SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2013年11月 6日

#353 仲宗根 健太 『経験を積んで周りの皆をサポート出来る選手になりたい』

トップリーグ第6節の神戸製鋼戦では突然の初キャップにもかかわらず、初トライを決めるなど活躍した仲宗根健太選手。あまり経験したことのない“緊張”の中で得たものを、これからのラグビーに活かし、更に大きく成長していくことが期待されています。トップリーグ初出場に対する本人の喜びと反省の声をお届けいます。

◆もっとこうしなきゃ

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—— 初キャップ、初トライ、まずは試合直後の今の感想をお願いします

スタメンだと言われた時は、凄く緊張しました。今日も緊張していたんですが、試合前に皆がサポートしてくれて、サインだとか…。

(ここで大久保監督から「ソネ!」と呼ばれ、「はい!」と監督のもとへ。モルツをコップについで、2人で乾杯。そして戻って来る)

—— モルツでの乾杯の味は?

美味しいです(笑)。本当に皆が凄くサポートしてくれて、「今日はもう自分のプレーをやるだけだ」と思い、緊張も少し和らいで試合に臨めたので、皆に感謝するとともに、良い準備をして試合に臨めたと思いました。試合は楽しかったです!

(ここまではアフターマッチファンクション会場で、そしてこの後は日を改めてということで2日後にクラブハウスでインタビュー)

—— 試合後の記者会見で大久保監督が、仲宗根選手は試合前日に4.5kmを走っていたと話していて、普段の練習でも朝練をやりながら、仕事後に練習をして、タフですよね

昨シーズンは怪我をしましたが、普段はあまり怪我をしないタイプで、大学時代も大きい怪我は1回もしていなかったので、どちらかと言えばタフだと思います。

—— 体を大きくして、動きにくさなどはありませんか?

最初の頃は重くて動きにくいと感じていましたが、今はフィットネステストで個人のベストタイムを出しているので、動きにくいと感じることはありません。

—— 昨年インタビューをした時には7人制をメインに聞きましたが、その時に7人制で得たものを15人制に活かすという話をしていました。活かせている部分はありますか?

ボールをもらう時のタイミングについては、7人制が活かせていると思います。トライを獲ったシーンでは、普段ヒューイ(ピーター・ヒューワット/アシスタントコーチ)から、逆目からしっかりとリロード(素早く立ち上がり次のプレーに移る)して、スピードコントロールをしながら行くことを、ジョージ(スミス)のプレー映像を見ながら、指導してもらっていたので、あの場面で出すことが出来ました。たまたま前が空いただけなんですが、そこに走り込めたのは普段のミーティングのおかげだと思います。

—— トライした瞬間はどういう思いでしたか?

すごく緊張していて、試合が始まってボールを触ったら緊張が取れるだろうと思っていたんですが、そこでは緊張は取れなくて、トライを取った後に、ハタケさん(畠山)が喜びながら近寄ってきてくれたので、そこで緊張がほぐれました(笑)。

—— 緊張すると、普段のプレーと動きが変わりますか?

大きくは変わりませんが、「もっとこうしなきゃ」と思いながらプレーしていました。

—— トライで緊張が取れた後、交替してしまいましたね

経験出来たことは良かったと思います。交替した後、ベンチで小澤さんのプレーを見ていたら、緊張なくプレーしていると感じたので、次に出場した時には同じように緊張なくプレー出来るようになればと思います。

—— フル出場するだけの体力は残っていましたか?

体力的には全然大丈夫でした。

◆緊張しました

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—— スタメンで出場すると言われたのは、どんなタイミングでしたか?

試合の前日にノンメンバーの練習が終わった後に、もしかしたらメンバーに入るかもしれないという話を聞きました。4.5km走り終えた後だったので、急いでマッサージをしてもらっていたら、隆道さん(佐々木)の代わりに出場すると聞かされました。

これまでリザーブにも入っていませんでしたし、第5節の時に初めてリザリザ(リザーブのリザーブ)に入り、今回もリザリザになっていました。

—— スタメンでの出場と言われた瞬間は、どういう気持ちでしたか?

あまり緊張するタイプではないんですが、さすがに緊張しました。試合メンバーに入っていなかったので、プレーのチェックなどもあまりしていなかったんですが、色々な人が試合前に声を掛けてくれて、「この場面ではこうしろ」とか「ここではこういう動きをしろ」と言ってもらえて、プレーの確認が出来たので、不安は少なくなっていました。

—— 急きょ試合に出ることになって、家族には連絡しましたか?

家族に連絡をしたら、妹も試合を見に来てくれました。地元が神奈川で、小学校の時から三ツ沢競技場でラグビーをやっていたので、三ツ沢競技場には何か縁を感じます。今回の試合前に、競技場でラグビースクールをやっていましたが、ああいう感じで僕もやっていたので、懐かしく感じました。

—— 試合後に家族とは話せましたか?

会って話すことは出来ませんでしたが、「お疲れさま」というメールが来ていました。父親がラグビーをやっていたので、色々と言いたいのかもしれませんが、細かなことは言わないでいてくれます。

—— アフターマッチファンクションが始まる前に、監督から何か声を掛けられていましたが、何と声を掛けられたんですか?

2試合目が大事だから、また次でチャレンジということを言われました。

—— 初キャップでの試合の出来は?そして、2キャップ目に向けての課題は?

ブレイクダウンで良くなかった部分もありましたし、ボールキャリーでもっとアグレッシブに行けたと思うので、トライは出来ましたが、反省点はたくさんあると感じています。今回の反省を意識して、また次の試合に出られるように取り組んでいきます。動き出しやスピードコントロールについては、他の選手と比べて劣る部分だと思うので、そこを改善していきたいと思います。

—— 初キャップを獲得してみて、見え方が変わる部分はありますか?

まだまだ力が足りないと実感することが出来て、もっともっと練習したいという気持ちになりました。

◆フィットネスは強み

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—— サントリーに入ってバックスからフォワードに転向したわけですが、その転向するきっかけは?

大学3年の時にトライアウトを受けたんですが、その時の面接でエディーさん(ジョーンズ前監督/現日本代表ヘッドコーチ)から「フランカーに挑戦してみないか」と言われたのがきっかけです。大学4年まではバックスでプレーしていたので、常に体を大きくすることは意識していましたが、極端に体を大きくすることは出来ませんでした。実際に体が大きくなったと感じたのは、社会人1、2年目です。

—— 初めてフォワードでプレーしてみて、違和感、あるいはフォワードの面白さを感じた部分はありますか?

フランカーに転向した当初は、ラインアウトのジャンパーも出来なくて、出来なさ過ぎて不安になりました(笑)。まだジャンパーを上手く出来るレベルではないんですが、ブレイクダウンなどでボールに絡むプレーをすることで、バックスとは全く違う景色が見えて、面白いと感じています。バックスをやっていたことで、フィットネスは強みだと思うので、フランカーは自分の強みを活かせるポジションだと思います。

—— フランカーのポジションで一番面白いところはどこですか?

常に仕事があるところだと思います。僕は地味なプレーをコツコツとやっていくタイプなので、どれだけ仕事を見つけて、仕事量を増やしてチームをサポート出来るかという部分は、他の人の何倍も努力しなければいけないところだと思います。

—— バックスをやっていたことで有利になるプレーはどこですか?

ボールをもらうタイミングは、最初からフォワードだった人よりもズラしてもらうことが出来ると思います。逆に難しいプレーは、フィジカルの部分ですね。トップリーグのフォワードは体が大きくて重いので、最初の頃は当たり負けをしていました。

—— どこまで体を大きくするつもりですか?

ただ体を大きくするのではなくて、フィットネスレベルを落とさないようにしなければいけないと思います。体をどこまで大きくするとフィットネスレベルが落ちるのかが分からないので、様子を見ながら体を大きくしています。

◆仕事を見つけて仕事量を増やす

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—— サントリーでは同じポジションにライバルが多くて大変ですね

選手層は厚いポジションだと思いますが、その分、学べる部分が多くあると思います。元さん(アシスタントコーチ)もフランカー出身で、いまコーチをされていますし、色んなタイプのフランカーの方がいるので、色々なことを吸収して、自分の強みを出しながらチャレンジしていきたいと思います。

—— 神戸製鋼戦では、ジョージ・スミス選手とポジションを変えている時もありましたね

僕は基本的にはオープンサイドフランカーなんですが、今回は僕の出場が初めてだったので、ジョージがサポートしてくれて、ディフェンスの時にはジョージがオープンサイドを見てくれていました。今回の試合では、かなり周りの皆にサポートをしてもらったので、経験を積んで、周りの皆をサポート出来るような選手になりたいです。

—— 大学時代はキャプテンをしていましたが、初キャップを獲得したことで、これからリーダーシップを発揮していけそうですか?

フォワードとしての経験も足りないと思いますし、プレー中のコミュニケーションは改善していかなければいけないので、もっともっと経験を積んで、自分の言葉に自信を持てるような選手にならないといけないと思います。

—— 今シーズンの目標は?

今シーズンが始まる前に、トップリーグ出場という目標を掲げました。今回、初めてトップリーグの試合に出場してみて、まずは自分の力で出場出来たわけではないですし、まだまだ力不足と感じる部分が多くあったので、もっとハングリーに取り組み、勝利に貢献するプレーが出来るようになりたいです。

—— その目標を達成するためのポイントは?

タフさと、仕事を見つけられるようになることだと思います。

—— ファンの方に注目して欲しいポイントはありますか?

速いブレイクダウンがチームの鍵になると思うので、そのブレイクダウンでどれだけ仕事をしているかというところを見て欲しいですね。

※試合後の記者会見での仲宗根選手に対する大久保監督のコメント

「昨日、実はノンメンバーの練習でハードトレーニングをした後にメンバーに入って来たので、たぶん昨日、彼は4.5km~5kmは走っていたのですが、そういう状態でも今日は走り続けてくれました。彼は実はサントリーに入るまではバックスの選手でした。去年1年間怪我もあったんですが、春から一度も練習を休まずにハードトレーニングをしてきた2~3人の選手の一人です。

そういう意味でうちのS&Cコーチが言っていましたが、“メイド・イン・サントリー”の選手だという思いで、自信を持って今日は送り出しました。今日の後半は風上からのアタックなので、攻め急がず、ただどうしても先に得点がほしかった中で、初キャップの仲宗根がトライを取ってくれました。あの1本はチームにとって、流れをつくれたという意味で大きかったですね」

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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