていけば悪かった原因が分かると思います。

—— どのようにしてセットアップを身につけたんですか?

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練習の積み重ねもありますし、チームとして1つの決め事があれば、今まで試合に出たことがない選手が突然試合に出ることになったとしても、スムーズにスクラムを組めると思います。説明書があればすぐに操作が出来るようになるのと一緒で、スクラムも同じなんじゃないかと思ったんです。

今まではそれぞれのプロップが好きなような組み方をしていたので、それに他のみんなが合わせて、やり易いように組ませてあげるという感覚だったんですが、そこからもう少し規則的に組むように変えたんです。

—— スクラムを組むルールが変わったことも影響していますか?

もともとサントリーのスクラムは、相手と組む距離を縮めて組みたかったんです。そこに「バインド」のコールが入って、ルールとして組む距離が縮まったのでスクラムが良くなったと思います。

今は全体的に体重が重くなったんですが、前までは他のチームよりも軽かったので、距離を縮めてスクラムを組みたかったんです。距離を縮めるのにも限界があったんですが、今はバインドが入ったので、相手との距離が縮められますし、ヒットミスして思いっきり押されてしまうこともなくなりました。昨シーズンのスクラムは、東芝にすごく押されましたし、神戸にも良いスクラムが組めていませんでした。

◆スクラムは単純な足し算ではない

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—— 先ほど体重の話が出ましたが、体重を重くすることは課題なんですか?

自分の中での課題というよりも、チームとしてフィジカルに戦うために筋量を上げるということがあるので、自分も上げるべきだと思っています。ただフィットネスを落としちゃいけないので、体重とのバランスを考えながらやっています。

—— ベストの体重は何キロですか?

今が95kgで、自分の中では、今の体重くらいが良いと思っています。それでもトップリーグのフッカーの中ではいちばん軽いくらいだと思います。

—— いちばん軽いとしても、他のプレーで体重を補えると感じますか?

スクラムを組んでいて、体重で負けていると感じることはありません。スクラムは8人で組みますが、8人の体重を足すだけの単純な足し算ではないと思っていますし、8人のまとまりを良くするためにはどうするかを考えて、体重以外の部分もしっかりと考えてやってきています。

—— 8人の先頭の真ん中にいることで、スクラムごとに8人の形を感じているんですか?

やり難いと感じる時やバラバラと感じる時もあります。僕は真ん中にいるので、両隣とロックの肩が僕のお尻に当たって包まれている感じがあると良いスクラムが組めますね。一か所だけに力が入っていたり、バインドの時に締められ過ぎてジャージが引っ張られ過ぎちゃう感覚があったりすると、そういう時はダメですね。そういう感覚があった時には、その都度、その人に指示をするようにしています。

—— 違う感覚の時にはすぐに修正出来るんですか?

すぐに修正出来るようにするために、紙に書き出して規則的に組めるようにしたんです。規則的に組めるようになったので、違和感がある部分を伝えると、すぐに修正出来るようになりました。それに今は妥協してスクラムを組むことがなくなりました。しっくりくるスクラムが組めるようになってきたので、やっていて面白いですね。

◆常に一定のリズムで投げること

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—— 日本代表ではどうですか?

日本代表には、日本代表の形があります。日本代表の方が更に細かく決め事があって、プロップの足幅まで決められています。プロップだけじゃなくて、ロックにも細かな決め事があるんです。

やっぱり日本代表は色んなチームから色んな選手が集まってくるので、日本代表のスクラムがやり難いと言う人もいますが、僕はとりあえずやってみないとダメだと思います。一度やってみて、そこで気付くことがあれば、コーチに提案していけばいいと思います。今シーズンは言いたいことが言えているので、スクラムに関しては充実しています。

—— ラインアウトについてはどうですか?

ラインアウトもサインミスさえなければ良いですね(笑)。昨シーズンよりもジャンプする人が多くなっていますし、成功率が良くなっていると思います。

—— スロワーとして気を付けていることは何ですか?

常に一定のリズムで投げることを意識しています。だから、選手が集まるのに時間がかかっていたりすると、嫌だと思う時がありますね。基本的には早く集まってくれるので、あまり僕から言うことはありませんし、早めにサインを聞くようにして、心の準備を整えるようにしています。

◆年々進化しているアタッキング・ラグビー

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—— 今後の課題は何ですか?

もっと気が利くプレーであったり、もっと周りに声を出してコミュニケーションを取ったり、ディフェンスであれば厚みを出していきたいですね。例えば、ジョージ(スミス)がいちばん外に立っている時には、リラックスした状態で声を掛けてくれるんですが、僕が外に立った時はちゃんと聞こえているかが分からないので、叫んでしまうんですよ。そういう時にもっと的確な指示が出せるようにしていきたいですね。

的確な指示が出せるようになれば、チームとしてもっと安定したディフェンスが出来るようになると思います。大きな声を出せばいいのではなく、周りの状況を見て具体的な指示が出せたり、ウイングともディフェンスのコミュニケーションが取れるようにしていきたいですね。

—— 昨シーズンと比べて、今のチーム状況はどうですか?

負けてしまったことは結果として仕方ありませんが、負けたことから何とかしようというまとまりもありますし、今シーズンはロッカーリーダーをやらせてもらっていて、ラグビー以外でもチームに貢献できる役職をいただいたので、自分としては充実しています。

今までは気になったことがあったとしても流してしまっていましたが、リーダーをやらせてもらっているので、他の選手を注意したり、プライベートでも他の選手とコミュニケーションを取るようになりました。

—— 目標は何ですか?

チームとしてはタイトルを獲ることですが、個人としてはまだまだラグビーを続けていくつもりなので、年々成長していきたいですし、経験を積んできたことによって後輩たちにアドバイス出来るようになりたいですね。

フィットネスや体力に関しては昨シーズンよりも良いと感じていますし、疲れなども1stステージでは疲れを感じていましたが、2ndステージでは疲れをあまり感じなくなりましたね。

—— プレーオフトーナメントに向けて、注目してほしいポイントはどこですか?

これといったポイントはありませんが、年々進化しているアタッキング・ラグビーですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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