SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年12月 4日

#357 佐々木 隆道 『チャンスが来るのをいつも狙っています』

10月末に30歳となった佐々木隆道選手。山あり谷ありの社会人8シーズン目に入り、久々に語り尽くした感じのインタビューとなりました。“ベテラン”という言葉におさまらず、新たな成長期を迎えている佐々木選手の現在をお届けします。

◆今年は最初から自分で判断

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—— 久しぶりにスピリッツ・オブ・サンゴリアスでの登場ですね

登場しなかった間は、サントリーのラグビーがしっかり出来るように、フィジカルとフィットネスなどを鍛えてきました。その間、日本代表に選ばれたりもしましたし、日々成長し続けようとしている毎日です。

—— 前回はちょうど日本代表に選ばれた時にインタビューをしましたが、今の状態はどうですか?

今は毎日練習のビデオをチェックして、自分でレビューと次の練習に向けたターゲットを決めて、1つ1つクリアしていくことを繰り返しています。去年までは、ジョージ・スミスなどに一緒にビデオを見てもらって、良い点と悪い点を聞いて、自分のプレーを判断していたんですが、今年は最初から自分で判断して、自分で現状を把握して、自分で打開策を見つけて、やってみても上手くいかない時には元さんやジョージに聞いてみるという方法を取っています。

自分のスキルをもっともっと上げないと、この先、活躍できる選手になれないと感じたので、いつまでも甘えていないで、自分でやってみたいという想いがありました。

—— スキルを上げたいと感じたのは、ジョージ・スミス選手の影響もありますか?

ジョージの影響もあると思いますが、もうひとつは自分なりに準備してインターナショナルレベルの試合に戻ったんですが、結局はベースがまだ足りていなくて、自分の思うようなプレーが出せなかったんです。それでそういう自分にストレスが溜まりましたし、みんなを納得させられるようなパフォーマンスではなかったので、インターナショナルレベルの試合で活躍するためにはどうしなければいけないのかということを、自分なりに考えてやっているつもりです。

—— 具体的にいうと、どういう部分で足りないと感じましたか?

サポートのコースであったり、ラックの中で相手の下を取ることですね。あと基本的に身体を大きくしてコンタクトを強くして、なおかつ自分の持ち味であるアジリティ(敏捷さ)の部分を伸ばしていければ、オリジナルのプレーが出来ると思うんです。今年で30歳なので、仕掛けるのが遅いんですが、出来るだけやってみたいという想いがあります。

—— 理想のプレーにはどの程度近づいていますか?

まだスタートしたばかりです(笑)。

◆まずはやってみること

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—— 新しいことにチャレンジしている今の気持ちは?

年齢もあるので、自分の未来に素晴らしいものが待っているかどうかは分かりませんが、自分の努力を続けていくことで、自分で道を切り開いていきたいと強く思っています。

—— ラグビーに対する考え方が変わってきたと思いますが、更にレベルアップするためにはどこを強化していかなければいけないと思っていますか?

フィジカルがいちばん足りていないですね。体重や身体の大きさが足りないと思います。

—— 身体を大きくすることでスピードが落ちると思いますが、そこの心配はありませんか?

まずはやってみることです。身体を大きくして失敗したと思ったら、体重を減らせばいいと思います。

—— 自身のベスト体重がどんどん上がっていくということですか?

上がっていくはずです。今の体重が100kgなので、今年は今の体重を更に増やすことは難しいかなと思います。サントリーに入った当初は97kgくらいだったんですが、3~4年前には93kgくらいまで落として、そこから毎年筋肉で2kgずつくらい増やしてきて、今年100kgまで持ってきました。

エディーさん(ジョーンズ/日本代表ヘッドコーチ)から「100kgくらいあれば、日本代表での試合でも活躍出来るんじゃないか」と言われて、今の体重にしたんです。この体重になって、コンタクト部分でも楽に感じますし、自分の成長を感じますが、“日本でトップか”といえば違うと思います。

僕がライバルにしているのは代表のフランカーの選手ですし、サントリーのフランカーの選手です。もっともっと自分が良くならないと、ダメだと思っています。

—— 2~3年前と違い、自分で考えトレーニングをしているということは、今は成長するイメージ像が出来ているということですか?

イメージ像まではいかないかもしれませんが、自分に対してチャレンジしているというか、この自分の身体のキャパシティでどこまで出来るのかということにチャレンジをしているのかも知れません。

—— 厳しいトレーニングを自分に課していると思いますが、トレーニングの苦しさなどはどうやって乗り越えているんですか?

日々は流れていくんです。目の前のことを一生懸命やっていたら、辛い日もあれば、辛くない日もあって、良いこともあります。

◆それが僕の仕事

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—— 11月9日に行われたサテライトのリコー戦での出来は?

プレーでチームを勢いづかせることをテーマにしていたので、そういう意味では良く出来たと思います。トップリーグの1stステージの時点で、昨シーズンよりも良くなっているとは思っているんですが、リコー戦は目の前のことに最初からシンプルに集中出来たと思っています。

—— 対戦相手のレベルについては、昨シーズンよりも上がっていると感じますか?

各チームとも仕上げてきていると感じました。ただ、今までトップ4に残っているチームなどは、1stステージではまだ隠している部分がたくさんあるという印象を受けました。サントリーも昨シーズンよりも今シーズンの方が良いですし、これから更にレベルが上がっていくと思います。

—— 2ndステージで注目してもらいたい自身のポイントはどこですか?

ボールキャリーの際に1人目で倒れないということと、ブレイクダウンで仕事をすること、そしてボールを相手から獲ってくることですね。具体的にブレイクダウンの注目してほしいポイントは、相手ボールだったのがサントリーボールになった際に、僕がどこにいるかですね(笑)。相手が倒れた時に、どちらの選手が先に入るかは見えると思うんです。例えば、僕が相手よりも先にボールに仕掛けていたら、僕が良いプレーをしたということですし、相手の方が先に入っていたら僕が良くないプレーをしたということです。

全てのブレイクダウンに入ることは出来ないので、狙うことが大事です。チャンスが来るのを、いつも狙っています。サントリーは1試合でアタックとディフェンスを合わせて、250回くらいブレイクダウンがあるんですが、そのうち何回ブレイクダウンに入らなければいけないということはありません。昔はブレイクダウンに入る回数を考えていましたが、今はいかにチームの中で機能しているかとか、ブレイクダウンに入った時にどういう仕事が出来ているかをテーマにしています。

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—— 量より質ということですか?

いや、それを考えてやっていくと、自然に量も上がります。その結果、昔よりも有効にチームに貢献出来ていて、無駄も少ないと思います。

—— ブレイクダウンに入る回数が増えれば、それだけ走らなければいけないと思いますが、辛いことをするモチベーションは何ですか?

それが僕の仕事だからです。ジョージが僕よりも仕事をしていたら、僕もやらなければいけないという気持ちになります。ジョージに負けたくないという気持ちよりは、ジョージのレベルまでは行きたいと思っています。

まぁ、言うなれば、全部のプレーで圧倒的になりたいという想いがあります。ウイングであればトライを獲れるとか、プロップであればスクラムが強いというポジションだと思いますが、僕らは全部が出来なければいけないポジションだと思います。

—— そういう役割のポジションだから、フランカーをやっているということはありますか?

このポジションでずっとやって来ているから自然とこういう考え方になりましたが、もし違うポジションを勧めてくれていたら、「こんなに身体を大きくしなくても良かったかもなぁ」なんて思いながらも(笑)、違うポジションをやっていたら、ここまで続けられなかったとも思います。

—— お手本のジョージ・スミス選手のどこが凄いと思いますか?

まずは身体が強いですよ。身体が強いからブレイクダウンに入った時に、相手が簡単にスイープする(どける)ことが出来ないんです。身体が弱ければ、相手1人でスイープ出来てしまいますが、ジョージに対しては2~3人で来ますからね。

◆チーム力が上がった

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—— 今、ラグビーをやる楽しさは何ですか?

自分のプレーが成長する過程も楽しいですし、チームで1つ1つの試合を勝っていくことも楽しいと思いますね。

—— 勝つことでチームは良くなっていくんですか?

勝つ方が負けるよりは良いと思います。けど、負けた時には、次にどうするかを考え、行動することが大事になります。

—— 1stステージのNEC戦に負けた時はどうでしたか?

また新しいスタートという話も出ましたし、今までやってきたことは結果として受け止めて、次の試合でどう変わるかが大事だと思いました。

—— 今シーズンは若手選手がトップリーグの試合に出場する機会が多いと思いますが、どう感じていますか?

試合に出ていた人が怪我をしたこともありますが、回ってきたチャンスをみんなが活かしていることは素晴らしいことだと思います。今のサントリーは誰が出ても強いチームではあると思います。僕が怪我をした時に代わりにソネ(仲宗根)が出て、その試合を見た時に「ソネ、凄いな」と思いましたし、「チーム力が上がった」と思いました。そして、「僕も頑張ろう」と思いましたし、「あの場所に立つ時にはこういうプレーがしたい」と思いながら試合を見ました。

—— どうしてこれだけ多くの若手選手が出場出来る環境になったと思いますか?

今年だけに限らず、今の若手選手はチームに入った時からハードワークをしていて、ハードワークの賜物だと思います。ただ、ベテランにはベテランの意地がありますし、若手選手と同じ量のトレーニングが出来るわけじゃないですが、ベテランなりのハードワークがあります。だから、簡単にベテランの席が空くとは思いませんが、その中で若手選手が出場出来るようになれば、それはそういう結果なんです。それを受け止めて、次に進めばいいと思います。

—— 日本代表への想いはありますか?

あまり考えないようにはしています。ただ、自分の目標の中で、日本代表の中で活躍できるような個人になっていたいと思っています。自分の中でしっかりチャレンジしようという想いはありますが、あまり意識しすぎると、気持ちの波が激しくなると思います。これまでにそういうことが多かったので、サントリーで出来ることを幸せに思って、“まずはやる”ということがあって、そこから始めようかなと思います。

—— 2ndステージに向けた目標は?

まずは目の前の試合でしっかりとしたパフォーマンスを出して、トップリーグが再開した時、メンバーに入ることが目標です。その中でも自分の成長を止めずに、少しでも良くなるようにアプローチしていきたいですね。

◆意外といけるやん

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—— 前回のインタビューから少し時間を空けたのは、その時の佐々木選手を見ていて、少し気持ちが不安定だと感じていたからです。今は安定しているように感じるんですが、どうやってその期間を乗り越えましたか?

先ほども言いましたが、辛いことが起きていても時間は流れているので消えるんですよ。現実も受け入れるし、どうにもならないことで悩んでもしょうがないと思います。そういう考えになったのは、家族の応援もありますし、妻と話をしていて気づいたこともあります。

自分の心の奥底を話すことはめったにないんですが、最近、気持ちが弱った時があって、その時に妻に話してみようという思いになり、話をしてみたら気持ちが楽になったんです。それに春シーズンの間に怪我をしていて、そこで自分を見つめ直せる時間が得られたことも影響していると思います。

また春にはジュニアジャパンにも参加させてもらって、自分のレベルを感じることが出来て、「このぐらいは出来るんだ」と思える時期でした。スーパーラグビーでも見かける選手と何試合かしましたが、そういう相手でも自分のプレーをしっかり出来るレベルまで上がってきていると感じました。ただそのレベルは、インターナショナルレベルではないんですよ。

感覚としては、「意外といけるやん」という感じで、もっともっと努力していけば、いつか何かがあるかもしれないと思っています。もしかしたらその先に何もない可能性もありますが、なかったとしても自分が引退して、指導する立場になった時に、ここでチャレンジしたことは自分の経験になって、その経験を伝えることが出来るから、ここで諦めるのはもったいないと思っています。

—— 2ndシーズンで、注目して欲しいサントリーのポイントは?

2ndシーズン最初の試合は、日本代表選手がチームに戻ってきて間もない時期なので、僕は代表選手全員が試合に出られるとは思っていないんです。そんな中で、11月にサントリーでしっかりとやっている選手たちがどういうパフォーマンスを出すかということを、皆さんには見て欲しいですね。それが今のサントリーのチーム力だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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