2013年10月30日
#352 芦田 一顕 『チームのボスに』
競争の激しいサンゴリアスのスクラムハーフのポジションで、いずれもリザーブからの途中出場ながら、早くも今シーズン2試合に出場した芦田一顕選手。次の目標はスタメン出場。進化継続中の2年目のホープに意気込みを聞きました。
◆試合映像を数多く見た
—— 昨シーズンは2試合出場し、今シーズンは第5節終了時点で既に2試合に出場しています。昨シーズンの2試合と今シーズンの2試合を比べて、何か違いはありますか?
まったく違います。昨シーズンはサントリーのラグビーをあまりイメージ出来ていない状態で、「何かやらなければ」と思いながらプレーし、パニックになってしまうこともありました。今シーズンはやるべきことが明確になり、自分の役割をはっきりと理解しているので、試合中にやらなければいけないことをしっかりとイメージしてプレーが出来ています。
昨シーズンの「何かやらなければ」という状態は、何をやればいいのかが分からないというよりも、サントリーのハーフとして何が正しいのかが分からないという状態でしたし、自分のプレーに自信もありませんでした。
—— どうやってその状態を改善したんですか?
昨シーズンとの大きな違いは、今シーズンは海外など他のチームの試合映像を数多く見たことだと思います。他のチームの試合映像を見たことにより、色々なシチュエーションでのイメージを明確にすることができ、そのイメージを練習などで表現してきたからだと思います。
他のチームの試合映像を見ていて、テンポの緩急や仕掛け方、ボールを早く放す場面や判断について、イメージをはっきりさせることが出来ました。
—— 今シーズン出場した2試合の出来はどうでしたか?
今シーズンの最初の試合は、昨シーズン同様に緊張していたんですが、いざ出場する時には、昨シーズンとは違う感覚があり、思い切ってプレーすることが出来ました。
出場2試合目の第5節の豊田自動織機戦では、1トライ1ゴールで同点にされるという状況でプレーしましたが、守らないといけないということを意識しすぎてしまい、ミスもあり何も出来ないまま試合が終わってしまいました。そういう時間帯でも、しっかりとアタッキング・ラグビーが出来るように取り組んでいきたいと思います。
◆しっかりと前を見て
—— 大人しい印象を受けますが、自分ではどう思っていますか?
コーチからよく「もっと強気にならないといけない」と言われます。練習でもそれを実践するようにしていて、自分なりには強気にやっているつもりなんですが、まだまだ出来ていないみたいです。
ヒューイ(ピーター・ヒューワット/アシスタントコーチ)から「ジョージ・グレーガンは凄かった」と言われます。僕は一緒にプレーすることは出来なかったんですが、GG(ジョージ・グレーガン)のようにもっとフォワードにうるさく言わないといけないと思います。あと「チームのボスになれ」とも言われました。
—— 実現するためには何が必要だと思いますか?
フーリー(デュプレア)がいない間に、しっかりと試合に出続けることによって、自信を持てるようになってきたので、少しずつ変わってきていると思います。
—— ジョージ・グレーガンから直接指導を受けたことはありますか?
一度、フーリーとGGと一緒に、20~30分間くらいでしたが、スクラムハーフのセッションをしてもらったことがあります。この2人に教えてもらえて、めちゃくちゃ贅沢ですよね(笑)。教えてもらえることは基本的なことが多いと思います。僕はよくスタンドオフばかりを見てプレーしてしまうことがあるんですが、「まずはしっかりと前を見て、相手のディフェンスを確認してからプレーするように」と言われました。
最近は、朝練で澄憲さん(田中/チームディレクター)に付き合って頂き、しっかりと前を向いてパスをする練習をしています。その練習をしたことで、前を向いてプレーすることが癖になり、今までよりも余裕を持ってプレーすることが出来るようになりました。
—— 今の状況は、サントリーに入った頃に思い描いていたイメージと比べてどうですか?
サントリーに入った当初は、あまり長期的なビジョンを描いていなかったんですが、フーリーや日和佐さんがいる中、早く試合に出られるようになりたいと思っていました。ただこれだけ早くチャンスがもらえるようになるとは思っていませんでした。
◆試合をコントロール出来るように
—— 今の課題は何ですか?
1対1のディフェンスとしっかりとフォワードをコントロールすることです。あと、大きい課題なんですが、フーリーや日和佐さんのように最初から出場して、試合をコントロール出来るようになりたいです。僕はまだそのレベルに達していないと思うので、これからしっかりと練習していかなければいけないと思っています。
課題を克服するためには、身近にお手本がいるので、練習中から学んで試合で発揮することの繰り返しだと思います。大学の時は試合をコントロールする意識がないままプレーしていたので、試合がコントロール出来るようになれば、1つ上のレベルでプレー出来るようになると思います。
—— プレーしていて、面白いと感じるところはどこですか?
前を向いてプレーすることが出来るようになったので、正しい判断をして上手くプレーが進んだ時は面白いと感じます。
—— 今シーズンの目標は?
このまま試合に出続けることと、チームから信頼を勝ち取ることです。もちろんスタメンで出場出来るようになりたいと思って練習しています。
—— ファンの方に見て欲しいポイントはどこですか?
今の僕が出場出来るタイミングは、後半の終盤になってくると思います。そこから再度テンポを上げることが自分の役割だと思っているので、試合終盤でのサントリーのアタックを僕がコントロールしているところを見て欲しいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]