2014年1月15日
#362 篠塚 公史 『自分が成長できればチーム力が1%伸びる』
激しさと静かさ、強さと優しさ。そんな両極の雰囲気を試合の端々で見せてくれる篠塚公史選手。常にグラウンドに立ち、気がつくと100キャップを優に超えています。その頼もしさの秘密に迫ってみました。
◆勝負の世界で持っていなければならないもの
---- 篠塚選手は1年目のオフに怪我をして、2年目のシーズンの最初の頃は試合に出場できませんでしたが、そこからはほとんどの試合に出場していますよね
ちょくちょく試合に出ていない時もありますよ。昨シーズンは1試合出場できませんでしたし、今シーズンも1試合出場していません。(2ndステージ第5節終了時点)
---- 1年目の時は全試合フル出場で、2年目のシーズンはどこから出場できるようになったんですか?
最初の2試合くらいは出場できませんでした。今8シーズン目で、出場できなかった試合は8試合くらいだと思います。
---- 体が丈夫だということですね
あまり怪我をするプレーをしてこなかったんだと思います(笑)。同じロックの真壁はボールを持って前に出るプレーが得意なので、僕はサポートプレーをメインにしていこうと思ってやっています。
---- 試合を見ていると、秘めたる闘志をヒシヒシと感じますが、意識していますか?
周りから見たら僕のプレーは、淡々とプレーしているように見えると思っています。闘志という部分では、勝負の世界では持っていなければいけないものだと思います。太一さん(田原)がインタビューで「ラインアウトは絶対に負けたくない」と言っていましたが、僕の場合もラインアウトは自分の持ち場なので、負けたくないという想いがあります。
僕から見ても、太一さんのラインアウトの理解度はすごいと思います。そこに追いつきたいという思いでやっています。あとは最近ディフェンスが成長したと思うので、ディフェンスについても自信を持っています。
---- 田原選手からラインアウトについて教えてもらうことはありますか?
教えてもらうということはありませんが、実際に練習しているところを見て勉強することもありますし、ミーティングの時に太一さんが発言している言葉を聞いて学ぶことがあります。僕の考えと違う部分もあり、勉強になります。
---- 1年上にそういう先輩がいることで、社会人1年目から良いお手本がいたんですね
2年目くらいまでは自分の中にこれまでやってきたプライドみたいなものがあって、「自分がいちばん正しい」という考えがありました。だから、当時はあまり周りの意見を聞こうとはしていなかったと思います。
---- どこでその考え方が変わったんですか?
いちばん大きく変わったのは一昨年だと思います。チームの練習に元南アフリカ代表のヴィクター・マットフィールドが来てくれて、そこでラインアウトなどについて話を聞くことができ、色々な考え方があることに気づかされました。
その中でいちばん印象に残っていることは、ラインアウトは自分がやりたいサインや取りたい場所でボールを取るのではなく、「確実にボールを取る」ということでした。ラインアウトではまずはボールを取らなければ次のプレーが始まらないので、「まずはボールを取る」ということですね。
今まではラインアウトジャンパーが2人くらいしかいなくて、色々な考え方はあったんですが、現実的に無理だった部分もありました。最近は色々な人がジャンプ出来るようになったので、ラインアウトの幅が広がったと思います。
---- 篠塚選手の他の選手には負けたくない部分はどこですか?
まずはグラウンドに立ち続けることです。怪我をして試合をスタンドから見ていると、試合に勝っても心から喜べない部分があります。だからどこのポジションでも良いからグラウンドに立ちたいですね。
---- 社会人になってこれまでの間で、成長した部分はどこですか?
自分ではどこが成長しているのかは分からないですね。
◆ノムが試合に出たいと思うようなチームを作る
---- 高校時代から一緒にプレーしてきた野村選手がリハビリなどで苦労していた時期もありましたが、どういう思いで見ていましたか?
ずっとリハビリをしていたので心配はしていましたが、ノム(野村直矢)の怪我に関して僕が出来ることは何もないので、ノムが試合に出たいと思うようなチームを作ることを考えていました。試合に出たいと思わなければ、リハビリも頑張れないですよね。
---- その時期に野村選手とは話をしていたんですか?
あまり話していないですね(笑)。周りが話しているところ聞いているくらいだったと思います。こういうことを言うと、また「仲が悪い」って言われそうですけど(笑)、本当は仲が良いんですよ。話さなくても分かるというか、阿吽の呼吸的な感じです。
---- 野村選手が復帰した時は嬉しかったですか?
嬉しかったですね。ノムだけじゃなくて、同期が試合に出ることが嬉しいですね。今は同期が6人になりましたが、最初は9人いて、若手が引っ張っていると言われていました。そんな僕らも今ではベテランの域に入っていますからね(笑)。
---- ベテランになったという意識はありますか?
まったくないですね。元さん(申騎/アシスタントコーチ)から、「フィジカルの部分でまだ激しさが足りない」と言われていて、その部分は理解しているので、その部分を伸ばせればまだまだ伸びしろはあると思っています。自分のその部分が成長出来れば、チームの力が1%でも伸びると思います。
---- 日本代表は意識しますか?
ラグビーをやっているからにはワールドカップに出たいという想いはありますが、シーズン中はずっとチームのことを考えていたいと思っています。
◆フィジカルを鍛え激しいプレーを
---- 今シーズンの目標は?
チームが優勝することと、そのために力になれればと考えています。今シーズンの前半はラインアウトが取れずに苦しんだ時期がありましたが、2ndステージが始まってからは良くなっているので、このまま好調をキープしていきたいですね。
昨シーズンの日本選手権決勝では30%くらいしかラインアウトが取れなかったので、最低でも80%くらいは取れるようにしたいですね。ラインアウトが取れないと、サントリーのアタッキングラグビーがスタートの段階で途切れてしまうんです。良いボールをバックスに供給することと、ラインアウトのディフェンスでも相手のボールを取って、自分たちが攻撃する時間を増やしたいと思います。
---- 昨シーズンと今シーズンのチームを比べて、チーム力は上がっていますか?
確実に上がっていると思います。ただ他のチームは、サントリーに勝ちたいと思って対策を立ててくるので、昨シーズンほどの力の差はないと思います。それが2ndステージ第3節のパナソニック戦で出てしまいましたね。
---- あの敗戦から得るものはありましたか?
パナソニックはサントリーにずっと負けていて「勝ちたい」という気持ちが、僕らよりも勝っていたんだと思います。そこに気づけたので、また良くなっていくと思います。ずっと勝つことは難しくて、負けたことで学ぶこともあると思います。逆に負けた時期が、あの時期で良かったと思います。
---- サントリーでのキャップ数はどれくらいですか?
たぶん120キャップくらいだと思います。
---- あと2、3年で150キャップを超えそうですね
まだまだ先は長いです。1週間の練習が大変なので、あまり先のことまで考えられません(笑)。その中でもまだまだ成長出来る実感があるので、楽しみでもあります。これからはフィジカルを鍛え、激しいプレーをしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]