2013年11月20日
#355 長友 泰憲 『前の自分を超える』
スピリッツ・オブ・サンゴリアスに久々に登場した長友泰憲選手。いつも通り前向きな発言をしながら、いつも以上の饒舌ぶりに「前よりしゃべれるようになったでしょ?」と笑顔。元気な長友選手が完全復活に向けて、今の心境を語ります。
◆良かった時に戻したい
—— 久しぶりの登場ですね
3年振りくらいです。前回は初めて日本代表に選ばれた時です。これまで大きな怪我をしたことがなかったんですが、怪我をしてしまい、昨シーズンのプレーオフトーナメント、日本選手権に出られませんでした。
—— 今シーズン第7節のNTTドコモ戦で、久しぶりのトップリーグでの試合となりましたが、出来はどうでしたか?
いや~疲れました。トライしたかったんですが、久しぶりの試合にしては、まずまずの出来だったと思います。前半は良かったと思いますが、後半になってゲームフィットネスが落ちてしまいました。今の体調は、完璧とは言えませんが、体重を落として体を絞ったので、動けるようになっています。復帰する前は、筋肉をつけ過ぎていたので体が重く感じていました。スピードを上げるために、新田さん(S&Cコーチ)や若井さん(S&Cコーチ)と話をして、体重を減らすことを決めました。
—— 今は体重とスピードのバランスが良い状態ですか?
良い状態ですが、もう少し体重を落とそうかと考えています。体重を落とすことで、ディフェンスや相手のタックルを受けた時に影響があるかもしれないと思っているんですが、新田さんやヒューイ(ピーター・ヒューワット/アシスタントコーチ)からは、「少し体重を落としたくらいじゃ、そんなに影響はないから大丈夫」と言ってもらっています。
NTTドコモ戦の試合後に比べて、今は良くなってきているので、このまま調整をしていけば、更に良くなるという感覚はあります。
—— 今シーズンは若手選手の活躍が目立ちますが、そのことについてはどう思っていますか?
昨シーズンは西川と大志(村田)以外は、ほぼメンバーが変わらずに試合をしていましたが、その状態だと、将来的に先輩方や僕らが引退した時に戦力が落ちてしまうと思います。けれど、今は若手が試合に出場して活躍をしているので、今後に繋がる良い状態だと思います。
—— そんな中で、自身の目標は何ですか?
もう1回日本代表に入りたいですね。ただ、以前の状態が良かった時に戻したいという気持ちが強くて、目の前のことしか考えられていない状態です。
◆フィジカル面と低さとディフェンス
—— 何年目になりましたか?
6年目です。
—— ポジションにはこだわりはありますか?
ずっとウイングをやってきたので、ウイングしか出来ないってこともあります。11番でも14番でもどちらでも出来ますが、ディフェンス面を考えると14番の方が得意かもしれないですね。
—— 自分のプレーの特徴は?
やっぱりフィジカル面と低さです。あとはディフェンスが出来ることが強みだと思います。ただ低さが特徴なので、下半身にかなり負担がかかるんです。新田さんと話をしているんですが、ずっと低いと下半身への負担が凄くかかるし、そこからのスピードが伸びないから、最初は高い姿勢からプレーに入る工夫をした方が良いと言われ、そこを意識してプレーしています。
高い姿勢でステップを切ると、そのままのスピードで走れるんですけど、低い姿勢だと、そこからまた高い姿勢に戻してからスピードが上がっていくので、スピードが伸びていくのが遅くなるんですよ。
—— 高い姿勢でのプレーは身につきましたか?
試行錯誤しながら、少しずつ身についてきています。あと体重が重いと、ステップも切りにくくなるので、体重も考えながら調整しています。食事も考えながら摂っていて、朝ご飯は自分で野菜ジュースを作って飲んでいます。白米を食べると体重が増えるので、白米を少なめにして食事をするようにもしています。
—— 小野澤選手など、先輩からアドバイスをもらうこともありますか?
僕の調子が悪い時にはアドバイスをもらったりしています。アタックで良くなかった時などは、「人を抜く時の入りは良いけど、その後が前とは違う」というような話をしたりします。具体的に言うと、ディフェンスと正面で向き合った時に、全力で走った状態ではステップは切れないので、一瞬力を抜いてからスピードを上げたりするんですが、スピードを上げるところが伸びない状態でした。復帰したばかりでスピード自体も遅くなっていたんですが、スピードが伸びないことに対して、「どうしたの?」と心配され、「もっとこうすれば良くなる」と言ってもらいました。
復帰したばかりで練習量が足りないこともありましたが、今はずっと練習に参加出来ているので、第7節の時よりも、ウインドウマンス明けの2ndステージの方が調子は上がっていると思います。
◆意識することが大事
—— 11月2日に秩父宮ラグビー場で、日本代表対オールブラックスの試合がありましたが、その試合は見に行きましたか?
行きました。ニュージーランドは、1人1人のスキルがあって、ミスした後の戻りだったり、自陣ゴール前での前に出るプレッシャーが凄くて、1人1人の意識が高いと感じました。日本代表は体格的にもそれほど劣っていなかったと思うので、日本代表とニュージーランド代表の違いはそういうところだと思います。
—— その試合で参考になるプレーなどはありましたか?
キックをされて味方がキャッチする時のカバーだったり、ミスしたりターンオーバーされた後すぐに戻ることは、時間をかけずに真似出来ると思うので、意識することが大事だと思います。意識するだけでプレーが変わると思うので、その意識が高ければ、違う結果になると思います。
—— 日本代表での出番も来ると思いますか?
そこは分からないですね(笑)。まずはトップリーグで試合に出てアピールするしかないですね。
◆最後までちゃんとやるという意識
—— 社会人6年目になり、今感じるラグビーの面白さは何ですか?
以前は、アタックのことしか考えていませんでしたが、今はディフェンスについても考えるようになりました。1人でディフェンスをすると崩れてしまうので、センターとシンクロしながらディフェンスをするようにしています。例えば、センターの選手が前に出たらカバーに入ったり、フルバックと連携して僕が下がったりもして、周りの選手を感じながらディフェンスをしています。あとはフォワードを動かしたり、周りに気配りが出来るようになったと思います。
1~2年目の時は、全然やり方が分からず、「シンクロって何?」って感じでした(笑)。当時は1人でディフェンスをしていたので、練習の時もかなり抜かれていました。そういうこともなくなってきましたし、スタンドオフの顔や体の向きを見ながらディフェンスをするようになり、いろいろと経験を積んで出来るようになりました。
以前よりも、みんなで1つになってラグビーをしている感覚が強くなっていて、面白さを感じます。あと、前は筋肉さえ付ければいいと考えていましたが(笑)、食事を考え、体脂肪を気にするようになりました。その部分はプレーでは見えないと思いますが、それが体に良い影響を与えてくれているので、これからも続けていこうと思っています。
食事では食べ方にも注意していて、野菜を最初に食べると余分な脂肪がつかないとか、水分をこまめに摂るようにしていて、それが少しずつ実ってきていると思います。
—— チーム全体としては、昨シーズンのチームと比べてレベルアップしていると感じますか?
レベルダウンはしていないと思います。ただ、今年は若手が多く出場しているということもあるかもしれませんが、試合の中で波があるように感じますね。改善するためには、意識だと思います。“サントリーのラグビーを最後までちゃんとやる”という意識が大事だと思います。
—— 6年目になって、周りに意識させることが、大事な役割になってくるんじゃないですか?
そういうのは、同期のハタケ(畠山)に任せています(笑)。僕はチーム全体というよりは、個人個人に言っています。
—— 他に同期は誰ですか?
金井と、あとは引退した小田(龍司/2011年度引退)です。
—— いろいろなメンバーが試合に出ていますが、今年のサントリーはどこが強みだと思いますか?
AチームとBチームでサインやシェイプを分けていないので、誰が出ても同じプレーが出来るし、ユニット練習でも全員が混ざって練習しているので、若手がメンバーに入っても見劣りしないパフォーマンスを発揮出来るところだと思います。
◆ディフェンスとアタックで貢献していきたい
—— これから2ndステージ、プレーオフ、日本選手権と続いていきますが、これから更に精度は上がっていきますか?
試合の中での波を消していくことと、ブレイクダウンでプレッシャーを受け上手くボールが出せないことがあったので、サントリーのテンポでプレーが出来るように、サポートの精度を更に上げていければ、より良いサントリーラグビーが出来ると思います。
ウイングとして仕事量を増やしていきたいので、アタックだけじゃなくブレイクダウンにも入っていかなければいけないと思います。自分のサイドだけアタックするのではなく、逆サイドにもアタックしていくようにも言われているので、そこにフォーカスして、フィットネスを上げていろいろなところに顔を出せる選手になりたいと思っています。
—— 完成度はどうですか?
まだまだだと思います。40%くらいですかね。ファイナルラグビーの時には100%に持っていきたいです。
—— これからの目標は?
試合に出ることと、トライを獲りたいですね。それにアタックだけじゃなくてディフェンスでも、僕がターンオーバー出来ればフォワードも助かると思うので、ディフェンスとアタックでチームに貢献していきたいです。
—— 注目して欲しいポイントはどこですか?
“倒れてもすぐに立つ”という原点に戻ってプレーしています。以前のように倒れても前に進んでいくプレーを復活させたいので、そういうプレーを見せたいと思います。あとは仕事量を増やしていけば、自ずとトライも獲れると思います。体重を落とすことでスピードも上がると思いますし、フィジカル面がキープ出来れば、前の自分を超えられると思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]